2026.03.03

抗がん剤による肝機能低下。原因と食事・生活のヒント

倦怠感のため頭を押さえる女性

がんという病気に立ち向かう抗がん剤治療は、私たちにとってとても大切なものです。その一方で、治療が始まると同時に、吐き気や痛みなど、さまざまな副作用が現れることも少なくありません。

数ある副作用のなかで、特に注意が必要なのが「肝機能低下」です。

治療の過程で血液検査の数値が上がり、医師から「肝機能が少し落ちていますね」と説明を受けると、不安を感じる方も多いでしょう。

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれており、肝機能が低下しても、初期には症状がないことが多いため、ご自身では異常に気づきにくいという特徴があります。

このコラムでは、なぜ抗がん剤治療中に肝機能が低下する可能性があるのか、そして毎日の生活でできる対策についてご紹介します。

ご自身の毎日の生活の中で、少しでもお役に立てれば幸いです。

食欲不振で胸元を押さえる女性

肝臓は、体内に入った薬を分解し、体外へ排出しやすい形に変える「解毒工場」のような役割を担っています。抗がん剤も例外ではなく、多くの薬剤が肝臓で代謝されます。

つまり、抗がん剤治療中の肝臓は、普段よりもはるかに多くの負担を背負っている状態です。

肝機能が低下すると、こうした肝臓の働きが鈍くなります。しかし、肝臓は予備力が高いため、機能がある程度悪くならないと自覚症状が現れません。

そのため、ご自身では気づきにくい肝機能の低下のサインとして、以下のような症状が挙げられます。

・倦怠感
・食欲不振
・むくみ
・皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)

これらの症状は、肝機能の低下以外の原因でも起こることがあります。

自己判断せず、少しでも気になる症状があれば、医師や看護師に相談することが大切です。

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弱った肝臓を現したイラスト

抗がん剤が肝機能に影響を与える原因は、主に二つ考えられます。

ただし、実際には体調・併用している薬剤など、複数の要因が重なることもあります。

薬の「代謝」と「排泄」に肝臓が関わっているため
抗がん剤は体内で作用した後に、肝臓の働きで分解され、体外へ排泄されます。
しかし、使用する薬の種類や量によっては、一時的に肝臓の処理能力を超えてしまい、肝臓に負担をかけてしまうことがあります。
これが、肝機能低下を引き起こす主な原因です。

◆肝臓の細胞がダメージを受けるため
抗がん剤はがん細胞の増殖を抑える作用を持っていますが、その一方で正常な細胞にも影響を与える可能性があります。
肝臓は代謝が活発な臓器なので薬の影響を受けやすく、そのために肝臓の細胞もダメージを受けてしまうことがあります。
その結果として、肝機能が一時的に低下することが考えられています。

肝機能の低下は、血液検査で肝臓の数値(AST、ALT、γ-GTPなど)を測定することで診断されます。

多くの抗がん剤治療では、治療の前や期間中に定期的に血液検査を行い、肝機能の状態を確認しながら治療を進めていきます。

しかし、肝機能が低下したからといって、必ずしも治療が中止になるわけではありません。

多くの場合、薬の量を調整したり、治療の間隔を空けたりすることで、肝機能が回復するのを待ちながら治療を続けることができます。

肝臓は回復力の高い臓器でもあるため、適切に休ませることで数値が改善することもあります。

焼き魚定食。白米、みそ汁、鮭の切り身、きんぴらごぼう、お漬物

肝機能の低下を改善するためには、肝臓に負担をかけない食生活を心がけることが大切です。

【工夫1】栄養バランスを意識する

肝臓の働きを助けるためには、食事の栄養バランスを整えることが基本です。

◆主食
 → お米、パン、麺類など。
   エネルギー源となる炭水化物をしっかり摂りましょう。
◆主菜
 → 肉、魚、卵、大豆製品など。
   肝臓の回復に必要なタンパク質をしっかり摂りましょう。
◆副菜
 → 野菜、きのこ、海藻など。
   ビタミンやミネラルを補給しましょう。

【工夫2】肝臓の働きを助ける食材を選ぶ

肝臓に良いとされる栄養素を積極的に摂取することもおすすめです。

◆良質なたんぱく質
 → 鶏のささみ、白身魚、豆腐、牛乳、ヨーグルトなど。
   脂肪が少ないものを選びましょう。
◆ビタミン類
 → 旬の野菜や果物、レバー、卵など。
   特にビタミンB群は、肝臓の代謝を助ける働きがあります。

【工夫3】避けたい食べ物や飲み物

肝臓に負担をかけるものは、できるだけ控えましょう。

◆アルコール
 → アルコールは肝臓で分解されるため、肝機能が低下しているときは負担が非常に大きくなります。
   原則として避けるようにしましょう。
◆脂質の多い食べ物
 → 揚げ物、脂身の多い肉など、消化に時間がかかる食べ物は控えるようにしましょう。
◆刺激物
 → 香辛料や塩分の多いものも肝臓に負担をかける場合があります。

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室内でストレッチする女性

食事だけでなく、日々の生活習慣も肝機能に影響します。

◆十分な睡眠と休息をとる
肝臓は、私たちが寝ている間に最も活発に働き、修復・再生されると言われています。
抗がん剤治療中は、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。
また、疲れを感じたら「休みすぎかな」とは思わず、すぐ横になるようにしてください。
無理のない生活を心がけることが重要です。

◆水分をこまめにとる
水分が不足すると、肝臓の代謝や解毒の働きが落ちやすくなるといわれています。
特に冬場は、意識しないと摂取する水分量が落ちてしまいがちです。
水やお茶、経口補水液など、飲みやすいものをこまめに取りましょう。

◆無理のない範囲で体を動かす
適度な運動は、全身の血行を良くして肝臓への血流も改善されることから、肝臓の働きを助ける効果も期待できます。
とはいえ、激しい運動は必要ありませんし、体調が悪い日は無理をしてはいけません。
体の調子が良いときに、無理のない範囲で散歩やストレッチ、体操などを行うことをおすすめします。

聴診器を首にかけた医師の上半身のアップ

肝機能の低下は、自覚症状がほとんどないこともあります。そのため、定期的な血液検査をきちんと受けることが何よりも大切です。

もし、倦怠感や食欲不振などこれまでになかった不調が現れた場合は、決して自己判断で終わらせず主治医や看護師にすぐに相談してください。

検査の結果を踏まえて、食事や生活のアドバイスをもらったり、薬の量を調整したりするなど、適切な対応が行われます。

一人で抱え込まず相談し、不安を軽減して治療を続けましょう。

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抗がん剤治療は、身体にとって大きな負担を伴うものです。その中で肝臓は、代謝という重要な役割を担いながら働き続けています。

肝機能の低下には不安を感じますが、それは治療がうまくいっていないという意味ではなく、身体が発している「少し休ませてほしい」というメッセージでもあります。

治療を続けるうえで大切なのは、医療者とのコミュニケーションを保ち、身体の変化を共有しながら進めていくことです。

肝臓の状態を理解し、無理のない生活を心がけることで、治療の質を高めることにもつながります。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。