2026.01.23

胃がん手術後の食事ガイド。注意点と簡単レシピを紹介!

オムレツとサラダが乗った皿

胃がんと診断され、治療や手術を控えている方、あるいは手術後の新しい生活をスタートさせた方にとって、毎日の食事は最も切実な不安要素の一つでしょう。胃は食べたものを貯蔵し、消化液と混ぜ合わせ、適切な速さで腸へと送り出すという、食事の楽しみを支える中心的な役割を担っています。

胃がんの治療、特に手術によって胃の一部または全部を切除した後、私たちの体はこれまでとは異なる食事のあり方を求められます。

しかし、適切な知識を持ち、工夫を重ねることで、食事は再び生活の彩りとなり、回復を支える力強い味方になってくれます。

本コラムでは、胃がんと食事の関係から、術後の具体的な食べ方、忙しい日も簡単に作れるレシピ、そして再発リスクを抑える生活習慣までを、詳しく解説します。

皿の上に粘土でできた?マークが置かれている様子。皿の周りにはサンドイッチ、ピザ、ドーナツ、ホットドッグのおもちゃが置かれている

発がんリスクを高める食事とは

胃がんの発生には、長年の食生活の積み重ねが深く関わっていることが多くの研究で示されています。

日本において胃がんが多い原因の一つとして、伝統的な食事に含まれる塩分の多さが指摘されてきました。

塩分の過剰摂取は、胃の粘膜を保護する粘液の層を壊し、粘膜自体に慢性的な炎症を引き起こしやすくします。

炎症が続いた状態の粘膜は、発がん物質の影響をより受けやすくなり、がんの発生につながります。

また、ハムやソーセージなどの加工肉の過剰摂取や、新鮮な野菜・果物の不足もリスク要因となります。

特に野菜や果物に含まれるビタミンCなどの抗酸化成分は、胃の中で強力な発がん物質が作られるのを抑える働きがあると考えられています。

大腸がんなど他の消化器がんと同様に、バランスの悪い食事は消化管全体の大きな負担となり、がんが発生しやすい環境を作ってしまいます。

胃がん患者におすすめの食事法

胃がんの治療中や術後の回復期において、体力を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が基本となります。

野菜、果物、そして筋肉や臓器の修復材料となる良質なタンパク質を意識的に摂取することが推奨されます。

また、特定の健康食品を大量に摂るよりも、多様な食品を少しずつ組み合わせる方が、体全体の免疫機能を維持する上で効果的です。

ピロリ菌の除菌治療を行った後も、食事による注意は欠かせません。

極端に熱いものや冷たいもの、辛すぎるものといった刺激の強い食べ物を避け、規則正しい時間に食事を摂ることで、胃の粘膜を健やかな状態に保つことができます。

治療を支える栄養素

手術や化学療法を乗り切るためには、十分なエネルギー源が必要です。

体重の減少は免疫力や体力の低下を招き、治療の継続を困難にすることがあります。

炭水化物に加えて、組織の再生を助けるタンパク質、そして体の調子を整えるビタミン・ミネラルを効率よく補給することが、治療方針を完遂するための重要な土台となります。

食事を摂る女性

消化の良い食品とは

胃を切除した後、食事は段階を追って新しい体の状態に慣らしていく必要があります。退院後の数ヶ月は、胃の貯蔵機能が低下または消失しているため、一度に多くの量を食べることはできません。

食材を選ぶ際は、食物繊維が少なめで柔らかいもの、脂肪分が多すぎないものが基本です。

例えば、白身魚、鶏のささみ、豆腐、卵などは、タンパク質が豊富で消化も良いため、術後のメイン食材として最適です。

逆に、キノコ類や海藻、ゴボウなどの硬い繊維が多い食品は、術後しばらくは控えるか、細かく刻んで柔らかく煮込むなどの工夫が必要です。

分食の重要性

手術前と同じように1日3回で必要な栄養を摂ろうとすると、腹痛や吐き気などの不快感が生じやすくなります。

そこで、1日の食事を5回から6回程度に分ける分食(ぶんしょく)が不可欠になります。

朝、昼、晩のメインの食事に加えて、午前10時や午後3時、就寝前などに、小さなおにぎりやパン、栄養補助食品を活用して栄養を補給します。

分食は単なるおやつではなく、1日に必要な総エネルギーを分割して確実に摂取するための食事法です。

ダンピング症候群

胃がんの手術後に最も注意が必要なのが、ダンピング症候群です。胃の出口の機能がなくなることで、食べたものが未消化のまま急速に腸へ流れ込むことによって起こります。

食後30分以内に起こる早期ダンピング症候群では、腹痛、下痢、動悸、めまいなどが現れます。これは腸に急速に食べ物が流れ込み、腸内の水分バランスが急変することで起こります。

一方、食後2時間から3時間程度で現れる晩期ダンピング症候群は、急激に吸収された糖分によってインスリンが過剰に分泌され、低血糖状態になることで、冷や汗、震え、強い空腹感が起こります。

これらを防ぐための最大の方法は、ゆっくり食べること、よく噛むこと、そして一度に大量の糖分を摂りすぎないことです。

コーヒーが注がれたカップ

胃がんとアルコールとの関係

胃がん手術後のアルコール摂取については、慎重な判断が求められます。

アルコールは胃の粘膜を直接刺激し、炎症を助長する可能性があります。

また、アルコールの代謝過程で生成されるアセトアルデヒドには明確な発がん性があるため、残った胃や周囲の臓器の再発リスクを高めることが懸念されます。

手術直後の飲酒は厳禁ですが、経過が落ち着いた後も、必ず主治医の許可を得るようにしてください。

もし許可が出た場合でも、空腹時を避け、少量をゆっくりと、食事と一緒に楽しむのが鉄則です。

アルコールの吸収が早まると、低血糖や脱水症状、肝臓への負担を増大させるためです。

カフェインによる影響

コーヒーや紅茶、緑茶に含まれるカフェインには、胃酸の分泌を促進する作用があります。

胃を切除した後は、胃酸の分泌量そのものが変化していますが、粘膜が敏感になっている時期にカフェインを過剰に摂取すると、胃痛や胸焼け、不快感の原因になることがあります。

カフェインを摂取する際は、空腹時を避け、ミルクを入れて胃への刺激を和らげるなどの工夫をしましょう。

また、カフェインには利尿作用があるため、術後の水分不足にも注意が必要です。

水分補給の際は、基本的にはノンカフェインの麦茶や白湯などにすることをおすすめします。

調理の負担を減らし、かつ栄養をしっかり摂るための、比較的簡単に作りやすいレシピを紹介します。

根菜のポタージュ

根菜のポタージュ

分量(1〜2人分)

  • にんじん…50g
  • じゃがいも…50g
  • 玉ねぎ…30g
  • 水…200ml
  • 牛乳または豆乳…100ml
  • 塩…ごく少量

作り方
① 薄切りにしたにんじん・じゃがいも・玉ねぎを水で柔らかくなるまで煮る。
② 火を止め、ハンドブレンダーやマッシャーでつぶしてなめらかにする。
③ 牛乳(または豆乳)を加えて温め、塩で薄く味を整える。

ツナとじゃがいもの煮物

ツナとじゃがいもの水煮

分量(1人分)

  • ツナ水煮:1/2缶(40g)
  • じゃがいも:1個(100g)
  • 水:100ml
  • 醤油:小さじ1/4~1/2(お好みの量で)

作り方
①食べやすい大きさにしたじゃがいも・水を耐熱容器に入れる。
②ラップをして600Wで4〜5分、柔らかくなるまで加熱。
③ツナと醤油を加えて軽く混ぜ、追加で1分加熱。

ヨーグルトバナナ

材料(1人分)

  • ギリシャヨーグルト:100g
  • バナナ:1/2本
  • はちみつ:小さじ1(お好みで)

作り方
①バナナを薄くスライスする。
②ヨーグルトと合わせる。
③甘味がほしい場合、はちみつを少量かける。

食事を摂る三世代家族

食事日記の活用

術後の食事管理において、食事日記をつけることは非常に有益です。

単に何を食べたかだけでなく、食べた後の体調の変化(下痢や腹痛の有無)、体重の推移、食事にかかった時間を記録します。

胃がんの術後は、人によって合う食材、合わない食材が大きく異なります。

日記をつけることで、どのような食べ方なら不快感が起きないかという、自分なりの「安全な食事メニュー」のリストが見えてきます。

この記録は、診察時に主治医や看護師に状況を正確に伝えるための貴重な情報源となります。

医師や栄養士との連携を

食事に関する悩みは、病院に相談することをためらわないでください。

体重の減少が止まらない、下痢が続いて外出が不安であるといった問題は、診療の中で解決すべき重要な課題です。

多くの病院には管理栄養士が在籍しており、個々の切除範囲や生活スタイルに応じた具体的な栄養指導をしてくれます。

また、現在の治療方針や食事制限に不安がある場合には、セカンドオピニオンを利用して他の医療機関の専門的な意見を聞くことも、自分らしい暮らしを守るための一つの選択肢です。

家族ができる食事のサポート

家族は「もっと食べて」と急かすのではなく、患者様が本人のペースで「ゆっくり、少しずつ」食べられる環境を整えてあげてください。

見た目を鮮やかにする、小皿に分けて少量ずつ盛り付けるなどの工夫は、低下しがちな食欲を刺激する助けになります。

また、家庭内での食事の不安を共有し、一緒に解決策を探していく姿勢が、患者様の精神的な支えとなります。

胃がんの治療における食事は、単なる栄養補給以上の意味を持っています。それは、病と向き合い、新しい自分の体と対話しながら、一歩ずつ日常を取り戻していくプロセスそのものです。

手術後、思うように食べられない時期や体重が減少していく時期には、何を食べればよいのか、この先元に戻れるのかと、出口の見えない不安に襲われることもあるでしょう。

しかし、体は必ず新しい状態に順応していきます。数ヶ月、半年、1年と時間をかけて工夫を重ねるなかで、少しずつ食べられる種類も量も増えていきます。

困った時は、いつでも主治医や病院のスタッフに相談しましょう。あなたが再び、食事の時間を心から楽しめるようになることを願っています。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。