2025.11.07

悪性リンパ腫の生存率はどのくらい?年代別・タイプ別の目安と長生きのための過ごし方

バインダーを持った医師

悪性リンパ腫と診断されたとき、ご本人もご家族も、まず「生存率」を調べたという方は多いと思います。

国立がん研究センターの統計によると、悪性リンパ腫の5年相対生存率は67.5%です。

ただ、この数字は種類も進み具合も年齢も異なる、たくさんの方をまとめた平均です。

実際の見通しは、病気の種類や体の状態によって一人ひとり大きく変わります。

このコラムでは、悪性リンパ腫の生存率の数字をどう読めばよいのか、見通しにどんなことが関わるのかを整理したうえで、毎日の暮らしの中で無理なく取り入れられる工夫を丁寧にお伝えします。

はてなマークと高齢者

生存率の数字には、知っておくと受け止め方が変わるポイントがいくつかあります。

まずは、数字が示す意味から確認していきましょう。

5年生存率・相対生存率とは

5年生存率は、診断から5年たった時点で生存している方の割合です。

がんの統計では、そのなかでも「相対生存率」がよく使われます。

がん以外の病気や老衰で亡くなる影響をできるだけ除いて、がんそのものが命にどのくらい影響するかを表すように計算した数字です。

先ほどの67.5%は、2018年に悪性リンパ腫と診断された方のデータをもとにしています。

ここで知っておいていただきたいのは、この数字が「過去に診断された方」の結果だということです。

5年後の生存を確かめるには、少なくとも5年の追跡が必要になります。

そのため、2018年以降に使われるようになった新しい薬や治療の効果は、まだこの数字に反映されていません。

今これから治療を受ける方にとっては、少し前の時代の目安として受け止めていただくのがよいと思います。

生存率を調べるときは、「何年に診断された方のデータか」「どんな方を対象にした数字か」を確かめる習慣をつけておくと、情報に振り回されにくくなります。

国立がん研究センターのがん情報サービスなら、最新の統計とその集計方法まで確かめられるので安心です。

インターネットで見かけた数字が気になったら、メモして次の診察に持っていき、「私の場合、この数字をどう考えればいいですか」と主治医に聞いてみてください。

生存率がそのまま余命を示すわけではない

生存率は、たくさんの方の経過をまとめた集団の数字です。誰か一人の余命を言い当てるものではありません。

悪性リンパ腫には多くの種類があり、進み方も治療の効き方も違うので、平均の数字とご本人の見通しには、どうしても開きが出てきます。

実際の診察でも、主治医は統計の数字だけで見通しを判断しているわけではありません。

悪性リンパ腫の種類、病気の広がり、血液検査の値、そして日常生活をどのくらいご自分で送れているかを組み合わせて、治療方針と見通しを考えています。

たとえば同じ70代でも、毎日散歩に出かけて食事もしっかりとれている方と、持病のため横になっている時間が長い方とでは、選べる治療も見通しも変わってきます。

治療が始まってから病気がどう反応するかで、見通しが途中で変わることも珍しくありません。

統計の数字は「全体の傾向を知るための参考」と考えて、ご自身の見通しは主治医と一緒に確かめていきましょう。

診察の前に、知りたいことを「種類」「いまの進み具合」「治療の効果の見込み」の3つに分けてメモしておくと、限られた時間でも聞きたいことを聞きやすくなります。

ご家族が一緒に説明を聞き、帰ってから内容を確認し合うのもおすすめです。

ビックリマークを持つ医師

数字の読み方が分かったところで、次は悪性リンパ腫の種類とステージによって、見通しがどう違うのかを見ていきましょう。

ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の違い

悪性リンパ腫は、大きく「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に分けられ、生存率の傾向もそれぞれ異なります。

日本ではホジキンリンパ腫は全体の1割に満たず、ほとんどが非ホジキンリンパ腫です。

ホジキンリンパ腫は治療が効きやすく、比較的高い生存率が報告されています。

非ホジキンリンパ腫はさらに細かい種類に分かれていて、なかでも多いのが「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」です。

月単位で進むことがある一方、抗がん剤と分子標的薬(がん細胞の目印を狙って働く薬)を組み合わせた治療が効きやすく、治癒を目指した治療が行われます。

次に多い「濾胞性リンパ腫」は、年単位でゆっくり進むタイプです。

完全に治すのは難しいとされていますが、症状がなければすぐには治療を始めず、定期的な検査で様子を見る「経過観察」を選ぶこともあります。

長い年月にわたって、ふだんどおりの生活を続けている方もたくさんいます。

同じ悪性リンパ腫でも、「治癒を目指す種類」と「長く付き合っていく種類」があるということです。

ですから、まずはご自身の正式な種類名を確かめることが、生存率を正しく理解する第一歩になります。

悪性リンパ腫の病気の全体像を知りたい方は、悪性リンパ腫の種類や症状、治療の全体像をまとめた別のコラムもあわせてご覧ください。

▶ 悪性リンパ腫の種類とステージ別の特徴とは。症状や治療についても紹介

ステージによる違い

ステージ(病期)は、病気がどこまで広がっているかをⅠからⅣの4段階で表したものです。

一般的にはステージが早いほど生存率は高くなりますが、悪性リンパ腫には、ステージ4でも治療がよく効く場合があるという特徴があります。

「ステージ4だから、もう手立てがない」とは限りません。

悪性リンパ腫は、全身をめぐるリンパの流れの中で生じる病気です。

そのため、診断の時点で体のあちこちに病変が見つかることも珍しくありません。

胃や腸、骨髄など、リンパ節以外の場所に病変があるとステージ4と診断されますが、抗がん剤は血液に乗って全身に届くので、広い範囲の病気にも効果が期待できます。

実際、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、ステージ4の方でも治療によって寛解(検査で病気が見つからない状態)に至ることがあります。

ただしステージが進んでいるほど、治療期間が長くなったり、治療の強さを慎重に調整したりする必要が出てくるのも事実です。

ステージは見通しに関わる大事な情報ですが、それだけで決まるわけではありません。

ステージを告げられたら、「この種類とこのステージだと、治療の目標は治癒ですか。それとも病気を抑えながら暮らしていくことですか」と、あわせて確認してみてください。

答えによって、これからの生活の組み立て方も変わってきます。

悪性リンパ腫は本当に良くならないのか?
同じ悪性リンパ腫と向き合い、乗り越えた方がいます。実際の記録をご覧ください。

悪性リンパ腫余命3ヶ月の症例|ステージ4・全腫瘍がすべて消失 複数あった悪性リンパ腫はほぼ消失し経過観察へ。 悪性リンパ腫が完全消失。再発もなく完治。
がんのステージ

見通しを考えるうえでは、年齢も気になるところだと思います。

60代と、70代・80代に分けて見ていきましょう。

60代の目安と治療の考え方

悪性リンパ腫と診断される方は、60代から増えていきます。

この年代は、体力や持病の状態が許せば、標準治療(効果と安全性が確かめられ、最も推奨されている治療)を予定どおりの量で受けられることが多く、生存率を高めやすい年代です。

一方で、後ほど紹介する見通しの指標には「60歳を超えている」という項目があります。

年齢以外の条件をよい状態に保つことが、60代の方にとってのポイントになります。

60代では、仕事や家庭の役割を続けながら治療を受ける方も少なくありません。

たとえば3週間ごとに点滴の抗がん剤治療を受ける場合、点滴の翌週あたりに白血球が減って、感染しやすい時期がやってきます。

その時期だけ通勤の混雑を避けられるよう勤務を調整したり、親の介護や子供の世話をほかの家族に一時的にお願いしたりすると、治療を予定どおり続けやすくなります。

予定の量と間隔で治療を続けられるかどうかは、治療の効果を十分に得るための大事な条件です。

治療のスケジュールが決まったら、「体調を崩しやすい時期」を職場や家族に早めに伝えておきましょう。周りも協力の段取りを立てやすくなります。

仕事との両立に迷ったときは、がん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」で、休職制度や働き方について無料で相談できます。

70代・80代で大切にしたいこと

70代・80代になると、60代以下と比べて生存率は低めに出る傾向があります。

心臓や腎臓などの持病、体力の低下、がん以外の病気の影響も数字に含まれてくるためです。

ただ、年齢だけで「治療ができない」と決まるわけではありません。

70代・80代でも体の状態に合わせた治療を受けて、寛解に至る方はたくさんいます。

高齢の方の治療では、年齢そのものより「ふだんの生活をどのくらいご自分で送れているか」が重視されます。

一人で着替えや入浴ができるか、近所の買い物に歩いて行けるか、食事を十分にとれているか、といった点です。

その様子を見ながら、80歳以上の方などには、抗がん剤の量を減らした治療が選ばれることもあります。量を調整することで副作用を抑え、入院をなるべく減らしながら治療を続けられる場合もあります。

ほかの病気で飲んでいる薬が多い方は、治療薬との飲み合わせを確かめてもらうため、お薬手帳を毎回持っていってください。

治療の説明を受けるときは、「治療をした場合と、しなかった場合で、生活はどう変わりますか」と聞いてみてください。

生存率の数字だけでなく、家での暮らしを続けられるか、通院の負担はどのくらいかも含めて考えることで、ご本人が納得できる選択につながります。

通院そのものが負担になってきたら、介護保険のサービスや介護タクシーの利用も検討できます。

吹き出しとひらめき

年齢のほかにも、見通しに関わる要素はいくつかあります。

主治医の説明を理解する手がかりとして、主なものを知っておきましょう。

見通しを予測する指標(国際予後指標)

悪性リンパ腫の見通しは、「国際予後指標(IPI)」という物差しを使って予測されることがあります。

主に非ホジキンリンパ腫で使われるもので、あてはまる項目が少ないほど見通しがよいと考えられています。

主治医がこの指標をもとに説明することもあるので、中身を知っておいて損はありません。

確認される項目は、次の5つです。

・年齢が60歳を超えている
・血液検査のLDH(体の組織が傷ついたときに増える酵素)の値が基準より高い
・体調のために仕事や家事ができず、日中に横になって過ごす時間がある
・ステージがⅢまたはⅣである
・リンパ節以外の臓器に病変が2か所以上ある

あてはまる数によって、「低リスク」から「高リスク」までの段階に分けられます。

たとえば、70代でほかの項目にはあてはまらない方と、60代でも複数の項目にあてはまる方とでは、後者のほうが慎重な見通しになることがあります。

年齢はあくまで項目の一つで、全体の組み合わせで判断されるということです。

ご自身がどの段階にあたるかは、血液検査や画像検査の結果がそろってはじめて分かります。

治療への反応と再発

見通しに大きく関わるのが、最初の治療で病気がどれだけ小さくなったかという点です。

最初の治療で寛解に至った方は、その後の見通しもよい傾向があります。

悪性リンパ腫は種類によって再発することがありますが、再発しても別の治療法を選べることが多い病気です。

治療が終わったあとも、再発の兆しに早く気づけるよう、定期的な通院と検査が続きます。

一般的には、治療後の数年間は数か月ごとに診察や血液検査を受け、必要に応じて画像検査を行います。

家で気をつけておきたいのは、首やわきの下、足の付け根のしこり、原因の分からない発熱、着替えが必要なほどの寝汗、半年で体重が1割ほど減るといった変化です。

もし再発した場合は、別の組み合わせの抗がん剤や造血幹細胞移植、免疫の力を利用した新しい治療など、状況に応じた選択肢が検討されます。

治療後の体調を記録する小さなノートを1冊用意しておくのもおすすめです。

日付と体温、気になった症状を1行ずつ書いておくだけで、診察のときに正確に伝えられます。

再発について詳しく知りたい方は、悪性リンパ腫の再発率や再発後の治療をまとめた別のコラムもご覧ください。

▶ 悪性リンパ腫の再発率はどれくらい?〜再発を正しく理解し、安心して過ごすために〜

体力・持病・日常生活の状態

治療前の体力や持病の状態も、見通しを左右します。体力が保たれている方ほど、予定どおりの量と間隔で治療を受けやすく、副作用からの回復も早い傾向があります。

国際予後指標に「日常生活の状態」が入っているのも、そのためです。

持病がある場合は、治療の進め方に工夫が必要になることがあります。

たとえば糖尿病のある方は、治療で使うステロイド(炎症を抑える薬)で血糖値が上がりやすくなるため、主治医と糖尿病の担当医が連携して血糖を管理します。

心臓に持病がある方なら、心臓に負担がかかりやすい抗がん剤の使い方を調整するため、治療前に心臓の検査を受けるのが一般的です。

治療中に筋力が落ちると、転びやすくなったり食欲が落ちたりして、治療を続けにくくなることもあるので注意が必要です。

家で横になっている時間が増えてきたと感じたら、体力が落ちてきているサインとして、次の診察で伝えてください。

持病のある方は、かかりつけ医と血液内科の主治医の両方に、それぞれの治療内容を伝えておいてください。

お薬手帳に抗がん剤治療のスケジュールを書き添えておくと、どの医療機関でも情報を共有しやすくなります。

受診先が複数あるなら、次の受診日を1つのカレンダーにまとめておくと管理がぐっと楽になります。

老若男女

ここからは、毎日の暮らしの中でできる工夫を見ていきましょう。

感染を防ぐ暮らしの工夫

治療中は抗がん剤の影響で白血球が減り、感染症にかかりやすくなります。

感染症で治療が延期になると、治療の効果にも影響が出かねません。

感染を防ぐことは、治療を続けて長生きにつなげるための、いちばん身近な対策です。

特別な道具をそろえなくても、毎日の習慣を少し変えるだけで取り組めます。

・外出から帰ったら、石けんで手を洗い、うがいをする
・人混みを避け、外出するときはマスクをつける
・食事は十分に加熱したものを中心にし、生ものや作り置きは控える
・歯みがきは毎食後に行い、口の中を清潔に保つ
・加湿器やエアコンの内部はこまめに掃除する
・ペットのトイレの始末や庭の土いじりは、家族に代わってもらう

あわせて、毎朝決まった時間に体温を測る習慣をつけておくと、発熱にすぐ気づけます。

また、ご家族が風邪をひいたときは、寝る部屋を分け、家の中でもマスクをつけてもらいましょう。

タオルや食器を分けて使うのも効果的です。

体力と食事を保つために

体重や筋力を保つことは、治療を続けるための土台になります。

副作用で食欲が落ちる時期もありますが、食べられるときに食べられるものを少しずつとり、体を動かす習慣を細く長く続けていけば十分です。完璧を目指す必要はありません。

1回にたくさん食べられないときは、1日の食事を5〜6回に分けると、必要な量をとりやすくなります。

朝食と昼食の間にヨーグルトやプリン、昼食と夕食の間にバナナやカステラ、といった具合です。

たんぱく質は、卵や豆腐、白身魚、鶏ささみなど、やわらかく消化のよいものから選ぶと食べやすいでしょう。

体を動かすのは、調子のよい日に家の周りを10分ほど歩く、テレビを見ながら椅子に座って足首を回す、といった軽いもので構いません。

白血球が減っている時期は、家の中でできる運動に切り替えてください。

体重は週に1回、同じ曜日の同じ時間帯に量って記録しておくと、変化に早く気づけます。

1か月で目に見えて減ってきたら、病院の管理栄養士さんに相談できるか、看護師に聞いてみてください。

少ない量で効率よく栄養がとれる栄養補助食品など、ご本人に合った方法を一緒に考えてもらえます。

手の平と注射

暮らしの工夫と同じくらい大切なのが、不安を一人で抱え込まないことです。

ここでは、主治医や相談先との話し方についてお伝えします。

主治医に確認しておきたいこと

生存率の数字が頭から離れないときは、一人で調べ続けるより、主治医に「私の場合」を聞くのがいちばん確かな方法です。統計は全体の傾向しか示せませんが、主治医はご本人の病気の種類や体の状態を踏まえて説明することができます。

とはいえ、診察の時間は限られています。聞きたいことを事前にメモしておけば、落ち着いて質問しやすくなるはずです。たとえば、次のような質問です。

・私の悪性リンパ腫の正式な種類とステージは何ですか
・治療の目標は治癒ですか、それとも病気を抑えながら暮らしていくことですか
・寛解が期待できる見込みは、どのくらいですか
・治療中の生活で、特に気をつけることは何ですか
・もし再発したら、どんな治療法がありますか

説明はご家族にも一緒に聞いてもらい、メモをとってもらうと聞き漏らしを防げます。

主治医には聞きにくいことや、説明を受けたあとで改めて整理したいことがあれば、がん相談支援センターを頼ってください。

全国のがん診療連携拠点病院などにあり、その病院にかかっていない方やご家族でも無料で相談できます。

看護師や医療ソーシャルワーカーが、治療のこと、生活のこと、お金のことまで一緒に考えてくれます。

悪性リンパ腫の生存率は、種類やステージ、年齢、体の状態によって大きく変わります。

統計の数字が、そのままご自身の見通しを表すわけではありません。

数字が気になって不安なときは、一人で抱え込まず、主治医や看護師、がん相談支援センター、そしてご家族を頼ってください。

感染を防ぐ工夫や体力を保つ習慣など、今日からできることを一つずつ重ねていくことが、穏やかな毎日と長生きにつながっていきます。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。