2025.11.11

抗がん剤の副作用「しびれ」を軽くする過ごし方

腕のしびれを表したデッサン人形

がんの治療を続けていく中で、「手足がピリピリする」「物がつかみにくくなった」「靴の中に何か入っている感じがする」など、しびれの症状を訴える患者さんは少なくありません。これは主に抗がん剤治療によって末梢神経に障害が生じることによって起こる副作用の一つです。

しびれは、特に指先や足先にあらわれやすく、「手袋をしているような感覚」や「足の裏に薄い板が入っているような違和感」など、個人によって感じ方はさまざまです。

中には感覚が鈍くなり、熱いものに触れても気づきにくくなったり、歩きにくくなったりと、日常生活に支障をきたすケースもあります。

自分のふくらはぎに触れる女性

がん治療中のしびれの主な原因は、抗がん剤による末梢神経障害(CIPN)です。

これは、抗がん剤ががん細胞だけでなく、健康な神経細胞にも影響を与えることで起こります。

特にタキサン系(パクリタキセルなど)やプラチナ系(オキサリプラチンなど)の薬剤で多く見られます。

また、しびれは治療後すぐに出ることもあれば、数回投与後や終了後に現れることもあり、症状の強さや出現の時期には個人差があります。

まれに、がんが神経に直接関与しているケースや、糖尿病など他の病気が影響していることもあります。

しびれは体重の減少や筋力の低下、冷えなどでも悪化しやすくなるため、総合的に生活を見直すことも大切です。

アームウォーマーで足を温める女性のイラスト

しびれがあると、転倒やけが、やけどなどのリスクも高まります。

以下に、日常生活で取り入れやすい対策や工夫を紹介します。

安全に過ごすためのポイント

  • 滑りにくい靴や靴下を着用しましょう。
    かかとのある履物は安定しやすく、転びにくくなります。
  • 階段や段差には手すりを使い、ゆっくり移動するようにしましょう。
  • 家の中では滑り止めの敷物やマットを活用し、転倒を予防します。
  • ペットボトルやコップなどを持つときは、握りやすい形状のものを使うと安心です。

手先の感覚が鈍いときは

  • 手袋や指サックを活用して、寒さや刺激から守りましょう。
  • ボタンのかけ外しや包丁の使用は注意が必要です。
    無理をせず、家族にサポートしてもらうのもよいでしょう。
  • パソコンのマウスやスマホ操作が難しいときは、タッチペンを使うのも一つの方法です。

身体を温めて血行促進

  • 手足が冷えるとしびれが悪化しやすいため、温かいお湯での入浴や足湯を取り入れましょう。
  • 軽い運動やストレッチも血行を良くするのに有効です。
    無理のない範囲で、1日数回、ゆっくり手足を動かしてみましょう。

神経の働きに関わるビタミンB群やビタミンEなどの栄養素を意識的にとることで、しびれの改善が期待できることもあります。

特に以下のような成分がおすすめです。

ビタミンB群(B1・B6・B12):神経伝達や修復に関与し、末梢神経障害の予防に効果的
α-リポ酸:抗酸化作用があり、神経細胞のダメージを軽減する働きがある
ビタミンE:血流を促進し、神経の保護に役立つ
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA):炎症を抑え、神経機能の維持をサポート
マグネシウム:神経の興奮を抑え、しびれやけいれんの緩和に寄与
亜鉛:神経の再生や免疫調整に関与し、回復力を高める

これらの栄養素は、豚肉、青魚、ナッツ類、海藻、緑黄色野菜などの幅広い食材に含まれており、バランスの取れた食事を心がけることで、しびれの症状を穏やかにする一助となります。

以下に、栄養素を意識したレシピをいくつか紹介します。

しらすと小松菜の炒め物(ビタミンB群・ビタミンE・マグネシウム・亜鉛)

【材料(2人分)】
・小松菜 1束
・しらす 30g
・ごま油 小さじ1
・しょうゆ 少々


【作り方】
小松菜はよく洗い、3~4cmにカットします。
フライパンにごま油を熱し、小松菜をさっと炒めます。
しらすを加えてさらに炒め、最後にしょうゆをひと回しして完成。

鮭のホイル焼き(ビタミンB群・D・オメガ3脂肪酸)

【材料(2人分)】
・生鮭 2切れ
・玉ねぎ 1/2個
・きのこ類(しめじ・エノキなど)適量
・バター 少々
・塩・こしょう 少々

【作り方】
アルミホイルの上にスライスした玉ねぎ、鮭、きのこ類をのせ、バターと塩・こしょうを加えます。
ホイルで包み、トースターまたはグリルで15分ほど焼きます。
中まで火が通ればできあがり。

無理にたくさん食べる必要はありませんが、少しずつでも体に良い食材を取り入れてみましょう。

医療従事者に自分の足を示す女性

しびれは見た目では分かりにくく、周囲に伝わりにくい症状です。そのため、「我慢すべき」と思い込んでしまう患者さんも多いのですが、つらさを抱え込まずに医師や看護師に相談することが大切です。

症状が強くなったり、日常生活に支障をきたすようであれば、薬の変更や投与量の調整、しびれを和らげる薬の併用が検討されることもあります。また、緩和ケアチームやサポーティブケアを活用するのも効果的です。

「こんなこと聞いていいのかな」と思うことでも、遠慮なく相談してみてください。しびれとうまく付き合うためには、自分の状態を知り、伝えることが第一歩になります。

がん治療中のしびれは、心身ともに負担の大きい副作用のひとつです。症状の現れ方や感じ方には個人差がありますが、生活の中での工夫や栄養面のサポート、医療者との連携によって、そのつらさを軽減することは可能です。

大切なのは、無理をせず、自分の体の声に耳を傾けながら過ごすこと。ひとつひとつの小さな工夫が、日々の暮らしを支えてくれるはずです。

困ったときは、ためらわずに医師や看護師、家族に相談してみましょう。あなたのがん治療が、より安心して進められますように。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。