抗がん剤の副作用、血小板減少時の出血予防と対処法
がんという病と向き合う中で、多くの患者さんが経験する副作用の一つに、抗がん剤による「血小板の減少」があります。
医師から「血小板が減っています」と伝えられると、出血しやすくなるという情報から、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
「ぶつけた覚えがないのにアザができてしまう」「歯磨きで血が出る」「これって大丈夫なのかな?」など、日々の生活の中で様々な疑問や不安が湧いてくることでしょう。
しかし、血小板の減少は、抗がん剤ががん細胞を攻撃する際に起こる、一般的な影響です。この症状を正しく理解し、適切な対策を行うことで、不安を和らげ、出血のリスクを減らすことができます。
このコラムでは、抗がん剤治療中の血小板減少について、その原因と身体への影響を解説するとともに、患者さんご自身とご家族が実践できる、日常での出血の予防方法をご紹介します。
血小板減少の原因と身体への影響

私たちの体には、血管が傷ついたときに血を止めるための仕組みが備わっています。
血小板は、その役割を担う重要な血液の成分であり、出血を止めるための「かさぶた」の元を作る役割を持っています。
血小板が集まり、傷口をふさぐことで、出血は自然に止まります。
抗がん剤は、がん細胞のように分裂が盛んな細胞を攻撃する薬なので、血小板を作る骨髄の細胞にも影響を与え、血小板の数を少なくしてしまいます。これが血小板の減少が起こる主な原因です。
血小板の減少が起こる時期は、抗がん剤を投与してから10日から14日後に最も低くなることが多いです。
血小板の数が少なくなると、出血しやすくなったり、一度出血すると血が止まりにくくなったりする可能性があります。
皮下の内出血(アザ)や鼻血、歯茎からの出血、点状出血(皮膚の表面にできる小さな赤い点)などの症状として現れることが多くあります。これらの症状に気付いたら、早めに対処することが大切です。
また、血小板の減少は白血球や赤血球の減少を伴うこともあります。
白血球が減少すると感染症にかかりやすくなり、赤血球が減少すると貧血(めまい、ふらつき、倦怠感)の症状が出ることがあります。これらの症状にも注意が必要です。
出血を防ぐための5つの注意点

血小板が減少している期間は、日常生活の中で少し注意を払うことで、出血のリスクを減らすことができます。
これらの予防方法を家族全員で行い、患者さんをサポートしましょう。
転倒や衝突を避ける
転倒したり、身体を硬いものにぶつけたりすると、皮下の内出血や出血の原因になります。手足をぶつけないように、特に手すりを使用するなど、転倒に注意して歩くようにしましょう。
部屋の中でも、つまずきやすいものを片付けるなど、環境を整えることが大切です。
特に夜間は足元が見えにくいため、照明をつけたり、懐中電灯を使用するなど、安全に配慮しましょう。
歯磨きの方法を見直す
歯茎からの出血を防ぐためにも、歯磨きに注意が必要です。柔らかい歯ブラシを使用し、優しく磨きましょう。
歯の間に詰まった食べ物を取るための歯間ブラシやデンタルフロスなどは使用を避けるか、看護師や薬剤師に相談し、正しい使い方を教えてもらいましょう。
出血がある場合は、出血している部位を避けて磨き、かかりつけの歯科医に相談しましょう。
カミソリの使用を避ける
カミソリは皮膚を傷つけやすく、出血の原因になります。電気シェーバーや電動のカミソリを使用するようにしましょう。
また、爪は短く切るように心がけ、皮膚を傷つけないように注意しましょう。
爪切りよりも爪やすりを使用する方が、より安全です。
食事の注意点
食事の工夫で、出血のリスクを減らすことができます。
・口内のケア
→ 口内炎ができていたり、口の粘膜が弱くなっているときは、硬いものや刺激の強いものは避けましょう。
これらは口内を傷つけ、出血の原因になることがあります。
・便秘の予防
→ 食物繊維が少ない食事は便秘を引き起こし、いきみが出血の原因になる可能性があります。
食事や水分補給をしっかり行うことが大切です。
その他の注意点
・鼻を強くかまない
→ 鼻血の原因になることがあります。優しくかみましょう。
・医師の指示なしに薬を飲まない
→ アスピリンなど一部の薬は、出血を止まりにくくさせる作用があります。
処方された薬以外は、医師の許可なしに使用しないようにしましょう。
・打撲を避ける
→ 強いマッサージや腹部の圧迫、マッサージは避けることが重要です。
出血が起こった時の対処法

出血が起こったとしても、慌てずに対応すれば、多くの場合では止まります。
以下の方法を知っておき、もしもの時に備えましょう。
すぐにできる対処法
・鼻血が出たとき
→ 鼻の柔らかい部分を指で数分間圧迫し、座って少し前かがみの姿勢をとりましょう。
脱脂綿などを鼻に詰める方法も良いです。
・歯茎から出血したとき
→ うがいで口をゆすぎ、清潔なガーゼなどを使用して出血している部位を押さえる方法が有効です。
病院を受診すべきケース
以下のような症状がある場合は、すぐに医師や看護師に連絡してください。
・出血が止まりにくい(5分以上圧迫しても止まらない)
・吐き気やめまい、ふらつきなどの症状を伴う
・皮下のアザが広がる、新しいアザが増える
・血尿や血便がある
・頭痛や意識障害、けいれんがある(脳からの出血の可能性があるため、特に注意が必要です。)
出血の状態を具体的に伝えることが、適切な対処を受けることにつながります。
いつから、どのような出血があるか、血の量はどの程度かなどをメモしておくと、相談がスムーズに進みます。
おわりに
血小板の減少は、抗がん剤治療によって一時的に起こる症状です。治療が進むにつれて次第に回復していきますので、必要以上に怖がることはありません。
しかし、不安な気持ちを抱えたまま過ごすことは、心身に大きな負担となります。
体に変化を感じた時や、心配なことがある時は、ためらわずに医療に携わる人やご家族に相談してください。
看護師や薬剤師など、専門家があなたの不安に寄り添い、サポートしてくれます。
このコラムが、がんと向き合う患者さんとご家族の皆様が、少しでも安心して日々を過ごすための一助となれば幸いです。
