2025.11.07

がん治療中の不眠に悩む方へ。睡眠障害の原因と対策を考える

机に置かれた目覚まし時計とスマートフォン

「夜になると、不安で眠れなくなるんです。」

そんな声を、がん患者さんからよく耳にします。

がんという病気は、身体だけでなく心にも大きな影響を与えるものです。治療や診断のストレス、身体症状の変化、薬の副作用など…そのすべてが、睡眠に深く関係しています。

本記事では、がん患者に多くみられる「睡眠の悩み」について、原因や対策をわかりやすく紹介しながら、心身の回復につながる“やさしいケア”を探っていきます。

眠る子犬

睡眠は、私たちが健康を維持する上で極めて重要な活動です。

がんの治療中は、体力の回復や免疫機能の維持、精神的な安定など、睡眠によって得られる効果がとても大きくなります。

しかし現実には、がん患者の多くが「眠れない」「途中で目覚めてしまう」「早く起きてしまう」といった睡眠障害(不眠症、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒)に悩まされています。

とりわけ、乳がんや前立腺がん、大腸がん、膵臓がんなどの患者で、不眠の訴えは少なくないと報告されています。

国際的な学会の調査でも、がん患者における睡眠障害の発症率は40〜70%に達することが示されています。

睡眠障害の原因とは?

がん患者に睡眠の悩みが生じる理由は、一つではありません。

以下のように、身体的・心理的・環境的要因が複雑に絡み合っています。

  • 痛みや副作用
    腫瘍による痛み、薬剤による発熱や下痢、骨転移による不快感など
  • 精神的ストレス
    診断時のショック、治療への不安、再発への恐れ
  • 治療関連の変化
    放射線治療や化学療法による体調の変化、昼間の眠気
  • 薬の影響
    ステロイド薬による覚醒作用、抗うつ薬や抗がん剤の副作用
  • 環境要因
    入院生活による寝室環境の変化、照明や騒音、夜間の医療ケア
  • 生活習慣の乱れ
    日中の運動不足、昼寝の習慣、就寝時間の変化

睡眠に悩んだら、まずは「相談」から

「眠れないこと」に対して、「仕方ない」と諦めてしまう人も少なくありません。

ですが、それはケアできる症状です。眠りの問題は、放置すれば精神状態の悪化や体力の低下を招き、日常生活や治療の質に大きく影響してしまいます。

対策の第一歩は、主治医や看護師、緩和ケアチームへの相談。薬剤や睡眠環境、心のケアなど、さまざまな方法から「自分に合った眠りの改善策」を探ることができます。

寝室。ベッドのそばで間接照明が光っている

ここからは、がん患者さんが無理なくできる「睡眠改善のためのセルフケア」について紹介します。

生活のなかで取り入れられる“やさしい習慣”です。

就寝前のリラックスタイムを持つ

  • 深呼吸やストレッチ
    → 息を整え、筋肉をゆるめることで自律神経が整い、眠りやすい状態に
  • 静かな音楽や読書
    → スマホなどの強い光は避ける
  • 照明を暗くする
    → 就寝1時間前から、暖色の間接照明へ切り替え

食事とカフェインを見直す

  • 就寝前2〜3時間は食べない
    → 胃腸の活動が活発だと眠りにくくなる
  • コーヒーや緑茶、チョコレートは控えめに
    → カフェインの摂取量を減らす
  • 栄養バランスの整った食事を意識
    → ビタミンB群・マグネシウムなどを適切に摂る
  • 午前中や昼間に軽い運動を行う
    → ウォーキング、ストレッチなど
  • 寝る直前の激しい運動は控える
    → 身体が覚醒してしまう場合も
  • 昼寝は30分以内、午後3時までに
    → 深い眠りの妨げを防ぐ

寝室の環境を整える

  • 布団やベッドの硬さ・温度を見直す
    → 室温は20〜22度、湿度は50〜60%程度が理想
  • 騒音対策
    → 耳栓やホワイトノイズの利用も有効

がんという病気は、多くの変化をもたらします。体の痛み、心の不安、治療に伴う副作用…。眠りは、そんな日々を乗り越える力のひとつでもあります。

「眠れないこと」に悩んだとき、自分を責めないでください。大切なのは、自分の気持ちに気づいて、それを少しずつ整えていくことです。

あなたにとって、今日の夜が少しでも安心できる時間となりますように。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
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