抗がん剤の副作用「しゃっくり」原因とすぐできる対策
がんの治療を続けていくなかで、思わぬタイミングで現れる「しゃっくり」に悩まされる患者様は少なくありません。
「たかがしゃっくり」と思われがちですが、長時間続くことや、繰り返し起こることで、体力や精神面にも影響が出ることがあります。
とくに、食事や睡眠の妨げになると、治療に取り組むうえでの負担にもつながります。
本コラムでは、抗がん剤の副作用として現れることもある「しゃっくり」について、原因や対策、医療機関への相談の目安などを、わかりやすくご紹介します。
なぜしゃっくりが起こるのか

しゃっくりは、横隔膜と呼ばれる筋肉が突然けいれんし、それに伴って声帯が閉じることで「ヒック」という音が出る現象です。
通常は数分から数十分で自然におさまりますが、化学療法(抗がん剤治療)中に現れるしゃっくりには、治療に使われる薬剤や身体の変化が関係していることがあります。
治療で使われる薬剤の影響
一部の抗がん剤では、副作用としてしゃっくりが生じることが知られています。
特にシスプラチンなどの薬剤で報告されることがあります。
また、抗がん剤と併用されるデキサメタゾン(ステロイド)も、しゃっくりの原因となることがあります。
これらの薬剤は、横隔膜の動きを調整する迷走神経や横隔神経に影響することがあり、その結果としてしゃっくりが起こると考えられています。
さらに、吐き気止めなどの併用薬が原因となるケースもあります。
治療中は複数の薬が組み合わさるため、どの薬が影響しているか特定が難しいことも少なくありません。
また、治療による疲労や食欲低下、睡眠リズムの乱れなど、身体のストレスが神経の働きに影響し、しゃっくりを誘発しやすくなることもあります。
普段はすぐに治まるしゃっくりでも、治療中は長引いたり繰り返し起こったりすることがあり、生活の質に影響する場合があります。
しゃっくりがもたらす困りごと

一時的なしゃっくりであれば問題はありませんが、長時間続くしゃっくりや頻繁に起こるしゃっくりは、患者様の生活に様々な影響を与えます。
よくあるお悩み
・食事中にしゃっくりが止まらず、食べづらい
・夜間にしゃっくりで目が覚め、眠れない
・会話や外出が億劫になり、ストレスが増す
・腹部の痛みや疲労が生じる
これらの症状は、治療の妨げになるだけでなく、患者様の生活の質(QOL)にも関わってきます。
周囲にはわかりづらい不調だからこそ、しっかりと向き合いたいものです。
自分でできる対処法

比較的軽度のしゃっくりであれば、自宅で試せる方法もあります。
次のような対策は、無理のない範囲で取り入れてみるのも良いでしょう。
呼吸を整える方法
・息を止めて10秒程度カウントする
・紙袋にゆっくり息を吐き出し、再度吸う(酸欠に注意)
・静かに深呼吸を数回繰り返す
これらの方法は、呼吸をコントロールすることで横隔膜の緊張をゆるめる効果があるといわれています。
身体への刺激でリセット
・冷水を少しずつ飲む
冷たい水をゆっくり飲む方法は、昔からよく知られているしゃっくり対策のひとつです。
冷たい刺激がのどや食道に伝わることで、迷走神経が刺激され、しゃっくりの反射が一時的にリセットされると考えられています。
特に「少しずつ飲む」ことで、のどの奥に連続した刺激が加わり、横隔膜のけいれんが落ち着くことがあります。
ただし、効果には個人差があり、必ず止まるわけではありません。
・舌を思いきり突き出して数秒キープする
舌を強く突き出したり、軽く引っ張ったりする方法は、舌咽神経や迷走神経を刺激することでしゃっくりを抑えるとされる民間的なテクニックです。
医療現場でも、簡単にできる対処法として紹介されることがあります。
舌を動かすことで喉の奥の筋肉が緊張し、横隔膜のけいれんを抑える方向に働くと考えられています。
安全にできる方法ですが、無理に力を入れすぎないことが大切です。
・スプーン1杯の砂糖をなめる
砂糖をそのまま口に含む方法は、海外でもよく知られた家庭療法です。
砂糖の粒が舌やのどの奥を刺激し、しゃっくりの反射経路を変えることで症状が落ち着くことがあるとされています。
甘味による刺激が神経の働きに影響し、横隔膜のけいれんが収まる場合もあります。
ただし、医学的に確実な効果が証明されているわけではなく、あくまで「試してみる価値がある」程度の対策です。
これらの方法は一般的に知られている対処法であり、必ず効果があるわけではありません。
がん治療中のしゃっくりは薬の影響が関わることもあるため、長く続く場合や生活に支障が出る場合は、医療者に相談することが大切です。
医師に相談すべき目安は?

しゃっくりが続く、または日常生活に支障をきたすようであれば、遠慮なく医師や看護師に相談しましょう。
こんなときは医療機関へ
・しゃっくりが2日以上続く
・1日に何度も起こる
・食事・睡眠がとれず、症状がつらい
・不安やストレスが強くなっている
しゃっくりが副作用である場合、薬の変更や投与量の調整が検討されることもあります。
治療に使う薬剤の一覧を確認し、気になることがあれば遠慮なく質問してみてください。
医療的なアプローチとは?
しゃっくりが長く続く場合には、医療機関で薬が処方されることがあります。
ただし、どの薬が適しているかは体調や治療内容によって異なります。
実際に使用される代表的な薬剤の例としては、以下のようなものがあります。
・クロルプロマジン(精神神経に作用)
・メトクロプラミド(胃腸の動きを整える)
・バクロフェン(筋肉の緊張を和らげる)
どの薬剤を使うかは、患者様の症状や全身状態、併用薬との兼ね合いをふまえて判断されます。
副作用や注意点もあるため、必ず医師の指示に従ってください。
おわりに
抗がん剤治療中のしゃっくりは、見た目には軽く見えても、患者様本人にとっては大きな負担になる副作用です。
小さな不調であっても、「どうしたら少しでも楽になるか」を一緒に考えてくれる医療スタッフや家族の存在は、治療を支える大きな力になります。
このコラムを通して、しゃっくりという思わぬ症状にも正しい情報と対策で向き合えるきっかけになれば幸いです。
