肝臓がんの主な原因と初期症状を徹底解説。肝炎との関係は?
「肝臓がん」と聞いて、戸惑いや不安を感じる方は少なくありません。肝臓は“沈黙の臓器”とも呼ばれ、症状が現れにくいため、気づいたときには病気が進行していることもあります。
しかし、肝臓がんと一口に言っても、その種類や原因、治療法は多岐にわたります。正しい知識を持つことで、病気への理解が深まり、冷静に向き合う力にもつながります。
このコラムでは、肝臓がんの基本的な仕組みから、主な原因、診断方法、治療の選択肢、そして予防や早期発見のポイントまでを、できるだけわかりやすくまとめました。
ご自身やご家族が肝臓がんと向き合う際に、少しでも参考になり、前向きな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
肝臓がんとは?

「肝臓がん」と診断されたとき、多くの人が大きな不安を抱えられます。
しかし、肝臓がんと言っても、その種類や原因は様々です。正しい知識を持つことが、病気と向き合う上で大切です。
肝臓がんの定義と種類
肝臓にできるがんは、大きく二つに分けられます。
一つは、他の臓器から転移してきたがんで、「転移性肝がん」と呼ばれます。
もう一つは肝臓の細胞から直接発生するがんで、「原発性肝がん」と呼ばれます。
日本で発生する肝臓がんのほとんどはこの原発性肝がんであり、その約95%を「肝細胞がん」が占めています。
肝細胞がんは、肝臓の細胞に慢性的な障害が繰り返されることで発生します。
その他には胆管がんや肝芽腫などがありますが、一般的に「肝臓がん」と言われる場合は肝細胞がんを指すことが多いです。
肝臓がんの発生メカニズム
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、一部が障害を受けても正常な機能が代償するため、初期には自覚症状がほとんどないことが特徴です。
しかし、肝細胞が繰り返し破壊と再生を行う過程で遺伝子の異常が蓄積し、やがてがん細胞が発生すると考えられています。
このメカニズムは、後述する肝炎ウイルスやアルコール、脂肪肝といった危険因子によって引き起こされます。
肝臓がんの主な原因

肝臓がんの原因は様々ですが、肝炎ウイルス感染と生活習慣の二つが主な危険因子となっています。これらを知ることが肝臓がんの予防につながります。
肝炎ウイルス感染の影響
肝臓がんの最も多い原因は、肝炎ウイルス(B型・C型)による慢性肝炎です。
これらのウイルスに感染すると、肝臓の中で慢性的な炎症が続き、肝細胞が繰り返し壊されては再生することが行われます。
・C型肝炎
感染後、肝臓の炎症が長期間続き、肝硬変を経て肝細胞がんに進行する可能性が非常に高いと言われています。
現在では、有効な抗ウイルス薬の開発により、治療によってウイルスを体内から排除することが可能となっています。
・B型肝炎
感染してもウイルスが体内に残り、慢性肝炎を引き起こすことがあります。
長期間にわたる炎症は肝臓がんの原因となりますが、C型と同様に現在はウイルスの増殖を抑制する治療法があり、がんの発症リスクを低下させることが可能です。
脂肪肝とそのリスク
近年、ウイルス性肝炎以外の原因による肝臓がんが増加しています。その一つが脂肪肝です。
肥満や糖尿病と関連する非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)およびその進行形である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝臓に脂肪が蓄積し、炎症が生じる病気です。
この慢性炎症が肝硬変を経て肝臓がんへと進行するリスクを高めます。
アルコール摂取と肝臓がん
アルコールの過剰な摂取も肝臓がんの重要な危険因子です。
アルコールは肝臓で代謝され、その過程で肝細胞に障害を与えます。長期間にわたる多量飲酒は肝炎を引き起こし、肝硬変から肝臓がんへと進行する可能性を高めます。
特に飲酒とウイルス性肝炎が合併している場合、肝臓がん発症リスクはさらに高くなります。
肝臓がんの症状と診断方法

肝臓がんは初期にはほとんど自覚症状がないため、「沈黙の臓器」と呼ばれます。症状が現れる頃には病気が進行していることが多く、早期発見が重要です。
肝臓がんの初期症状
肝臓がんの初期症状はほとんどなく、気づかないことが多いです。
通常は、慢性肝炎や肝硬変といった元々ある肝臓疾患の症状が主となります。全身倦怠感や食欲不振などが挙げられますが、これらは多くの病気で生じる症状であり、肝臓がんに特有なものではありません。
肝炎や肝硬変の症状
肝炎や肝硬変が進行すると、黄疸(皮膚や目が黄色くなる症状)、むくみ(特に足に現れる浮腫)、腹水(お腹に水がたまる状態)、腹痛などが出現することがあります。
これらの症状が出た場合には、肝臓の機能低下が進んでいる可能性が高いです。
肝臓がんの検査方法
肝臓がんの診断には、いくつかの検査が用いられます。
・画像検査
体への負担がなく簡便な検査方法で、最初に行われることが多いです。腫瘍の有無や位置、大きさを確認します。
超音波(エコー)検査で異常が見つかった場合は、より詳細に調べるためにCT検査やMRI検査が行われます。
造影剤を使用することで、肝細胞がん特有の血流パターンを確認し、診断を確定します。
・血液検査
肝臓がんの診断には「腫瘍マーカー」と呼ばれる物質の量を調べる血液検査が用いられます。
AFPやPIVKA-IIなどが代表的で、これらの値が高い場合、肝臓がんの存在可能性が示唆されます。
しかし、腫瘍マーカーが正常値でもがんがあることは少なくなく、必ず画像検査と併せて判断されます。
・組織検査(肝生検)
画像や血液検査だけでは診断が困難な場合に行われます。
超音波やCTで位置を確認しながら、細い針を刺し、肝臓の組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
肝臓がんの治療方法

肝臓がんの治療は、腫瘍の数や大きさ、位置、肝臓の機能状態、そしてがんの進行度によって個別に方針が決定されます。
外科的治療の選択肢
肝臓がんの治療において、最も根治が期待できる方法は外科的な手術による切除です。これは、腫瘍が肝臓の限られた部分にとどまっており、かつ肝臓全体の機能が十分に保たれている場合に適応されます。
手術ではがんが存在する部位を切除することで、がん細胞を体内から取り除くことを目指します。切除可能な範囲や肝機能の状態は、事前の検査で慎重に評価されます。
もう一つの選択肢として「肝移植」があります。これは、肝機能が著しく低下していて、部分的な切除では対応できない場合に検討される治療法です。
肝移植では、がんを含む病変のある肝臓全体を取り除き、健康な肝臓と入れ替えることで、がんの根治と肝機能の回復を同時に目指します。
移植にはドナーの確保や適応条件などの課題もありますが、適切な条件がそろえば、非常に有効な治療法となります。
局所療法とその効果
手術が難しい場合や、腫瘍の数が少ない場合に行われるのが局所療法です。体への負担が少ないことが特徴です。
・ラジオ波焼灼術(RFA)
超音波で確認しながら、細い針を腫瘍に刺し、ラジオ波を流して熱でがん細胞を焼き殺す方法です。
2cm以下の小さな腫瘍に対して特に有効です。
・肝動脈化学塞栓術(TACE)
肝臓がんは肝動脈から栄養を受けている特徴を利用した治療法です。
カテーテルを肝動脈まで進めて、抗がん剤を注入し、その後、血管を塞いで栄養の供給を止めることでがんを兵糧攻めにする治療法です。
薬物療法の最新情報
手術や局所療法が難しいほど病気が進行している場合や遠隔転移がある場合には、薬物療法が行われます。
近年、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新しい薬が開発され、治療の成績が向上しています。
これらの薬は、がん細胞の増殖を抑制したり、免疫の力を利用してがんを攻撃したりする効果が期待できます。
肝臓がんの予防と早期発見

肝臓がんは、その原因の多くがウイルス性肝炎や生活習慣に関連しているため、原因を知ることが予防や早期発見の第一歩となります。予防と早期発見に向けた日々の取り組みが重要となります。
生活習慣の見直し
アルコールの過剰な摂取は、肝臓に大きな負担をかけるため、控えることが肝臓がんの予防につながります。長期間にわたる多量飲酒は、肝炎や肝硬変を引き起こし、やがて肝臓がんへと進行するリスクを高めます。
また、肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病も脂肪肝の原因となり、慢性的な炎症を通じてがんの発症につながることがあります。こうしたリスクを減らすためには、バランスの取れた食事を心がけ、野菜や魚、適量のたんぱく質を取り入れることが大切です。
さらに、無理のない範囲でのウォーキングや軽い運動を継続することで、健康的な体重を維持し、肝臓への負担を軽減することができます。日々の生活習慣を見直すことが、肝臓がんの予防において非常に重要です。
定期検診の重要性
肝臓は自覚症状がほとんどないため、早期発見が難しい病気です。
特に、B型・C型肝炎ウイルスに感染している方や、アルコール性肝障害、脂肪肝などがある方は、定期的に医療機関で超音波(エコー)検査や血液検査を受けることが推奨されます。
定期検査で異常が見つかった場合、肝臓がん専門の病院に紹介され、より詳細な検査を行うことができます。
肝炎ウイルスの予防策
B型肝炎ウイルスにはワクチンがあり、感染を予防することが可能です。C型肝炎ウイルスにはワクチンはありませんが、現在は抗ウイルス薬の治療が進んでおり、感染している場合でもウイルスを体内から排除することが可能です。肝炎ウイルスの感染有無は血液検査で確認できます。
まとめ
肝臓がんは、その原因の多くがウイルス性肝炎や生活習慣に関連しているため、原因を知ることが予防や早期発見の第一歩となります。定期的な検査を受けること、そして日々の生活習慣を見直すことが、ご自身とご家族の健康を守ることにつながります。もし診断されても、現在の医療には様々な治療法があります。正しい知識を持ち、担当の先生と相談しながら最適な方針を見つけていくことが大切です。
