2026.08.31

膵臓がんによる体重減少が止まらない方へ。高カロリー食で無理なく続ける食事の工夫

膵臓がんによる体重減少が止まらない方へ。高カロリー食で無理なく続ける食事の工夫

膵臓がんという病気の影響で、治療が進む中で食べているつもりでも体重が減り続けていく。そんな状況に不安を感じている患者さんやご家族は少なくありません。

体重を維持することは、体力を保ち治療を続けていく上でも重要です。

体重が減る原因は一つとは限らず、食欲がわかない日が続いたり、少し食べただけでお腹がいっぱいになってしまったりすることで、必要なエネルギーが足りていない状態が続いてしまうことがあります。

体重の減少は、消化や吸収の働きが低下していることのサインであると同時に、日々の食事量そのものが不足しているサインでもあります。

このコラムでは、膵臓がんによる体重減少が止まらないときに実践できる高カロリー食の対処法について、具体的な工夫や注意点を分かりやすく整理し、毎日の暮らしの中で無理なく取り入れられる実用的な知恵をお届けします。

体重計とメジャー

消化・吸収の働きが低下することによるエネルギー不足

体重減少が止まらない大きな理由は、膵臓の機能低下によって消化酵素の分泌が減り、食べたものからエネルギーを十分に吸収できなくなっていることにあります。

膵臓は本来、食事に含まれる脂肪やたんぱく質、糖質を分解するための酵素を分泌する臓器ですが、がんの進行や治療の影響でこの働きが低下すると、同じ量を食べていても体に取り込まれる栄養がこれまでより少なくなってしまいます。

たとえば、以前と変わらない食事を続けているつもりなのに体重が減っていくという場合、消化・吸収の効率そのものが落ちている可能性があります。

食べた分がそのままエネルギーになりにくい状態では、量を増やすだけでは追いつかず、限られた食事量の中でいかに効率よくカロリーを摂るかという発想の転換が必要になります。

台所に立って「もっと食べなければ」と焦る気持ちになる方も多いのですが、まずは体の中で起きている変化を理解することが対策の第一歩です。

気になる体重の変化があれば、次の診察で「以前と同じように食べているのに体重が減っている」と具体的に伝えてみてください。

消化酵素剤の見直しなど、医師の側でできる対応があるかもしれません。

体重と治療の関係は人それぞれ異なるため、日々の体調を観察しながら向き合っていく姿勢が大切です。

食欲低下との悪循環

食欲不振そのものが続いてしまうと、必要なエネルギー量を確保することがさらに難しくなり、体重減少と食欲低下が互いを悪化させる悪循環に陥りやすくなります。

治療の影響や体調の変化、精神的な負担などが重なることで、食べる意欲自体が湧きにくくなるためです。

体力低下のリスクを予防するためにも、早めにこの流れに気づくことが大切です。

たとえば、少し食べただけで満腹感を覚えてしまい、それ以上箸が進まなくなることがあります。

食事の時間が来ても「今日は食べられる気がしない」と感じる日が続くと、食事そのものが負担に感じられてしまうこともあります。

こうした状態が続くと、体力がさらに落ち、食欲がますます湧きにくくなるという流れにつながりやすくなります。

この悪循環を断ち切るためには、無理に量を食べようとするのではなく、少量でも高カロリーな食事に切り替えるという発想が役立ちます。

工夫を重ねることで食欲そのものが改善したと感じる方もいますが、こうした症状の出方には個人差があります。

次の章では、その具体的な工夫を紹介します。

ナッツ類

少量で高カロリーを摂れる食材の選び方

体重減少が止まらないときは、食べる量を増やすのではなく、同じ量でもより多くのカロリーを摂れる食材を選ぶことが効果的です。

食欲が落ちている状態で無理に量を増やそうとすると、かえって食事への抵抗感が強くなってしまうことがあるためです。

選び方の目安として、以下のような食材が一般的によく取り入れられています。

・卵、チーズ、ヨーグルトなど、少量でもたんぱく質とカロリーを補える乳製品
・アボカド、ナッツ類など、良質な脂質を含む食材
・バター、オリーブオイルなど、料理に加えやすい良質な油

これらは消化への負担が少ないものを選びながら、いつもの食事に少しずつ組み合わせていくことができます。

たとえば、朝食に食べているパンにバターを多めに塗る、ヨーグルトにはちみつやナッツを加えるといった工夫だけでも、無理なくカロリーを底上げできます。

どの食材が自分の体調に合うかは個人差があるため、消化への負担が気になる場合は、少量から試して様子を見ていくとよいでしょう。

普段の料理にプラスできるカロリーアップの工夫

いつも作っている料理に少し手を加えるだけで、無理なくカロリーを増やすことができます。

新しいメニューを一から考えるよりも、慣れた料理を少し工夫するほうが、日々の負担が少なく続けやすいためです。

たとえば、みそ汁やスープに卵やすりごま、バターを加える、煮物の仕上げに油を少量足す、ご飯に混ぜご飯の素や卵をプラスするといった方法があります。

飲み物も、牛乳や豆乳をベースにしたものに変えるだけで、水分補給をしながらカロリーを補うことができます。

そのため、他にも身近な食材を少しずつ工夫していくことで、実際に食事の負担感が軽くなったという声もよく聞かれます。

台所に立つ時間が限られている日でも、こうした「ひと工夫」であれば取り入れやすい方法です。

まずは1日1品からでよいので、いつもの料理に少しだけ油分やたんぱく質を足すことから始めてみてください。

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野菜スープ

食欲がない日でも食べやすい形状・味付け

食欲がない日は、固形物よりも飲み込みやすい形状にしたり、味付けを工夫したりすることで、胃に負担をかけずに栄養を摂りやすくなります。

噛む・飲み込むという動作そのものが負担に感じられる時期には、食事の形状を見直すことが大切です。

たとえば、スープ状やとろみをつけたものにする、冷たいもの・さっぱりした味付けにするといった工夫で、食が進みやすくなることがあります。

茶碗蒸しやプリン、ポタージュのように、なめらかでのど越しがよいものは、少量でもエネルギーを補いやすい食品です。

食欲が出やすい時間帯に合わせて、その日の主な食事を集中させるという方法をとっている方もいます。

どうしても食べられない日は、無理に食べきろうとせず、次の食事や翌日で調整すればよいという気持ちで向き合ってみてください。

少しずつでも工夫を重ねる中で、食べられる量に変化が現れることもあります。

栄養補助食品・栄養剤の活用

食事だけで必要なカロリーを補うことが難しい場合は、栄養補助食品や栄養剤を活用することも、体重減少を食い止めるための現実的な選択肢の一つです。

少量で高カロリー・高たんぱくが摂れるよう設計された製品も多く、食事量が減っている時期の助けになります。

たとえば、飲み込みやすいゼリータイプや飲料タイプの栄養補助食品を、食事の合間や間食として取り入れる方法があります。

持ち運びやすいものを選んでおくと、通院の合間や外出先でも無理なく続けやすくなります。

製品によって含まれる成分やカロリー量が異なるため、パッケージの表示や製品情報を調べながら、自分の食事量に合ったものを選んでいくとよいでしょう。

実際に試してみて、体調への合う・合わないを自分なりに評価していく姿勢も大切です。

栄養補助食品の利用を考えたときは、自己判断で選ぶ前に、次の診察や薬局での相談時に「体重を維持するために栄養を補いたい」と伝えてみてください。

患者と話す医師

医師・管理栄養士との連携

体重減少への対応を一人で抱え込まず、医師や管理栄養士と具体的に相談しながら進めることが、無理のない食事管理を続けるための支えになります。

体重の推移や食事内容を専門家と共有することで、その時々の体調に合った具体的な提案を受けられるためです。

たとえば、診察の際に「最近、体重がどのくらい減ったか」「食欲がどの程度落ちているか」を具体的に伝えることで、より的確なアドバイスにつながります。

定期的な検査を受けることで、栄養状態をさまざまな角度から確認できることもあります。

管理栄養士との面談が可能な病院では、個々の体調や好みに合わせた高カロリー食の献立を提案してもらえる場合もあります。

体重の記録をメモやアプリで残しておくと、限られた診察時間の中でも相談がスムーズに進みます。

食事の方針は、そのときどきの治療方針や体調に応じて見直されることもあるため、栄養士からの案内に沿って進めていくと安心です。

食事が体力維持において果たす役割は大きいので、分からないことがあれば遠慮なく質問してみてください。

体重減少について相談したいときは、「体重のことで相談したいのですが」と一言切り出すだけでも、栄養士との面談につないでもらえることが多くあります。

家族と一緒にできること

食事作りや食材選びを家族と一緒に行うことは、高カロリー食を無理なく続けるための現実的な支えになります。

体調がすぐれない日に一人ですべてを担おうとすると、食事の準備自体が負担になってしまうことがあるためです。

たとえば、家族に「今日はカロリーの高いメニューにしてほしい」と具体的に伝えておくと、買い物や調理の際に気をつけてもらいやすくなります。

一緒に食卓を囲むことで、食事の時間が単なる栄養補給ではなく、安心できるひとときにもなります。

食べられる量が少なくても、家族が「今日はこれだけ食べられたね」と前向きに受け止めてくれることが、次の食事への意欲につながることもあります。

周囲に頼ることに気が引ける場合は、「高カロリーなものを一緒に選んでほしい」など、具体的にお願いする形にすると、相手も協力しやすくなります。

家族全体で食事にまつわる生活習慣を少し見直すことが、無理なく続けるための土台になります。

体重が減っていく様子をブロックで表したもの

受診の目安

短期間で急激に体重が減った場合や、食事がほとんど摂れない日が続く場合は、様子を見ずに早めに医療機関へ連絡することが大切です。

急激な体重減少は、体力の低下や治療への影響につながりやすく、早めの対応が必要になることがあるためです。

たとえば、1週間で体重が大きく減った、水分すらうまく摂れない、といった状態が続く場合は、次の診察を待たずに連絡することを検討してください。

血糖値の変化や消化機能の低下が背景にあることもあり、点滴などで一時的に栄養を補う対応が検討される場合もあります。

「これくらいで連絡してよいのか」と迷う方も多いですが、迷ったときほど早めに相談する方が安心です。

体重の減少ペースや食事量の目安について、あらかじめ医師に「どのくらい減ったら連絡すればよいか」を確認しておくと、いざというときに判断しやすくなります。

これは手術後の体重管理にも共通する考え方です。

日々の記録のつけ方

体重や食事の内容を日々記録しておくことは、変化に早く気づき、診察の際に的確に相談するための土台になります。

記憶だけに頼ると、いつからどの程度体重が減ったのか、どんな食事が食べやすかったのかが分かりにくくなってしまうためです。

たとえば、決まった時間に体重を測ってノートやアプリに記録する、その日食べられたもの・食べられなかったものを簡単にメモするといった方法があります。

細かく記録する必要はなく、「今日は◯kg」「朝はゼリーだけ」といった短い言葉で十分です。

数値や記録が積み重なることで、自分自身も体調の変化を客観的に把握しやすくなります。

記録をつけること自体が負担にならないよう、体調に応じて無理のない範囲で、続けやすい方法を選んでみてください。

記録を見返すことで体調の変化がわかるようになり、小さな変化に早く気づく(発見する)きっかけにもなります。

続けていくうちに、自分に合った記録の仕方が見つかります。

体重維持のための基本的な考え方や、食べやすくするための調理の工夫については、こちらのコラムもあわせてご覧ください。
膵臓がん治療中の食事の工夫 食べやすくする調理法と実践的アドバイス

膵臓がんによる体重減少は、食べているつもりでも思うように止まらず、不安を感じやすいものです。

それでも、少量で高カロリーを摂れる食材を選んだり、いつもの料理に少し工夫を加えたりすることで、体は少しずつ応えてくれます。

一人で抱え込まず、医師や管理栄養士、家族の力を借りることも、体重と向き合うための大切な一歩です。

焦らず、今日食べられたものを大切にしながら、希望を持って自分のペースで食事と向き合っていきましょう。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。