2025.11.06

徹底解説!大腸がんステージ別の再発率と術後ケアの重要性

徹底解説!大腸がんステージ別の再発率と術後ケアの重要性

大腸がんの診断を受けてから治療を終えるまで、患者さんやご家族は多くの不安と向き合います。そして、治療が終わった後も、「再発するのではないか」という漠然とした不安を抱える方は少なくありません。しかし、再発について正しく理解することは、その不安を軽減し、より安心して日々の生活を送るための第一歩となります。

このコラムでは、大腸がんの再発について、その確率や再発しやすい臓器、そして予防のための対策や術後の経過観察の重要性について、医学的な根拠に基づいて分かりやすく解説します。再発率はあくまで統計的な数字であり、個々の患者さんの未来を決定づけるものではありません。この情報が、皆様の心の支えとなり、前向きな気持ちで未来を歩んでいくための一助となることを願っています。

ルーペとグラフ

大腸がんの再発率とは?

再発とは、治療によってがんが一時的に消えたと判断された後、再び同じ場所や他の臓器にがん細胞が現れることを指します。大腸がんの再発は、手術で肉眼的に確認できないほど微小ながん細胞が体内に残っており、それが時間の経過とともに増殖して、転移や再発として診断されることで起こります。

再発には大きく分けて二つの種類があります。一つは、手術でがんを切除した部位の近くに再びがんができる「局所再発」。もう一つは、肺や肝臓などの臓器に転移する「遠隔転移」です。大腸がんの場合、多くは遠隔転移として再発することが知られています。

再発の確率は、個々の患者さんのがんの進行度(ステージ)、組織型、リンパ節への転移の有無など、様々な要因によって異なります。また、手術や術後の治療法の内容によっても変わることがあります。そのため、一概に「再発率はどれくらい」と断定することは難しいのが現状です。

ステージ別の再発率と5年生存率

大腸がんの進行度は、国際的な分類に基づき、ステージ0からIVまでに分けられます。このステージ分類は、がんが大腸の壁のどの深さまで進行しているか、リンパ節への転移や他の臓器への遠隔転移の有無によって判断されます。一般的に、ステージが低いほど再発リスクは低く、5年生存率は高くなります。逆に、進行したがん(ステージIII、IV)では再発のリスクが高くなり、5年生存率は低くなる傾向があります。

日本の大腸癌研究会が発行する「大腸がん治療ガイドライン」2019年版の情報を参考にすると、以下のような傾向が見られます。

  • ステージI:がんが大腸の壁のごく浅い層にとどまっている段階です。この段階で手術によってがんを完全に切除できた場合、5年生存率は約90%を超えます。再発率は低いと考えられており、術後の補助療法は必要ないとされることがほとんどです。
  • ステージII:がんが大腸の壁の筋肉層まで進行しているものの、リンパ節への転移がない状態です。5年生存率は約70~80%と言われています。再発のリスクはステージIより高くなりますが、術後補助療法は症例によって検討されます。
  • ステージIII:がんがリンパ節に転移している状態です。再発のリスクが高く、5年生存率は約50~70%となります。手術で切除できた後も、術後補助化学療法を行うことで再発リスクを下げることが強く推奨されます。
  • ステージIV:遠く離れた臓器(肝臓、肺など)に転移している状態です。この段階では、手術だけでがんを切除することが難しく、化学療法や放射線療法などを組み合わせた治療法が選択されます。再発のリスクは非常に高いですが、近年は治療法の進歩により、生存期間が延びる症例も増えています。

これらのデータは、あくまで統計上の数値であり、一人ひとりの患者さんの予後を正確に予測するものではありません。大切なのは、ご自身の病気の状態を医師とよく相談し、最適な治療法を選択することです。

再発を防ぐための生活習慣

治療が終わった後も、再発を予防するために日々の生活でできることがあります。すべての再発を防ぐことは難しいですが、健康的な生活習慣を心がけることは、身体全体の免疫力を高め、がんの再発リスクを下げることにつながると考えられています。

以下のような点が推奨されます。

  • バランスの取れた食事: 野菜や果物、全粒穀物など、食物繊維を豊富に含む食品を多く摂り、赤身肉や加工肉の摂取を控えることが大切です。
  • 適度な運動: ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で身体を動かすことで、免疫力を高め、体重の管理にも役立ちます。
  • 禁煙・節酒: 喫煙や過度な飲酒は、がんの再発だけでなく、様々な病気のリスクを高めます。
  • ストレス管理: 十分な睡眠やリラックスする時間を確保し、心の負担を軽減することも重要です。

ビックリマークを持つ医師

再発が多い臓器の種類

大腸がんは、血流やリンパの流れに乗って、がん細胞が他の臓器に転移しやすい特徴があります。特に、再発・転移しやすい臓器として知られているのは、肝臓と肺です。

  • 肝臓: 消化管から吸収された栄養は、門脈という血管を通って肝臓へと運ばれます。大腸のがん細胞もこの血管に乗って肝臓に到達しやすいため、肝臓は最も再発しやすい臓器の一つと言われています。
  • : がん細胞が肝臓を経由して全身の血流に乗るか、リンパの流れに乗って胸部のリンパ節に達すると、肺に転移する可能性があります。肺への転移も、大腸がんの再発では比較的多く見られます。

その他にも、骨や脳などに転移が起こることもありますが、頻度は高くありません。再発が見つかった場合でも、どの臓器に転移したかによって、その後の治療方針が大きく変わります。

がんが再発する理由と再発の仕組み

がん細胞が再発する主な原因は、手術で目に見えるすべてのがんを切除した後も、体内にごくわずかがん細胞が残っているためです。これを「微小残存病変」と呼びます。

この微小ながん細胞は、検査では見つからないほどの小さなかたまりで、手術後の時間の経過とともに増殖し、やがて発見できる大きさに成長します。これが再発の仕組みです。

特に、大腸の壁の深い部分にがんが進行していたり、リンパ節に転移があった場合は、手術前にすでに小さながん細胞が血流やリンパの流れに乗って全身に散らばっている可能性が高くなります。そのため、ステージIIIの患者さんには術後補助化学療法が推奨されるのです。

再発のサインと見つけ方

再発の症状は、再発した部位によって異なります。しかし、再発が早期の段階では、自覚できるような症状がほとんどないことが多いです。そのため、定期的な検査による経過観察が非常に大切になります。

  • 肝臓への再発: 進行すると、黄疸や腹痛、全身のだるさなどが起こることがあります。
  • 肺への再発: 咳や呼吸困難などの症状が見られることがあります。
  • 局所再発: 腹痛や排便時の違和感などが現れることがあります。

これらの症状が現れる前に再発を発見するために、定期的な検査を受けることが重要です。

患者と笑顔で話す医師

術後経過観察の重要性

大腸がんの手術を終えた患者さんには、再発の有無を確認し、もし再発が起こった場合でも早期に発見して治療を開始するために、定期的な経過観察が推奨されます。

経過観察の目的は、以下の通りです。

  1. 再発や新たながんの発生を早期に発見すること
  2. 治療の副作用や後遺症を確認し、対処すること
  3. 患者さんの身体と心の状態を継続的に管理すること

経過観察は、一般的に手術から最初の2年間は3〜6か月に1度、その後は5年間を目安に行われます。具体的な検査内容は医師によって決められますが、主に以下のような検査が実施されます。

  • 腫瘍マーカーの血液検査
  • 腹部の超音波検査やCT検査
  • 大腸内視鏡検査

特に、大腸がんは手術後の5年間以内に再発することが多いと言われているため、この期間は医師の指示に従ってしっかりと経過観察を受けることが大切です。

術後補助療法(アジュバント療法)の種類と効果

術後補助療法とは、手術で目に見えるがんをすべて切除した後、体内に残っている可能性がある微小ながん細胞を攻撃し、再発のリスクを下げることを目的に行われる治療法です。大腸がんでは主に「術後補助化学療法」が用いられます。

ステージIIIの患者さんには、術後補助化学療法が強く推奨されます。これは、多くの研究によって、この治療法を行うことで再発率が低下し、5年生存率が向上することが示されているためです。

補助化学療法は、主に抗がん剤を用いて行います。抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える効果がありますが、正常な細胞にも影響を与えるため、吐き気やしびれなどの副作用が起こる可能性があります。しかし、近年の抗がん剤は副作用を軽減する薬剤も増えており、以前に比べて負担は少なくなってきています。

再発時の治療法と選択肢

もし再発が診断された場合でも、医療の進歩により様々な治療法があります。再発したがんの部位や数、患者さんの全身の状態などによって、最適な治療方針が検討されます。

  • 手術: 再発したがんが一部位に限定されており、切除が可能な場合は、手術が最も効果的な治療の選択肢となります。特に、肝臓や肺に転移した場合でも、手術で切除できる症例も増えています。
  • 化学療法: 手術が難しい場合や、複数の部位に再発が見られる場合は、化学療法が主な治療となります。近年では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新しい薬剤も登場しており、がんをコントロールする期間を延ばすことが可能となってきています。
  • 放射線療法: 再発したがんが限られた範囲の場合や、痛みを和らげる目的で行われることがあります。

医師とよく話し合い、ご自身にとって最も良い治療法を選択することが大切です。不安なことは遠慮なく質問し、納得した上で治療を受けるようにしましょう。

大腸がんの再発は、多くの患者さんやご家族にとって大きな不安の種です。しかし、現在の医療では、たとえ再発したとしても適切な治療を受けることで、がんと共存しながら質の高い生活を送ることが可能になってきています。

再発の予防のためにできることは日々の生活に取り入れ、定期的な検査は欠かさずに受ける。そして、何か不安なことがあれば、一人で抱え込まずに医師や看護師、がん相談支援センターなどの専門家に相談することが大切です。

このコラムが、大腸がんの治療を乗り越えた皆様が、再発の不安を少しでも和らげ、前向きな気持ちでこれからの人生を歩んでいくための助けとなることを心から願っています。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。