2025.11.07

食道がんの原因とは?喫煙・飲酒との関係性を徹底解説

食道がんの原因とは?喫煙・飲酒との関係性を徹底解説

「食道がん」と聞いても、具体的にどんな病気なのかあまり馴染みがないという方もいらっしゃるかもしれません。

食道がんは食道の粘膜にがん細胞が発生する病気で、日本では特に中高年の男性に多く見られる傾向があります。初期にはほとんど自覚症状がなく、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。そのため、早期発見が難しいがんの一つとされています。

食道がんの発症には、生活習慣との関わりが深く、特に喫煙や過度の飲酒が大きなリスク要因とされています。これらの習慣が長年にわたって続くことで、食道の粘膜に慢性的な刺激が加わり、がんの発生につながると考えられています。予防のためには、まず食道がんの特徴や原因、症状について正しく理解することが重要です。

このコラムでは、食道がんの基本的な情報から、喫煙やアルコールとの関係、早期発見のポイントまでをわかりやすく解説します。ご自身やご家族の健康を守るための参考になれば幸いです。

胸の上を押さえる女性

食道がんの定義と種類

食道は口から胃までをつなぐ約25cmの管状の臓器で、食べ物や飲み物が胃へ送られるための通り道となっています。食道がんの多くは、食道の内側を覆う粘膜から発生します。

食道がんにはいくつかの種類があり、そのほとんどを占めるのが「扁平上皮がん」と「腺がん」です。

・扁平上皮がん
 日本人の食道がんの約9割がこのタイプです。食道の内側の粘膜(扁平上皮)から発生します。
 飲酒と喫煙との関連が非常に強いことが特徴です。
・腺がん
 食道と胃の境目に発生することが多く、近年、日本でも増加傾向にあるタイプです。
 逆流性食道炎や肥満との関連が指摘されています。

食道がんの頻度と患者数

国立がん研究センターのがん情報サービスによると、日本における食道がんの患者数は、男性が女性よりも圧倒的に多いことが分かっています。

食道がんと診断される人の数は、全体で年間約2万6千人程度です。男性は50歳代から増加し、70歳代で最も多く発生します。

女性は男性に比べて少ないですが、同様に高齢になるにつれて発症率が高くなります。

居酒屋で乾杯する様子

食道がんの発生には、いくつかの危険因子が関連しています。これらの要因を知ることが予防の第一歩となります。

飲酒と喫煙の影響

日本で多い扁平上皮がんの最大の原因は、飲酒と喫煙です。

特に、この二つを併用する人は、相乗効果で食道がんのリスクが大幅に高まります。

・飲酒
 アルコールは体内で分解される際に「アセトアルデヒド」という有害物質に変わります。
 このアセトアルデヒドが食道の粘膜を直接刺激し、がん細胞発生の原因となります。
 日本人にはアセトアルデヒドを分解する力が弱い体質の方が多く、顔が赤くなる方は特に食道がんのリスクが高いと言われています。
・喫煙
 たばこの煙に含まれる発がん物質も、食道の粘膜を刺激します。
 喫煙期間が長く、量が多いほどリスクは高くなります。

逆流性食道炎、バレット食道、アカラシアの関連

生活習慣の変化に伴い、食道と胃の境目にできる腺がんが増加しています。

このタイプのがんは以下のような病気と関連しています。

・逆流性食道炎
 胃酸が食道に逆流し、食道の粘膜に炎症を引き起こす病気です。長期間にわたる刺激が腺がん発生のリスクを高めます。
・バレット食道
 逆流性食道炎が進行し、食道の粘膜が胃の粘膜に似た形に変化した状態です。
 がんの前段階と考えられており、定期的な内視鏡検査が重要となります。
・アカラシア
 食道と胃をつなぐ下部食道括約筋がうまく働かず、飲食物が胃に流れにくくなる病気です。
 食道に食べ物が溜まりやすくなることが、がんのリスクを高めます。

遺伝的要因と食道がんの関係

飲酒や喫煙といった生活習慣が主な原因と考えられていますが、遺伝的な要因も食道がん発症に関連していることが分かっています。

特に、アセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱い体質は遺伝し、飲酒時に顔が赤くなることなどで確認できます。

ご家族に食道がんを患った方がいる場合や、お酒に弱い体質の方は、特に注意が必要です。

食事を前に胸を押さえる女性

食道がんは早期にはほとんど自覚症状がありません。

胸のつかえ感や違和感といった初期症状は見逃しやすく、多くの場合、症状がはっきりと現れる頃にはがんが進行していることが多いです。

初期症状の特徴

食道がんの初期症状として、以下のような自覚症状が現れることがあります。

・飲み込み時の違和感
 食べ物が胸の奥でつかえる感じや、しみるような痛みを感じることがあります。
・胸の違和感や痛み
 食べ物が通るときに、胸の奥が押されるような、あるいは焼けるような軽い痛みを感じることもあります。

これらの症状は軽い場合が多く、つかえやすい食物を避けるなど食事方法を変えることで改善してしまうため、多くの方が単なる体調不良だと見過ごしてしまうことがあります。

進行症状と末期症状

がんが進行し、食道の壁を深く浸潤したり、周囲の臓器に広がると、以下のような症状が現れます。

・物が飲み込みにくい
 がんが食道を狭くし、食べ物がつかえて飲み込みが困難になります。
 徐々に進行するため、最初は固い物から始まり、最終的には水も飲み込めなくなることがあります。
・体重減少
 食欲不振や食べ物が飲み込めないことから栄養を摂取できなくなり、体重が急速に減少します。
・胸の痛みや背中の痛み
 がんが食道の壁を貫通し、周囲の神経や臓器(大動脈、気管、肺、背骨など)に浸潤すると、持続的な痛みが生じます。
・声がかすれる
 がんが反回神経という声帯を動かす神経に浸潤すると、声がかすれることがあります。
・咳や呼吸困難
 がんが気管や気管支に浸潤すると、咳や呼吸困難といった症状が出現します。

MRI検査のイラスト

食道がんの確定診断には、様々な検査が組み合わせて行われます。

これらの検査はがんの有無だけでなく、その種類や広がり(ステージ)を正確に評価し、治療の方針を決める上で非常に重要です。

食道内視鏡検査の重要性

食道がん診断の最も重要な検査が、食道内視鏡検査(上部消化管内視鏡検査、いわゆる胃カメラ)です。口から細い管を挿入し、モニターで食道の粘膜を直接観察します。

がんが疑われる部分があればその一部を採取し(生検)、病理組織検査に回し、がんであるかを確定します。

食道がんの予防のためにも、飲酒や喫煙の習慣がある方は定期的に内視鏡検査を受けることが強く推奨されます。

上部消化管造影検査と超音波内視鏡検査

・上部消化管造影検査
 バリウムという造影剤を飲んでレントゲン写真を撮る検査です。
 食道の全体像や狭くなっている部分を確認することができます。
・超音波内視鏡検査
 内視鏡の先端に超音波(エコー)がついており、食道の壁の深さや周囲のリンパ節への転移を詳細に調べることができます。
 治療方針を決める上で非常に有用な情報を提供します。

CT検査・MRI検査とPET検査

・CT・MRI検査
 胸部や腹部を中心に、食道の壁の外側へのがんの広がりや、リンパ節、他の臓器(肺、肝臓など)への転移を調べます。
 これらの画像からがんの進行度(ステージ)を判断します。
・PET検査
 全身のがんの広がりを一度に調べることが可能です。他の臓器に転移がないかを確認する際に用いられます。

腫瘍マーカー検査と病理検査

・腫瘍マーカー検査
 血液を採取し、血液中の腫瘍マーカーと呼ばれる物質の量を調べる検査です。
 食道がんの代表的な腫瘍マーカーにはSCCやCEAなどがあり、これらの値が高い場合は食道がんの存在が疑われます。
 ただし、これらの数値はがん以外の病気でも上昇することがあるため、単独での診断には用いられません。
・病理検査
 内視鏡検査で採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、がん細胞であるかを確定します。
 この検査が最終的な診断となります。

化学療法を行う男性

食道がんと診断された場合、治療の方針はがんの進行度(ステージ)や患者さんの全身状態によって様々です。これらを総合的に評価し、最も効果が期待できる治療法を選択します。

手術療法と放射線療法

・手術療法
がんが食道の壁にとどまる段階や、リンパ節に広がりが限られている場合、手術でがんを含めた食道の一部またはすべてを切除します。多くの場合、手術と併用して化学療法や放射線療法が行われます。
・放射線療法
手術が難しい場合や、患者さんの体への負担を考慮する場合に選択されます。がんのある部分に放射線を照射し、がん細胞を死滅させる方法です。化学療法と併用することで、より高い治療効果が期待できます。

化学療法と免疫療法

・化学療法
 抗がん剤を使用して全身のがんを攻撃する治療法です。
 手術後の再発予防や、がんが遠隔の臓器に転移している場合に行われます。
・免疫療法
 近年開発された治療法で、免疫チェックポイント阻害薬が代表的です。
 がん細胞が免疫の攻撃から逃れる仕組みを阻害し、患者さん自身の免疫の力でがんを攻撃させる方法です。
 化学療法と併用して行われることが多いです。

治療成績と予後

食道がんの予後は、がんの進行度や治療内容によって大きく異なります。
早期に発見されれば治癒が可能な病気であり、ステージが進んでいても治療法の進歩により予後は改善しています。
治療の選択肢や治療成績・予後については、担当の医師とよく相談し、納得のいく方針を決めることが大切です。

→ 乗り越えたからこそ伝えたい「食道がん克服者の声」はこちら

食道がんは、飲酒や喫煙といった生活習慣が原因となることが多い病気です。しかし、原因を知ることで、予防や早期発見につながることが可能です。

自覚症状がないからといって安心するのではなく、リスクがある方は定期的に内視鏡検査を受けることが重要です。

もし食道がんと診断されても、最新の医療には様々な治療法があります。ご自身の病気を正しく知り、医師と一緒に最も良い治療方針を見つけていくことが、より良い生活を送ることにつながります。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。