2026.01.16

胆嚢がんの検査方法を解説。早期発見を目指すために

病院の受付

胆嚢がんは消化器がんの中でも発見が難しく、特に初期の段階では分かりやすい症状が現れにくいのが特徴です。

しかし、胆道や肝臓、膵臓といった重要な臓器が密接に関わるため、疑いが生じた場合や症状がある場合は、早期の診断・治療が患者の予後に大きく影響します。

このコラムでは、がん検診・血液検査・画像診断・内視鏡検査・生検といった胆嚢がんの主な検査方法と、その流れや目的、また今後の医療技術の進展について解説します。

腹部を押さえる女性

胆嚢がんの概要

胆嚢がんは、胆嚢の内側を覆う細胞ががん化して発生する悪性腫瘍であり、消化器疾患の中でも特に注意が必要ながんの一つとされています。

胆嚢は肝臓で生成される胆汁を一時的に蓄えておく臓器であり、食事の際に胆汁を十二指腸へ送り消化を助ける役割を果たしています。

その胆嚢に発生するがんは、初期には自覚症状が乏しいことが多く、早期発見が難しいのが特徴です。

疾患が進行してくると、右上腹部の痛みや不快感、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、食欲不振、体重減少などの症状が現れることがありますが、これらの症状は他の消化器疾患でも見られるため、見逃されやすい傾向にあります。

胆嚢がんは、日本を含むアジア諸国で比較的多く報告されており、その発生には胆石や胆嚢ポリープ、慢性胆嚢炎などの疾患が関与していると考えられています。

しかし、すべての胆嚢がん患者がこれらの疾患を有しているわけではありません。発生要因や機序についてはまだ解明されていない部分も多いのが現状です。

胆嚢の壁は薄いため、がんが発生すると周囲の肝臓や胆道系、さらには血管やリンパ節へと比較的早期に浸潤する傾向があります。

また、他の消化器の臓器、たとえば膵臓や十二指腸、大腸などへの波及も起こりやすく、進行がんとなることも少なくありません。

早期発見のメリット

胆嚢がんを早期発見することには、多くの重要なメリットがあります。

まず、がんがまだ胆嚢の内側にとどまっており、周囲の臓器やリンパ節、血管などへ転移や浸潤をしていない段階であれば、手術による根治が期待できる点が大きいです。

手術では、胆嚢の摘出だけでなく、必要に応じて周囲のリンパ節や一部の肝臓も切除し、病変の進行や再発のリスクを大きく低下させることが可能です。

さらに早期発見であれば、術後の回復も速く、患者の身体的負担が軽減され、社会復帰も早くなる傾向があります。

一方、進行がんの場合には、胆道や肝臓、膵臓、大腸など周囲の臓器への浸潤や転移がみられ、手術だけではなく化学療法や放射線療法、さらには症状コントロールのための対症療法が必要になることが多く、治療の流れや選択肢が複雑化し、予後も厳しくなります。

胆嚢がんの初期症状は腹部の違和感や痛み、消化不良、黄疸、皮膚の異常、胆汁の流れの変化など、非常に軽微で見逃されやすいものが目立ちます。

そのため定期的な腹部エコーやCT、MRIなどの画像検査、血液や腫瘍マーカーによる検診の受診が、早期発見には欠かせません。

異常が見つかった場合は、消化器専門の病院や医療センター、外科での精密な診断・観察が推奨されます。

早期発見が患者様の生活の質向上や、長期的な生存率の向上などにつながります。

血液検査に用いる容器と聴診器

腫瘍マーカーの役割

腫瘍マーカーは、がん治療や診断の現場で非常に重要な役割を果たします。

胆嚢がんをはじめとした胆道や膵臓、肝臓などの消化器がんの場合、血液検査で腫瘍マーカー値を測定することで、がんの発見や進行度の推定、治療経過の把握に活用されます。

特にCA19-9やCEAといった腫瘍マーカーは、胆道・膵臓の腫瘍だけでなく胃がんや大腸がん、肺がんでも上昇することがあり、多くの消化器系疾患に関連しています。

また、ビリルビンやALP、γ-GTPといった胆道酵素の値もあわせて評価することで、病変の部位や胆管の異常、胆汁の流れの状態も知ることができます。

しかし腫瘍マーカーのみで病気を確定診断することはできません。良性の胆嚢ポリープや慢性的な胆道疾患、炎症性変化でもマーカーが上昇する場合があるため、必ずCTやMRI、腹部超音波(エコー)などの画像診断と組み合わせて総合的に判断されます。

画像検査による病変の観察と腫瘍マーカーの数値の変化を併せて詳細に評価することで、がんの進行や転移の有無、治療効果の判定、再発の早期発見が可能となります。

このように腫瘍マーカーは、医療現場で患者の診療方針を決定するうえで欠かせない指標であり、定期的な検診や経過観察、治療後のフォローにも広く利用されています。

肝機能検査との関連性

胆嚢がんの進行度や胆道・膵管・肝臓への合併症を診断する上で、肝機能検査も重要です。

ALT・AST・γ-GTP・ALP・LDH・総ビリルビン等の項目があり、特に胆道閉塞や胆管炎が伴う場合はこれら酵素の上昇が認められます。

血液検査の異常値は初期の胆嚢がんでも出現することがあり、健康診断等での定期的なチェックで早期発見につながることもあります。

CT機器の前で患者に説明を行う医師

超音波検査

腹部超音波検査(エコー)は胆嚢がんスクリーニングの第一選択です。プローブにゼリーを塗布し腹部に当て、体内から反射する音波をリアルタイムに画像化します。

胆嚢壁の肥厚、腫瘍性病変、胆石やポリープ、胆嚢内液体貯留などさまざまな異常の発見が可能です。

消化管ガスの影響や肥満などで観察が困難な場合を除けば、非侵襲的で繰り返し行えるのが最大のメリットです。

胆嚢がんが疑われる場合、腫瘍のサイズ、胆道・肝臓との位置関係、胆管拡張、周囲臓器への浸潤状況も評価できます。

異常が認められた際は、CTやMRIなど精密な画像検査に進みます。

CT・MRI検査

胆嚢がんの診断や進行度の評価には、CT検査とMRI検査が重要な役割を果たします。

まずCT検査は、X線を用いて腹部の断面画像を短時間で撮影する医療画像技術で、造影剤を静脈注射することで血流や腫瘍の異常な集積、胆嚢や肝臓、膵臓、胆管、リンパ節などの周囲臓器への転移や浸潤の状態を立体的に観察できます。

特に進行がんの広がりや、胆道、肝臓への転移のスクリーニングに有用で、手術や治療方針の決定に重要な情報をもたらします。

また、腹部全体の腫瘍や病変の発見、外科的な切除範囲の確認にも活用されます。

MRI検査は、強い磁場と電波を使う画像診断法であり、胆嚢や胆道、膵臓などの軟部組織のコントラストに優れています。

特にMRCP(磁気共鳴胆膵管撮影)は、造影剤を使わずに胆管や膵管、胆汁の流れや狭窄、胆道内の腫瘍性病変、胆道の拡張や閉塞の詳細な観察が可能です。

これにより早期の胆嚢がんや、壁内への浸潤、周囲組織への影響、胆道の機能的異常を非侵襲的に評価することができます。特に造影剤アレルギーがある患者でも安全に受診できる点も利点です。

CTでは病変の全体像把握や進行度、転移の有無が分かりやすく、MRIやMRCPは胆道内や組織の詳細な違い、胆汁の流れや胆嚢壁の状態などをより正確に確認できるため、両者を組み合わせて診断・治療計画を立てることが一般的となっています。

病院の待合椅子

胆嚢がんの疑いがある場合、内視鏡を用いた検査はよく行われます。

ただし、胃カメラのように「カメラで直接、胆嚢の中を覗く」というわけではありません。

胆嚢は十二指腸の外側についている袋状の臓器であるため、胃や大腸のように内腔を直接見ることができないからです。

そのため、胆嚢がんの検査では、内視鏡に超音波装置を組み合わせたり、造影剤を注入したりする特殊な方法が用いられます。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

ERCPは内視鏡を十二指腸まで進め、乳頭部から胆管・膵管にカテーテルを挿入し造影剤を注入して撮影を行う方法です。

胆道・膵道の狭窄・閉塞・異常膨張などを直接評価でき、腫瘍が胆管や膵管を巻き込んでいる場合に進行度や手術適応を判断します。

また、ERCP中にブラシやバイオプシー鉗子を用いて細胞診・組織生検を行うことができ、悪性・良性や病変の性格を正確に決める病理診断に寄与します。

胆道ドレナージやステント挿入などの治療的側面も兼ね備え、進行がんの症状緩和にも活用されます。

超音波内視鏡検査(EUS)

超音波内視鏡(EUS)は、内視鏡先端に装着した超音波プローブで胃や十二指腸内部から胆嚢や周囲臓器を間近に高解像度で観察できる検査です。

表在性の小さながんや壁内浸潤度、リンパ節や膵臓・肝臓への微細な転移も見逃しません。

疑わしい部位に対しては超音波ガイド下穿刺(EUS-FNA)で組織・細胞採取も可能であり、正確な診断・進行度判定が期待できます。

EUSは腹部超音波・CT・MRIと組み合わせ診断精度をさらに高める重要な検査法です。主に消化器内科や外科の専門医療機関で行われます。

顕微鏡を覗く人

生検の手法とその意義

胆嚢がん・胆道がんの確定診断には、腫瘍組織や疑わしい部位から実際に細胞や組織片を採取し、顕微鏡で慎重に観察・解析する病理診断が不可欠です。

手法は内視鏡検査(ERCP・EUS)と併用し、胆管刷子細胞診や穿刺吸引、開腹・腹腔鏡生検等があります。

生検は悪性腫瘍と良性・炎症性疾患(胆石症、ポリープなど)との鑑別だけでなく、がん組織のタイプ、増殖度、浸潤度の評価も可能です。

手術適応や化学療法・放射線治療の選定、治療方針策定に必須のステップです。

細胞診による診断の流れ

細胞診は採取した胆汁、胆管・胆嚢の分泌液または擦過細胞などをスライドガラスに広げて色素・特殊染色を施し、細胞形態の異常や悪性所見を確認します。

進行したがんや腫瘍性病変では不規則な核異型や多核細胞、異常分裂像が特徴的です。

細胞診単独で診断困難な場合も、画像診断・腫瘍マーカー・臨床情報を総合して最終的な判断につなげます。

専門病院やがんセンターでは、迅速病理や高感度マーカーとの併用により診断精度が向上しています。

説明を行う医師

新しい検査技術の開発

胆嚢がんの診断技術は近年大きな進歩を遂げています。

分子標的マーカーや遺伝子解析、液体生検(血中遊離DNA解析)、デジタル病理やAIを活用した画像解析など、より少量の検体や負担の少ない方法でがんの有無や進行度を高精度に判定する開発が進行中です。

PET・PET-CTは全身の悪性腫瘍・転移診断に強みがあり、胆嚢がん精密検査の標準化が検討されています。

さらに、内視鏡カメラ・超音波カメラの高解像度化や、色素・蛍光造影剤を活用したがん細胞特異的イメージング技術の臨床応用も期待されています。

個別化医療の進展

従来のステージ分類に基づく治療アルゴリズムに加え、がん細胞の遺伝子型や分子プロファイルに沿った「個別化医療」の導入が進んでいます。

患者ごとの体質・病態・腫瘍の性格に応じ、最適な化学療法、分子標的療法、放射線治療の組み合わせが選択される時代です。

また、胆嚢がんの早期発見にはAIによる画像診断支援・ビッグデータ活用も今後本格化します。

日本をはじめ多くの医療法人や研究機関が、診断技術と治療成績の向上に向けた共同研究に取り組んでいます。

胆嚢がんの診断は、血液検査・腫瘍マーカーにはじまり、腹部超音波検査・CT・MRI・MRCP等の多彩な画像診断、さらに内視鏡的検査・生検・細胞診など段階的に進められます。

これらを組み合わせることで、腫瘍の部位・広がり・進行度・転移状況を正確に把握し、最終的な治療方針(手術・化学療法・放射線療法等)の決定へと繋がります。

今後はAIや遺伝子検査、新規腫瘍マーカー、画像診断技術の進歩により、より早期かつ正確に胆嚢がんを発見・診断し、個別化した最適な治療法選択が実現されていくでしょう。少しでも気になる症状があれば、自己判断せず受診することが最良の予防となります。

胆嚢がんの検査から治療に関する情報は、常に新しい研究や診療指針の更新により進化しています。最新の医療情報や検査方法については、必ず医療機関・専門医にご相談ください。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。