2026.01.16

腎臓がんの生存率は?ステージ別分類とQOL維持の対策

金木犀の花

腎臓がんと診断された際、多くの患者様やご家族が最初に直面する不安は「これからどうなるのか」という将来への懸念です。

その際、インターネットやパンフレットで目にする「生存率」という数字は、希望の光になることもあれば、時には重い不安の種になることもあるでしょう。

しかし、がん統計における生存率は、あくまで過去に治療を受けた膨大な数の患者様の平均的なデータに過ぎません。

2026年現在、腎臓がんの治療は免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の登場により、劇的な進化を遂げています。

過去の統計には反映されていない新しい治療法の恩恵により、予後は着実に改善しつつあります。

本コラムでは、腎臓がんの基礎知識から、最新のステージ別生存率、治療法の進歩が予後に与える影響、そして治療後の生活の質(QOL)を維持するための具体的な対策までを詳しく解説します。

数字の意味を正しく理解し、前向きに治療と向き合うための指針としてお役立てください。

腎臓の模型と医師

腎臓がん(腎細胞がん)とは

腎臓は、腰のあたりの背中側に左右一つずつ存在する、握りこぶしほどの大きさの臓器です。

血液を濾過して尿を作り、老廃物を体外へ排出するほか、血圧の調整や赤血球を作るホルモンの分泌など、生命維持に欠かせない多くの役割を担っています。

この腎臓の細胞ががん化したものを腎臓がん(腎細胞がん)と呼びます。

かつては発見が難しいがんとされていましたが、現在は人間ドックや他の疾患の検査で行われる超音波検査やCT検査によって、無症状のうちに発見されるケースが増えています。

生存率とは

がんの統計でよく用いられるのが「5年相対生存率」です。

これは、がんと診断された患者様が5年後に生存している割合を、がん以外の原因で亡くなる可能性を排除して算出したものです。

この数字は、特定の治療法がどれほど有効であるか、あるいはステージごとにどの程度の警戒が必要かを示す重要な指標となります。

統計データと現在のタイムラグ

ここで重要なのは、5年生存率のデータは「少なくとも5年以上前に治療を開始した人たち」の結果であるという点です。

2020年前後に発表された統計は、それ以前の治療環境に基づいています。

医療技術の進歩は非常に速いため、現在の最新治療を受けている患者様の予後は、統計上の数字よりもさらに改善している可能性があることを忘れてはいけません。

弱った腎臓のイラスト

腎臓がんは、顕微鏡で見た組織の性質(組織型)によっていくつかの種類に分類され、それによって進行の速さや治療薬の効きやすさが異なります。

主な組織型

最も多いのは「淡明細胞型(たんめいさいぼうがた)腎細胞がん」で、全体の約80パーセントから85パーセントを占めます。

この型は、近年開発された分子標的薬や免疫療法が比較的効きやすいことが知られています。

その他にも、乳頭状腎細胞がんや嫌色素性腎細胞がんなどがあり、それぞれ予後や治療戦略が異なります。

進行度(ステージ)の分類

腎臓がんの進行度は、腫瘍の大きさと広がりに基づく「ステージ(病期)」で分類されます。

ステージ1:腫瘍が腎臓内にとどまっており、大きさが7センチメートル以下の状態。
ステージ2:腫瘍が腎臓内にとどまっているが、大きさが7センチメートルを超えた状態。
ステージ3:腫瘍が腎臓の周囲の脂肪組織や、近くの静脈、あるいは周辺のリンパ節に広がっている状態。
ステージ4:腫瘍が副腎などの隣接する臓器、あるいは肺、骨、肝臓などの遠くの臓器に転移している状態。

腎臓がんは肺や骨に転移しやすいという特徴がありますが、たとえ転移が見つかったとしても有効な薬物療法が多いため、粘り強く治療を継続することが重要です。

ステージ1~4まで書かれた旗

国立がん研究センターの「がん情報サービス」などが公表している院内がん登録データに基づくと、腎臓がんの予後は他のがんと比較しても比較的良好な部類に入ります。

ステージ別の5年生存率の目安

最新の統計(2020年公表データ参考)によると、腎臓がん全体の5年相対生存率は約80パーセントから85パーセント程度です。

これをステージ別に見ると以下のようになります。

ステージ1:約95パーセント以上。早期発見できれば、ほとんどのケースで根治が期待できます。
ステージ2:約85パーセントから90パーセント程度。
ステージ3:約70パーセントから75パーセント程度。
ステージ4:約20パーセントから30パーセント程度。

10年生存率と長期予後

腎臓がんは、手術から5年を過ぎてから再発することもあるため、10年という長期のスパンでの観察が必要です。

10年生存率についても、ステージ1であれば90パーセント前後を維持しており、長期的なコントロールが可能な疾患であることがわかります。

生存率を左右する要因

統計上の数字以外にも、患者様の年齢、全身の状態(パフォーマンスステータス)、貧血の有無、血清カルシウム値などのデータが予後に関連することがわかっています。

これらを総合的に判断するMSKCCリスク分類などの指標を用い、医師は一人ひとりに最適な治療の強度を決定します。

点滴

腎臓がんの治療法は、この十数年で劇的な変化を遂げました。これが、かつては困難とされていたステージ4の患者様の生存率を押し上げる大きな要因となっています。

標準治療としての手術療法

早期から中期(ステージ1から3)の基本は手術です。

以前は腎臓を丸ごと摘出する「腎全摘術」が一般的でしたが、現在は腫瘍のみを切り取り、正常な腎機能をできるだけ温存する「腎部分切除術」が推奨されています。

特にロボット支援下手術の普及により、出血を抑え、より精密に部分切除を行うことが可能になりました。

腎機能を残すことは、後の心血管疾患のリスクを減らし、長期的な生存率の向上に寄与します。

最新の薬物療法

転移があるステージ4や再発後の治療において、2020年代の主役は「免疫チェックポイント阻害薬」と「分子標的薬」の併用療法、いわゆるコンボ療法です。

免疫のブレーキを外してがん細胞を攻撃させる薬(ニボルマブ、イピリムマブ、ペムブロリズマブなど)と、がんの増殖に必要な血管を作らせない薬(アキシチニブ、カボザンチニブなど)を組み合わせることで、従来の治療では得られなかった高い効果が報告されています。

一部の患者様では、がんが画像上消えてしまう「完全奏効」が得られる例もあり、これがステージ4の生存率を大きく改善させている背景にあります。

床に座ったまま体操を行う高齢者

治療の成功は、単に延命するだけでなく、いかに元気に、自分らしい生活を送り続けるかという「QOL(生活の質)」の維持にかかっています。

残された腎臓を守るために

腎臓を一つ摘出した場合、残されたもう一つの腎臓が一生懸命働かなければなりません。

この健側腎を守るために最も重要なのが「血圧のコントロール」です。

高血圧は腎臓の細い血管にダメージを与え、機能を低下させます。

家庭での血圧測定を習慣にし、医師の指導のもとで適切な血圧(通常130/80mmHg未満など)を維持することが、長期的な健康の鍵となります。

腎臓に優しい食事習慣

腎機能への負担を減らすため、食事療法は非常に有効です。

・減塩の徹底
塩分の摂りすぎは血圧を上げ、腎臓に負担をかけます。
1日6グラム未満を目標に、出汁の活用やレモン、香辛料を使った味付けの工夫を取り入れましょう。
・適度な水分補給
脱水は腎機能に悪影響を及ぼします。
心臓疾患などで水分制限がない限り、こまめに水分を摂るようにしましょう。
・タンパク質の過剰摂取に注意
重度の腎機能低下がある場合はタンパク質制限が必要になることがあります。
ただし、自己判断で行わず、必ず管理栄養士や主治医に相談してください。

適度な運動と禁煙

治療後の体調管理には、無理のない範囲で体を動かすことがとても役立ちます。

ウォーキングのような軽い有酸素運動は、血圧を安定させ、血流を良くすることで腎臓への負担を減らす助けになります。

また、体を動かすことで気分転換になり、ストレスの軽減や睡眠の質の向上にもつながります。

激しい運動をする必要はありません。1日20〜30分の散歩や、エレベーターではなく階段を使うなど、日常生活の中でできる小さな工夫でも十分効果があります。

ご自身の体調に合わせて、続けやすい方法を見つけてみてください。

また、タバコに含まれる成分は血管を収縮させ、腎臓の働きを妨げることが知られています。

喫煙は腎臓がんの発症リスクを高めるだけでなく、治療後の再発リスクにも影響する可能性があります。

そのため、禁煙は腎臓の健康を守るうえで非常に重要な取り組みです。

禁煙の効果は意外と早く現れます。数日〜数週間で呼吸が楽になったり、味覚が戻ったりと、日常生活の中で変化を感じられることもあります。

長期的には血管の状態が改善し、腎臓を含む全身の健康維持に役立ちます。

ミモザの花

末期症状の管理と緩和ケア

がんが進行し、痛みや全身のだるさ、食欲低下などの症状が現れた場合、それを抑えるための「緩和ケア(支持療法)」が行われます。

これは終末期だけのものではなく、診断された直後から治療の副作用を和らげるためにも活用されるべきものです。

痛みを我慢せず、適切に医療用麻薬などの鎮痛薬を使用することで、体力を温存し、前向きに治療を継続することが可能になります。

経済的支援と相談窓口の活用

がん治療は長期にわたることが多く、経済的な不安も小さくありません。

高額療養費制度や傷病手当金など、利用できる公的制度は数多くあります。

病院内の「がん相談支援センター」や地域包括支援センターなどを通じて、社会福祉士(ソーシャルワーカー)に早めに相談することをお勧めします。

ピアサポートと心のケア

同じ病気を経験した患者同士が交流する「ピアサポート」は、孤独感を和らげ、実生活に即した情報を得る貴重な場となります。

自分の気持ちを誰かに話すことは、ストレスを軽減し、免疫力の維持にもつながります。

腎臓がんの生存率は、あくまで一つの指標であり、あなたの未来を固定するものではありません。

たとえ転移が見つかったとしても、あるいは治療中に困難に直面したとしても、あきらめる必要はありません。

主治医と話し合い、自分に合った最適な治療法を選択していくことが、より良い結果への第一歩です。

また、日々の生活の中で血圧や食事に気を配ることは、あなた自身が治療に参加し、自分の体を守るためにできることでもあります。

このコラムが、腎臓がんと向き合う皆様の不安を少しでも和らげ、これからの歩みを支える一助となることを願っております。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。