小細胞肺がんは進行が早い?症状や治療方針を徹底解説!
「小細胞肺がん」と診断を受け、驚きや不安を感じる方は少なくありません。
小細胞肺がんは、進行が速く悪性度が高いタイプのがんと言われていますが、現在の医療は日々進歩しており、新しい治療法も登場しています。
このコラムは、小細胞肺がんの特徴や治療の基本の説明を軸に、小細胞肺がんと診断された方やそのご家族が抱える不安を少しでも和らげ、病気について正しく理解するための情報を提供することを目的としています。
このコラムを通して、治療の基本から最新の選択肢までを知っていただき、ご自身やご家族の治療方針を考える上での一助となれば幸いです。
小細胞肺がんの基本知識

小細胞肺がんとは何か
肺がんは、顕微鏡でがん細胞の形や大きさを調べる「組織型」によって、大きく二つに分けられます。
一つが「非小細胞肺がん」、そしてもう一つが、このコラムのテーマである「小細胞肺がん」です。日本の肺がん患者全体の約10〜15%が小細胞肺がんと考えられており、非小細胞肺がんに比べて少ない種類です。
小細胞肺がんという名前は、がん細胞が非常に小さいことに由来しています。しかし、その小ささに反して、細胞の増殖が速く、悪性度が高いという特徴があります。
このため、原発の腫瘍が小さいうちからリンパ節やその他の臓器へ転移しやすい性質を持っており、診断された時点ですでにがんが全身に広がっているケースが多く見られます。
小細胞肺がんの発生メカニズム
小細胞肺がんの発症には、喫煙が大きく関与していることが明らかになっています。
たばこの煙には数百種類もの有害物質が含まれており、その中には発がん性のある化学物質も多数存在します。これらが肺の細胞に繰り返しダメージを与えることで、遺伝子の異常が蓄積され、がん化につながると考えられています。
特に小細胞肺がんは、喫煙との関連が非常に強く、喫煙者に多く見られるタイプです。過去に喫煙していた方や現在も喫煙を続けている方は、非喫煙者に比べて発症リスクが著しく高くなることが報告されています。
予防のためには禁煙が重要であり、受動喫煙にも注意が必要です。
小細胞肺がんの種類

小細胞肺がんの治療方針を決定する上で最も重要なのが、がんがどのくらい広がっているかという「病期」の分類です。
小細胞肺がんの病期は、大きく二つの型に分けられ、この方針が治療法選択の基礎となります。
限局型小細胞肺がんの特徴
限局型は、がんが片側の肺と、その周囲にあるリンパ節にとどまっている状態です。具体的には、放射線治療の照射範囲にがん全体が収まる程度の広がり、と表現されることもあります。
このタイプは、手術で完全にがんを取り除くことが難しいとされており、多くの場合、全身に作用する薬物療法(抗がん剤治療)と、局所のがんを抑制する放射線療法を併用する治療法が標準とされています。
進展型小細胞肺がんの特徴
進展型は、がんが反対側の肺や、脳、肝臓、骨など、遠く離れた臓器にまで転移している状態です。
がんが全身に広がっているため、局所的な治療法だけではがんを完全に治療することは難しいと考えられます。そのため、全身のがん細胞を攻撃する薬物療法が治療の中心となります。
近年では、新しい薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。
小細胞肺がんの症状

小細胞肺がんは、初期症状がほとんどないことが多く、健康診断などで偶然発見されるケースも少なくありません。
しかし、進行するにつれて、以下のようなさまざまな症状が現れることがあります。
初期症状と進行症状
・長引く咳
風邪薬を飲んでもなかなか治らない咳が続く場合があります。
・痰に血が混じる
気管支から出血することで、血の混じった痰が出る場合があります。
・息切れ、呼吸困難
がんが大きくなり、気管支を圧迫したり、肺の機能を低下させたりすることで生じます。
・胸の痛み
がんが胸壁にまで及ぶと、痛みを伴うことがあります。
腫瘍随伴症候群
小細胞肺がんには、がん細胞がホルモンに似た物質を作り出すことで、がんそのものとは一見関係のないような症状が現れることがあります。
これを「腫瘍随伴症候群」と呼びます。
たとえば、体内の塩分バランスが崩れて低ナトリウム血症になると、強い倦怠感や吐き気、意識がぼんやりするなどの症状が出ることがあります。また、筋力が低下したり、手足にしびれを感じたりするケースもあります。
こうした症状は、がんが進行してから現れるのではなくがんが見つかる前に現れることもあり、診断のきっかけになることも少なくありません。
症状の原因がわからず不安を感じている方にとって、腫瘍随伴症候群の存在を知ることは早期発見や適切な治療につながる大切な一歩となります。
診断方法

小細胞肺がんの診断は、いくつかの検査を組み合わせて行われます。
画像診断の役割
小細胞肺がんの診断においては、まず体の中にがんが疑われる部位があるかどうかを調べるために、さまざまな画像検査が行われます。
胸部X線は初期のスクリーニングとして用いられ、CT(コンピュータ断層撮影)では肺の詳細な構造を確認できます。
MRI(磁気共鳴画像)は脳や脊髄などの中枢神経系への転移の有無を調べる際に有効です。
そして、PET-CT(陽電子放射断層撮影とCTの融合画像)は、がん細胞が活発に活動している部位を全身レベルで一度に把握できるため、がんの広がりや進展型かどうかの判断に非常に役立ちます。
これらの検査結果をもとに、病期(ステージ)を正確に把握し、最適な治療方針を立てることが重要です。
組織診断とその重要性
しかし、これらの画像検査だけでは、がんの種類を特定することはできません。
小細胞肺がんの確定診断には、組織診断が欠かせません。この検査では、気管支内視鏡(気管支鏡)などでがんが疑われる場所から小さな組織や細胞を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
この検査によって、小細胞肺がん特有の細胞の形を確認し、最終的な診断が確定します。
小細胞肺がんの治療法

小細胞肺がんの治療方針は、診断された病期(限局型か進展型か)によって大きく異なります。両者とも、薬物療法(化学療法)が治療の中心となることが大きな特徴です。
限局型の治療
限局型の場合、治療の目的は「治癒」を目指すことです。がんが局所にとどまっているため、化学療法(抗がん剤治療)と放射線療法を同時に行う「同時併用化学放射線療法」が標準的な治療法とされています。
この治療方法は、化学療法が放射線の効果を高くし、また放射線が化学療法の効果を高くする「相乗効果」が期待できます。
また、小細胞肺がんは、治療でがんが消えたように見えても、脳に再発するリスクが高いという特徴があります。
そのため、同時併用化学放射線療法で治療効果が十分に得られた患者さんには、脳への転移を予防する目的で、脳全体に放射線を少量ずつ照射する「予防的全脳照射」が行われることがあります。
この治療は、脳転移による神経症状の発生を抑制し、生活の質(QOL)を保つ上で重要な役割を果たします。
進展型の治療
進展型の場合、治療の主な目的は、がんの進行を抑制し、症状を和らげ、できるだけ長く良い生活を送っていただくことです。治療の中心は、全身のがん細胞を攻撃する薬物療法です。
薬物療法では、プラチナ製剤とエトポシドの組み合わせが長らく標準的な治療法とされてきました。
しかし現在、進展型小細胞肺がんの治療は大きく進歩しています。これまでの化学療法に加えて、「免疫チェックポイント阻害薬」という新しい種類の薬が併用されるようになりました。
この薬は、がん細胞が免疫細胞から逃れるための「ブレーキ」を外すことで、患者さん自身の免疫の力でがんを攻撃させることを目的としています。抗がん剤と併用することでより高い治療効果が期待され、標準的な治療方針になりつつあります。
あとがき
このコラムでは、小細胞肺がんについて理解を深めるきっかけとなるように概要や治療についてお伝えしました。
がんの治療は、患者様ご本人だけでなく家族の方々にも大きな精神的・身体的負担をもたらすこともあります。そうした戸惑いや不安を抱えるなか、どう病気と向き合っていけばいいのか悩まれる方も多いでしょう。
しかし、日本の医療は日進月歩で、新しい治療法が次々と認められています。医師や看護師、薬剤師など、多くの医療従事者が、患者様一人ひとりに合った治療方針を一緒に考えていきます。
ご自身の病状や治療についてわからないことがあれば、遠慮なく担当医や看護師に質問し、納得のいく選択をしてください。
