2025.11.06

肝臓がんの初期症状は?診断後に知っておきたい検査と治療法

痛む腹部を押さえる人

肝臓がんと診断されたとき、多くの方が大きなショックと不安を感じられることでしょう。なぜ自分はがんになったのだろうか、これからの治療はどうなるのか、様々な疑問が頭をよぎるかもしれません。

このコラムは、肝臓がんの診断を受けた方とそのご家族が病気のことを正しく理解し、治療の選択肢を冷静に検討するための情報を提供します。

肝臓の役割と健康への影響

医師と肝臓

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、その機能の一部が障害を受けても残りの健康な部分がその機能を肩代わりするため、病気がかなり進行しないと自覚症状が出ないという特徴があります。

肝臓は食事から摂取した栄養を代謝・貯蔵したり、アルコールや薬、その他の有害物質を解毒したり、胆汁を作ったりする重要な役割を担っています。そのため、肝臓の機能が低下すると全身に影響を及ぼす可能性があります。

肝臓がんの種類と特徴

胃がんや大腸がんなど、他の臓器から肝臓に転移してきたがんは「転移性肝がん」と呼ばれます。

一方、肝臓の細胞から直接発生するがんは「原発性肝がん」と呼ばれ、日本ではその約95%が「肝細胞がん」です。

肝細胞がんは、肝炎や肝硬変といった慢性的な肝臓疾患を背景に発生することが多いという特徴があります。

転移性肝がんは、原発となるがんの種類や進行度によって治療方針が異なり、肝臓だけでなく全身の状態を考慮した対応が必要です。

原発性肝がんの場合は、肝機能の状態や腫瘍の大きさ・数に応じて、手術・局所療法・薬物療法など複数の選択肢があります。

どちらのタイプも、専門医による診断と綿密な治療計画が重要であり、患者さんの体調や生活背景に合わせた個別の対応が求められます。

食欲不振の女性

「もし症状があったら、もっと早く発見できたのだろうか」と考える患者さんもいらっしゃることでしょう。しかし、肝臓がんは初期に特有の症状はほとんどありません。

初期症状の特徴と見逃しやすいサイン

肝臓がんの初期症状として考えられるのは、がんそのものによる症状ではなく、肝炎や肝硬変といった背景にある病気が悪化したことによる症状です。

これらは全身倦怠感や食欲不振、腹部の違和感や張りなど、肝臓がんに特有なものではありません。その他の病気でも見られる非特異的な症状であるため、がんのサインだと気づきにくいことが多いです。

肝臓の機能が低下すると、全身にだるさや倦怠感、食欲不振が生じることがあります。通常の疲れと同じように感じられることも多いですが、こうした症状が続く場合は、肝臓の機能障害が進行している可能性を示唆しています。

もし肝炎や肝硬変の診断を受けていて、以前にはなかった倦怠感や食欲不振を感じたら、必ず医師に相談することが大切です。

ベンチに座り飲酒・喫煙する男性

肝臓がんは、その原因の多くがウイルス性肝炎や生活習慣に関連しています。ご自身の病気の原因を知ることは、病気と向き合う上で重要な一歩となります。

慢性肝炎と肝硬変の関連性

日本における肝臓がんの最も大きな原因は、ウイルス性肝炎(B型・C型)による慢性肝炎、そしてそこから進行する肝硬変です。

ウイルスに感染すると、肝細胞の炎症と再生が繰り返し行われ、肝臓が線維化して硬くなる状態になります。

肝硬変まで進行すると、がんが発生しやすい状態になり、肝臓がん発症のリスクが大幅に高まります。

生活習慣と肝臓がんの関係

近年、肝炎ウイルスによらない肝臓がんが増加しています。その主な原因はアルコールの過剰な摂取、そして、肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病です。

アルコールの飲みすぎは肝臓に負担をかけ、アルコール性肝炎から肝硬変、そしてがんへと進行することがあります。

また、過剰な食事や運動不足による脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと進行し、肝硬変、肝臓がんを引き起こす可能性があります。

CTの前で医師から説明を受ける患者

肝臓がんと診断された方は、すでに様々な検査を受けていることでしょう。なぜ多くの検査を行う必要があるのか、それぞれの検査がどのような役割を担っているのかを知ることは、治療の方針を理解する上で重要です。

血液検査と腫瘍マーカーの役割

肝臓の状態を知るためには、血液検査が行われます。ASTやALTといった肝機能障害を示す項目や、腫瘍マーカーと呼ばれるAFP(アルファフェトプロテイン)やPIVKA-IIの値を調べることで、肝臓がんの可能性を判断する材料とします。

ただし、腫瘍マーカーは正常値でもがんがある場合もあり、単独で診断することはありません。

肝臓がんの診断には、画像診断が欠かせません。

・超音波(エコー)検査
 肝臓がんの検査で最初に行われることが多いです。
 腹部に超音波を当てるだけで、肝臓の中の腫瘍の有無や位置、大きさを確認することが可能です。
・CT/MRI検査
 超音波(エコー)検査で異常が指摘された場合や、より詳しく調べる必要がある場合に行われます。
 造影剤を使用することで、肝細胞がん特有の血管の特徴を捉え、診断を確定することができます。
 CTでは画像を細かく見たり、3Dで確認したりすることも可能です。

医師と入院中の患者

肝臓がんと診断された場合、その治療方法は腫瘍の個数や大きさ、肝臓の機能状態、そしてがんの進行度などによって様々な選択肢があります。

最も効果が期待できる治療法を、医師と相談しながら決めていきます。

手術療法とその適応

肝臓の機能が保たれており、腫瘍が限られた部分にあり、他の臓器への転移がない場合には、手術でがんを切除することが最も根治が期待できる治療方法となります。

また、肝機能が著しく低下している場合には、肝臓全体を入れ替える肝移植も選択肢となります。

非手術療法の選択肢

手術が難しい場合や、高齢者など体に負担をかけたくない場合には、非手術療法が選択肢となります。

・局所療法
 腫瘍の位置や個数が限られている場合に行われます。
 代表的な方法には、「ラジオ波焼灼術(RFA)」があります。
 超音波やCTでがんの位置を確認しながら、細い針を刺し、熱でがん細胞を焼き殺す方法です。
・カテーテル治療
 肝動脈からカテーテルを挿入し、抗がん剤を直接注入する方法や、血管を詰めて栄養の供給を止める方法などがあります。
・薬物療法
 がんが進行し、遠隔転移がある場合に行われます。
 最近では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新しい薬が開発され、治療の選択肢が広がっています。

肝臓がんは初期に自覚症状がないため、診断された際に不安を感じる方が多いことと思います。しかし、病気が発生した背景やそのメカニズムを知ることは、今後の治療と向き合う上で大切です。

ご自身の病気を正しく理解し、担当の医師や医療機関に相談しながら、最適な治療方針を見つけていくことが大切です。

治療は継続的な取り組みであり、患者さんご自身だけでなく、ご家族や医療スタッフとの連携も重要です。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。