2025.10.27

膵臓がんの進行度で変わる!余命と生存率の目安

医師と患者

膵臓がんという診断を受けたとき、患者さんやご家族は、「なぜこんなに早く病気が進行するのだろう」と、大きな不安に襲われることでしょう。この記事では、膵臓がんの進行スピードに関する疑問に答え、病気の「時間」を正しく理解することが、今後の治療や生活において、なぜ重要なのかを解説します。

膵臓がんとは何か?

膵臓は、胃の裏側、体の深い部分に位置する臓器です。膵液という消化酵素や、血糖値を調整するホルモン(インスリンなど)を分泌する、生命維持に不可欠な役割を担っています。膵臓がんは、この膵臓の細胞が異常に増殖してできる悪性の腫瘍です。

膵臓がんの主な症状

膵臓がんは、初期の段階ではほとんど症状が現れません。そのため、早期発見が非常に難しいがんです。進行すると、がんが周囲の臓器や神経を圧迫し、以下のようなさまざまな症状が現れることがあります。

  • 腹痛や背中の痛み
    がんの位置や広がり方によって、痛みの種類や程度も異なります。膵臓がんに伴う痛みは、お腹の奥が痛む、みぞおちが痛む、背中にまで響くなど、さまざまな感じ方があります。
  • 黄疸(おうだん)
    がんが胆汁の通り道である胆管を塞ぐことで生じます。皮膚や目の白い部分が黄色くなります。自覚症状が少ない中で、目立つ症状であることから、黄疸がきっかけで病院を受診される方も少なくありません。
  • 体重減少
    特に理由がないのに、半年間で体重が10%程度減る場合は注意が必要です。がん細胞が増殖するために、体の栄養が消費されたり、消化機能が低下したりすることが原因と考えられています。
  • 吐き気や食欲不振
    消化機能の低下や、がんによる影響で起こります。吐き気がひどい場合には、薬で症状を抑えることも可能です。
  • 糖尿病の悪化や発症
    膵臓の機能が低下することで、血糖値のコントロールが難しくなります。突然糖尿病を発症したり、すでに糖尿病を持っている方の血糖値が急に悪化したりする場合は、膵臓がんの可能性も考慮します。

進行スピードが速い理由

膵臓がんが「進行が速い」と言われる理由は、以下のような特徴にあります。

  • 早期発見が非常に困難
    前述の通り、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。多くの場合、症状が現れたときにはすでにがんが進行し、他の臓器に転移しているケースが多く見られます。
  • 細胞の増殖が速い傾向
    膵臓がんの細胞は、非常に速いスピードで増殖することが多いです。このため、診断から短期間で病気が進行してしまう可能性があります。実際に、数ヶ月の間に状態が大きく変わることも少なくありません。
  • 転移しやすい性質
    膵臓の周囲には、肝臓や肺、リンパ節など、血管やリンパ管が豊富にあります。がん細胞はこれらの血管やリンパ管に浸潤し、全身に転移しやすい性質を持っています。腹膜にがんが種をまくように広がる腹膜播種も、膵がんの特徴の一つです。

膵臓がんの転移のメカニズム

がん細胞が最初に発生した臓器から離れ、他の臓器に広がることを転移と言います。膵臓がんでは、がん細胞が血管やリンパ管に入り込み、血流やリンパの流れに乗って全身に運ばれ、肝臓や肺など遠隔の臓器で新しい腫瘍を作って増殖します。多くの場合、症状が出たときにはすでにこれらの転移が認められることが少なくありません。そのため、診断を受けた時点で遠隔転移があるステージ4と判断されるケースが多いです。

説明する医師

TNM分類による進行度

がんの進行度は、TNM分類という国際的な基準で示されます。

  • T(腫瘍の広がり):がんの大きさや周囲への浸潤の程度
  • N(リンパ節への転移):リンパ節への転移の有無と数
  • M(遠隔転移):遠隔の臓器への転移の有無

これらの分類を組み合わせて、がんの進行度がステージ1からステージ4に分けられます。医師は、検査の結果に基づき、がんの状態をこの分類に当てはめて治療法を検討します。

膵がんのステージごとの生存率

膵臓がんは、診断されたステージによって生存率が大きく異なります。5年生存率は、治療の効果を示す重要な指標の一つです。

  • ステージ1:がんが膵臓に限られている段階で、手術が可能な場合、比較的高い生存率が期待できます。早期に発見し、適切な手術を行うことが大切です。
  • ステージ2:がんが膵臓を越えて周囲に広がっている段階です。
  • ステージ3:がんが周囲の血管や神経に浸潤している場合です。
  • ステージ4:遠隔臓器に転移がある状態で、生存率は低い傾向にあります。

これらの統計は過去のデータに基づいており、医療の進歩は反映されていません。あくまで参考程度と考え、ご自身の予後については医師に相談することが大切です。

生活習慣と膵臓がんの関連性

膵臓がんの原因は完全にはわかっていませんが、生活習慣が深く関連していることが指摘されています。

  • 喫煙:膵臓がんの最も大きなリスク因子の一つです。たばこを吸う人は、吸わない人に比べて膵がんになるリスクが高くなります。
  • 飲酒:過度な飲酒は、慢性膵炎を引き起こすことがあり、膵がんのリスクを高めます。
  • 肥満:肥満も膵臓がんのリスクを高める要因と考えられています。
  • 糖尿病:糖尿病も膵がんのリスクを高めることが知られています。特に、突然発症した糖尿病や、急に血糖値のコントロールが悪化した場合、膵臓に何らかの異常が生じている可能性があるため注意が必要です。

遺伝的要因と家族歴

膵臓がんは、遺伝的な要因も関わっていることが知られています。家族に膵臓がんになった方がいる場合、通常よりも発症リスクが高くなります。特に、膵臓がんの家族歴が多い家系では、遺伝子変異が原因である可能性があり、専門の医療機関で相談することが推奨されます。

CT

早期発見のための検査方法

膵臓がんを早期に発見するのは非常に困難ですが、以下のような検査が行われます。

  • 腹部超音波検査:体への負担が少ない検査で、膵臓の小さな病変を見つけることができます。
  • CT検査・MRI検査:膵臓の詳細な画像を得て、がんの有無や広がりを調べます。
  • PET検査:全身のがん細胞の活動を確認することができます。転移の有無を調べる時にも用いられます。
  • 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP):内視鏡を口から十二指腸まで入れ、膵管を直接観察し、がんの位置や形を調べることができます。

自宅でできるリスクチェック

以下のような症状や状態が続く場合は、膵臓がんの早期サインである可能性があります。これらの症状に心当たりがある場合は、ためらわずに医療機関を受診しましょう。

  • 理由がない体重減少
  • 腹痛や背中の痛み
  • 黄疸(おうだん)や体のかゆみ
  • 糖尿病の急激な悪化

膵臓がんの進行は速いと言われる理由は、発見の難しさとがん細胞の性質にあります。しかし、それはすべてのケースに当てはまるわけではありません。重要なのは、今知られている知識をもとに、適切な医療を受け、ご自身の生活を大切にすることです。不安な点は、主治医や専門の医療機関に相談し、最善の道を探していきましょう。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修者 

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
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