がん患者の免疫力を支えるビタミンの基本知識
がんの治療を続けていく中で、「以前よりも疲れやすくなった」「風邪などの感染症が気になる」と感じることは少なくありません。
これは、病気そのものの影響に加え、抗がん剤や放射線療法などの治療によって、体内の免疫システムが一時的に不安定になることが関係しています。
免疫の働きを維持し、健やかな日常生活を送るためには、十分な休息とともに「栄養」の力が欠かせません。
なかでもビタミンは、免疫細胞が正しく働くための調整役として、非常に重要な役割を担っています。
本コラムでは、免疫に関わりの深いビタミンの科学的な役割と、体調に合わせた無理のない摂り方について詳しく解説します。
がん治療と免疫の関係とは

なぜ、がん治療において免疫の働きを保つことが大切なのでしょうか。
それには、スケジュール通りに治療を進めることと、日々の生活の質(QOL)を保つという、二つの大きな理由があります。
免疫の働きが低下しやすくなる理由
治療中は、以下のような要因で細菌やウイルスと戦う白血球などの免疫細胞が減少したり、その力が弱まったりすることがあります。
- ・治療による影響
→ 抗がん剤などは骨髄に作用することがあり、新しい免疫細胞が作られるペースが一時的に落ちることがあります。 - ・身体的な負担やストレス
→ 手術後の回復期や長期の通院による疲れ、精神的な不安などは、自律神経を介して免疫の働きに影響を与えます。 - ・栄養の偏り
- → 食欲不振や味覚の変化で食事が思うように摂れないと、免疫細胞を作るための「材料」が不足してしまいます。
免疫の状態を整えておくことは、感染症などの余計なトラブルを防ぎ、治療を円滑に進めるための「身体の基礎づくり」となるのです。
次章からは、そんな免疫をサポートする代表的なビタミンである、ビタミンC・ビタミンD・ビタミンAについて説明します。
ビタミンC ― ダメージから細胞を守る

ビタミンCは、免疫をサポートする栄養素として最も馴染み深いものの一つです。
免疫における役割
- ・細胞を酸化から守る
- → 治療によって体内に発生する「活性酸素」は、正常な細胞を傷つける原因になります。
- ビタミンCはこれを取り除く「抗酸化作用」を持ち、免疫細胞がダメージを受けるのを防ぎます。
- ・免疫細胞の活性化
- → 体内に侵入した病原体と戦う白血球の働きを助け、抵抗力を高めます。
- ・皮膚や粘膜の修復
- → 身体のバリアである皮膚や粘膜を健やかに保つコラーゲンの生成を助けます。
効率的な摂り方
ビタミンCは熱に弱く、水に溶け出しやすい性質があります。
- ・生の果物を活用する
- → キウイ、いちご、みかんなどは調理の手間がなく、ビタミンCをそのまま摂れる優れた食材です。
- ・加熱は短時間で
→ ブロッコリーやピーマンなどの野菜は、蒸したり電子レンジを使ったりすることで、栄養が水に流れ出るのを抑えられます。 - ・イモ類を取り入れる
- → じゃがいも等のビタミンCはデンプンに守られているため、加熱しても壊れにくいという特徴があります。
ビタミンD ― 免疫のバランスを整える

近年の研究で、免疫の「調整役」として非常に注目されているのがビタミンDです。
免疫における役割
- ・過剰な炎症を抑える
→ 外部からの侵入者には素早く反応しつつ、自分自身の身体を攻撃してしまうような過剰な炎症を抑える「ブレーキ」の役割を果たします。 - ・抗菌力を高める
→ 体内で細菌やウイルスに対抗する物質(抗菌ペプチド)が作られるのを助けます。 - ・治療を支える土台づくり
→ 血中のビタミンD濃度が適切に保たれていることは、治療中の体調管理や生活の質の維持に良い影響を与えることが報告されています。
効率的な摂り方
ビタミンDは脂溶性(油脂に溶ける性質)のため、油と一緒に摂ると吸収が良くなります。
- ・魚を主菜にする
- → 鮭、サバ、イワシなどの青魚はビタミンDが豊富です。
- ・干ししいたけを利用する
→ 調理前に30分ほど日光に当てるだけで、ビタミンDの量が増えます。 - ・適度な日光浴
- → 体調が良い日は、10分程度ベランダなどで日光を浴びるだけでも、体内でのビタミンD合成が促されます。
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ビタミンA ― ウイルスの侵入を防ぐバリア

ビタミンAは、鼻や喉などの「入り口」を守る役割を担っています。
免疫における役割
- ・粘膜の健康を保つ
→ 鼻、喉、気管、消化管などの粘膜は、病原体が最初に触れる防衛線です。 - ビタミンAはこれらの粘膜を潤し、ウイルスなどが付着・侵入するのを防ぎます。
- ・バリア機能を強める
→ 粘膜の細胞が新しく生まれ変わるのを助け、身体のバリアを常に正常な状態に保ちます。
効率的な摂り方
緑黄色野菜に含まれる「β-カロテン」は、体内で必要な分だけビタミンAに変わるため、安全に摂取できます。
- ・油と一緒に調理する
→ にんじん、かぼちゃ、ほうれん草などは、炒め物にしたりドレッシングをかけたりすることで吸収率がアップします。 - ・スープや煮物にする
→ 野菜を柔らかく煮ることでカサが減り、無理なく量を食べられるようになります。
体調が優れないときの食事の工夫

抗がん剤の副作用によって思うように食べられない場合の、具体的な対処法をまとめました。
味覚の変化があるとき
「以前好きだったものが美味しく感じられない」という場合は、味のアクセントを工夫してみましょう。
- ・酸味を利用する
→ レモンなどの柑橘類を使うと、口の中がさっぱりして食べやすくなることがあります。 - ・温度を下げる
→ 温かい料理は匂いが立ちやすく、不快感につながることがあります。冷製スープや冷やし野菜など、常温以下にすると匂いが抑えられます。
口内炎があるとき
粘膜が敏感になっているときは、刺激を避けることが最優先です。
- ・刺激の少ないメニューを選ぶ
→ 柑橘類などの酸っぱいものは避け、かぼちゃのポタージュやマッシュポテトなど、喉越しの良いものを選びます。 - ・飲み込みやすくする
→ ミキサーにかけたり、とろみを付けたりすることで、噛むときの痛みを減らし、スムーズに飲み込めるようにします。
おわりに
免疫の働きを整えることは、がん治療を支え、あなたらしい毎日を守るための大切な土台となります。
ビタミンC・D・Aを日々の食事に取り入れることは、身体が本来持っている力を引き出すための、身近で確かな方法です。
体調に波がある中で工夫を続けるのは大変なことですが、無理のない範囲で、今日できることから始めてみてください。
