胆嚢がんのステージ別症状と治療法
「胆嚢がん」という言葉を聞いて、ご自身の病気や、大切なご家族の病気ではないかと不安に思われている方がいらっしゃるかもしれません。がんの診断は、大きな動揺やストレスを伴うものです。特に、胆嚢がんは初期の自覚症状が少ないため、病気の進行度や、ご自身の体の状態がどうなっているのか、不安に思われる方も少なくないでしょう。
このコラムでは、胆嚢がんについて、その特徴や治療法を網羅的に解説し、特に「ステージ(病期)」に合わせた症状の変化や治療の考え方について、わかりやすくお伝えします。
この情報が、胆嚢がんと向き合う患者さんとそのご家族が、少しでも安心して治療に臨むための一助となれば幸いです。
胆嚢がんとは?その概要と特徴

胆嚢の役割と、がんはどこにできるのか
私たちの体には、食べ物の消化を助ける機能を持つ様々な臓器があります。その一つが胆嚢です。胆嚢は、肝臓の下にぶら下がるように存在する小さな袋状の臓器で、肝臓でつくられる胆汁という液体を一時的にためておく役割を担っています。食事をすると、胆嚢に貯めておいた胆汁が十二指腸に流れ出て、脂肪の消化を助けるのです。
胆嚢がんは、この胆嚢の内側の粘膜から発生するがんです。胆嚢の壁は、内側から粘膜、筋層、漿膜(しょうまく)という組織の層で構成されており、がん細胞はまず粘膜に発生し、次第に壁の奥深くへと浸潤していきます。
胆嚢がんの発生原因とリスク要因
胆嚢がんの原因は、まだ完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの要因が関連していると考えられています。
最も大きなリスクとされるのが胆石症です。胆嚢の中にできる石、つまり胆石が長期間存在し、胆嚢の粘膜を慢性的に刺激することで、がんが発生する可能性があるとされています。特に、1cmを超える大きな胆石がある場合や、小さな胆石が多数ある場合、リスクが高くなるという研究報告があります。
その他のリスク要因として、膵・胆管合流異常症という生まれつきの病気があります。これは、胆管と膵臓から続く膵管のつなぎ目に異常がある状態で、膵液が胆道に逆流することで炎症が起こり、がんの原因となることがあります。また、胆嚢ポリープの一部もがん化する可能性があるため、定期的な観察が重要となります。
胆嚢がんは、60代以上の高齢の方に多く見られ、女性が男性よりも罹患する割合が高い傾向があります。しかし、これはあくまで統計的な傾向であり、これらの要因があるからといって必ずしも胆嚢がんになるわけではありません。
胆嚢がんの主な症状と診断方法

早期発見が難しい胆嚢がんの症状
胆嚢がんは、初期の段階では症状がないことが多いため、早期の発見が難しいがんの一つとされています。症状が出たときには、がんが進行していることが多く、そのため、治療が困難になることも少なくありません。
症状が現れる場合、主に右上の腹部に鈍い痛みや不快感を感じることがあります。これは、がんが大きくなって周囲の臓器を圧迫したり、炎症を起こすためです。また、食事ができなくなったり、体重が減少したりすることもあります。
進行がんによくみられる症状「黄疸」
胆嚢がんが進行すると、黄疸(おうだん)という特徴的な症状が出現します。黄疸は、肝臓でつくられる胆汁の流れががんによってせき止められることで起こります。胆汁の成分であるビリルビンが血液中に増加し、皮膚や目の白い部分が黄色くなり、尿が褐色になる、便が白っぽくなることもあります。黄疸は胆嚢がんのほか、胆管がんや膵臓がんなど、胆道や膵臓に関連する病気でも見られる症状です。発熱を伴うこともあります。
これらの症状は、胆嚢がんに特有なものではありません。多くの場合、他の病気と同じような症状であることが多く、自己診断は難しいです。少しでも体の変化に気づいたら、早めに医療機関を受診し、医師に相談することが重要です。
胆嚢がんの診断と検査
胆嚢がんの診断には、様々な検査が行われます。
- 超音波検査(エコー): 体の外から超音波をあてて、胆嚢や肝臓、膵臓などの状態を観察します。
- CT/MRI検査: 画像で体の内部を詳細に確認し、がんの広がりやリンパ節への転移の有無を調べます。特にMRIは胆管の状態を確認することが可能です。
- 血液検査: 肝機能の状態や、腫瘍マーカーというがん細胞から放出される物質の量を調べます。
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP): 口から内視鏡を入れ、胆管や膵管に造影剤を注入し、画像を撮る方法です。これにより、がんによる胆管の詰まりの状態を詳細に把握できます。また、この時に組織の一部を採取し、病理診断を行うこともあります。
これらの検査を合わせて総合的に診断されます。
胆嚢がんのステージ分類と治療法

病期(ステージ)とは?
がんのステージ(病期)とは、がんの進行程度を示す分類です。胆嚢がんでは、がんが胆嚢の壁にどの程度浸潤しているか、リンパ節や遠隔臓器に転移しているかによって、ステージ0からステージIVまで分類されます。ステージを確認することは、治療法を選択するうえで非常に重要です。
ステージ別の症状と治療の考え方
【ステージ0・I・II:早期がん】
- 症状: この段階では、ほとんど症状がありません。検診や胆石症などの他の病気の検査を受けた時に偶然発見されることが多いです。胆嚢の壁にがんがとどまっている状態です。
- 治療: 早期に発見された場合は、手術による切除が主な治療法となります。胆嚢摘出術といい、胆嚢をすべて取り除く外科手術が行われます。がんが広がりを見せている場合は、胆嚢だけでなく、周囲の肝臓の一部やリンパ節も一緒に切除することがあります。手術が成功すれば、がんを完全に除くことが可能です。
【ステージIII・IV:進行がん】
- 症状: この段階になると、がんが大きくなって胆嚢の壁を越え、周囲の肝臓や胆管、十二指腸、膵臓などに浸潤していることが多いです。リンパ節や遠くの臓器にも転移している可能性があります。そのため、腹部の痛みや黄疸、食欲不振、体重減少などの症状がより顕著に出るようになります。
- 治療: 進行している場合、手術だけでがんをすべて切除するのが難しいことが多いです。主な治療は、化学療法(抗がん剤治療)が中心となります。全身に薬剤を投与し、がん細胞を攻撃する目的で行われます。放射線療法を併用することもあります。化学療法は、がんの進行を遅らせる、症状を和らげるといった目的で行われます。
最近の医療では、がんの性質を詳細に調べることで、より効果的な治療法を選択できるようになりました。がん細胞の遺伝子の異常を標的にする分子標的薬や、免疫の力を利用してがんを攻撃する免疫チェックポイント阻害剤なども開発され、一部の患者に適用されるようになっています。
胆嚢がんの予後と5年生存率

胆嚢がんの5年生存率の現状
がんの予後(よご)は、治療後の病気の見通しを指し、5年生存率は診断から5年後に生存している患者さんの割合を示す指標です。
胆嚢がんの5年生存率は、診断されたステージによって大きく異なります。国立がん研究センターの情報によると、日本の胆嚢がん全体の5年相対生存率は約25%程度ですが、これはすべてのステージを合わせた数字です。早期に発見され、完全な切除が行われた場合の5年生存率は非常に高く、ステージIでは80%以上と報告されています。
一方、進行した状態で発見された場合、5年生存率は低くなります。しかし、この数字はあくまで統計的な値であり、最新の治療法の進歩や、一人ひとりの患者さんの病状、体の状態によって予後は変わってきます。大切なことは、数字に一喜一憂することではなく、ご自身に合った最善の治療を見つけることです。
罹患・死亡率の傾向
胆嚢がんは、他のがん(大腸がん、胃がん、肺がんなど)に比べると罹患する方は多くありません。しかし、高齢になるほど罹患率が高くなり、60歳以上の方に多く見られます。また、女性が男性よりも罹患する割合が高い傾向があります。
胆嚢がんに関するよくある質問と相談窓口
患者さんやご家族から寄せられる疑問
Q1. 胆嚢がんの予防法はありますか?
A1. 胆嚢がんを確実に予防する方法は確立されていません。
しかし、リスク要因とされる胆石症を適切に治療したり、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。定期的な健康診断を受け、体の変化に早めに気づくことも重要な予防の一つと言えるでしょう。
Q2. 治療後の食事で気をつけることは?
A2. 手術後は、消化に良い食事から始め、徐々に通常の食事に戻していきます。
胆嚢を摘出しても、脂肪の消化に大きな影響はないことがほとんどですが、一度に大量の脂肪を摂取すると下痢を起こすことがあります。医師や栄養士と相談し、自分に合った食事を見つけることが大切です。
Q3. 再発はありますか?
A3. 残念ながら、がんは再発する可能性があります。
再発を防ぐ目的で、手術後に補助化学療法が行われることもあります。術後も定期的に病院に通い、検査を受けて再発の有無を確認することが重要です。
胆嚢がんの相談窓口とサポートリソース
がんの治療は、患者さんご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな不安を伴うものです。一人で抱え込まず、専門の相談窓口を利用することをお勧めします。
- がん相談支援センター: 全国の指定病院に設置されており、がんに関する様々な相談に専門のスタッフが無料で応じてくれます。治療のことだけでなく、経済的な不安や社会生活に関することなど、幅広い相談が可能です。
- セカンドオピニオン: 主治医以外の医師の意見を聞くことで、治療法についてより深く理解し、納得して治療に臨むことができます。
このコラムが、胆嚢がんに関する正しい知識を得るきっかけとなり、ご自身の治療や療養に役立てていただければ幸いです。
