悪性リンパ腫のステージ別症状と治療法を解説
悪性リンパ腫と診断されたとき、多くの方が「この病気はどれほど深刻なのか」「治療すれば治るのか」といった不安を抱えることでしょう。
リンパ腫は種類や進行度によって治療法や予後が大きく異なり、正しい知識を持つことが安心への第一歩となります。
このコラムでは、悪性リンパ腫の基本的な仕組みから、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の違い、症状、診断方法、治療法、そして気になる生存率や余命の目安まで、幅広く解説します。
悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫の定義と種類
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化して増殖する病気です。
私たちの体には、リンパ節や脾臓、扁桃腺など、全身にリンパ組織が広がっており、悪性リンパ腫はこれらのリンパ組織から発生します。
悪性リンパ腫は、そのがん化した細胞の種類によって大きく2つに分けられます。
- ホジキンリンパ腫
- 非ホジキンリンパ腫
この2つは、病気の性質や治療法が異なるため、診断の際にどちらに分類されるかが非常に重要です。
悪性リンパ腫の原因とリスク要因
悪性リンパ腫の正確な原因はまだ解明されていませんが、いくつかのリスク要因が指摘されています。
- ウイルス感染
エプスタイン・バールウイルスやヒトT細胞白血病ウイルスなどのウイルス感染が、一部の悪性リンパ腫の発生に関わることが知られています。 - 自己免疫疾患
関節リウマチやシェーグレン症候群といった自己免疫疾患を持つ人は、非ホジキンリンパ腫のリスクがわずかに高まるといわれています。 - 免疫不全
臓器移植後の免疫抑制剤の使用や、先天的な免疫不全などにより、免疫機能が低下している場合に発症リスクが高まります。
ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の違い

ホジキンリンパ腫の特徴
ホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫全体の約1割を占める比較的まれなタイプです。
この病気は、がん細胞(リード・シュテルンベルグ細胞)がリンパ節からリンパ節へと、規則的に広がっていく特徴があります。
治療法が確立されており、多くの場合、治癒が期待できます。若い世代(10代後半〜30代)や高齢者(50代後半〜)に多く見られます。
非ホジキンリンパ腫の特徴
非ホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫の約9割を占める最も一般的なタイプです。
がん細胞は、リンパ節以外の様々な臓器にも広がり、増殖のスピードも様々です。
非常にゆっくりと進行するタイプ(低悪性度)から、急速に進行するタイプ(高悪性度)まで、多くの種類に分類されます。
それぞれのタイプに合わせた治療法が選択されます。
悪性リンパ腫の症状と診断方法

初期症状と進行症状
悪性リンパ腫の最も一般的な初期症状は、首や脇の下、足の付け根にあるリンパ節のしこりです。このしこりは痛みがないことが多く、触って初めて気づくケースがほとんどです。
病気が進行すると、以下のような全身症状が現れることがあります。
- 発熱
理由なく38℃以上の熱が続く。 - 体重減少
特に理由がないのに、半年間で体重が10%以上減少する。 - 大量の寝汗
寝ている間に下着やパジャマがびっしょりになるほどの汗をかく。
これらの症状は、風邪など他の病気でも見られることがあるため、悪性リンパ腫の診断は、専門的な検査によって行われます。
診断に用いる検査方法
悪性リンパ腫の診断を確定するためには、がんが疑われるリンパ節の一部を採取し、顕微鏡で調べる病理検査が不可欠です。
その他にも、がんの広がりや全身の状態を把握するために、以下の検査が用いられます。
- CT検査、PET検査
全身のがんの広がりを画像で確認します。 - 骨髄検査
がん細胞が骨髄に広がっていないかを調べます。 - 血液検査
全身の状態や、がん細胞に関連する物質がないかを調べます。
悪性リンパ腫のステージと分類

Ann Arbor分類とLugano分類の解説
悪性リンパ腫の進行度を示す分類として、主にAnn Arbor(アン・アーバー)分類が用いられます。
この分類は、がんがリンパ節のどこまで広がっているか、リンパ節以外の臓器に病変があるかなどによって、ステージIからIVまでに分けられます。
近年では、ホジキンリンパ腫や濾胞性リンパ腫といった特定の病型では、より簡潔なLugano(ルガーノ)分類が用いられることもあります。
ステージごとの症状と特徴
- ステージI
がんが1つのリンパ節領域、または1つのリンパ節以外の臓器にのみ存在します。比較的早期の段階です。 - ステージII
がんが横隔膜を境に、体の片側にある複数のリンパ節領域に存在します。 - ステージIII
がんが横隔膜の両側にあるリンパ節領域に存在します。 - ステージIV
がんがリンパ節以外の臓器(骨髄、肝臓、肺など)に広く広がっている状態です。
悪性リンパ腫の余命と生存率

ステージ別の生存率
5年相対生存率は、がんと診断された人が5年後に生存している割合を示した統計です。悪性リンパ腫は、種類やステージによって生存率が大きく異なります。
一般的に、ホジキンリンパ腫は非ホジキンリンパ腫よりも生存率が高い傾向にあります。また、非ホジキンリンパ腫の中でも、ゆっくり進行するタイプ(低悪性度)は生存率が高いです。
国立がん研究センターが運営するがん情報サービスによると、2009年から2011年に診断された悪性リンパ腫全体の5年相対生存率は67.5%です。しかし、この数値はあくまで平均値であり、個々の患者さんのステージや病型によって、予後は大きく変わります。
余命に影響を与える要因
余命は、以下のような様々な要因によって決まります。
- 悪性リンパ腫の病型(種類)と病期(ステージ)
- 患者さんの年齢や全身の状態
- 治療への反応
- 合併症の有無
ただし、悪性リンパ腫の余命は単にステージや病型だけでなく、患者さんの年齢、体力、治療への反応、合併症の有無など、複数の要因が複雑に絡み合って決まります。
たとえば、同じステージIVでも、若年層で治療への反応が良好な場合は長期生存が可能なケースもあります。逆に、進行が遅いタイプでも高齢で合併症が多い場合は予後が厳しくなることもあります。
そのため、統計的な生存率や余命はあくまで参考値であり、個々の状況に応じた判断が重要です。ご自身の予後については、主治医に詳しく尋ねることが大切です。
悪性リンパ腫の治療法

悪性リンパ腫の治療は、病気のタイプやステージ、患者さんの状態によって、最適なものが選択されます。
薬物療法とその副作用
薬物療法(化学療法)は、悪性リンパ腫の最も中心的な治療法です。がん細胞を死滅させるための薬(抗がん剤)を、点滴や注射で投与します。
副作用としては、吐き気や脱毛、倦怠感、感染症にかかりやすくなることなどが挙げられますが、近年は副作用を抑える薬も発達しており、以前よりも負担が軽減されています。
放射線療法と免疫療法
放射線療法は、高エネルギーの放射線をがんのある部分に照射し、がん細胞を破壊する治療法です。
悪性リンパ腫においては、主に以下の目的で行われます。
- 局所的な病変の治療
ゆっくりと進行するタイプで、病変が狭い限られた範囲にある場合に、放射線治療のみで根治を目指すことがあります。 - 一時的な症状の緩和
大きくなったリンパ腫が臓器を圧迫して痛みや呼吸困難などを引き起こしている場合、その症状を和らげるために放射線治療が行われることがあります。 - 造血幹細胞移植の前処置
移植前に行う大量化学療法と併用して、残存しているがん細胞を徹底的に排除する目的で用いられることがあります。
免疫療法は、患者さん自身の免疫力を高めて、がん細胞を攻撃させる治療法です。
これは、がん細胞に特有の分子を狙い撃ちするため、分子標的薬というカテゴリーに分類されます。
悪性リンパ腫の治療で用いられる代表的な免疫療法薬には、以下のようなものがあります。
- 抗体薬
がん細胞の表面にある目印(タンパク質)に結合して、免疫細胞ががん細胞を攻撃しやすくします。
代表的なものに、B細胞リンパ腫に広く使われるリツキシマブ(商品名:リツキサン)などがあります。 - 免疫チェックポイント阻害薬
がん細胞が免疫に「攻撃停止」の信号を送るのを防ぎ、免疫細胞の攻撃力を回復させます。
ニボルマブ(商品名:オプジーボ)やペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)などが用いられます。
造血幹細胞移植と手術療法
- 造血幹細胞移植
大量の抗がん剤治療を行った後、自身の造血幹細胞を移植して、血液を作る機能を回復させる治療法です。 - 手術療法
リンパ腫は全身に広がりやすい性質があるため、手術で完全に切除することは難しいとされています。
しかし、診断のために病変の一部を採取する場合や、病変が大きくなり臓器を圧迫している場合などには、手術が行われることがあります。
治療後のケアと生活の質(QOL)

治療後のフォローアップ
治療を終えた後も、定期的なフォローアップ検査を受けることが重要です。
これは再発の有無を確認するためであり、再発した場合でも早期に治療を開始できるよう、医療者と連携して対応していくことが大切です。
生活の質を向上させるためのポイント
- 規則正しい生活
十分な睡眠をとり、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。 - 適度な運動
担当医と相談して、体調に合わせた運動を取り入れることで、体力の維持や精神的な安定につながります。 - 心のケア
病気や治療による不安やストレスは、決して一人で抱え込まず、家族や友人、医療者、そして患者会などに相談しましょう。
→ 乗り越えたからこそ伝えたい「悪性リンパ腫克服者の声」はこちら
あとがき
悪性リンパ腫という病名を聞いたとき、多くの方が「これからどうなるのだろう」と不安を抱かれることでしょう。このコラムでは、病気の種類や症状、治療法、そして予後について、できるだけわかりやすくお伝えしました。
悪性リンパ腫は種類も多く、進行の仕方も人それぞれです。しかし、近年の医療の進歩により、治療の選択肢は広がり、希望を持って向き合える病気になりつつあります。
大切なのは、正しい情報を知り、自分に合った治療を選び、医療者と信頼関係を築くことです。
もし不安や疑問があれば、一人で抱え込まず、主治医や専門医、患者会などに相談してみてください。情報は力になります。そしてその力は、前に進む勇気にもつながります。
