2025.12.22

抗がん剤の副作用「便秘」原因と自宅でできる解消法

トイレのミニチュアの前にドアのミニチュアが置かれている様子

がんという病と向き合うことは、患者さんご自身だけでなく、ご家族にとっても計り知れないご苦労を伴います。

抗がん剤治療中に多くの患者さんが経験する副作用の一つに「便秘」があります。「たかが便秘」と軽視されがちですが、腹部の張り、吐き気、食欲不振、さらには痛みを伴い、日常生活の質を著しく低下させてしまいます。

慣れない治療中に、便秘という新たな負担が加わることは、心身ともに大きなストレスです。

しかし、適切な対策を知り、実践することで、そのつらさを和らげることができます。

このコラムでは、抗がん剤治療中の便秘に焦点を当て、ご自身でできる方法から医療のサポートまで、具体的な対策を詳しくご紹介します。

一番大切なのは、「つらい」と感じたら我慢しないこと。そして、早めに対策を始めることです。

リビングでお腹を押さえる女性

がん治療中に便秘が起こるのには、様々な原因が考えられます。

主な原因を知ることは、ご自身の便秘に合わせた適切な対処法を探す上で、重要な情報となります。

薬の影響

便秘の原因として最も多いのが、抗がん剤や、痛みを抑えるために使用する薬の影響です。

これらの薬の作用が腸の動きを抑制し、便を出にくくしてしまうことがあります。

特に、モルヒネなどの医療用麻薬や、吐き気を抑えるための薬は、便秘を起こしやすいとされています。

食事・水分摂取量の変化

治療の影響で食欲がない、吐き気があるなどの症状から、食事の量が減少したり、水分を十分に摂取できないことがあります。

食物繊維や水分が少ないと、便の量が少なくなり、硬くなって排便が困難になります。

消化が低下し、腸の動きも悪くなってしまうこともあります。

運動不足

治療中の体のだるさや倦怠感、痛みなどで、活動が少なくなりがちです。

身体を動かす機会が減ると、腸の動きも低下して便秘を起こしやすくなります。

犬を散歩させる女性

つらい便秘ですが、日々の生活の工夫で改善できることも多くあります。無理のない範囲で、できることから取り入れてみましょう。

これらの対策は、予防の観点からも重要です。

水分補給を最優先に

便秘対策の基本は、水分補給です。こまめな水分摂取で便を柔らかくし、スムーズな排便を促します。

【ポイント】
・こまめに飲む
 → 一度にたくさん飲むのではなく、コップ1杯程度をこまめに摂る習慣をつけましょう。
・朝一番に飲む
 → 起床後すぐに水を飲むと、腸への刺激となり、便意を促す効果が期待できます。
・水またはお茶を飲む
 → ほか、経口補水液や牛乳も良いでしょう。

食物繊維を意識した食事

食物繊維は便のかさを増やし、腸の動きをサポートします。

無理なく食べられるものから少しずつ取り入れましょう。

【ポイント】
・水溶性と不溶性をバランス良く
 → 水溶性(便を柔らかくする): わかめ、昆布、果物、里芋など
   不溶性(便の量を増やす): ごぼう、きのこ類、豆類、玄米など
・食べやすい調理法で
 → 食欲がない時は、煮込んだ野菜やスープ、すりおろしたリンゴなどがおすすめです。

適度な運動を取り入れる

適度な運動は腸の動きを活発にし、便秘改善に効果的です。

無理のない範囲で、体を動かす習慣をつけましょう。

【ポイント】
・ウォーキングの習慣をつける
 → 体調が良い時に、毎日・数日おきでも、少しずつ歩いてみましょう。
・ベッドの上でできる運動を
 → 足首回しや膝の曲げ伸ばし、腹式呼吸も腸を動かすのに役立ちます。

毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけることで、排便リズムが整いやすくなります。

【ポイント】
・決まった時間にトイレに行く
 → 朝食後など、便意を感じやすい時間帯にトイレに座ってみましょう。
・正しい姿勢で座る
 → 便器に座るときは、少し前かがみの姿勢をとると、排便しやすくなります。

お腹を優しくマッサージしたり、温めたりすることで、腸の動きを促す効果が期待できます。

【ポイント】
・マッサージ
 → おへその周りを「の」の字を描くように、時計回りにゆっくりとマッサージします。
・お腹を温める
 → 温かいタオルをお腹に乗せたり、ゆっくり入浴したりするのも良いでしょう。

リラックスする

ストレスは腸の動きに影響を与えます。

リラックスできる時間を作り、心と体のバランスを保つことが大切です。

【ポイント】
・リラックスできることを見つける
 → 好きな音楽を聴く、アロマを焚くなど、自分に合った方法でストレスを発散しましょう。
・つらさを相談する
 → 不安や悩みを一人で抱え込まず、家族や医療スタッフに話すことも大切です。

診察室で椅子に座る医師のイラスト

ご自身でできる対策を試しても改善しない場合や、症状がひどい場合は、我慢せずに医療機関に相談しましょう。

医師に相談するタイミング

以下のような症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。

  • ・3日以上便が出ない
  • ・強い腹痛や腹部の張りがある
  • ・吐き気や嘔吐がある
  • ・食事が摂れない
  • ・便に血が混じるなど、便の状態がいつもと違う

便秘薬の種類と使い方

医師は便秘の原因や患者さんの状態に合わせて、適切な便秘薬を処方してくれます。

自己判断で市販薬を服用したりせず、必ず医師や薬剤師の指示に従いましょう。

【主な便秘薬の種類】
・便を柔らかくするもの(浸透圧性下剤)…酸化マグネシウムなど
・腸の動きを促すもの(刺激性下剤)…センナなど
・直腸の便を出すもの(坐薬・浣腸)…即効性があり、緊急時に使われます。

今回は、抗がん剤治療の副作用として起こる便秘について、その原因と対策を解説しました。

便秘はつらい症状ですが、多くの患者さんが経験する一時的な状態です。

大切なのは、無理をせず、ご自身の体の変化に合わせて対処することです。

便意がない時、何を食べてよいか困った時は、一人で悩まずに、通院先の病院に相談してみてください。

看護師や管理栄養士、専門の人たちがあなたの悩みに寄り添います。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。