膵臓がんの真実!ステージ別の治療と予後
膵臓がんという診断は、ご本人やご家族にとって、計り知れない不安をもたらすものです。多くの方が、なぜ自分が、そしてこれからどうなるのかと、様々な疑問や心配を抱えることでしょう。
このコラムでは、膵臓がんの基本的な知識から治療法、そして日々の生活で必要となる情報までを解説します。
がんの治療や状態は、一人ひとり異なります。このコラムが、病気と向き合うための正しい理解を深め、少しでも安心して毎日を過ごすきっかけとなれば幸いです。
膵臓がんの基本情報

膵臓がんとは?
膵臓は、お腹の奥、胃の後ろに位置する細長い臓器です。
長さは約20センチメートルで、血糖値を調整するインスリンなどのホルモンを分泌したり、食べ物の消化を助ける膵液を作ったりする重要な役割を担っています。
膵臓がんとは、この膵臓にできる悪性の腫瘍のことを指します。がん細胞は、膵管の上皮に発生することがほとんどです。
膵臓がんの症状
膵臓がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが大きな特徴です。そのため、早期発見が非常に難しい病気と言われています。
がんが進行すると、周囲の臓器や神経を圧迫し、以下のような様々な症状が出現することがあります。
・腹部や背中の痛み
膵臓は体の深い部位にあるため、痛みを感じるようになることが多いです。
・黄疸(おうだん)
がんが膵管の出口近くにある胆管を閉塞させると、胆汁の流れが悪くなります。
その結果、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が見られることがあります。
・体重減少
特に理由がなく、体重が急激に減少することがあります。
・糖尿病の悪化や発生
膵臓の機能が低下することで、血糖値のコントロールが難しくなります。
しかし、これらの症状は他の病気でも見られるため膵臓がんと判断することが難しく、診断された時点ですでに進行しているケースも少なくありません。
膵臓がんの生存率とは

生存率の定義と重要性
がんの「生存率」とは、がんと診断された人が、診断から一定期間(多くは5年)後にどのくらいの割合で生存しているかを示す統計的な数値です。
生存率は、がん医療の進歩や治療効果を測るための重要な指標とされています。ただし、この数値は個々の患者さんの余命を予測するものではなく、あくまで集団全体を対象とした目安であることをご理解いただくことが重要です。
生存率をどう捉えるか
がん情報サービスによると、2009年から2011年にがんと診断された人のがん全体の5年生存率は64.1%です。
そのうち、膵臓がんの5年生存率は8.5%と、他のがんと比較して低い傾向にあります。
しかし、この数値は過去のデータであり、治療法の進歩によって日々状況は変わります。新しい抗がん剤治療の開発や、治療法の組み合わせなどによって、生存率は徐々に改善されつつあるのが現状です。
統計データはあくまで過去の傾向を示すものであり、一人ひとりの患者さんの状態や、これからの医療の進歩を反映するものではないことを、心に留めておくことが大切です。
また、多くの方が「余命はどれくらいなのか」と不安に感じるのは自然なことですが、余命はがんの種類やステージ、体力、治療への反応などによって大きく異なります。統計上の生存率はあくまで目安であり、ご自身の状況に当てはまるとは限りません。
正確な情報を得るためには、担当医に現在の病状や治療の見通しについて詳しく尋ね、納得のいくまで話し合うことが大切です。
さらに、治療法によっても生存率は異なります。
たとえば、手術が可能な早期の膵臓がんでは、がんを切除できることで生存率が高くなる傾向があります。一方、手術が難しい進行がんでは、化学療法や放射線治療を組み合わせて治療効果を高めることが目指されます。
どの治療法が最適かは、医師と患者やご家族が話し合い、それぞれのメリットとデメリットを理解した上で決定することが重要です。
ステージ別の膵臓がんの生存率

膵臓がんの「ステージ」とは
ステージとは、がんの進行度合いを示す分類のことです。がんの大きさ、リンパ節への転移、他の臓器への転移の有無などによって判断されます。膵臓がんのステージは、0期から4期まで分けられています。
・ ステージ0、I、IIの5年生存率(約40〜80%)
がんが膵臓内にとどまっていたり、ごく一部の周囲の組織に広がっている段階です。
この段階では、手術によってがんを切除できる可能性が高く、治療成績も良好です。
ステージ0〜Iで手術が成功した場合の5年生存率は60〜80%に達するケースもあり、ステージIIでも40〜60%程度の生存率が示されることがあります。
ただし、これらの数値は患者の年齢や体力、治療法の選択によって変動するため、あくまで目安として捉えることが大切です。
・ステージIII
がんが膵臓の周囲の主要な血管(腹腔動脈や腸間膜動脈など)に浸潤している状態です。
この段階では、手術が難しくなるケースが多いです。主に、化学療法や放射線治療が用いられます。
・ステージIVの5年生存率(約5%以下)
がんが肝臓や肺などの他の臓器に転移している段階です。
この時点では完治を目指す治療法は難しく、症状を和らげるための緩和ケアや延命のための治療が中心となります。
統計上、5年生存率は5%を下回る傾向にあります。
膵臓がんの治療法とその効果

膵臓がんの治療は、がんの進行度や患者さんの状態、年齢などによって様々な方法が選択されます。
多くの場合は単一の治療ではなく、複数の治療法を併用して行われます。
・手術療法
膵臓がんの唯一の完治を目指す治療法は、がんを完全に切除する手術です。
しかし、膵臓がんが発見された時点で手術が可能な状態にある患者さんは、全体のうち約2割程度と言われています。
手術の対象となるのは、がんが膵臓内にとどまっている早期の段階に限られます。
・化学療法
化学療法(抗がん剤治療)は、抗がん剤という薬を投与して、がん細胞の増殖を抑える治療法です。
手術が難しい場合や、手術後に再発を予防する目的で行われます。
近年では、複数の抗がん剤を組み合わせる治療法が開発され、治療効果が大きく向上しています。
副作用が出ることが多いですが、吐き気や食欲低下などの症状を緩和する薬も充実してきています。
・放射線治療
放射線治療は、高エネルギーの放射線をがんに照射して、がん細胞を破壊する治療法です。
手術が難しい場合に化学療法と組み合わせて行われることが多く、痛みの緩和などにも用いられます。
・免疫療法
免疫療法は、患者さん自身の免疫細胞の力を利用してがんを攻撃する治療法です。
膵臓がんに対する効果はまだ限定的ですが、新しい薬の開発が進められており、今後の大きな可能性として期待されています。
膵臓がんの告知を受けた際の心構え

告知後に考えるべきこと
膵臓がんという診断を受けたときまず大切なのは、ご自身の気持ちを整理し、信頼できる医療者とともに冷静に病気と向き合うことです。
• 正確な情報の入手
担当の医師に、がんの進行度(ステージ)や、考えられる治療法について、詳しく説明を受けてください。
• セカンドオピニオン
治療方針について納得がいかない場合や他の選択肢を知りたい場合は、別の専門医の意見(セカンドオピニオン)を聞くことも有効です。
• 気持ちの共有
家族や信頼できる友人、がん相談支援センターの相談員など、誰かにご自身の気持ちを話すことで心の負担が和らぐことがあります。
サポート体制の重要性
膵臓がんの治療は、患者さん一人だけの問題ではありません。ご家族や周囲のサポートが非常に重要になります。
• 家族の役割
ご家族は、食事や身の回りの世話だけでなく、心の支えとしても大きな存在です。
• 患者支援団体
同じ病気を持つ人たちが集まる患者支援団体に参加することで、情報交換ができたり、精神的な支えを見つけたりすることが可能です。
おわりに
膵臓がんという病気は、診断された瞬間から多くの不安や疑問が押し寄せてくるものです。治療法の選択、生存率の情報、日々の生活への影響など、知りたいことは尽きません。このコラムでは、膵臓がんの基本的な知識から治療法、ステージごとの特徴までを解説してきました。
がんの治療は一人ひとり異なり、正解は一つではありません。大切なのは、信頼できる医療者とともに納得のいく選択を重ねていくこと。そして、治療の過程でも、心のケアや周囲の支えを受けながら、前向きに日々を過ごすことです。
情報は不安を和らげる力になります。このコラムが、膵臓がんと向き合う方やそのご家族にとって、少しでも安心につながる一助となれば幸いです。
