抗がん剤の副作用「発熱」。対処法と受診の判断
抗がん剤治療を受けていると、「熱が出たらどうしよう…」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。特に、これまで経験したことがないような高熱だったりすると、「もしかして、がんが悪化したのでは?」と心配になってしまうこともあるかもしれません。
でも、安心してください。抗がん剤治療中の発熱には、ちゃんとした理由があります。そして、その原因と対処法をあらかじめ知っておくことで、慌てることなく、冷静に対応することができます。
このコラムでは、抗がん剤治療でなぜ熱が出るのか、そして「もしも」のときに知っておきたい対処法を、分かりやすくご紹介します。
なぜ熱が出るの?抗がん剤治療と発熱の関係

抗がん剤は、がん細胞を攻撃する薬です。しかし、がん細胞だけを狙い撃ちするのは難しく、残念ながら、私たちの体の中にある、がん細胞と同じように分裂が活発な正常な細胞にも影響を与えてしまいます。
特に影響を受けやすいのが、骨髄と呼ばれる部分でつくられる白血球です。白血球は、細菌やウイルスなどの病原体をやっつけて、私たちの体を感染症から守るという重要な役割を持っています。
抗がん剤治療を受けると、この白血球が一時的に減少してしまうことがあります。この状態を好中球減少症といいます。好中球は白血球の一種で、体内に侵入した細菌を真っ先に食べたり殺したりする、私たちの体にとって最も頼もしい「兵隊さん」です。
この兵隊さんが少なくなると、どうなるでしょうか?
免疫力が低下するため、普段なら問題にならないような弱い細菌にも感染しやすくなってしまいます。そして、体に細菌が入ってしまったときに、体が「これはまずい!」と警告するために出すサインの一つが「発熱」なのです。
つまり、抗がん剤治療中の発熱は、がんが悪化したからではなく、「体の免疫力が低下しているサイン」であり、「体が感染症と戦おうとしている証拠」だと考えることができます。
「もしも」の時に慌てないために。発熱したときの対処法

「熱が出た!」と気づいたとき、まず慌ててしまうかもしれません。でも、一番大切なのは、冷静になることです。次のポイントを参考に、落ち着いて対応しましょう。
ポイント①:まずは熱を測って記録する
熱が出たと感じたら、まずは体温を測りましょう。熱が出始めた時間や、何度くらい熱があるのかを記録しておくと、後で医師や看護師に状況を伝えるときに役立ちます。
ポイント②:無理をせず、体を休める
熱が出ているときは、体が感染症と戦っている状態です。無理に家事をしたり、外出したりせず、できるだけ体を休めて体力を温存することが大切です。楽な姿勢で横になり、ゆっくり過ごしましょう。
ポイント③:水分補給はこまめに
熱が出ると汗をかきやすく、脱水状態になりがちです。脱水は体調をさらに悪化させる可能性があるため、少量ずつでもこまめに水分を摂るようにしましょう。冷たすぎない水やお茶、スポーツドリンクなどがおすすめです。
どんな時に病院へ連絡すべき?知っておきたい「SOS」のサイン

抗がん剤治療中の発熱は、ただの風邪とは少し違います。白血球が減っている時期の発熱は、重篤な感染症につながる危険性があるため、自己判断せずに、速やかに医療機関に連絡することが重要です。
特に、次のような症状が一つでも現れた場合は、すぐに主治医や看護師、または夜間や休日の窓口に連絡をしてください。
【すぐに病院へ連絡すべき症状】
- 38.0℃以上の熱が出たとき(病院によって基準が異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう)
- 熱がなく、寒気や震えがひどいとき
- 咳や息苦しさ、のどの痛みがあるとき
- 腹痛や下痢があるとき
- だるさがひどく、何もする気になれないとき
- 皮膚に赤い斑点や水疱(すいほう)があるとき
- 尿の量が減ったり、痛みを伴うとき
これらの症状は、体のどこかで感染が起きているサインかもしれません。受診の際には、最近の体温の記録や、どのような症状がいつから現れたかを具体的に伝えられるようにしておくとスムーズです。
発熱を防ぐために。日頃からできる工夫

発熱のリスクを少しでも減らすために、普段からできることがあります。特に、白血球が減少しやすい時期(一般的には抗がん剤投与後約1週間から2週間後)は、次の点を意識して生活しましょう。
- 手洗いやうがいをこまめに行う:帰宅時や食事前はもちろん、こまめに行い、清潔な状態を保ちましょう。
- 人混みを避ける:スーパーやデパート、病院の待合室など、人が多く集まる場所は、できるだけ避けるようにしましょう。
- バランスのよい食事と十分な睡眠:体力を維持することが、免疫力を保つ上でとても重要です。
- 体を清潔に保つ:毎日入浴したり、シャワーを浴びたりして、皮膚をきれいに保ちましょう。
- 部屋を清潔に保ち、換気をする:部屋のほこりを拭き、定期的な換気で空気をきれいにしましょう。
おわりに
抗がん剤治療中の発熱は、決して珍しいことではありません。不安な気持ちになるのは当然のことなので、どうか自分を責めないでください。
一番大切なのは、不安を一人で抱え込まないこと。ご家族や身近な人に「ちょっとしんどいな」と伝えることも、大切な治療の一つです。
このコラムが、発熱という症状と向き合う中で、少しでもあなたの安心につながることを願っています。
