抗がん剤でドライアイ・充血が増える?症状と対策とは
抗がん剤治療が始まると、吐き気や倦怠感、脱毛など、さまざまな副作用が現れることがあります。
多くの患者様やご家族は、こうした身体の変化に注意を向けられますが、その一方で「目」に生じる不調は見過ごされやすい傾向があります。
「目が乾くように感じる」「文字がかすんで見える」などのわずかな違和感も、抗がん剤の影響によって生じる可能性があります。
こうした症状を放置すると、読書やテレビ視聴、パソコン作業といった日常の活動に支障が出ることがあり、生活の質を低下させる要因となり得ます。
治療中の不安を一人で抱え込まず、目に起こり得る変化やその背景を理解することは、より安心して治療を続けるための助けになります。
本コラムでは、抗がん剤が目に及ぼす影響と、日常生活の中で取り入れやすいケアの方法について、わかりやすくご紹介します。
抗がん剤が目に影響するメカニズム

私たちの体は、日々新しい細胞に生まれ変わりながら正常な状態を保っています。
特に、絶えず外気に触れている眼の表面は、角膜や結膜といった細胞が活発に入れ替わることで、その正常な働きを維持しています。
抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑制する目的で使用されますが、残念ながら、このような正常で活発に増殖する細胞にも影響を与えてしまうことがあります。
これにより、涙を作る涙腺や、涙の通り道である涙道などの働きが低下し、目が乾くといった眼の異常が生じることが多くなります。
また、治療に使用される薬によっては、涙道が狭くなったり、詰まったりする(涙道狭窄・閉塞)ことも報告されています。
その結果、涙がうまく流れずに、涙が止まらず流れ続けるような症状が起こることがあります。
目のSOSチェックリスト

抗がん剤治療中に起こりうる眼の症状には、様々な種類があります。
ご自身の状態と照らし合わせながら、以下の項目を確認してみてください。
・目の乾燥(ドライアイ)
目がゴロゴロする、異物が入っているような不快感がある、目が痛い、充血している。
・涙の異常
涙が止まらず流れ続ける(涙道閉塞や狭窄)、逆に涙が少ない(乾燥)。
・視力や見え方の変化
物がかすんで見える、視力低下を感じる、文字が二重に見える(複視)、光がまぶしく感じる。
目の前に黒い点や糸くずのようなものが飛んでいるように見える(飛蚊症)。
視野の中心や周りが欠けて見える(視野障害)。
物が歪んで見える。
→ これらの症状は、網膜や黄斑といった眼の奥の部位に影響が出ている可能性も示しています。
・その他の症状
まぶたが腫れる(眼瞼浮腫)、まつ毛が不揃いに生えたり、長くなったりする(睫毛長生、睫毛乱生)。
眼の痛みや炎症を伴う(角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎など)。
これらの症状は、治療の種類や期間、個人差によって大きく異なります。
少しでも異常を感じる場合は、放置せずに主治医や眼科医に相談することが非常に大切です。
特に、急激な視力低下や強い目の痛み、視野が欠けるといった症状が現れた際は、すぐに医療機関を受診してください。
目の不調を和らげるセルフケア

眼の副作用は、対処法を知っていれば症状を和らげることが可能です。
ここでは、普段の生活で実践できる方法をご紹介します。
適切な目薬の使用を
目の乾燥が原因でゴロゴロする時は、目薬が役立ちます。
・防腐剤が含まれていないタイプの点眼薬を選ぶ
防腐剤は、眼の表面に炎症を生じさせる可能性があります。
抗がん剤治療中は目がデリケートな状態なので、防腐剤の入っていないタイプを選ぶのがよいでしょう。
・涙液の代わりとなる点眼薬を使用する
ドライアイの症状を和らげるには、主治医や眼科医に相談して処方してもらう人工涙液などが効果的です。
点眼薬の種類によっては、視力低下を引き起こすものもあるため、必ず医師や薬剤師に相談してから使用してください。
日常生活でできる工夫
少しの心がけで、眼の負担を減らすことができます。
・画面を見る時間を減らす
パソコンやスマートフォン、テレビの画面を長時間見続けると、まばたきの回数が減り、目が乾燥しやすくなります。
適度に休憩をとり、意識してまばたきを増やすようにしましょう。
20-20-20ルールという方法もあります。20分ごとに20フィート(約6メートル)以上離れた場所を20秒間見るというもので、眼の筋肉を休ませる効果が期待できます。
・部屋の湿度を保つ
空気が乾燥していると、眼も乾燥しやすくなります。
加湿器を利用したり、濡れタオルを干したりすることも有効です。
・目を温める
温かい蒸しタオルを目の上に置くと、血行が改善され、目の疲れや乾燥を和らげる効果が期待できます。
・紫外線対策
強い日差しは目に負担をかけます。
外出時は帽子やサングラスを着用し、紫外線を予防しましょう。
積極的に主治医へ相談を

目の症状は、我慢する必要はありません。早めに相談することで、適切な対処が可能になります。
・主治医や看護師に相談する
外来の診療時に、「目がかすむ」「涙が止まらない」など、具体的な症状を伝えてください。
主治医は眼科の受診を検討したり、お薬の変更を行ったりすることもあります。
・眼科の受診を検討する
主治医の紹介で眼科を受診することも重要です。
眼科医は眼の状態を詳細に検査し、原因を特定してくれます。
角膜のびらんや炎症、涙道の狭窄や閉塞など、専門的な治療が必要な場合もあります。
おわりに
がん治療は、心身の両面にわたり大きな負担をもたらします。
目の不調はつい後回しにされがちですが、日々の生活の快適さに直結する大切なサインでもあります。
小さな違和感であっても、無理に我慢する必要はありません。
抗がん剤による目の症状は、治療の進行とともに落ち着いていくことも多くあります。
気になる変化があれば、主治医や眼科医など、専門家に相談することをためらわないでください。
治療を支える医療者は、患者様の不安に寄り添いながら、より良い方法を一緒に考えてくれる存在です。
このコラムが、治療を続けるうえでの安心につながり、少しでも心の負担を軽くする一助となれば幸いです。
