がん治療中の不眠に悩む方へ。睡眠障害の原因と対策を考える
「夜になると、不安で眠れなくなるんです。」
そんな声を、がん患者さんからよく耳にします。
がんという病気は、身体だけでなく心にも大きな影響を与えるものです。治療や診断のストレス、身体症状の変化、薬の副作用など…そのすべてが、睡眠に深く関係しています。
本記事では、がん患者に多くみられる「睡眠の悩み」について、原因や対策をわかりやすく紹介しながら、心身の回復につながる“やさしいケア”を探っていきます。
睡眠は、心と体の回復に欠かせない時間

睡眠は、私たちが健康を維持する上で極めて重要な活動です。
がんの治療中は、体力の回復や免疫機能の維持、精神的な安定など、睡眠によって得られる効果がとても大きくなります。
しかし現実には、がん患者の多くが「眠れない」「途中で目覚めてしまう」「早く起きてしまう」といった睡眠障害(不眠症、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒)に悩まされています。
とりわけ、乳がんや前立腺がん、大腸がん、膵臓がんなどの患者で、不眠の訴えは少なくないと報告されています。
国際的な学会の調査でも、がん患者における睡眠障害の発症率は40〜70%に達することが示されています。
睡眠障害の原因とは?
がん患者に睡眠の悩みが生じる理由は、一つではありません。
以下のように、身体的・心理的・環境的要因が複雑に絡み合っています。
- 痛みや副作用
腫瘍による痛み、薬剤による発熱や下痢、骨転移による不快感など - 精神的ストレス
診断時のショック、治療への不安、再発への恐れ - 治療関連の変化
放射線治療や化学療法による体調の変化、昼間の眠気 - 薬の影響
ステロイド薬による覚醒作用、抗うつ薬や抗がん剤の副作用 - 環境要因
入院生活による寝室環境の変化、照明や騒音、夜間の医療ケア - 生活習慣の乱れ
日中の運動不足、昼寝の習慣、就寝時間の変化
睡眠に悩んだら、まずは「相談」から
「眠れないこと」に対して、「仕方ない」と諦めてしまう人も少なくありません。
ですが、それはケアできる症状です。眠りの問題は、放置すれば精神状態の悪化や体力の低下を招き、日常生活や治療の質に大きく影響してしまいます。
対策の第一歩は、主治医や看護師、緩和ケアチームへの相談。薬剤や睡眠環境、心のケアなど、さまざまな方法から「自分に合った眠りの改善策」を探ることができます。
睡眠の質を高めるセルフケア

ここからは、がん患者さんが無理なくできる「睡眠改善のためのセルフケア」について紹介します。
生活のなかで取り入れられる“やさしい習慣”です。
就寝前のリラックスタイムを持つ
- 深呼吸やストレッチ
→ 息を整え、筋肉をゆるめることで自律神経が整い、眠りやすい状態に - 静かな音楽や読書
→ スマホなどの強い光は避ける - 照明を暗くする
→ 就寝1時間前から、暖色の間接照明へ切り替え
食事とカフェインを見直す
- 就寝前2〜3時間は食べない
→ 胃腸の活動が活発だと眠りにくくなる - コーヒーや緑茶、チョコレートは控えめに
→ カフェインの摂取量を減らす - 栄養バランスの整った食事を意識
→ ビタミンB群・マグネシウムなどを適切に摂る
日中の運動習慣を整える
- 午前中や昼間に軽い運動を行う
→ ウォーキング、ストレッチなど - 寝る直前の激しい運動は控える
→ 身体が覚醒してしまう場合も - 昼寝は30分以内、午後3時までに
→ 深い眠りの妨げを防ぐ
寝室の環境を整える
- 布団やベッドの硬さ・温度を見直す
→ 室温は20〜22度、湿度は50〜60%程度が理想 - 騒音対策
→ 耳栓やホワイトノイズの利用も有効
あとがき
がんという病気は、多くの変化をもたらします。体の痛み、心の不安、治療に伴う副作用…。眠りは、そんな日々を乗り越える力のひとつでもあります。
「眠れないこと」に悩んだとき、自分を責めないでください。大切なのは、自分の気持ちに気づいて、それを少しずつ整えていくことです。
あなたにとって、今日の夜が少しでも安心できる時間となりますように。
