2025.11.12

抗がん剤治療中の関節痛。副作用に負けない対策とは?

ひざを押さえる男性

がんという病気に立ち向かう薬物療法は、治療を進めていく上でとても大切なものです。

その一方で、治療が開始されると同時に、吐き気やしびれなど、さまざまな副作用に悩まされることも多くあります。

副作用の症状は、人によって、また使用される薬の種類や量によってさまざまです。「これくらいは我慢しなくては…」と一人で不安を抱え込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

実は、抗がん剤治療の副作用として手足や関節の痛み、筋肉痛が出ることは、決して珍しいことではありません。特に、乳がんの治療で使用される薬など、特定の薬剤の影響で関節痛が起こることがあります。

「どうして急に関節が痛むようになったんだろう…」と感じるかもしれませんが、それは治療が頑張ってくれている証拠かもしれません。

このコラムでは抗がん剤がなぜ関節痛を引き起こすのか、そして毎日の暮らしの中で痛みを軽減するための対策をご紹介します。

ひざを押さえる高齢女性

関節痛は、抗がん剤治療を受けている患者さんが感じる副作用の一つですが、その原因やメカニズムは複雑で、まだすべてが解明されているわけではありません。薬の種類や患者さんの体の状況によっても変化します。

関節痛が起こる主な原因として、考えられていることをいくつかご紹介します。

ホルモンの変化が影響している可能性

乳がんなど、ホルモンの影響で増殖するがんの治療では、「ホルモン療法薬」という薬が使用されます。

この薬は、女性ホルモンの働きを抑制することでがん細胞の増殖を抑える目的で使われますが、その影響で体内のホルモンバランスが大きく変化し、関節痛や筋肉痛を引き起こすことが考えられています。

免疫反応への影響

抗がん剤は、がん細胞だけでなく、免疫の細胞にも影響を与える可能性があります。この影響によって、関節に炎症が生じ、痛みを伴うことがあります。自己免疫疾患のような症状が出ることもありますが、これは一時的な場合が多いです。

その他の原因

抗がん剤治療は、体に大きな負担をかけます。倦怠感や食欲不振など、他の副作用によって活動量が減少し、関節や筋肉がこわばることで痛みを感じることもあります。

このように、関節痛が出る原因は一つではありません。ご自身が今どのような薬を使用していて、どのような状況なのかを理解することが、痛みを和らげるための第一歩となります。

紙に書かれた電球のマーク

関節痛は、日常生活でのちょっとした動作にも支障をきたしてしまうことがあります。買い物に行く、料理をする、掃除をする…どれも大変な作業に感じられてしまうかもしれません。

ここでは、病院に行くほどではないけれど何とかしたいと感じる方のために、ご自宅でできるやさしい対策をいくつかご紹介します。

無理のない範囲で、体を動かしてみましょう

「痛いのになぜ動かすの?」と思われるかもしれませんが、関節は動かさないでいると、ますますこわばって痛みが強くなってしまうことがあります。痛みがない、あるいは程度が軽くて済むときに、無理のない範囲で体を動かすことが大切です。

具体的な運動メニュー例

手足の指のストレッチ
手のひらを広げたり閉じたりをゆっくりと繰り返します。
足の指でじゃんけんをするように、開いたり閉じたりしてみましょう。
肩と首のストレッチ
ゆっくりと肩をすぼめるように上げて、ストンと落とします。
首をゆっくり左右に傾けたり、回したりしてみましょう。
軽いウォーキング
無理のない範囲で、近所をゆっくりと散歩します。最初は5分からでも構いません。

痛む部分を温めたり、冷やしたりする

関節痛の症状が出ている部分に直接働きかける方法もあります。

痛みの種類によって、温めるか冷やすかを使い分けることが重要です。

  • 温める
    関節がこわばっている、朝に痛みが強い、鈍い痛みが続く…といった症状には、温めることが効果的です。
    温かいお風呂にゆっくり入る、温湿布やホットタオルを使用する、湯たんぽを利用するなどの方法があります。
  • 冷やす
    関節が熱を持っている、腫れている、ズキズキとした痛みがあるときには、冷やすことが効果的です。
    冷湿布や氷を入れた袋などを当てることで、炎症を抑える力が働きます。

食事で体の内側から整える

抗がん剤による関節痛は炎症や免疫反応の影響で起こることが多いため、抗炎症作用や軟骨保護作用のある栄養素を意識的に摂ることが重要です。

食事だけで完全に防ぐことは難しいですが、痛みの緩和や回復のサポートのために行えることのひとつです。

  • オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)
    炎症を抑え、関節の腫れや痛みを軽減する働きがある。青魚や亜麻仁油に豊富。
  • ビタミンD
    骨や関節の健康維持に不可欠で、免疫調整にも関与。鮭、卵黄、きのこ類に含まれる。
  • カルシウム
    骨の強化と関節の安定に役立つ。小魚、乳製品、青菜などに多く含まれる。
  • マグネシウム
    筋肉や神経の調整に関与し、痛みやこわばりの緩和に効果的。海藻、ナッツ、豆類がおすすめ。
  • コラーゲン
    軟骨の構成成分で、関節の弾力性を保つ。鶏皮、豚足、ゼラチン食品などから摂取可能。
  • ビタミンC
    コラーゲンの合成を助け、関節の修復をサポート。柑橘類、パプリカ、ブロッコリーに豊富。
  • 抗酸化成分(ポリフェノール・ケルセチンなど)
    炎症を抑え、関節細胞の酸化ストレスを軽減。玉ねぎ、緑茶、ベリー類などに含まれる。

関節痛に配慮した簡単レシピ例

ブロッコリーとゆで卵のごまマヨ和え(2人分)

ブロッコリーとゆで卵のごまマヨ和えの料理写真

【材料】
ブロッコリー…1/2株(約150g)
ゆで卵…2個
マヨネーズ…大さじ1
すりごま…大さじ1
塩…少々(茹で用)
黒こしょう…少々(お好みで)

【作り方】
1.ブロッコリーを小房に分けて塩茹でし、冷ましておく
2.ゆで卵をくし切りにして、ブロッコリーと一緒にボウルに入れる
3.マヨネーズとすりごまを加えて和え、黒こしょうで味を調える

たっぷりきのこの豆乳スープ(2人分)

きのこの豆乳スープの料理写真

【材料】
しめじ…1/2パック(約50g)
えのき…1/2袋(約50g)
まいたけ…1/2パック(約50g)
玉ねぎ…1/4個(薄切り)
無調整豆乳…300ml
コンソメ(顆粒)…小さじ1
オリーブオイル…小さじ1
塩・こしょう…少々

【作り方】
鍋にオリーブオイルを熱し、玉ねぎときのこ類を炒める
しんなりしたら豆乳とコンソメを加えて弱火で温める
(沸騰させないよう注意)
塩・こしょうで味を調えて完成!

生活の中で体を守る工夫

関節への負担をできるだけ減らす工夫も、痛みを軽減することにつながります。

  • 姿勢に注意する
    長時間同じ姿勢でいると関節に負担がかかります。
    立ったり座ったり、こまめに姿勢を変えるようにしましょう。
  • 杖やサポーターを利用する
    痛みが強い場合、歩行時に杖を使用したり、関節をサポーターで支えたりするのも一つの方法です。
  • 入浴で体を温める
    湯船にゆっくりつかることで、体全体が温まり、血行が促進され、関節のこわばりが和らぐことが期待できます。
患者に説明を行う医師

ここまでご自身でできる対策をいくつか紹介しましたが、痛みが強くて日常生活に支障をきたしたり、上記の対策で改善が見られなかったりする場合は、一人で我慢しないでください。

主治医や看護師、薬剤師に相談することが何よりも大切です。

  • 相談のタイミング
    痛みが出始めたとき、夜も眠れないくらいつらいときなどは、我慢せずにすぐに伝えましょう。
  • 相談する相手
    まずは、治療の内容をよく知っている主治医や看護師に話すのが一番です。
    薬の副作用の専門家である薬剤師に相談してみるのも良いでしょう。
  • 相談するとどうなる?
    痛みを和らげるための鎮痛剤や湿布薬が処方される可能性があります。
    また、リハビリの先生を紹介してもらえる場合もあります。

相談することは決して恥ずかしいことではありません。患者さんの痛みや不安を和らげることが、医療者の役割です。

抗がん剤治療中の関節痛は、治療が進んでいる証拠であると同時に、心にも体にも負担をかける症状です。症状の出方には個人差があり、同じ薬を使用していても、痛みを感じる方と感じない方がいます。

このコラムでご紹介した対策は、あくまでも参考です。すべてを一度に行う必要はありません。ご自身の体の声に耳を傾け、無理のない範囲で、できることから少しずつ試してみてください。

そして、つらいときには、ご家族や医療者を頼ってください。一人で抱え込まず、周りのサポートを利用しながら、治療と上手に付き合っていくことが大切です。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。