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「治療を頑張りたい気持ちはあるのに、吐き気で食べられない」「匂いを嗅ぐだけで気分が悪くなる」「体力をつけたいのに、何を食べたらいいかわからない」――。
抗がん剤治療を受けていると、吐き気のつらさは多くの患者さんが経験する悩みです。
せっかく治療を続けているのに、食事が取れない、眠れない、思うように過ごせない。そんな不安やストレスは、あなただけのものではありません。
このコラムでは自宅でできる吐き気対策や、少しでも食べやすくなる食事の工夫、簡単レシピを紹介します。
「何をどう試せばいいか」「今すぐできることは何か」をわかりやすくまとめました。今日から吐き気を少しでもラクにするヒントを、一緒に探していきましょう。
吐き気の副作用はなぜ起こる?

抗がん剤が体内に入ると、脳の中にある「化学受容器引き金帯(CTZ)」という部分がそれを感知します。
ここから「嘔吐中枢」に指令が飛び、吐き気が誘発されます。
また、消化管(胃や腸)の粘膜が刺激されると、そこから放出されたセロトニンなどの物質が迷走神経を伝わって脳に信号を送ることも分かっています。
吐き気は、現れる時期によって大きく3つに分類されます。
これを知っておくと、いつ、どのような薬を使うべきかの指標になります。
- 急性悪心・嘔吐
- 抗がん剤の投与開始から24時間以内に現れるもの。
- 遅延性悪心・嘔吐
投与から24時間後以降、数日間にわたって続くもの。 - 予期性悪心・嘔吐
以前のつらい経験から、「病院に行くだけで」「薬の匂いを嗅ぐだけで」吐き気を感じてしまうもの。
(心理的な要因が強いのが特徴です)
また、治療の内容や体質、心理的な不安などによっても吐き気の出方は人それぞれです。
そのため「みんな我慢しているから」と比べる必要はありません。
吐き気を少しでも減らす工夫を、自分のペースで探していくことが大切です。
今すぐできる!自宅での吐き気対策

吐き気があるときは、心身ともに消耗し、何をするにも億劫になってしまうものです。
医療機関でのケアはもちろん大切ですが、身の回りの環境をほんの少し整えるだけで、そのつらさが和らぐこともあります。
ここでは、ご自宅でリラックスして過ごすために、今すぐ取り入れられる小さな工夫をご紹介します。
・部屋の空気と匂いを見直す
強い匂いは吐き気を悪化させます。調理中は換気扇を強めに回し、できるだけ部屋の空気を入れ替えましょう。
また、普段は好きな香りであっても、治療中は花や香料の匂いが不快に感じられることがあります。
そのため、香水を控えたり、無香料の洗剤を使用したりすることがおすすめです。
・締め付けない服を着る
ウエストや首まわりを締め付けるような服・ベルト・下着は、胃の圧迫感を強めます。
呼吸がしやすい、ゆったりした部屋着でリラックスしましょう。
・体勢を変えてみる
横になるときは右を下にして寝ると、胃の内容物が逆流しにくくなります。
背中を少し起こした姿勢で休むのもおすすめです。
・口の中をさっぱりさせる
歯磨きやうがいで口の中を清潔に保ちましょう。
ミントやレモン味のガムやキャンディを少しなめるだけでも、気分転換になります。
吐き気を和らげる食事のヒント
ここでは、吐き気が表れているときの食事のヒントと、比較的食べやすいレシピを案内します。
食事の対策
・食べるタイミングを工夫する
「時間だから食べなきゃ」と無理をせず、食べられそうな時に少量ずつ取りましょう。
空腹すぎても吐き気が出やすいので、少しずつ何回かに分けて食べるのがコツです。
・食材選びと調理法のポイント
温かい食事より、匂いの少ない冷たい食事の方が食べやすい傾向があります。
冷たい麺類、冷製スープ、冷ややっこなどが向いています。
●吐き気が強いときにおすすめの食材
・喉越しが良いもの
ゼリー、アイスクリーム、シャーベット、プリン、豆腐など。
・さっぱりしたもの
そうめん、冷やし茶漬け、果物(スイカ、リンゴなど)。
・乾いたもの
クラッカーやトーストなど(喉を通りやすく、適度に胃酸を吸着・中和するため、朝起きたときのムカムカを抑えるのに役立つことがあります)
油っぽいもの、甘いお菓子、香辛料が強い料理は避けましょう。
代わりに、消化がよくて匂いの少ないおかゆや蒸し野菜がおすすめです。
・味付けのコツ
味は濃すぎないようにしましょう。
塩やしょうゆよりも、酢やレモン汁で酸味を加えたり、梅干しやしょうがを添えたりすると、口の中がさっぱりして不快感が和らぎ、食欲が戻ることがあります。
・飲み物の工夫
吐き気が続くと脱水になりやすくなります。
経口補水液やスポーツドリンクを冷やして、少しずつ飲みましょう。炭酸水を少しずつ飲むのも気分転換になります。
水を飲むのもつらいときは、氷を舐めるだけでも水分補給になります。
簡単にできる!吐き気対策レシピ
◆あっさりマッシュポテト

材料(1人分)
- じゃがいも:1個(150g程度)
- 水:適量
- 塩:ひとつまみ
作り方
1. じゃがいもを薄切りにして、柔らかくなるまで茹でる
2. 湯を切ってフォークでつぶす
3. 塩をほんの少し加えて味を整える
→ バターを使わないので匂いが控えめ。胃にもやさしいです。
◆とろろご飯

材料(1人分)
- ご飯:100g
- 長いも:50g
- 醤油:数滴(香りが気になる場合は入れなくてもOK)
作り方
1. 長いもをすりおろす
2. ご飯にかける
3. 醤油をほんの少し垂らす
→ つるっと食べられるので、固形物がつらい時にも向いています。
◆バナナヨーグルト

材料(1人分)
- バナナ:1/2〜1本(食べられそうな量でOK)
- プレーンヨーグルト:100g
- はちみつ:小さじ1(お好みで。なくても大丈夫)
作り方
1. バナナを薄く切る
2. ヨーグルトをかける
3. 甘みがほしい場合、はちみつを少量加える
→ においが強くなく、冷たくて口当たりがやさしいので、吐き気があるときにも比較的食べやすい一品です。
つらいときは我慢しないで医師に相談を

「薬を飲んでも効かない」「毎回つらくて食べられない」と感じたら、医師や看護師に遠慮なく伝えましょう。
吐き気を抑える薬(制吐薬)は、種類を組み合わせたり飲み方を変えたりすることで効果が高まることがあります。
「いつ」「どんなとき」に吐き気が出るかをメモしておくと、医師に伝えやすくなります。
よく使われる制吐薬の種類
・セロトニン受容体拮抗薬(5-HT3拮抗薬)
→ 抗がん剤投与後すぐの吐き気に効果的です。消化管からの信号をブロックします。
・NK1受容体拮抗薬
→ 長く続く吐き気に効きやすい薬です。脳の嘔吐中枢への指令を直接抑え込みます。
・ステロイド(デキサメタゾンなど)
→ 短期間の使用で吐き気を抑えます。
・ドパミン受容体拮抗薬
→ 胃の動きを整えます。
・抗不安薬
→ 精神的な緊張による「予期性吐き気」に効果的です。
医師に伝えたいポイント
・吐き気が始まったタイミング(治療直後か、数日後か)
・1日のうち吐き気があった回数と、実際に吐いた回数
・食事と水分がどの程度摂れているか
・処方された吐き気止めが効いている時間、効かない時間
・副作用の有無(便秘、眠気など)
こうした情報を伝えることで、より自分に合った薬を選んでもらえます。
家族が協力できること

患者さんのそばにいるご家族も、何ができるか悩まれることでしょう。
・無理に食事を勧めない
「栄養があるから食べて」という励ましが、吐き気のある患者さんにはプレッシャーになることもあります。
「食べられそうなものがあったら教えてね」という、一歩引いた見守りが安心感につながります。
・口腔ケアを助ける
吐いた後は口の中が酸性になり、不快感が残ります。
こまめなうがいや、刺激の少ない歯磨きを促してあげてください。
・清潔な環境づくり
枕元のゴミ箱をこまめに空にする、部屋の空気を入れ替えるといった環境整備も大事です。
心のケアも副作用対策のひとつ

抗がん剤の吐き気には、気持ちの影響が大きいことがあります。
前回のつらい経験を思い出すと、「また来るかも」と不安になり、吐き気を感じることがあります。
心を落ち着けるための行動
・音楽を聴く
・好きな香りをティッシュに少しつけて深呼吸
・軽いストレッチや瞑想
・信頼できる人に気持ちを話す
気持ちを吐き出すことも立派なケアのひとつです。
おわりに
抗がん剤の吐き気は、心身ともに負担が大きい副作用です。しかし、小さな工夫とサポートを積み重ねることで、「今日はなんとか乗り切れた」という日が増えていきます。
無理をせず自分のペースで、周りに頼りながら「大丈夫」を少しずつ増やしていきましょう。
このコラムが、あなたの不安を少しでも軽くし、治療に向き合う毎日の支えになれたら幸いです。
がんという病と向き合う中で、多くの患者さんが経験する副作用の一つに、抗がん剤による「白血球の減少」があります。
医師から「白血球が減っています」と伝えられると、感染症にかかりやすくなるというイメージから、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
「熱が出たらどうしよう」「風邪を引かないか心配」「外出は控えるべき?」など、日々の生活の中で様々な疑問が湧いてくることでしょう。
しかし、白血球の減少は、抗がん剤ががん細胞を攻撃する際に起こる、一般的な影響です。
この症状を正しく理解し、適切な対策を行うことで、不安を和らげ、感染症のリスクを減らすことができます。
このコラムでは、抗がん剤治療中の白血球減少の原因と身体への影響を解説するとともに、患者さんご自身とご家族が実践できる日常での感染症の予防方法をご紹介します。
白血球減少の原因と身体への影響とは?

白血球とはどんな細胞?
白血球は、体を守るために働く「免疫細胞」のひとつで、血液の中を常に巡回しながら、細菌やウイルスなどの異物を見つけて対処する役割を担っています。
体内に侵入した病原体を察知すると、白血球はすぐに反応し、異物を排除するためのさまざまな働きを行います。
白血球にはいくつかの種類があり、それぞれ得意とする役割が異なります。
細菌への素早い対応を担うもの、ウイルスに対抗するもの、異物の情報を記憶して次に備えるものなど、多様な仕組みが連携することで、私たちの体は日々の生活の中で外敵から守られています。
こうした白血球の働きは、普段は意識することがありませんが、健康を保つうえで欠かせない存在です。
白血球が十分に働ける状態であれば、ちょっとした傷や体調の変化にも体が自然と対応できます。
しかし、この白血球が減ってしまうと、体を守る力が弱まり、感染症に対して敏感になりやすくなります。
白血球が減少する理由とは
私たちの体には、細菌やウイルスなどの病原体から身を守るための、免疫という仕組みがあります。
その中心的な役割を担っているのが白血球です。白血球は血液の中を巡り、体内に侵入した異物を見つけて排除する働きをしています。
なかでも好中球は、細菌をいち早く察知し、直接取り囲んで分解する働きを持つ即戦力のような存在です。
しかし、抗がん剤治療では、この白血球を作る骨髄の細胞にも影響が及びます。
抗がん剤は、がん細胞のように増殖の早い細胞を狙って作用しますが、骨髄の細胞も同じく活発に分裂しているため、治療の影響を受けやすいのです。
その結果、白血球の数が一時的に減少し、特に好中球が大きく低下することがあります。
白血球が最も減りやすい時期は、抗がん剤投与後10〜14日頃といわれています。
この期間は、骨髄が薬の影響を受けているため、新しい白血球が十分につくられにくく、免疫力が大きく低下しやすいタイミングです。
治療のサイクルごとにこの波が繰り返されるため、体調の変化に気づきやすくしておくことが大切です。
白血球減少がもたらす身体への影響
白血球、特に好中球が減ると、体は細菌に対抗する力が弱くなります。
普段なら問題にならないような小さな傷や口内炎でも、細菌が増えやすくなり、感染が広がるリスクが高まります。
発熱や喉の痛み、咳、排尿時の違和感など、日常的な症状が感染のサインとなることもあります。
また、白血球が少ない時期は、体の中で起きている炎症反応が表れにくくなることがあります。
通常であれば、細菌が体に侵入すると発熱や腫れなどの反応が起こりますが、白血球が不足していると、こうした“異変のサイン”が弱く出ることがあります。
そのため、症状が軽くても油断せず、体調の変化に敏感でいることが重要です。
さらに、白血球減少は体力や気力にも影響を及ぼすことがあります。
免疫力が低下している状態では、普段より疲れやすくなったり、体が重く感じたりすることもあります。
これは、体が外敵から身を守るためのエネルギーを十分に使えない状態になっているためです。
こうした理由から、白血球が低下している期間は、感染症を防ぐための対策がとても大切になります。
手洗い・うがい、人混みを避ける、食事の衛生に気をつけるなど、日常生活の中でできる工夫が、体を守る大きな力になります。
感染症を寄せ付けないための5つの習慣

白血球が減少している期間は、感染症にかかりやすい状態です。
しかし、日常生活の中でできる簡単な工夫を行うことで、そのリスクを大幅に減らすことができます。
これらの予防方法を家族全員で行い、患者さんをサポートしましょう。
こまめな手洗いとうがい
感染症の原因となる細菌やウイルスは、手や口から体内に入りやすいため、日頃の衛生習慣がとても重要です。
特に白血球が減っている時期は、普段以上に手洗いやうがいを丁寧に行うことで、感染のリスクを大きく下げることができます。
・外から戻った時、食事の前、トイレの後にはしっかりと手洗いを行いましょう。
・手洗い後は、ペーパータオルなどで水気を拭き取り、しっかりと乾燥させましょう。
・うがいは、口や喉の細菌を洗い流してくれます。水またはうがい薬を使い、毎日行いましょう。
マスクを使用する
マスクは、咳やくしゃみによる飛沫を防ぐだけでなく、外からの細菌やウイルスの侵入を抑えるためにも有効です。
白血球が減っている時期は、普段より感染しやすくなるため、外出時のマスク着用が大切になります。
・病院や人混みなど、人が多く集まる場所へ行く際は、必ずマスクを着用しましょう。
・マスクが濡れたり汚れたりした時は、新しいものに交換し、常に清潔な状態を保ってください。
食事の注意点
食べ物から細菌が侵入することを防ぐためには、日頃の食事管理が大切です。
白血球が減っている時期は、普段よりも食材の衛生や調理方法に気を配ることで、感染のリスクを大きく下げることができます。
・十分に加熱された食品を選びましょう。
生肉、生魚、生卵などは避け、調理時もしっかりと火が通ったか確認しましょう。
・野菜や果物はしっかりと洗い、表面の汚れや細菌を落としましょう。
・賞味期限や消費期限が切れた食品は食べないようにし、保存状態にも気を付けましょう。
口腔ケアと皮膚の保護
口内炎や乾燥した皮膚は、細菌が入り込みやすい場所になるため、日頃のケアが大切です。
特に白血球が減っている時期は、口内や皮膚の状態を整えることで感染のリスクを下げることができます。
・食後にはしっかりと歯磨きを行い、口内を清潔に保ちましょう。口腔内を潤すためのスプレーなどを利用することもおすすめです。
・皮膚の乾燥は、保湿クリームで保護しましょう。
・爪は短く切り、皮膚を傷つけないように注意してください。
清潔な環境を保つ
生活環境を清潔に保つことも、感染症を防ぐうえで大切です。とくに白血球が減っている時期は、普段より細菌に対して弱くなっているため、身の回りの衛生管理を意識しましょう。
・ドアノブや電気スイッチなど、手がよく触れる場所はこまめに拭き取り、清潔に保ちましょう。
・寝具は定期的に交換し、湿気や汚れをためないようにしましょう。
発熱した時の対処法

白血球減少中の発熱は、感染のサインである可能性があります。慌てずに、冷静に対処することが大切です。
発熱したら、まず相談を
発熱を感じたときは、まず落ち着いて体温を測り、現在の状態を確認しましょう。
白血球が減っている時期の発熱は、体が感染に対して弱くなっているサインである可能性があります。
体温が37.5℃以上ある場合は、自己判断で様子を見るのではなく、すぐに病院へ連絡することが重要です。
病院に連絡すると、医師や看護師が症状や体温の変化を確認し、次のような対応が案内されます。
・外来での診察
血液検査で白血球や好中球の数を確認し、感染の有無を調べます。
必要に応じて、抗菌薬の点滴や内服薬がその日のうちに開始されることがあります。
・入院が必要と判断された場合
免疫力が大きく低下していると考えられる場合は、入院して治療を受けることになります。
入院中は、点滴治療や感染管理がより厳密に行われ、体調の変化にすぐ対応できる環境が整っています。
・自宅での過ごし方の指導
軽症で外来対応となった場合でも、体温の記録方法や衛生管理、食事・休養の取り方など、家庭での注意点について具体的なアドバイスが得られます。
指示に沿って生活することで、自宅でも安全に過ごしやすくなります。
がん治療中の発熱は、単なる風邪とは異なり、感染症の初期サインである可能性が高いため、早めの連絡と受診がとても大切です。
迷ったときはためらわず医療者に相談し、指示に従うことが安全につながります。
相談時に伝えるべきこと
発熱や体調の変化があった際に医療者へ相談するときは、状況を正確に伝えることが適切な判断につながります。
特に白血球が減っている時期の発熱は、感染症のサインである可能性があるため、事前に必要な情報を整理しておくと安心です。
医師や看護師に伝えるべき主なポイントは次のとおりです。
・熱の上がり方
いつ頃から発熱が始まったのか、現在の体温は何度か、どのくらいの間隔で上昇しているかなど、体温の変化を具体的に伝えます。
・その他の症状の有無
咳、喉の痛み、下痢、腹痛、吐き気など、発熱以外に気になる症状があれば、軽いものでも共有しましょう。
症状の組み合わせは診断の手がかりになります。
・治療を受けている病院名
複数の医療機関を利用している場合や、時間外に相談する場合は、どこで治療を受けているかを明確に伝えることで、対応がスムーズになります。
・服用している薬の種類
抗がん剤以外にも、内服薬やサプリメントなど、現在飲んでいるものを把握しておくと、薬の影響や相互作用を判断する助けになります。
これらの情報をあらかじめメモしておくと、慌てずに相談でき、医療者側も状況を正確に把握しやすくなります。
適切な対処につながる大切な準備として、日頃から記録しておくことをおすすめします。
自己判断で薬を使わない
白血球が減っている時期は、体が感染に対して弱くなっているため、自己判断で市販の解熱剤や痛み止めを使うことは避けましょう。
薬の種類によっては、発熱などの重要なサインを抑えてしまい、感染症の発見が遅れる可能性があります。
また、症状が一時的に軽くなったように見えても、原因となる問題が進行してしまうこともあります。
体調に不安がある場合や薬を使いたいと感じた時は、必ず医師や医療スタッフに相談し、適切な判断を仰ぐことが大切です。
おわりに
白血球減少は、抗がん剤治療の過程で一時的に起こる変化であり、多くの方が経験するものです。
治療が進むにつれて徐々に回復していくため、必要以上に恐れる必要はありません。
ただし、体の抵抗力が弱まっている時期でもあるため、体調の変化に気づいたときは早めに対応することが大切です。
不安を抱えたまま過ごすことは、心身の負担につながります。
発熱や体調の違和感がある場合だけでなく、気持ちの面で心配が生じたときも、ひとりで抱え込まずに医療者やご家族に相談してください。
治療中は、体調の変化に敏感になりやすく、先の見えない不安を感じることもあるかもしれません。
そうした時期を少しでも安心して過ごすために、このコラムが、患者さんご自身とご家族の皆さまの助けとなれば幸いです。
がん治療を受けていると、「なんだか毎日疲れやすい」「息切れがひどい」「立ちくらみがする」といった体の変化を感じることがあります。
これらは、体に酸素を運ぶ赤血球やヘモグロビンが減ることで起こる「貧血」が原因かもしれません。
抗がん剤治療では、骨髄の働きが一時的に弱まり、赤血球が作られにくくなるため、貧血は比較的よくみられる副作用のひとつです。
症状が進むと、動くとすぐに息が上がったり、体が重く感じたりと、日常生活に影響が出ることもあります。
「年齢のせいかな」「治療の疲れかな」と見過ごしてしまう方も少なくありませんが、早めに気づいて対処することが大切です。
このコラムでは、抗がん剤と貧血の関係、そして治療を続けながら少しでも楽に過ごすための対策について、わかりやすく解説していきます。
抗がん剤と貧血の関連とは

貧血は、がんそのものによっても、治療によっても起こり得る症状です。
特に抗がん剤治療を受けている患者さんでは、いくつかの要因が重なり、赤血球が減少しやすい状態になります。
赤血球は体のすみずみに酸素を届ける重要な役割を担っているため、数が減ると疲れやすさや息切れ、立ちくらみなど、日常生活に影響するさまざまな不調が現れます。
ここでは、抗がん剤治療中に貧血が起こりやすくなる主な理由を、順を追って解説します。
● 骨髄へのダメージ
抗がん剤は、がん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にも影響を及ぼします。
特に影響を受けやすいのが、血液を作り出す「造血細胞」がある骨髄です。
骨髄がダメージを受けると、赤血球・白血球・血小板といった血液成分を十分に作れなくなります。
赤血球の産生が追いつかなくなることで、貧血が進行しやすくなります。
これは抗がん剤治療で最も一般的な貧血の原因といえるでしょう。
● 腎臓の機能低下
腎臓は老廃物を排出するだけでなく、「エリスロポエチン」という赤血球を増やすホルモンを作っています。
抗がん剤の種類によっては腎臓に負担がかかり、このホルモンの分泌が低下することがあります。
エリスロポエチンが不足すると、骨髄が赤血球を作る指令を受け取れず、結果として赤血球の数が減ってしまいます。
● 栄養不足・食欲不振
抗がん剤治療中は、吐き気や口内炎、味覚の変化などが起こりやすく、食欲が落ちてしまう方が多くいます。
食事量が減ると、赤血球の材料となる鉄、ビタミンB12、葉酸といった栄養素が不足しがちです。
これらの栄養素は赤血球を作るうえで欠かせないため、不足すると貧血がさらに進行しやすくなります。
● 出血や感染症の影響
抗がん剤の影響で血小板が減ると、出血しやすくなります。
消化管などで起こる小さな出血は自覚しにくいものの、積み重なると貧血の原因になります。
また、治療中は免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
感染症が起こると赤血球が壊れやすくなることがあり、これも貧血を悪化させる要因となります。
貧血が現れたら、医師に相談を

がん治療中は、体調の変化が起こりやすく、普段なら気にならないような小さな症状でも、治療の影響が隠れていることがあります。
どんな些細なことでも、遠慮せずに医師や看護師へ相談することが大切です。
特に、次のような症状がある場合は貧血が関係している可能性があります。
よくみられる貧血の症状
・少し動いただけで息切れや動悸がする
・以前より疲れやすく、体が重く感じる
・めまいや立ちくらみが増えた
・顔色が青白く見える
・手足が冷えやすくなった
・集中力が続かず、ぼんやりすることが増えた
これらは赤血球が減り、体に十分な酸素が行き届かなくなることで起こる典型的なサインです。
症状が軽い段階でも、治療の進行とともに悪化することがあるため、早めの相談が安心につながります。
医師に伝えるときの言い方の例
「最近、少し歩いただけで動悸がして息切れします」
「朝起きるのがつらく、疲れがずっと抜けません」
「立ち上がるとふらつくことが増えました」
このように、“いつから・どんな場面で・どの程度つらいか” を具体的に伝えると、医師も状況を把握しやすくなります。
貧血かどうかを判断するには血液検査が必要です。症状を丁寧に伝えることで、医師が適切なタイミングで検査を行い、必要な対策を早く取ることができます。
治療を安全に続けるためにも、気になる変化は抱え込まず、早めに相談することが大切です。
鉄とビタミンCを補給!貧血対策レシピ
貧血を防ぐためには、鉄やビタミンB12、葉酸といった赤血球づくりに欠かせない栄養素をしっかりとることが大切です。
なかでも動物性食品に含まれる「ヘム鉄」は吸収率が高く、効率よく鉄分を補給できます。
また、鉄の吸収を助けるビタミンCを一緒にとることで、より効果的に体に取り入れられます。
食事を少し工夫するだけでも、体調の改善につながることがあります。
ここでは、忙しいときでも簡単に作れる、貧血対策に役立つレシピをご紹介します。
あさりと豆腐のスープ

【材料】(2人分)
・あさりの水煮缶…1缶(約100g)
・絹ごし豆腐…1/2丁
・生姜(すりおろし)…小さじ1
・だし汁…300ml
・しょうゆ…小さじ2
・小ねぎ(お好みで)…少々
【作り方】
1.鍋にだし汁とあさり缶(汁ごと)を入れ、中火で温める。
2.絹ごし豆腐をスプーンでひと口大にすくって加える。
3.生姜としょうゆを加えてひと煮立ちさせる。
4.火を止め、お好みで小ねぎを散らす。
ほうれん草とツナのおひたし

【材料】(2人分)
・ほうれん草…1/2束
・ツナ缶(ノンオイル)…1缶
・しょうゆ…小さじ1
・砂糖…少々
【作り方】
1.ほうれん草をさっとゆで、水にとって冷まし、水気をしぼる。
2.食べやすい長さに切り、ツナとしょうゆ、砂糖を混ぜる。
3.よく和えて、器に盛る。
※ すりごまを大さじ1加えて、ごま和えにするのもおすすめです。
レバーペースト風ディップ

【材料】(作りやすい分量)
・鶏レバー…100g
・牛乳…適量(下処理用)
・バター…10g
・にんにく…1/2片
・塩こしょう…少々
【作り方】
1.鶏レバーは血抜きしてから牛乳に30分ほど浸したら、水で洗って下処理をし、ざく切りにする。
2.フライパンにバターとにんにくを入れて香りを出し、レバーを炒める。
3.火が通ったらミキサーやフードプロセッサーでペースト状に。塩こしょうで味を調える。
※ バケットやクラッカー、野菜スティックにつけてどうぞ。
◎ フルーツ入りヨーグルトスムージー

【材料】(1杯分)
・プレーンヨーグルト…100g
・バナナ…1/2本
・冷凍いちご…3〜4個
・はちみつ…小さじ1〜2
【作り方】
1.材料をすべてミキサーに入れる。
2.なめらかになるまで撹拌し、コップに注ぐ。
※ 口当たりが良いので、食欲不振時にもおすすめです。
医療の力も借りて対策を

日常生活の工夫だけでは改善が難しい貧血に対しては、医療的なサポートを受けることで症状が和らぎ、治療をより安全に続けやすくなります。
貧血は放置すると疲れや息切れが強くなり、生活の質が大きく低下してしまうため、必要に応じて治療の一環として積極的に取り入れていくことが大切です。
● よく使われる対処法
・鉄剤の処方
鉄分が不足している場合、内服薬や点滴で鉄を補う治療が行われます。
鉄は赤血球の材料となるため、不足を補うことで貧血の改善につながります。
・ビタミン剤の補給(ビタミンB12・葉酸など)
赤血球を作るには鉄だけでなく、ビタミンB12や葉酸といった栄養素も欠かせません。
食欲不振や治療の影響で不足している場合、医師の判断で補給が行われます。
・エリスロポエチン製剤
腎臓で作られる「エリスロポエチン」というホルモンは、骨髄に赤血球を作るよう指示する役割があります。
このホルモンが不足している場合、製剤を使って赤血球の生産を助ける治療が行われます。
・輸血
急激に貧血が進んだ場合や、強い倦怠感・息切れがあり日常生活に支障が出ている場合には、輸血が選択されることがあります。
即効性があるため、症状を早く改善したいときに有効です。
これらの治療法は、すべて医師が患者さんの体調や血液検査の結果を踏まえて選択します。無理をして我慢する必要はありません。必要なときにはしっかりと医療的なサポートを受けることで、治療期間をより安心して過ごすことができます。
おわりに
がんと向き合う毎日の中では、体調の小さな変化をつい後回しにしてしまいがちです。
しかし、「しんどい」「つらい」という感覚は、決して我慢する必要のない大切なサインです。
貧血による症状は、適切に対処すれば軽くできることも多く、早めに気づくことで治療中の負担を減らすことができます。
どうかご自身の体の声にそっと耳を傾け、無理をしない選択を大切にしてください。
つらさを抱え込まず、必要なときには医療スタッフの力を借りながら、少しでも安心して治療を続けられるようにしていきましょう。
がんの治療を続けていく中で、「以前よりも疲れやすくなった」「風邪などの感染症が気になる」と感じることは少なくありません。
これは、病気そのものの影響に加え、抗がん剤や放射線療法などの治療によって、体内の免疫システムが一時的に不安定になることが関係しています。
免疫の働きを維持し、健やかな日常生活を送るためには、十分な休息とともに「栄養」の力が欠かせません。
なかでもビタミンは、免疫細胞が正しく働くための調整役として、非常に重要な役割を担っています。
本コラムでは、免疫に関わりの深いビタミンの科学的な役割と、体調に合わせた無理のない摂り方について詳しく解説します。
がん治療と免疫の関係とは

なぜ、がん治療において免疫の働きを保つことが大切なのでしょうか。
それには、スケジュール通りに治療を進めることと、日々の生活の質(QOL)を保つという、二つの大きな理由があります。
免疫の働きが低下しやすくなる理由
治療中は、以下のような要因で細菌やウイルスと戦う白血球などの免疫細胞が減少したり、その力が弱まったりすることがあります。
- ・治療による影響
→ 抗がん剤などは骨髄に作用することがあり、新しい免疫細胞が作られるペースが一時的に落ちることがあります。 - ・身体的な負担やストレス
→ 手術後の回復期や長期の通院による疲れ、精神的な不安などは、自律神経を介して免疫の働きに影響を与えます。 - ・栄養の偏り
- → 食欲不振や味覚の変化で食事が思うように摂れないと、免疫細胞を作るための「材料」が不足してしまいます。
免疫の状態を整えておくことは、感染症などの余計なトラブルを防ぎ、治療を円滑に進めるための「身体の基礎づくり」となるのです。
次章からは、そんな免疫をサポートする代表的なビタミンである、ビタミンC・ビタミンD・ビタミンAについて説明します。
ビタミンC ― ダメージから細胞を守る

ビタミンCは、免疫をサポートする栄養素として最も馴染み深いものの一つです。
免疫における役割
- ・細胞を酸化から守る
- → 治療によって体内に発生する「活性酸素」は、正常な細胞を傷つける原因になります。
- ビタミンCはこれを取り除く「抗酸化作用」を持ち、免疫細胞がダメージを受けるのを防ぎます。
- ・免疫細胞の活性化
- → 体内に侵入した病原体と戦う白血球の働きを助け、抵抗力を高めます。
- ・皮膚や粘膜の修復
- → 身体のバリアである皮膚や粘膜を健やかに保つコラーゲンの生成を助けます。
効率的な摂り方
ビタミンCは熱に弱く、水に溶け出しやすい性質があります。
- ・生の果物を活用する
- → キウイ、いちご、みかんなどは調理の手間がなく、ビタミンCをそのまま摂れる優れた食材です。
- ・加熱は短時間で
→ ブロッコリーやピーマンなどの野菜は、蒸したり電子レンジを使ったりすることで、栄養が水に流れ出るのを抑えられます。 - ・イモ類を取り入れる
- → じゃがいも等のビタミンCはデンプンに守られているため、加熱しても壊れにくいという特徴があります。
ビタミンD ― 免疫のバランスを整える

近年の研究で、免疫の「調整役」として非常に注目されているのがビタミンDです。
免疫における役割
- ・過剰な炎症を抑える
→ 外部からの侵入者には素早く反応しつつ、自分自身の身体を攻撃してしまうような過剰な炎症を抑える「ブレーキ」の役割を果たします。 - ・抗菌力を高める
→ 体内で細菌やウイルスに対抗する物質(抗菌ペプチド)が作られるのを助けます。 - ・治療を支える土台づくり
→ 血中のビタミンD濃度が適切に保たれていることは、治療中の体調管理や生活の質の維持に良い影響を与えることが報告されています。
効率的な摂り方
ビタミンDは脂溶性(油脂に溶ける性質)のため、油と一緒に摂ると吸収が良くなります。
- ・魚を主菜にする
- → 鮭、サバ、イワシなどの青魚はビタミンDが豊富です。
- ・干ししいたけを利用する
→ 調理前に30分ほど日光に当てるだけで、ビタミンDの量が増えます。 - ・適度な日光浴
- → 体調が良い日は、10分程度ベランダなどで日光を浴びるだけでも、体内でのビタミンD合成が促されます。
ビタミンA ― ウイルスの侵入を防ぐバリア

ビタミンAは、鼻や喉などの「入り口」を守る役割を担っています。
免疫における役割
- ・粘膜の健康を保つ
→ 鼻、喉、気管、消化管などの粘膜は、病原体が最初に触れる防衛線です。 - ビタミンAはこれらの粘膜を潤し、ウイルスなどが付着・侵入するのを防ぎます。
- ・バリア機能を強める
→ 粘膜の細胞が新しく生まれ変わるのを助け、身体のバリアを常に正常な状態に保ちます。
効率的な摂り方
緑黄色野菜に含まれる「β-カロテン」は、体内で必要な分だけビタミンAに変わるため、安全に摂取できます。
- ・油と一緒に調理する
→ にんじん、かぼちゃ、ほうれん草などは、炒め物にしたりドレッシングをかけたりすることで吸収率がアップします。 - ・スープや煮物にする
→ 野菜を柔らかく煮ることでカサが減り、無理なく量を食べられるようになります。
体調が優れないときの食事の工夫

抗がん剤の副作用によって思うように食べられない場合の、具体的な対処法をまとめました。
味覚の変化があるとき
「以前好きだったものが美味しく感じられない」という場合は、味のアクセントを工夫してみましょう。
- ・酸味を利用する
→ レモンなどの柑橘類を使うと、口の中がさっぱりして食べやすくなることがあります。 - ・温度を下げる
→ 温かい料理は匂いが立ちやすく、不快感につながることがあります。冷製スープや冷やし野菜など、常温以下にすると匂いが抑えられます。
口内炎があるとき
粘膜が敏感になっているときは、刺激を避けることが最優先です。
- ・刺激の少ないメニューを選ぶ
→ 柑橘類などの酸っぱいものは避け、かぼちゃのポタージュやマッシュポテトなど、喉越しの良いものを選びます。 - ・飲み込みやすくする
→ ミキサーにかけたり、とろみを付けたりすることで、噛むときの痛みを減らし、スムーズに飲み込めるようにします。
おわりに
免疫の働きを整えることは、がん治療を支え、あなたらしい毎日を守るための大切な土台となります。
ビタミンC・D・Aを日々の食事に取り入れることは、身体が本来持っている力を引き出すための、身近で確かな方法です。
体調に波がある中で工夫を続けるのは大変なことですが、無理のない範囲で、今日できることから始めてみてください。
がん治療において、抗がん剤や分子標的薬などを用いた薬物療法を継続する中で、皮膚の色調が変化する「色素沈着」が現れることがあります。
顔のくすみ、爪の黒ずみ、あるいは手足の関節まわりの変色など、その現れ方はさまざまです。
こうした外見上の変化は直接的な痛みや生命に関わる症状ではないものの、鏡を見る際や日常生活の中で心理的な負担や戸惑いを感じる要因となります。
本コラムでは、色素沈着のメカニズムを正しく理解し、日常生活でどのようにケアを行い、前向きに治療を継続していくかについて、医学的根拠に基づいた情報を提供します。
がん治療と色素沈着のメカニズム

薬物療法による色素沈着は、薬剤が皮膚の「メラニン」に関わるプロセスに影響を及ぼすことで発生します。
主なメカニズムは3点あります。
第一に、薬剤の成分が表皮にあるメラニン細胞(メラノサイト)を直接刺激し、色素の生成を過剰に促進させてしまう点です。
第二に、本来は代謝(ターンオーバー)によって体外へ排出されるべきメラニンが、薬剤の影響で皮膚組織内に留まってしまう「排出の停滞」という点。
そして第三に、一部の細胞毒性抗がん剤が皮膚の基底層にダメージを与え、炎症後の反応として色素が定着するという点です。
これらの変化は、特定の部位に薬剤が蓄積しやすい性質や、日光(紫外線)による外部刺激が加わることでより現れやすくなります。
がん種や薬剤の種類、個人の体質により現れ方は異なりますが、これらは薬が体内で作用していることに伴う二次的な反応です。
色素沈着が起こりやすい部位

色素沈着は、特定の部位に集中して現れる傾向があります。
ご自身の状態を確認する際の目安としてください。
起こりやすい部位
・顔面: 特に頬や額など、日光に当たりやすい部分。
・手足: 指の関節、手のひら、足の裏、肘、膝などは、摩擦や圧迫が加わりやすい箇所です。
・爪: 爪自体が黒ずんだり、帯状の線が現れたりすることがあります。
・その他: 首まわりや、下着などで圧迫されやすい部分。
副作用や病気で起きることも
・細胞毒性抗がん剤
→ カペシタビン、ドセタキセル、エリブリンなど、多くのがん種で使用される薬剤の副作用で現れることがあります。
・分子標的薬
→ 皮膚の再生に関わる因子に作用するため、皮膚症状が現れやすい特徴があります。
・手足症候群
→ 手のひらや足の裏に赤みや痛みが生じた後、その部位が色素沈着として残る場合があります。
病院への相談と連携

色素沈着は、患者さんの「生活の質(QOL)」に直結する重要な症状です。
「これくらいのことで相談してもいいのかな」と一人で抱え込まず、気になる変化があれば主治医や看護師に相談しましょう。
相談の際のポイント
・変化の時期と場所:いつ頃から、どの部位が変化したか。
・随伴症状:かゆみ、痛み、腫れ、あるいは皮膚のめくれなど、他の症状が伴っていないか。
・経過の記録:スマートフォンなどで写真を撮っておくと、診察時に変化が伝わりやすくなります。
必要に応じて皮膚科専門医との連携や、薬剤の調整、適切な保護剤の処方を受けることができます。
日常生活で実践できるセルフケアと予防

色素沈着を完全に防ぐことは簡単なことではありません。
しかし、物理的な刺激(摩擦・圧迫)を軽減しメラニン細胞を活性化させないように気を付けたり、目立たなくさせたりすることは可能です。
衣類・靴の対策
・衣類の工夫
→ 縫い目やゴムの締め付けが刺激になることがあります。
特に、首回り、手首、ウエスト部分がゆったりとした綿素材の衣類を選ぶと、肌への負担が軽減されます。
・靴の選択
→ 足裏や指の関節は色素沈着が起こりやすい部位です。
足を圧迫しないサイズの靴を選び、必要に応じて柔らかいインソールを活用して摩擦を抑えましょう。
紫外線対策(UVケア)
紫外線はメラニン細胞を活性化させ、色素沈着を定着・悪化させる大きな要因となります。
・日焼け止めの使用
→ 低刺激性でSPF30程度のものを、露出部にこまめに塗布します。
・日光を遮るアイテムを活用
→ 帽子、日傘、長袖の着用、手袋の使用などが有効です。
保湿の徹底
皮膚のバリア機能が低下すると外部刺激を受けやすくなり、炎症から色素沈着につながることがあります。
・低刺激の保湿剤を塗布
→ 洗顔後や入浴後、皮膚が清潔な状態で速やかに保湿を行います。
・摩擦を避ける
→ 皮膚を清潔に保つことは重要ですが、ゴシゴシと擦ることは逆効果です。
洗顔や入浴時はたっぷりの泡を使い、手で優しく包み込むように洗うのが基本です。
体を洗う際はナイロンタオル等でこすらず、泡で優しく洗うように心がけてください。
色素沈着が起きたら

すでに色素沈着が現れている場合でも、適切な対応を継続することで症状の悪化を最小限に抑え、治療後の回復をスムーズにする準備ができます。
悪化を防ぐための「レスキューケア」
色素沈着をこれ以上濃くさせないためには、炎症を早期に鎮めることが重要です。
・炎症の鎮静(冷却)
→ 手のひらや足裏に赤みや熱感があるときは、保冷剤をタオルで包み、優しく冷やして炎症を鎮めてください。
・食事の見直し
→ 皮膚の代謝(ターンオーバー)を健やかに保つため、ビタミン類を含むバランスの良い食事を心がけましょう。
・刺激を避ける
→ 色素沈着が起きている部位は非常に敏感です。
体を洗う際の摩擦や、きつい衣類による圧迫をこれまで以上に避けるよう意識してください。
外見の変化を補完するための「アピアランスケア」
外見の変化による心理的負担を軽減するために、専門的な手法を取り入れることも検討してください。
・医療用化粧品の活用
→ 肌への負担が非常に少ない、がん治療の副作用カバーに特化したコンシーラーやファンデーションが普及しています。
・専門家への相談
→ 病院内の「がん相談支援センター」では、皮膚の状態に合わせたメイク技術や、爪の変色をカバーするネイルケアの方法など、外見の悩みについて具体的なアドバイスを受けることが可能です。(利用を希望する場合は、各病院の相談支援センターに確認するのが確実です)
治療が終了した後は
最も心に留めておいていただきたいのは、この症状の多くは「永続的なものではない」という点です。
治療が終了し薬剤の影響がなくなれば、皮膚の細胞は少しずつ元の状態へと入れ替わっていきます。
また、部位や個人差はありますが、治療終了後、数ヶ月から1年程度をかけて、ゆっくりと確実に薄くなっていくことが一般的です。
現在の肌の変化は、治療に懸命に取り組んでいることの証である「一時的な現象」です。
今は皮膚の自然な回復力を支える時期だと捉え、無理のない範囲でケアを続けていきましょう。
おわりに
色素沈着をはじめとする皮膚の副作用は、多くの場合、治療の終了とともに時間をかけて改善へと向かいます。今の姿が固定されたものではないと理解しておくことが、心の安定につながります。
また、外見の変化は、あなたが懸命に治療に取り組んでいる過程で生じているものです。その変化だけで、あなたの価値や生活の質が損なわれるわけではありません。
大切なのは、ご自身の体調や肌の状態を客観的に観察し、適切なセルフケアを取り入れながら、一歩ずつ進んでいくことです。
日常生活の中で少しでも快適に過ごせるよう、本コラムの情報が皆様の支えとなることを願っています。
がんと診断され、治療に向き合っている毎日。体調管理や通院、先の見えない不安など、心身ともに大変な思いをされていることと思います。
そんな中、もしも突然の災害が起きたら…そう考えると、さらに大きな不安に襲われるかもしれません。
このコラムは、「がん患者だから災害に弱い」と不安に思うのではなく、「がん患者だからこそ、より丁寧に防災を考えよう」と前向きな気持ちになっていただくために、マニュアル的に作成しました。
このページを利用して、日々の不安を少しでも和らげ、安心して生活するための知識と準備を、一緒に進めていきましょう。
【命を守る】防災チェックリスト

災害への不安は、誰しもが抱く自然な感情です。まずはその気持ちを受け入れ、無理なく、できることから始めてみましょう。
防災は義務ではありません。自分と大切な人を守るための、前向きな準備です。
災害時にスムーズな対応を行うための、がん患者様ならではの視点に立ったチェックリストを作成しました。
医療情報、備蓄品、避難時の持ち物の3つの項目に分けて、必要なものを確認していきましょう。
チェックリスト1:医療情報
災害時にかかりつけの病院と連絡が取れなくなったり、避難所で適切な医療を受けられなかったりする事態に対応するため、ご自身の医療情報をまとめておくことが重要です。
- 診断名、病状
- 治療歴(手術、抗がん剤、放射線治療など、時期や内容も詳しく)
- 現在服用中の薬(薬の名前、量、服用回数)
- アレルギー情報
- かかりつけ医・病院の情報(病院名、連絡先、担当医の名前)
- 緊急連絡先(家族、親戚、友人など)
これらの情報を紙のノートや手帳に手書きするだけでなく、スマートフォンのメモ機能などを活用して、複数の方法で保管しておくと安心です。
チェックリスト2:備蓄品
基本的な防災グッズに加えて、がん患者様特有の備蓄品を準備しておきましょう。最低3日分、おすすめは1週間分です。
これにより、災害時に自宅で過ごす場合も生活を安定させ、治療への影響を最小限に抑えることができます。
食品
・消化が良く、食べやすいもの(おかゆ、ゼリー飲料、レトルトのお惣菜など)
・栄養補助食品やプロテイン飲料
・食欲がない時でも口にしやすいもの(飴、ビスケットなど)
衛生用品
・口腔ケア用品(歯ブラシ、マウスウォッシュ、保湿剤など)
・体を清潔に保つための清拭タオルやウエットティッシュ
・治療部位に合わせた専用の衛生用品(ストーマ用品など)
医療品
・常備薬(多めに)、常備薬リスト
・治療に必要な器具や備品
・消毒液、ガーゼ、包帯などの応急処置セット
その他
・体温調節ができる衣類(カーディガン、ストールなど)
・ストレスを軽減するアイテム(本、音楽プレイヤーなど)
チェックリスト3:避難時の持ち物
災害が発生した直後に家を空けて避難する場合の、非常用持ち出し袋の中身をリストにしました。
非常用持ち出し袋は、両手が空くリュックサックがおすすめです。玄関など、いつでも持ち出せる場所に置いておきましょう。
- 医療情報をまとめたもの(お薬手帳、上記のチェックリスト)
- 常備薬(3日〜1週間分)
- 水(500mlペットボトル数本)
- 非常食(カロリーメイト、ゼリー飲料など)
- 携帯電話の充電器、モバイルバッテリー
- 懐中電灯
- 貴重品(現金、身分証明書のコピーなど)
- マスク、除菌シート、ウエットティッシュ
- 防寒具(使い捨てカイロ、ブランケットなど)
避難生活で心と体を守るために

実際に避難生活を送ることになった場合、心と体を守るためにできる工夫をいくつかご紹介します。
衛生面を保つ
避難所では感染症のリスクが高まります。
こまめな手洗いやうがいはもちろん、清拭タオルなどで体を拭き、清潔を保つことが大切です。
また、簡易トイレなどを活用して、衛生的な環境を確保することも重要です。
食事と水分補給
備蓄食を温めたり、消化の良いものを少しずつ摂ったりして、体調を崩さないようにしましょう。
脱水症状を避けるため、こまめな水分補給も忘れずに行ってください。
ストレスを和らげる
避難生活は大きなストレスを伴います。
無理のない範囲で体を動かしたり、好きな音楽を聴いたり、家族や友人と話したりして、心を休める時間を作りましょう。
仕事と治療の両立
現役世代のがん患者さんにとって、災害時の仕事と治療の両立は大きな課題です。
災害による避難生活が長期化した場合、仕事への影響も懸念されます。
日頃から企業の健康管理室や相談窓口、保健師さんに相談しておくことで、万が一の時の支援制度の内容を知っておくことができます。
働く人々が安心して治療に専念できるよう、企業や組織も支援のマニュアルを作成しています。
ご家族・周囲の方へ

ご家族は、患者様にとって何よりの安心できる方々です。災害時には役割分担を決めておくことが大切ですが、それ以上に「患者様の不安を受け止め、落ち着いた態度で寄り添う」ことが心構えとして重要です。
薬や医療情報の管理、避難場所の確認、避難所での生活サポートなどを協力して行いましょう。
また、患者様の小さな体調の変化に気づくことも、家族ならではの大切な役割です。
困ったときは家族だけで抱え込まず、地域の人や支援団体に声をかける勇気を持ちましょう。
「一人で頑張る防災」ではなく、「みんなで支え合う防災」が、患者様と家族にとって最も心強い備えとなります。
おわりに
がんという病気と向き合いながらの防災は、決して簡単なことではありません。
しかし、それは決して怖いことではなく、「未来の笑顔を守るための準備」です。日々の生活の中に、少しずつ備えを組み込んでいくことで、いつの間にか精神的な対策にもなっているはずです。
このコラムが、皆様の防災への第一歩となり、少しでも心の安心につながることを願っています。
がんの治療を終え、いざ自宅に帰るとなったとき、不安な気持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。
特に、身体の状況が変わると、慣れ親しんだ自宅にも思わぬ危険が潜んでいるように感じてしまうものです。
でも、どうぞご安心ください。
住み慣れたご自宅で、これまで以上に安全に、そして心穏やかに過ごすための方法はたくさんあります。
このコラムでは、自宅を安心できる場所にするためのバリアフリーのヒントや、費用の負担を軽くするための公的な支援制度についてお伝えします。
無理にすべてを変える必要はありません。一つずつ、できることから確認していきましょう。
バリアフリー、「なぜ?」と「どこから?」

なぜ、自宅にバリアフリーが必要なのか
がん治療によって患者さんの生活は大きく変わることがあります。手術や入院、通院での診療を重ねるうちに、体力や身体の自由度が以前と異なる状況になる方も少なくありません。
ちょっとした段差につまずいたり、滑りやすい床で転倒したりといった、思わぬ事故を防ぐために、バリアフリーはとても重要な役割を果たします。
在宅療養に移行するとき、ご自宅を少しだけ見直してみることをおすすめします。
それは、ご自身やご家族が、ご自宅という一番安らげる場所で、健康に、そして安全に過ごすための最初の一歩になるからです。
バリアフリーを整えるメリットとは
バリアフリー環境を整えることは、患者様本人・ご家族・そして長期的な面からも、メリットがあります。
◆患者本人のメリット
・転倒・怪我の予防
→ 治療中は体力低下や骨粗鬆症リスクがあるため、段差解消や手すり設置で安全性が高まります。
•自立支援
→ 生活動線が整うことで「自分でできること」が増え、生活の質(QOL)が向上します。
•心理的安心感
→ 不安が減り、療養に集中できる環境になります。
◆家族・介護者のメリット
•介護負担の軽減
→ 介助動作が楽になり、腰痛や疲労を防げます。
•訪問医療・看護の円滑化
→ 医療スタッフが機器を運びやすく、処置もスムーズに。
◆長期的なメリット
•在宅療養の継続性
→ 安全な環境が整うことで入院を減らし、在宅での生活を続けやすくなります。
•経済的メリット
→ 補助金を活用すれば費用負担を抑えつつ、長期的には医療費や介護費の削減につながります。
•家族全員の安心
→ 患者だけでなく同居家族の安全性も高まります。
優先して検討したい場所
ご自宅のバリアフリーを考える際、どこから手をつければよいか迷う方もいらっしゃるかもしれません。
特に、以下の場所は転倒や事故が起きやすいため、優先的に確認することをおすすめします。
・トイレ
立ち座りの動作が負担になることがあります。
便座の横に手すりを設置したり、洋式便器への交換を検討したりすることで、一人でも安全に利用できるようになります。
・浴室
滑りやすい床や、浴槽をまたぐ動作に危険を伴う可能性があります。
滑り止めマットを敷いたり、浴槽や壁に手すりを取り付けることで、安心感がぐっと増します。
・階段
手すりがない階段は、大きなリスクになります。
手すりの設置は、転倒予防に非常に有効な対策です。
・玄関や出入り口
大きな段差があると、外出が億劫になってしまうことがあります。
スロープを設置したり、段差をなくしたりする工事が検討されます。
また、それ以外の場所については、以下のような取り組みを行うと安心です。
◆優先場所以外の工夫
•照明の工夫…夜間の移動時の転倒を防止(足元灯やセンサーライト)
•手すり以外の補助具…滑り止めマット、昇降補助椅子など
•家具配置の見直し…動線を広く取り、車椅子や歩行器が通れるスペースを確保
こうした工夫は、ご本人だけでなく、介護を行うご家族の負担も軽減します。
在宅療養を支えるお金の話

リフォームにはお金がかかるとお考えの方もいらっしゃると思います。
しかし、ご心配いりません。在宅での療養を支援するための公的な制度や助成金があることをご存じでしょうか。
これらの制度は、ご自身やご家族の負担を少しでも軽くするために用意されています。
介護保険制度の活用方法
介護保険は、病気や障害によって介護が必要となった方を支える大切な制度です。がんの患者さんは、40歳から64歳までの方でも、末期の状態と診断された場合、介護保険を利用することが可能です。
介護保険を利用すると、福祉用具(手すり、車椅子、介護ベッドなど)をレンタル・購入する際の費用や、自宅をバリアフリー化するための住宅改修費について、補助を受けることができます。
原則として、自己負担は1割(所得によって2割または3割)となり、大きな費用負担を抑えることができます。
使えるお金は他にも!高額療養費制度と障害年金
治療費や生活の費に関する不安は、患者さんとご家族の心に重くのしかかります。
しかし、日本には、そのような負担を軽減するための公的な制度がいくつかあります。
- 高額療養費制度
この制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費の自己負担額が、ひと月で定められた上限額を超えた場合に、その超えた分の費用が払い戻される制度です。
年齢や所得によって上限額は異なります。入院や手術、抗がん剤治療など、医療費が高額になりがちながん治療の際に、患者さんを支援する重要な制度です。
事前に申請しておくことで、窓口での支払いを上限額までにとどめることも可能です。 - 障害年金
がんの治療によって仕事を続けることが難しくなったり、障害が残ったりした場合に受けることができる年金制度です。
「障害」という言葉に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、この制度は生活を支えるための公的な仕組みです。
ほかにも、仕事を休んで療養している方が生活費を受けられる傷病手当金制度もあります。
これらの制度については、それぞれの適用条件や内容が異なるため、掲載されているサイトや窓口で確認することが必要です。
その他の支援制度
- 生活福祉資金貸付制度
公的な融資制度で、生活を送る上で一時的な支援が必要な方に、比較的低い利息でお金を貸してくれる制度です。 - アピアランスケア
外見の変化による心の負担を軽減するためのケアです。
ウィッグや乳がんの温存療法など、アピアランスケアに関連する費用について、一部の自治体が助成を行っている場合があります。
これらも、がん患者さんやそのご家族の生活を支援する大切な制度です。
困ったときは一人で悩まないで

制度について調べるのは、たしかに複雑で難しく感じるかもしれません。
そんなとき、これらの制度をスムーズに利用するための相談先が、あなたの身近な場所にあります。
- がん相談支援センター
全国のがん医療を提供する病院に設置されており、がんの患者さんやご家族が、治療のことだけでなく、生活やお金に関する相談を無料で受けられる窓口です。
専門の相談員が、一人ひとりの状況に合わせて、必要な情報やアドバイスを提供してくれます。 - 各自治体の窓口
介護保険や障害年金の申請は、お住まいの市区町村の窓口で行います。
直接問い合わせることで、最新の情報や、申請の流れを詳しく聞くことができます。 - 社会保険労務士
障害年金の申請など、複雑な手続きについて、専門家の支援を受けることが可能です。
どんなに小さなことでも構いません。まずは一歩踏み出して、頼れる場所に相談してみることが、あなたの生活をより豊かにする最初の一歩となります。
さいごに
がんと診断され、治療を受けるなかで、生活の状況が変化したり、お金に関する不安を抱えたりすることは自然なことです。しかし、あなたを支援するための制度や情報は、確実に存在しています。
このコラムが、ご自身やご家族の生活を少しでも安心して過ごすきっかけとなれば、これ以上嬉しいことはありません。
温かいサポートが必要なときは、いつでも頼れる窓口があることを知っておいてください。
ご自身と大切な人のために、健康を考える機会にしていただけると嬉しいです。
がんの治療中や療養中、あるいは経過観察中の患者さん、そしてご家族の皆様にとって、体調の変化は大きな不安の原因となることが多くあります。
中でも「かゆみ」は、一般的には皮膚の異常のように思えますが、実は肝臓の機能と深く関連している可能性があります。
この記事では、肝臓がんの患者さんに多く見られる「かゆみ」に焦点を当て、肝臓と皮膚の関係から、なぜかゆみが起こるのか、肝臓がんの症状としてどのように現れるのかを解説します。
さらに、肝臓がんの治療を受けている方が日常で実践できる症状の管理や治療法について詳しくご紹介します。
肝臓がんにおけるかゆみのメカニズム

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、機能障害が進行しても初期にはほとんど自覚症状が出にくいという特徴があります。
しかし、肝臓の機能が低下してくると、体全身に異常のサインとして症状が現れることがあり、その一つが強いかゆみです。
肝臓の機能と皮膚の関係
肝臓は、体内の老廃物や有害な物質を分解・解毒し、胆汁(たんじゅう)という消化液を作って流すという重要な役割を持っています。
この胆汁は、通常、肝臓から流れて腸へと排出されます。
肝臓の病気によってこの一連の流れが阻害されることによって、皮膚にかゆみや黄疸、乾燥などの症状を引き起こします。
かゆみを引き起こす生理学的要因
肝臓がんによって肝機能が低下したり、肝臓の中でがんが胆汁の流れを妨げたりすると、「胆汁うっ滞(たんじゅううったい)」という状態が起こります。
この胆汁うっ滞は、肝機能障害の一種です。
胆汁うっ滞が起こると、胆汁に含まれる物質(特に胆汁酸など)が体内に蓄積し、血液中に増えていきます。
この蓄積された物質が皮膚の下にある神経を直接刺激してしまうことが、全身のかゆみの主な原因と考えられています。
この肝性掻痒(かんせいそうよう)と呼ばれるかゆみは、肝臓がんのほかにも肝炎・肝硬変・原発性胆汁性胆管炎などの肝臓の疾患(病気)と強く関連しており、肝臓の異常を示唆する重要な症状の一つです。
肝臓がんの初期症状

肝臓がんは、肝炎や肝硬変といった慢性的な疾患から進行するケースが日本では多く見られます。
B型肝炎やC型肝炎の感染による慢性肝炎、あるいはアルコールや脂肪肝が原因となる生活習慣病からの肝硬変が、肝がんの主要なリスクです。
かゆみ以外の初期症状
肝臓は痛みを感じる神経が乏しいこと、また、高い予備能力と優れた再生能力を持つことから「沈黙の臓器」と呼ばれます。
そのため、肝臓がんの初期症状は、ほとんどの場合自覚症状がなく、痛みも現れません。健康診断の血液検査などで機能の異常が指摘され、偶然発見されることも多いです。
しかし、進行するにつれて、以下のような症状が現れることがあります。
これらの症状は、一般的な体調不良以外にも、肝臓に何らかの異常が存在している可能性を示唆します。
・倦怠感…体がだるく、疲れやすいと感じる
・食欲低下…食欲がない、または食後の不快感
・腹水…お腹が張って見える、腹部の膨満感
・痛み…肝臓がある部分(右上腹部)の鈍い痛み(特に進行期)
症状の進行とサイン
肝臓の機能がさらに進行して低下すると、黄疸(おうだん)という症状が現れることがあります。
黄疸は、皮膚や目の白目が黄色くなる症状で、これも胆汁うっ滞や機能障害によって起こるものです。
黄疸は肝機能の異常値が高度であることを示唆しており、多くの場合強いかゆみを伴うという特徴もあります。
異常を感じたら、それが肝炎、肝硬変、脂肪肝など、肝臓がん以外の疾患であったとしても、必ず内科や専門医のいる医療機関を受診し、血液検査などの検査を受けることが大切です。
肝臓がんと皮膚症状の関連性

肝臓がんと関連するかゆみは、一般的な皮膚炎と異なり、いくつかの特徴を持っています。
発疹の特徴
肝臓がんや肝硬変によるかゆみ(肝性掻痒)は、皮膚に目立った発疹(ほっしん)や赤みがほとんどなく、かゆみだけが強く現れるケースが多いのが特徴です。
かゆみは全身の部分に起こることが多く、特に夜間や体が温まったときに強く感じ、掻きむしった後に皮膚の損傷や感染を引き起こし、睡眠障害を伴うほど強いかゆみになる患者さんも多くいます。
もし強い発疹が出ている場合は、薬の副作用(抗がん剤療法など)や、肝臓以外の原因による皮膚疾患の可能性も考えられます。
皮膚の状態で気になる点があれば、主治医や専門医に詳しく相談することが必要です。
皮膚症状が示す肝臓がんの進行度
かゆみや黄疸などの全身症状が現れるときは、肝臓がんがある程度進行し、肝機能障害が進んでいるサインの場合があります。
黄疸の有無や程度は、胆汁の流れがどの程度滞っているかを示唆しており、肝がん治療方針を決める上で重要な診断基準となります。
ただし、かゆみの強さが病気の進行程度や転移の有無と必ずしも一致するわけではないことに注意が必要です。
症状に悩む方は、自己判断せずに主治医に相談し、血液検査や画像検査などの検査結果に基づいて正確な診断と治療を受けることが大切です。
肝臓がん患者におけるかゆみの治療法

強いかゆみは患者さんの質の高い生活を妨げる大きな悩みの一つであり、改善のためには治療と日常のケアの両方を行っていくことが必要です。
かゆみを軽減するための治療法
肝臓がんによるかゆみの治療は、原因となっている胆汁うっ滞を改善させることを目的とします。主に薬物療法が行われます。
・薬物療法
胆汁酸の体外への排出を助ける薬(吸着剤など)や、神経の興奮を抑える種類の抗ヒスタミン薬、特定の作用を持つ内服薬(オピオイド受容体拮抗薬など)などが使用されます。
効果には個人差があり、効き方も様々であるため、主治医や薬剤師と相談しながら最適な薬を見つけていく必要があります。
・原因疾患の治療
可能な場合は、肝臓がんそのものに対する療法(手術、放射線療法、薬物療法など)を行います。
胆道の閉塞があれば、内視鏡的治療法などによって胆汁の流れを回復させることを目指します。
皮膚症状の管理とケア
日常生活でかゆみを和らげるための注意点と方法を解説します。
・保湿ケア
皮膚が乾燥すると刺激に敏感になり、かゆみを感じやすくなります。
薬局などで相談し、刺激の少ない保湿剤を使用して、全身を丁寧にケアし、皮膚のバリア機能を改善させます。
・入浴法
熱すぎるお湯はかゆみを強める原因です。ぬるめのお湯で短時間の入浴を行い、入浴後は必ず保湿剤を塗布します。
特に体が温まるとかゆみが起こるケースが多いため注意が必要です。
・衣類
肌への刺激が少ない綿などの素材の服を選び、締め付けの強い衣類は避ける必要があります。
・かゆみ止めの使用
市販のかゆみ止めの薬には、肝機能に影響を与える可能性のあるものや、既存の治療薬との相互作用(効き方への影響や副作用の増強など)が考えられるものもあります。
使用前には必ず主治医または薬剤師に相談して確認してください。
おわりに
肝臓がんと関連するかゆみは、患者さんの質の高い生活を妨げる大きな悩みの一つです。当コラムで解説したように、かゆみは肝臓の異常を示す重要なサインである可能性があります。
もし強いかゆみや黄疸、倦怠感などの症状を感じたら、「一般の皮膚病だろう」と自己判断せずに、主治医やがん診療連携拠点病院などの専門医に相談し、血液検査などの検査を受けることが最も大切です。
肝機能低下や肝がん進行の早期発見、早期診断につなげ、適切な治療とケアを受けて、症状の改善と健康維持を目指しましょう。
がんという病と向き合う中で、多くの患者さんが経験する副作用の一つに、抗がん剤による「血小板の減少」があります。
医師から「血小板が減っています」と伝えられると、出血しやすくなるという情報から、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
「ぶつけた覚えがないのにアザができてしまう」「歯磨きで血が出る」「これって大丈夫なのかな?」など、日々の生活の中で様々な疑問や不安が湧いてくることでしょう。
しかし、血小板の減少は、抗がん剤ががん細胞を攻撃する際に起こる、一般的な影響です。この症状を正しく理解し、適切な対策を行うことで、不安を和らげ、出血のリスクを減らすことができます。
このコラムでは、抗がん剤治療中の血小板減少について、その原因と身体への影響を解説するとともに、患者さんご自身とご家族が実践できる、日常での出血の予防方法をご紹介します。
血小板減少の原因と身体への影響

私たちの体には、血管が傷ついたときに血を止めるための仕組みが備わっています。
血小板は、その役割を担う重要な血液の成分であり、出血を止めるための「かさぶた」の元を作る役割を持っています。
血小板が集まり、傷口をふさぐことで、出血は自然に止まります。
抗がん剤は、がん細胞のように分裂が盛んな細胞を攻撃する薬なので、血小板を作る骨髄の細胞にも影響を与え、血小板の数を少なくしてしまいます。これが血小板の減少が起こる主な原因です。
血小板の減少が起こる時期は、抗がん剤を投与してから10日から14日後に最も低くなることが多いです。
血小板の数が少なくなると、出血しやすくなったり、一度出血すると血が止まりにくくなったりする可能性があります。
皮下の内出血(アザ)や鼻血、歯茎からの出血、点状出血(皮膚の表面にできる小さな赤い点)などの症状として現れることが多くあります。これらの症状に気付いたら、早めに対処することが大切です。
また、血小板の減少は白血球や赤血球の減少を伴うこともあります。
白血球が減少すると感染症にかかりやすくなり、赤血球が減少すると貧血(めまい、ふらつき、倦怠感)の症状が出ることがあります。これらの症状にも注意が必要です。
出血を防ぐための5つの注意点

血小板が減少している期間は、日常生活の中で少し注意を払うことで、出血のリスクを減らすことができます。
これらの予防方法を家族全員で行い、患者さんをサポートしましょう。
転倒や衝突を避ける
転倒したり、身体を硬いものにぶつけたりすると、皮下の内出血や出血の原因になります。手足をぶつけないように、特に手すりを使用するなど、転倒に注意して歩くようにしましょう。
部屋の中でも、つまずきやすいものを片付けるなど、環境を整えることが大切です。
特に夜間は足元が見えにくいため、照明をつけたり、懐中電灯を使用するなど、安全に配慮しましょう。
歯磨きの方法を見直す
歯茎からの出血を防ぐためにも、歯磨きに注意が必要です。柔らかい歯ブラシを使用し、優しく磨きましょう。
歯の間に詰まった食べ物を取るための歯間ブラシやデンタルフロスなどは使用を避けるか、看護師や薬剤師に相談し、正しい使い方を教えてもらいましょう。
出血がある場合は、出血している部位を避けて磨き、かかりつけの歯科医に相談しましょう。
カミソリの使用を避ける
カミソリは皮膚を傷つけやすく、出血の原因になります。電気シェーバーや電動のカミソリを使用するようにしましょう。
また、爪は短く切るように心がけ、皮膚を傷つけないように注意しましょう。
爪切りよりも爪やすりを使用する方が、より安全です。
食事の注意点
食事の工夫で、出血のリスクを減らすことができます。
・口内のケア
→ 口内炎ができていたり、口の粘膜が弱くなっているときは、硬いものや刺激の強いものは避けましょう。
これらは口内を傷つけ、出血の原因になることがあります。
・便秘の予防
→ 食物繊維が少ない食事は便秘を引き起こし、いきみが出血の原因になる可能性があります。
食事や水分補給をしっかり行うことが大切です。
その他の注意点
・鼻を強くかまない
→ 鼻血の原因になることがあります。優しくかみましょう。
・医師の指示なしに薬を飲まない
→ アスピリンなど一部の薬は、出血を止まりにくくさせる作用があります。
処方された薬以外は、医師の許可なしに使用しないようにしましょう。
・打撲を避ける
→ 強いマッサージや腹部の圧迫、マッサージは避けることが重要です。
出血が起こった時の対処法

出血が起こったとしても、慌てずに対応すれば、多くの場合では止まります。
以下の方法を知っておき、もしもの時に備えましょう。
すぐにできる対処法
・鼻血が出たとき
→ 鼻の柔らかい部分を指で数分間圧迫し、座って少し前かがみの姿勢をとりましょう。
脱脂綿などを鼻に詰める方法も良いです。
・歯茎から出血したとき
→ うがいで口をゆすぎ、清潔なガーゼなどを使用して出血している部位を押さえる方法が有効です。
病院を受診すべきケース
以下のような症状がある場合は、すぐに医師や看護師に連絡してください。
・出血が止まりにくい(5分以上圧迫しても止まらない)
・吐き気やめまい、ふらつきなどの症状を伴う
・皮下のアザが広がる、新しいアザが増える
・血尿や血便がある
・頭痛や意識障害、けいれんがある(脳からの出血の可能性があるため、特に注意が必要です。)
出血の状態を具体的に伝えることが、適切な対処を受けることにつながります。
いつから、どのような出血があるか、血の量はどの程度かなどをメモしておくと、相談がスムーズに進みます。
おわりに
血小板の減少は、抗がん剤治療によって一時的に起こる症状です。治療が進むにつれて次第に回復していきますので、必要以上に怖がることはありません。
しかし、不安な気持ちを抱えたまま過ごすことは、心身に大きな負担となります。
体に変化を感じた時や、心配なことがある時は、ためらわずに医療に携わる人やご家族に相談してください。
看護師や薬剤師など、専門家があなたの不安に寄り添い、サポートしてくれます。
このコラムが、がんと向き合う患者さんとご家族の皆様が、少しでも安心して日々を過ごすための一助となれば幸いです。
がんという病気に立ち向かう抗がん剤治療は、私たちにとってとても大切なものです。
その一方で、治療が始まると同時に、吐き気や下痢など、さまざまな副作用が現れることも少なくありません。
近年は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新たな薬剤も広く選択されています。これらは腫瘍に対して活発に作用する一方で、自分では予想しなかった部位に炎症を起こし、皮膚トラブルにつながることがあります。
数ある副作用のなかで、特に注意が必要な症状の一つが「皮膚の変化」です。
顔に現れる瘡(にきび)のような疹や、手のひら・足の裏のひび割れを伴う手足症候群、色素沈着等、その症状は多岐にわたります。
皮膚に突然、強いかゆみや発疹が出ると、「これは一体何だろう?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
特に蕁麻疹のような紅斑は、薬剤の投与からすぐ現れることもあれば、しばらく経った時に出ることもあります。
このコラムでは、抗がん剤治療中に起こる蕁麻疹について、その原因や、蕁麻疹が出たときにすべきこと、そして日頃からできる対策について解説します。
ご自身の毎日の生活の中で、少しでも不安を安心へ変えていくお手伝いができれば幸いです。
皮膚のかゆみや赤みは蕁麻疹?

抗がん剤治療中に皮膚の症状として現れる蕁麻疹は、どのような特徴があるのでしょうか。
蕁麻疹は、皮膚の一部が蚊に刺されたように赤く盛り上がる発疹で、強いかゆみを伴うことが一般的です。
その最大の特徴は、短時間で症状が消えることです。数十分から数時間で消えては、別の場所に再び現れることもあります。
このような蕁麻疹は、抗がん剤に対するアレルギー反応が原因で起こることがあります。
また、抗がん剤治療の副作用として現れる皮膚の症状は、蕁麻疹だけではありません。
・乾燥とかゆみ
→ 治療の影響で肌のバリア機能が低下し、乾燥しやすくなります。
これに伴って、全身にかゆみが生じることがあります。
・色素沈着
→ 日光に当たる部分や、爪、口の中の粘膜などに、茶色っぽい色素沈着が見られることがあります。
・発疹
→ 蕁麻疹とは異なる小さな赤いブツブツとした発疹が出ることもあります。
これらの症状はすべて、抗がん剤が皮膚の細胞に影響を与えることで起こります。
どの症状が現れるかは、使用する抗がん剤の種類や個人の体質によって異なります。
蕁麻疹が起こる原因とは

蕁麻疹が起こる原因は、主に抗がん剤に対するアレルギー反応だと考えられています。
薬物療法とアレルギー反応
私たちの体には、外部から侵入してきた異物を排除しようとする「免疫システム」が備わっています。
アレルギー反応とは、この免疫システムが、薬や食べ物など特定の物質を「敵」と誤認し、過剰に反応してしまう現象です。
抗がん剤は、体にとって異物であるため、投与された後に免疫システムが反応することがあります。
その結果、ヒスタミンという化学物質が分泌され、これが皮膚の血管を広げて、かゆみや赤みを引き起こします。
これが、蕁麻疹として皮膚に現れるのです。
蕁麻疹は、抗がん剤の投与中や直後に現れることが多いです。ごくまれに、治療から数日経ってから症状が出る方もいます。
もし、過去に薬や食べ物でアレルギー反応を起こした経験がある方は、治療を開始する前に必ず医師や看護師に伝えておくことが大切です。
より重いアレルギー症状のサイン
蕁麻疹は、単なる皮膚の症状で終わらない場合もあります。まれではありますが、息苦しさやめまい、血圧低下などの、より重いアレルギー症状のサインである可能性も否定できません。
このような重篤な症状を「アナフィラキシー」と呼び、速やかな対応が必要です。
そのため、蕁麻疹が出た際は、自己判断で済ませず、必ず医療スタッフに連絡することが重要になります。
蕁麻疹が出たときにすべきこと

蕁麻疹が出ると、強いかゆみと見た目の変化で不安になることは当然です。しかし、まずは落ち着いて正しい対処法を行うことが重要です。
皮膚をかかない
かゆみが強いからといって、かきむしってしまうと、皮膚を傷つけてしまい、症状が悪化したり、感染症を引き起こす原因になります。
かゆみが生じても、できるだけかかないように我慢しましょう。
患部を冷やし、かゆみを和らげる
蕁麻疹のかゆみは、患部を冷やすことで抑える効果が期待できます。
冷たいタオルや保冷剤をハンカチなどで包み、蕁麻疹が出ている部分に軽く当ててみましょう。
冷やすことで血管が収縮し、かゆみが和らぎます。
早めに医師や看護師に相談する
蕁麻疹が出た際は、すぐに医師や看護師に連絡してください。
特に次のような症状も伴う場合は、重いアレルギー反応である可能性があるため、迷わず連絡しましょう。
・息苦しさや動悸
・めまいやふらつき
・血圧の低下
・声がかすれる
これらの症状が現れることは稀ですが、抗がん剤の投与中や直後に蕁麻疹が出た場合は、自己判断せずにすぐに医療スタッフに連絡することが何よりも大切です。
日頃からできる皮膚のケア

蕁麻疹を完全に予防することは難しいですが、日頃から皮膚の状態を整えて刺激を避けることで、症状が起こるリスクを減らすことができます。
やさしい洗浄と保湿
入浴やシャワーの際は、肌のバリア機能を守るため、刺激の強いボディソープや熱いお湯は避けるようにしましょう。
石鹸は、泡立ててから優しく洗い、洗い残しがないようにしっかりとすすぐことが大切です。
洗った後は、刺激の少ない保湿剤を全身に塗り、皮膚の乾燥を防ぐケアを行うことが大切です。
乾燥はかゆみを引き起こしやすくなります。
締め付けの少ない服装
締め付けの強い下着や衣類は、皮膚を刺激し、蕁麻疹を悪化させる可能性があります。
特に化繊の衣類は肌への摩擦が起こりやすいため、綿や絹など、ゆったりとした、通気性の良い天然素材の服を選ぶようにしましょう。
アレルギー歴を伝える
抗がん剤治療を開始する前に、過去に薬や食べ物、化粧品などでアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師や看護師に伝えてください。
アレルギーの原因となる物質を避けることや、治療の方法を検討する上で、非常に重要な情報となります。
おわりに
抗がん剤治療中に現れる蕁麻疹は、かゆみや見た目の変化によるストレスが大きく、心身ともに本当につらいものです。
しかし、蕁麻疹は時として、重いアレルギー反応のサインである可能性も含まれています。
「この程度なら我慢できる」と一人で判断せず、少しでも不安や違和感を感じた際は、迷わず主治医や看護師に相談してください。
現れている症状をきちんと伝え、適切な対策を講じることは、納得して治療を継続するためにとても大切なことです。
このコラムが、皆様の不安を和らげ、穏やかな毎日を過ごすための一助となれば幸いです。
