膵臓がんの初期症状と見逃しやすいサインを徹底解説
膵臓がんは、早期の段階で自覚症状が少なく、進行すると発見や治療が難しいことで知られています。
最近、腹痛や背中の痛み、消化不良、食欲不振、体重減少など気になる変化を感じていませんか。
膵臓という臓器は胃や肝臓など他の臓器と連携し、血糖や消化に関わるホルモンや酵素を分泌しています。
そのため、膵臓の機能低下や腫瘍による膵管の圧迫が症状に直結して表れます。
一見見逃しやすい症状には膵臓がん初期のサインが隠れている場合があり、早期発見が生存率向上のカギとなります。
このコラムでは、症状が気になるときの検査や診断、正しい医療機関の受診方法まで、膵臓がんの知識と注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
膵臓がんの基本情報

膵臓の役割と構造
膵臓は腹部の深い位置、胃の背中側にある消化器系の主要な臓器です。成人の膵臓の大きさはおよそ15〜20cmで、薄く細長い形状が特徴です。
膵臓は日常生活の中であまり意識されませんが、消化機能や血糖の調整など、生命維持に欠かせない働きを担っています。おおよそ、膵頭部・膵体部・膵尾部の3つに分けられます。
・頭部
→ 膵臓の右端、十二指腸に接しており、胆管や大腸、胃など複数の臓器と密接に関係しています。
・体部
→ 膵臓の中央部分で、血管や神経が集まる重要な部位です。
・尾部
→ 左端にあり、脾臓と隣接しています。
膵臓の内部には「膵管」と呼ばれる細い管が通り、食事のたびに消化酵素(膵液)を十二指腸へ送り込んで脂肪、たんぱく質、炭水化物の分解・吸収を助けます。
この機能が低下すると、消化不良や体重減少などの症状が現れます。
また、膵臓に点在するランゲルハンス島と呼ばれる組織は、血液中の糖をコントロールするインスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌し、血糖値の調整に重要な役割を果たします。
この働きが乱れると糖尿病や食欲不振といった病気を引き起こしやすくなります。
膵臓は消化と内分泌という異なる機能を同時に担った、まさに人体にとって非常に重要な臓器といえるでしょう。
膵臓がんの種類と特徴
膵臓がん(膵がん)は、膵臓という消化酵素やホルモンを分泌する重要な臓器に発生する腫瘍性疾患の総称です。
種類ごとに特徴が異なり、症状や進行、患者の予後などに影響を及ぼします。
主な膵臓がんには、以下のような種類が存在します。
・膵管がん
→ 膵臓内で最も一般的な悪性腫瘍で、全体の90%以上を占めます。
膵管の内壁を構成する上皮細胞ががん化することで発症します。
多くの場合は初期症状に乏しく、発見時には進行している場合が多いです。
・神経内分泌腫瘍(NET)
→ インスリノーマやガストリノーマなどのホルモンを過剰分泌する腫瘍です。
膵臓がん全体の約5%未満を占めます。
種類によっては、低悪性度で経過が比較的緩やかなものもあります。
ただし、進行すると他の臓器に転移することがあります。
・嚢胞性腫瘍
→ 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、漿液性嚢胞腫瘍などが代表的です。
良性から悪性まで幅広い病態が含まれ、腫瘍内部に液体がたまるのが特徴です。
膵臓がん全体の大きな特徴は、早期段階での診断が難しい点と、腹痛や背中の痛み、体重減少、黄疸、消化不良、食欲不振などの症状が現れた段階では進行していることが多い点です。
膵臓は腹部の奥深くに位置しているため、腫瘍がある程度大きくならないと体表から確認できません。
さらに膵臓がんは、周囲の臓器や血管への浸潤、リンパ節や肝臓への転移が早いという特徴を持ちます。
日本でも近年、男女を問わず発症率と死亡数が増加傾向にあり、膵臓がんはがん死亡原因の上位に位置しています。
進行がんでは患者の生活の質(QOL)の低下も大きな課題です。
また、家族歴や慢性膵炎、糖尿病、喫煙、肥満などが発症リスク因子と考えられています。
膵臓がんの初期症状

一般的な初期症状
膵臓がんは「沈黙の臓器」と呼ばれることが多く、診断が難しい疾患のひとつです。
初期段階の膵臓がんは膵臓という体の奥深くにある臓器で発症するため、特徴的な症状がほとんど現れません。
多くの患者はごく軽い腹部の違和感といった程度にしか感じず、はっきりとした痛みとして現れないために、症状に気づかないことが一般的です。
膵臓がんの初期症状には、例として以下のようなものがあります。
・みぞおちや背中に感じる重苦しい鈍い痛み
・原因のはっきりしない食欲不振や体重減少
・消化不良、下痢、脂肪便(白っぽくベタつく便)の出現
・軽度の黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
・糖尿病の発症や、急激な悪化
・全身の倦怠感や疲れやすさ
これらの症状は膵臓がん特有ではなく、胃や大腸、胆嚢など他の消化器疾患とも似ているため注意が必要です。
特に腹痛や背中の痛みは、胃の病気や慢性膵炎とも誤認しやすいです。
膵臓がんの初期は自覚症状が不明瞭なことから、定期的な検査や画像診断、血液検査などの医療機関での確認が重要です。
万が一上記のような症状が続く場合は、早めに医療機関を受診し、診断を受けることが膵臓がんの早期発見・治療につながります。
見逃されやすいサイン
膵臓がんは腹部深部に位置するため、早期には症状が出にくく、発症しても特徴的でないため見逃されがちな病気です。
多くの患者が「加齢によるもの」「疲れ」「一時的な消化不良」と考え、診療や検査を先送りしがちです。
実際、初期の段階では具体的な膵臓がん特有の症状はほとんど認められません。
しかし、膵臓や膵管に腫瘍が発生すると、消化機能が徐々に低下したり、体重や食欲が減少する場合があります。
慢性的な背中の痛みも膵臓がんの特徴の一つですが、筋肉痛や腰痛と間違われやすいため注意が必要です。
特に下記のような症状に当てはまる場合は、膵臓がん発見の手がかりになるため、注意深く観察し家族や本人が早めに医療機関へ相談することが重要です。
・腹部の痛みや膨満感が1カ月以上続く
・半年以内に原因不明で5kg以上の体重減少がある
・食事量の減少や食欲不振が長引く
・糖尿病の治療を受けている場合、血糖コントロールが急に悪くなる
これらのサインは一般的な疾患や生活習慣の変化と区別しにくく、初期で診断がつきにくいため、膵臓がんは進行してから発見されることが多いのが実情です。
症状の程度や経過が通常と異なる場合は、早期の医療機関受診と血液検査、画像検査など専門的な診断が必要となります。
自覚症状や家族からの指摘があれば、それを見逃さずに早期発見へつなげることが生存率を高める鍵となります。
膵臓がんの進行に伴う症状

進行に伴う身体的変化
膵臓がんが進行すると、腫瘍の増大や周囲への浸潤により、さまざまな症状が現れます。
・持続する強い腹痛・背中の痛み(神経への浸潤)
・高度な黄疸(胆管閉塞による胆汁うっ滞)
・極端な体重・筋肉量減少
・消化不良がより顕著になる
・吐き気や嘔吐(腫瘍が十二指腸を圧迫)
・全身倦怠感・貧血・食事摂取量の激減
・血糖値の大きな変動、新たな糖尿病発症・悪化
さらに、膵臓は腹部深部に位置するため、腫瘍の発見が遅れる傾向にあります。そのため、がん細胞が血液やリンパ管を通じて肝臓や肺、腹膜、骨などへ転移するケースも多いです。
合併症のリスク
進行膵臓がんでは、腫瘍の位置や進行度によって様々な合併症が生じやすいのが特徴です。
・胆道炎・胆管炎(胆道系の閉塞・細菌感染)
・消化管閉塞(十二指腸などへの腫瘍浸潤)
・重度の黄疸による肝不全や腎障害
・悪液質(体重・筋肉の急速な減少や栄養失調)
・血糖コントロール困難(インスリン分泌障害)
・腹水や腹膜炎、呼吸困難
・感染症、敗血症
合併症が生じた場合は、手術が難しいため、化学療法や緩和医療が中心となります。
患者や家族が症状の変化にいち早く気付き、医師と密に連携することが重要です。
膵臓がんの診断方法

画像診断の重要性
膵臓がんは腹部の奥深くに位置し、初期段階では特有の症状がほとんど現れないため、診断や発見が遅れがちです。
そのため、画像診断は膵臓がんの早期発見・診断・進行度や治療方針の決定に不可欠です。
画像診断によって腫瘍の位置や大きさ、膵管や周囲臓器への浸潤、転移の有無などが詳細に評価できます。
膵臓がん患者さんやご家族が安心して治療を受けるためにも、適切な画像検査を受診し正確な状態把握が重要です。
主な画像診断方法は以下の通りです。
・腹部超音波検査(エコー)
→ 体に負担が少ない非侵襲的検査で、膵臓の腫瘍や膵管の拡張、胆管の状態などを確認できます。
ただし、膵臓が胃や腸管のガスに隠れやすいため、見えにくい場合もあります。
・造影CT検査
→ 膵臓の腫瘍の形態や大きさ、周囲臓器や血管への浸潤、遠隔転移の評価に不可欠です。
造影剤を利用し、がんの有無だけでなく、治療方針決定や手術適応の診断材料にもなります。
・MRI/MRCP
→ 膵管や胆管の詳細な画像を得られます。
がんによる膵管の狭窄や胆道閉塞の有無など、膵臓がんの進行度や特徴の把握に役立ちます。
造影CTが難しい腎機能低下の方でも利用されます。
・PET検査
→ がん細胞の活動性を画像化し、膵臓以外の部位への転移や再発の有無を全身的に評価します。
膵臓がんの性質や治療効果判定にも活用され、がんの状態を総合的に把握できます。
・内視鏡的超音波(EUS)
→ 胃や十二指腸から膵臓を近接して観察し、微細な腫瘍や膵管の異常を高精度に検出します。
疑わしい病変から細胞や組織を採取(生検)し、病理診断にもつなげます。
膵臓がんの画像診断は、各検査の特徴を活かし複数の方法を組み合わせて行うことが一般的です。
患者さんの状態や病気の進行度に応じて最適な診断方法を選択し、早期発見や的確な治療計画につなげることが非常に重要です。
血液検査・腫瘍マーカー
膵臓がんの診断過程で、血液検査と腫瘍マーカーの測定は非常に重要です。
膵臓は腹部奥深くにあり、腫瘍が小さい初期段階では症状がみられにくいため、発症初期に発見されることは一般的に困難です。
そこで、血液による腫瘍マーカーの測定が診断や治療方針の決定、経過観察に大きく役立ちます。
主に利用される腫瘍マーカーや血液検査の特徴は以下の通りです。
・CA19-9
→ 膵臓がん患者の約70~80%で上昇する代表的な腫瘍マーカーです。
膵臓がんの診断、がんの進行状況や治療効果、再発の有無などの判断材料として利用されます。
膵炎や胆管炎、他の消化器疾患でも上昇することがあり、単独でがんの確定はできません。
・CEA
→ 主に消化器系のがんで使われる指標です。
特に進行度の判定や治療後の経過観察に有効です。
・DUPAN-2、Span-1
→ CA19-9と併用して利用されることがある腫瘍マーカーです。
複数マーカーを組み合わせることで、診断の精度が向上します。
※ 腫瘍マーカーは他の良性疾患でも上昇する可能性があるため、確定診断のためにはCTやMRIなどの画像診断、内視鏡的超音波下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)など、膵臓腫瘍組織の採取による病理検査の併用が必要です。
血液検査や腫瘍マーカーは、膵臓がんの診察の流れの中で「目安」としての役割が大きいです。
CA19-9やCEAが高値だった場合、医療機関では追加で腹部画像検査や内視鏡検査を行い、腫瘍の有無や進行度、他臓器(肝臓・胃・大腸など)への転移の確認を進めます。
膵臓がんは進行の速い疾患のため、症状や体重減少、糖尿病の悪化、背中や腹部の痛みなどを感じた場合は、早期に病院への受診・相談が重要です。
腫瘍マーカー検査のみではがんとの区別が難しい場合も多いので、必ず医師の診療のもと多角的な検査で診断・治療方針を決定します。
膵臓がんのリスク因子

生活習慣と膵臓がんの関係
膵臓がんの発症にはいくつかの危険因子が知られています。
現在明らかになっている主なリスク因子は以下の通りです。
・慢性膵炎(膵臓の長期炎症)
・糖尿病(特に発症後間もない糖尿病や血糖コントロール不良例)
・喫煙(膵臓がんの発症率を2~3倍に高める)
・過度な飲酒や肥満
・高脂肪食、野菜や果物摂取不足など不良な食事習慣
・高齢(50歳以上でリスクが上昇)
これらの生活習慣因子の管理・改善は、膵臓がんの予防につながります。
家族歴と遺伝的要因
膵臓がんの患者の約10%は、親や兄弟姉妹など、近親者に膵臓がん発症歴があるといわれています。
また、BRCA2、CDKN2A、PALB2などの特定の遺伝子異常が膵臓がんのリスク因子として報告されており、これら異常を持つ場合、発症リスクが高まることが知られています。
こうした家族歴や遺伝的リスクがある場合、膵臓がんを早期発見するには、定期的な検診や腫瘍マーカー測定、CT等の画像検査の受診が非常に重要です。
特に多発家系や若年で発症した場合、遺伝カウンセリングや遺伝子検査の利用が進んでいます。
医療機関への相談により、最適な診療方針や検査方法を選択することが、発症予防や早期治療、家族への案内にもつながります。
家族歴や遺伝的要因が疑われる場合は、必ず専門医に相談することが大切です。
膵臓がんの予防と早期発見

生活習慣の改善
膵臓がんの発症リスクを減らすためには、日常生活の見直しが重要です。
膵臓は消化やホルモン分泌など体の重要な機能を担い、さまざまな要因が膵臓がんの発生や進行に関与します。
予防には、以下のような生活習慣の改善が推奨されています。
これらを実践することで、他の生活習慣病や疾患の予防にもつながります。
ご自身や家族の健康維持のため、気になる症状や不安がある場合は、医療機関への受診や相談も大切です。
具体的には、以下のような点に注意が必要です。改善できるものがあれば取り組みましょう。
・禁煙
→ 喫煙は膵臓がんや慢性膵炎のリスクとなるため、早期の禁煙が重要です。
・節酒
→ 過度な飲酒も膵臓への負担となるため、飲酒量の減少や制限を心がけましょう。
・バランスの良い食事
→ 野菜や果物を中心に、動物性脂肪・加工食品を控えることで、発症リスクの低下が期待できます。
・適度な運動習慣
→ 定期的な運動は、肥満の予防と膵臓の機能維持に役立ちます。
・体重管理
→ 肥満はがんや糖尿病の因子となるため、適切な体重を保つことが重要です。
・持病の管理
→ 糖尿病や慢性膵炎、高血圧といった疾患の治療や定期的な診療を継続しましょう。
定期的な健康診断の重要性
膵臓がんの早期発見には定期的な検診と、リスク因子を持つ人への集中的なフォローが不可欠です。
具体的には、年1回以上の腹部超音波検査や腫瘍マーカー測定(CA19-9等)や、糖尿病や慢性膵炎、家族歴のある方は、消化器内科や専門外来を受診することをおすすめします。
35歳以降の膵臓がん家族歴がある場合、40歳以降は特に注意しましょう。
また、体重の急激な減少、腹部症状の持続、黄疸などの気になる症状がある場合は、定期検診の間隔に関わらず早めの医療受診が必要です。
膵臓がんに関する最新情報

研究の進展と新しい治療法
近年、膵臓がんの治療水準は着実に進歩しています。
手術療法では従来の開腹切除に加え、腹腔鏡手術やロボット支援手術が実施されるようになり、術後合併症や入院期間の短縮など患者さんの負担軽減に寄与しています。
化学療法ではゲムシタビン、エルロチニブ、ナブパクリタキセル、FOLFIRINOX等の抗がん剤や分子標的薬の開発が進み、5年生存率の改善が報告されるケースも増えています。
最近では、膵がん細胞の遺伝子異常を標的とした個別化医療、免疫療法、新規分子マーカーの探索など、臨床研究・治験も活発に進行中です。
さらに、日本全国のがん拠点病院や大学病院では、膵臓がんの臨床試験・治験情報が提供されており、治療選択肢の拡大が期待されています。
患者支援とサポート体制
膵臓がんは発症した患者本人だけでなく、家族や支援者にも大きな精神的・身体的負担をもたらす病気です。
近年、日本の医療現場では膵臓がん患者とその家族を包括的に支えるサポート体制の拡充が進んでいます。
専門のがんカウンセラーや精神的なサポートが提供されるほか、栄養士による個別の食事・栄養指導、消化器外来医や看護師との診療相談も重視されています。
また、がん相談支援センターや患者会では情報提供や交流、電話相談など多様な支援活動が行われています。
進行したがんの場合や、治療で不良な状態が続く際には、在宅医療や緩和ケアチームが痛みや不安に対応し、患者のQOL向上を目指します。
医療ソーシャルワーカーは治療費や医療費の負担、社会的支援制度の活用を案内し、患者や家族が医療だけでなく生活面でも安心できるようサポート。さらに、最新の治療法や臨床研究情報を紹介し、患者自身が最適な治療や今後の生活を主体的に選択できるよう支援しています。
このような多岐にわたる支援を利用することで、疾患に対する正しい理解が深まり、患者の意思決定や治療方針の選択にも大きく役立ちます。
まとめ
膵臓がんは、初期症状に乏しく診断が難しいがんですが、持続する腹痛・背中の痛み、食欲不振や体重減少、黄疸、糖尿病の新規発症や急な悪化などは早期発見・治療のきっかけとなるサインです。
血液検査・腫瘍マーカー測定、腹部超音波やCT、MRI、内視鏡検査などの画像診断を組み合わせることで、発症の有無や進行度を正確に把握できます。
手術・化学療法・緩和ケアなど治療法は多様化しており、患者さんや家族が治療方針や生活の見直しについて適切な医療チーム・支援体制と相談することが非常に重要です。
状態や症状変化への素早い対応こそが、生存率の向上、再発リスク低減、生活の質改善につながります。
「膵臓がんかも?」と感じる症状があれば、自己判断せず、早めに専門医・医療機関へご相談ください。
