2025.11.06

乳がんのホルモン療法とは?効果・副作用・治療期間を解説

ピンク色のダリアの花

乳がんと診断されたとき、患者さんやご家族は、手術や化学療法について考えることが多いかもしれません。

しかし、乳がんの種類によっては「ホルモン療法」が非常に重要な役割を果たします。

このコラムでは、ホルモン療法がなぜ必要なのか、どのような効果と副作用があるのか、そしてどのように治療が行われるのかについて分かりやすく解説します。

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ホルモン療法とは何か

ホルモン療法は、体の中のホルモンを利用して増殖する乳がんに対して行う薬物療法です。

抗がん剤を使用する化学療法とは異なり、ホルモンの作用を抑えることでがん細胞を増殖させないように働きかけます。

乳がん細胞とホルモンの関係

乳がん細胞の約7割は、女性ホルモンである「エストロゲン」を利用して増殖する特徴があります。

がん細胞の表面にあるエストロゲン受容体にエストロゲンが結合すると、がん細胞の増殖が促進されます。

ホルモン療法は、この仕組みを利用して、がんの進行を抑制する治療法です。

ホルモン療法の適応と対象

ホルモン療法は、病理検査でがん細胞にエストロゲン受容体があることが確認された「ホルモン受容体陽性」の乳がんタイプが対象となります。

また、ホルモン療法は閉経前か閉経後かで使用する薬が異なります。

一般的に、がんのタイプや進行度に応じて手術後の再発予防として行われたり、転移や再発が見られた場合の主な治療として行われたりします。

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ホルモン療法にはいくつかの種類があり、どの薬が使われるかは患者さんの閉経の状態によって決まります。

多くの場合は内服薬が主となります。

抗エストロゲン薬

抗エストロゲン薬は、閉経前、閉経後のどちらの患者さんにも使用することが可能です。

このタイプの代表的な薬が「タモキシフェン」です。

がん細胞のエストロゲン受容体に結合し、エストロゲンが作用するのを邪魔する働きを持ち、がん細胞の増殖を抑える効果が期待できます。

特に再発予防として、手術後に長期にわたって服用されます。

アロマターゼ阻害薬

「アロマターゼ阻害薬」は、閉経後の患者さんのみに使用される薬です。

閉経後の女性は、卵巣からのエストロゲンの分泌がほとんどなくなり、脂肪組織や副腎でアロマターゼという酵素の働きによって少量のエストロゲンが作られます。

アロマターゼ阻害薬は、この酵素を抑制することで体内のエストロゲンの量を低下させ、がん細胞の増殖を抑えます。

LH-RHアゴニスト

「LH-RHアゴニスト」は、閉経前の患者さんに使用される注射の薬です。

脳の視床下部から出るホルモン(LH-RH)と同じ作用を持ち、卵巣を刺激するホルモンを低下させ、卵巣の機能を一時的に停止させます。

これによって女性ホルモンの分泌を抑え閉経後と同じような状態にすることで、ホルモンの影響を受けやすいがん細胞の増殖を抑制します。

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ホルモン療法は長期間にわたって行う必要があり、これは患者さんに大きな精神的・肉体的な負担をかけます。

主な副作用とその対処法を知ることが治療を続ける上で重要です。

一般的な副作用とその管理

ホルモン療法の最も一般的な副作用は、女性ホルモンの作用が抑えられることで生じる更年期障害に似た症状です。

代表的なものとしては、ほてりやのぼせ(ホットフラッシュ)、発汗、関節や筋肉の痛み、膣の乾燥などがあります。

これらの症状は個人によって程度が異なりますが、医師に相談して薬剤の処方や生活習慣のアドバイスを受けることが大切です。

更年期障害とその対処法

閉経前の方がホルモン療法を行うと、一時的に月経が止まり、更年期障害に似た症状が現れます。

また、閉経後の方も同様の症状を感じることがあります。

関節の痛みは、薬の種類を変えたり、痛みを和らげる薬を併用したりすることで対応することが可能です。

不安やイライラといった精神的な症状に対しては、カウンセリングや精神安定剤の使用を検討することもできます。

長期的な副作用と健康管理

ホルモン療法は長期間にわたるため、骨密度の低下や血栓のリスク、不正出血といった長期的な副作用にも注意が必要です。

骨密度が低下すると骨粗しょう症のリスクが高まるため、定期的な骨密度検査を行い、必要に応じて骨を強くする薬が処方されます。

不正出血があった場合も、すぐに医師に相談し、原因を調べることが大切です。

標識

ホルモン療法は、手術や化学療法といった他の治療と組み合わせて行われることが多く、医師と共に治療の全体像を理解しておくことが重要です。

治療前の検査と評価

ホルモン療法の開始に先立ち、がん細胞の組織検査でホルモン受容体の有無が確認されます。

また、患者さんの閉経の状態や全身状態、他の病気の有無などを総合的に評価し、最も適切な薬の種類や方針が決められます。

治療中のフォローアップ

ホルモン療法が始まってからも、治療の効果や副作用を確認するため、定期的な通院と血液検査が行われます。

患者さん自身も、副作用の症状について詳しく記録しておき医師に伝えることで、より良い治療を続けることができます。

治療後の経過観察と生活指導

ホルモン療法は一般的に5年から10年と長期間にわたって行われます。

治療が終わった後も、再発の有無を確認するため、定期的な経過観察が必要です。

また、治療によって体が変わったことを理解し、健康的な生活習慣を続けることが重要です。

ホルモン療法は、乳がんの再発や転移を予防する上で、非常に効果的で大切な治療法です。

長期間にわたる治療は負担になることもあると思いますが、副作用には適切な対処が可能です。不安なことは一人で抱え込まず、医師や医療スタッフに相談してください。

この治療を続けることが、より良い予後と生活につながることを心から願っています。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
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