2026.01.13

抗がん剤による皮膚障害・蕁麻疹の原因とケア方法

腕をかく女性

がんという病気に立ち向かう抗がん剤治療は、私たちにとってとても大切なものです。

その一方で、治療が始まると同時に、吐き気や下痢など、さまざまな副作用が現れることも少なくありません。

数ある副作用のなかで、特に注意が必要な症状の一つが「皮膚の変化」です。

皮膚に突然、強いかゆみや発疹が出ると、「これは一体何だろう?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、抗がん剤治療中に起こる蕁麻疹について、その原因や、蕁麻疹が出たときにすべきこと、そして日頃からできる対策について解説します。

ご自身の毎日の生活の中で、少しでもお役に立てれば幸いです。

腕をかく様子

抗がん剤治療中に皮膚の症状として現れる蕁麻疹は、どのような特徴があるのでしょうか。

蕁麻疹は、皮膚の一部が蚊に刺されたように赤く盛り上がる発疹で、強いかゆみを伴うことが一般的です。

その最大の特徴は、短時間で症状が消えることです。数十分から数時間で消えては、別の場所に再び現れることもあります。

このような蕁麻疹は、抗がん剤に対するアレルギー反応が原因で起こることがあります。

また、抗がん剤治療の副作用として現れる皮膚の症状は、蕁麻疹だけではありません。

・乾燥とかゆみ
 → 治療の影響で肌のバリア機能が低下し、乾燥しやすくなります。
   これに伴って、全身にかゆみが生じることがあります。
・色素沈着
 → 日光に当たる部分や、爪、口の中の粘膜などに、茶色っぽい色素沈着が見られることがあります。
・発疹
 → 蕁麻疹とは異なる小さな赤いブツブツとした発疹が出ることもあります。

これらの症状はすべて、抗がん剤が皮膚の細胞に影響を与えることで起こります。

どの症状が現れるかは、使用する抗がん剤の種類や個人の体質によって異なります。

薬剤と注射器

蕁麻疹が起こる原因は、主に抗がん剤に対するアレルギー反応だと考えられています。

薬物療法とアレルギー反応

私たちの体には、外部から侵入してきた異物を排除しようとする「免疫システム」が備わっています。

アレルギー反応とは、この免疫システムが、薬や食べ物など特定の物質を「敵」と誤認し、過剰に反応してしまう現象です。

抗がん剤は、体にとって異物であるため、投与された後に免疫システムが反応することがあります。

その結果、ヒスタミンという化学物質が分泌され、これが皮膚の血管を広げて、かゆみや赤みを引き起こします。

これが、蕁麻疹として皮膚に現れるのです。

蕁麻疹は、抗がん剤の投与中や直後に現れることが多いです。ごくまれに、治療から数日経ってから症状が出る方もいます。

もし、過去に薬や食べ物でアレルギー反応を起こした経験がある方は、治療を開始する前に必ず医師や看護師に伝えておくことが大切です。

より重いアレルギー症状のサイン

蕁麻疹は、単なる皮膚の症状で終わらない場合もあります。まれではありますが、息苦しさやめまい、血圧低下などの、より重いアレルギー症状のサインである可能性も否定できません。

このような重篤な症状を「アナフィラキシー」と呼び、速やかな対応が必要です。

そのため、蕁麻疹が出た際は、自己判断で済ませず、必ず医療スタッフに連絡することが重要になります。

医師に相談する女性のイラスト

蕁麻疹が出ると、強いかゆみと見た目の変化で不安になることは当然です。しかし、まずは落ち着いて正しい対処法を行うことが重要です。

皮膚をかかない

かゆみが強いからといって、かきむしってしまうと、皮膚を傷つけてしまい、症状が悪化したり、感染症を引き起こす原因になります。

かゆみが生じても、できるだけかかないように我慢しましょう。

患部を冷やし、かゆみを和らげる

蕁麻疹のかゆみは、患部を冷やすことで抑える効果が期待できます。

冷たいタオルや保冷剤をハンカチなどで包み、蕁麻疹が出ている部分に軽く当ててみましょう。

冷やすことで血管が収縮し、かゆみが和らぎます。

早めに医師や看護師に相談する

蕁麻疹が出た際は、すぐに医師や看護師に連絡してください。

特に次のような症状も伴う場合は、重いアレルギー反応である可能性があるため、迷わず連絡しましょう。

・息苦しさや動悸
・めまいやふらつき
・血圧の低下
・声がかすれる

これらの症状が現れることは稀ですが、抗がん剤の投与中や直後に蕁麻疹が出た場合は、自己判断せずにすぐに医療スタッフに連絡することが何よりも大切です。

洗面所で顔を洗う女性

蕁麻疹を完全に予防することは難しいですが、日頃から皮膚の状態を整えて刺激を避けることで、症状が起こるリスクを減らすことができます。

やさしい洗浄と保湿

入浴やシャワーの際は、肌のバリア機能を守るため、刺激の強いボディソープや熱いお湯は避けるようにしましょう。

石鹸は、泡立ててから優しく洗い、洗い残しがないようにしっかりとすすぐことが大切です。

洗った後は、刺激の少ない保湿剤を全身に塗り、皮膚の乾燥を防ぐケアを行うことが大切です。

乾燥はかゆみを引き起こしやすくなります。

締め付けの少ない服装

締め付けの強い下着や衣類は、皮膚を刺激し、蕁麻疹を悪化させる可能性があります。

特に化繊の衣類は肌への摩擦が起こりやすいため、綿や絹など、ゆったりとした、通気性の良い天然素材の服を選ぶようにしましょう。

アレルギー歴を伝える

抗がん剤治療を開始する前に、過去に薬や食べ物、化粧品などでアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師や看護師に伝えてください。

アレルギーの原因となる物質を避けることや、治療の方法を検討する上で、非常に重要な情報となります。

抗がん剤治療中の蕁麻疹はつらいですが、適切な対処法を知っていれば、安心して向き合うことができます。

蕁麻疹は重いアレルギー反応のサインである可能性もあるため、一人で判断せず、少しでも不安に感じることがあれば主治医や看護師に相談してください。

このコラムが、皆さんの蕁麻疹に対する不安を少しでも和らげ、安心して治療を続ける力になれば幸いです。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。