抗がん剤治療による倦怠感の症状と対策を徹底解説
抗がん剤治療は癌細胞と闘う重要な方法である一方で、さまざまな副作用を伴います。その中でも「倦怠感」は多くの患者様が経験されるつらい症状の一つです。
「全身がだるい」「何もする気が起きない」といった疲労感に、自分の心が折れそうになることもあるかもしれません。
しかし、この倦怠感は、決して自分の頑張りが足りないわけではありません。
抗がん剤が体内で作用し、癌細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えることで起こる自然な反応なのです。
このつらさを少しでも軽減できる方法を、一緒に考えていきましょう。
「だるい」の正体とは

抗がん剤治療に伴う倦怠感は、単なる疲れとは少し異なります。
倦怠感は、薬ががん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすことで生じると考えられています。
特に、体内でエネルギーを作り出す仕組みが一時的に低下したり、炎症反応が高まったりすることで、全身のだるさや疲れやすさが強く感じられるようになります。
また、治療の過程で貧血が進んだり、食欲の低下や睡眠の質の変化が重なることも、倦怠感を増幅させる要因になります。
こうした複数の影響が重なり合うことで、日常生活に支障をきたすほどの疲労感として現れることがあるとされています。
この疲労感が強くなると、日常生活の活動が低下し、これまでできていた仕事や家事も困難になることがあります。
まずは、自分の倦怠感がどのようなパターンで起こるのかを知ることが大切です。
抗がん剤の種類や投与量、個人の体質によって、その出方は人それぞれ。
治療の開始からどれくらいの時間で倦怠感が始まり、どの程度続くのか、最もだるいのはいつか、どのような時に強く感じるのかなど、自分の状態を観察し、メモを取るのもよいでしょう。
これは、医師や看護師、薬剤師といった医療スタッフに相談する際の重要な情報源となります。
倦怠感を記録するときのポイント
・いつ頃からだるさを感じ始めたか。
・治療のどの時期に倦怠感が強くなるか(例:投与後〇日目)。
・どの程度のだるさか(例:10段階で〇)。
・だるさの変化(例:日中より夕方がつらい)。
・倦怠感の他に、吐き気、下痢、口内炎、痛み、不眠などの症状があるか。
「だるい」を和らげるために

抗がん剤による倦怠感は、身体への影響が大きいため、身体的なケアが非常に大切です。
無理なくできる工夫を日常生活に取り入れることで、少しでも楽になるヒントが見つかるかもしれません。
質の良い休息をとる
「だるい」と感じる時、無理をして活動しようとするとかえって疲労が蓄積し、回復が遅れることがあります。
積極的に休息をとることが必要です。
・短い昼寝
→ 日中に20~30分程度の短い昼寝は、疲労の軽減に役立ちます。
ただし、長く寝すぎると夜間の不眠につながることもあるので注意しましょう。
・休息の時間を作る
→ 家事や仕事、活動の合間に休憩を挟むなど、意識的に休息の時間を設けるようにしましょう。
家族に協力をお願いすることも大切です。
・寝具の工夫
→ 快適な寝具を選び、寝室の温度や湿度を調整して、質の良い睡眠がとれるように工夫しましょう。
栄養バランスのよい食事を摂る
食欲不振や吐き気、口内炎、下痢などの消化器系の副作用は、栄養状態を低下させ、倦怠感を強くする原因になります。
食べられる時に食べられるものを少量ずつでも摂取することが大切です。
・食べやすいものを口にする
→ のどごしのよいもの、香りの少ないもの、あっさりしたものなど、自分が食べられるものを優先しましょう。
ゼリーやヨーグルト、プリン、スープ、うどんなどもよいでしょう。
・少量を頻回に
→ 一度に多く食べるのがつらい場合は、少量を1日に数回に分けて食べる工夫を。
・食べ物の温度を調整する
→ 吐き気がある時は冷たいものが食べやすいこともあります。
口内炎がある場合は、刺激の少ないぬるめのものがよいでしょう。
・栄養補助食品の活用
→ 食事からの摂取が難しい場合は、医療用の栄養補助食品を活用することも検討してみてください。
薬剤師や管理栄養士に相談すると、自分に合ったものを紹介してもらえます。
・水分補給
→ 脱水は倦怠感を悪化させる要因です。こまめに水分を摂取しましょう。
無理のない運動
倦怠感がある時に運動なんて、と思われるかもしれませんが、適度な運動は疲労の軽減につながることが知られています。
ただし、無理は禁物です。
・軽い散歩
→ 体調のよい時に、自宅の周りを軽く散歩するだけでも気分転換になり、体力の維持にも役立ちます。
・ストレッチやヨガ
→ 自宅でできる簡単なストレッチや、座ってできるヨガなども身体を動かすのによい方法です。
・活動と休息のバランス
→ 無理なく運動ができる時間が限られているかもしれません。
本当にやりたいこと、大切な活動にエネルギーを使うことを優先し、あとは休息に充てるなど、メリハリをつけることが大切です。
身体を温める
身体を温めることやマッサージは、血行を促進し、リラックス効果も期待できます。
・入浴
→ 体調がよい時は、シャワーだけでなくゆっくりと湯船に浸かるのもよいでしょう。
アロマオイルなどを活用して、気分転換を図るのもおすすめです。
ただし、貧血などがある場合は、のぼせないよう注意が必要です。
・温湿布やカイロ
→ だるさを感じる部位に温湿布やカイロを貼ることで、疲労感が軽減されることがあります。
・軽めのマッサージ
→ 家族に手足や肩などを軽くマッサージしてもらうのもよいでしょう。
ただし、皮膚が敏感になっている場合や痛みがある場合は、無理のない範囲で。
心のケアも忘れずに

抗がん剤治療中の倦怠感は、身体的なつらさだけでなく、精神的な負担も伴います。「いつまでこの状態が続くのだろう」「自分は役に立たない」など、不安や焦り、落ち込みを感じることもあるでしょう。
感情を表現する
つらい気持ちを自分の中にため込まず、信頼できる人に話すことが大切です。
・家族や友人に相談する
→ ご家族や親しい友人に、自分の正直な気持ちを伝えることで、理解や共感を得られ、精神的な負担が軽減されることがあります。
・医療者に相談する
→ 医師や看護師、薬剤師は、治療の専門家であるだけでなく、患者さんの精神的なサポートも行っています。
不安やつらさを遠慮なく相談してみましょう。
緩和ケアチームがある病院では、精神的なケアの専門家(精神科医、公認心理師など)に相談できる制度がある場合も多いです。
・患者会やピアサポート
→ 同じ癌を経験した人たちと情報交換をしたり、気持ちを分かち合ったりできる患者会やピアサポートの場もおすすめです。
自分と同じように倦怠感に悩む人がいることを知るだけでも、孤立感が軽減されることがあります。
気分転換を図る
身体がだるくても、気分転換を図ることで、精神的な疲労感が和らぐことがあります。
・好きなことをする
→ 無理のない範囲で、自分が好きなこと、楽しめることを見つけてみましょう。
音楽を聴く、映画を見る、読書をする、絵を描く、手芸をするなど、自宅でできることでも十分です。
・自然に触れる
→ 庭の植物を眺める、ベランダで外の空気を吸うなど、自然に触れることで心が癒されることがあります。
・アロマテラピー
→ リラックス効果のあるアロマオイルを活用するのもよいでしょう。
完璧を目指さない
これまでのように家事や仕事ができないことに、焦りや自己嫌悪を感じるかもしれません。
しかし、治療中は無理をしないことが大切です。
・優先順位をつける
→ 体力やエネルギーが限られている中で、本当に必要なこと、大切なことを見極めて、優先順位をつけましょう。
・人に頼る
→ 家族や友人、地域のサポート制度などを活用し、助けを借りることをためらわないでください。
家事代行サービスや宅配サービスなども利用を検討してみましょう。
・「ま、いっか」の気持ち
→ 完璧でなくてもよい、と割り切る気持ちも大切です。散らかったままでも、料理を作らなくても、大丈夫。
自分を責めずに、体を休めてください。
病院との連携と情報収集

倦怠感は、治療の計画や方針に影響を与える可能性のある重要な症状です。
医療者との連携を密にし、適切な情報を活用することが改善への近道となります。
主治医や看護師、薬剤師への相談
倦怠感が日常生活に支障をきたす程度の場合、あるいはこれまでとは異なる強さやパターンで現れた場合は、迷わず主治医や看護師、薬剤師に相談しましょう。
・症状を具体的に伝える
→ いつから、どの程度、どのようなだるさで、他にどのような症状を伴うのかなど、具体的に伝えることが大切です。
・原因の特定
→ 貧血や甲状腺機能低下など、倦怠感の原因となる別の身体的な問題がないか、血液検査などで確認することもあります。
・対処法の検討
→ 薬で症状が軽減できる場合や、栄養療法の見直し、活動量の調整など、適切な対処法を一緒に検討してくれます。
情報の活用
信頼できるサイトや情報源を活用することも大切です。
・国立がん研究センターがん情報サービス
→ 癌や治療、副作用に関する正確で豊富な情報が掲載されています。
・各病院のがん相談支援センター
→ 癌に関するあらゆる相談を受け付けている窓口です。
医療費や社会制度、心理的なサポートなど、幅広く支援してくれます。
・患者向けの冊子やパンフレット
→ 病院内で配布されている患者さん向けの冊子には、副作用の対処法が分かりやすくまとめられていることが多いです。
家族のサポートも大切

患者様が倦怠感と闘う中で、ご家族の存在は非常に大きいものです。
しかし、ご家族もまた、精神的な負担や疲労を感じることがあります。
・患者さんの気持ちに寄り添う
→ 「だるい」という患者さんの訴えを軽く見ず、共感し、寄り添う姿勢が大切です。
・無理強いしない
→ 「もっと動いた方がいい」「食べないと体力が落ちる」といった無理強いは、かえって患者さんを追い詰めることになります。
・休息の機会を作る
→ 患者さんの休息だけでなく、ご家族自身の休息も大切です。
介護疲れを感じたら、地域のサポート制度や一時的な医療サービスの利用を検討してみましょう。
・情報を共有する
→ 医療者からの情報は、ご家族も一緒に聞くことで、患者さんの状態を理解し、適切なサポートを提供しやすくなります。
まとめ
抗がん剤治療中の倦怠感は、非常につらい副作用の一つです。
しかし、自分一人で抱え込まず、医療者やご家族、社会のサポートを活用しながら、自分の体と心の声に耳を傾けることが大切です。
倦怠感は、治療の過程で起こる一時的な変化です。治療が終了し、体力が戻るにつれて、だるさも軽減されていくことがほとんどです。
今のつらさがいつか過去になる日が来ることを信じて、焦らず、自分を労りながら、一歩ずつ進んでいきましょう。
