悪性リンパ腫のかゆみはどう和らげる?治療中も続けられるスキンケアと相談先
悪性リンパ腫と向き合う中で、皮膚のかゆみに悩まされている患者様は少なくありません。
夜になると体がかゆくて眠れない、かいても治まらないといったかゆみは、体力や気力を少しずつ奪い、毎日の生活に大きく影響してしまいます。
悪性リンパ腫のかゆみには、病気そのものによるものと、抗がん剤などの治療によるものがあり、原因に合わせた治療と、入浴や保湿などの日々の工夫を組み合わせることで和らげられる場合があります。
このコラムでは、悪性リンパ腫のかゆみにおける具体的な特徴や注意点を分かりやすく整理し、毎日の暮らしの中で無理なく取り入れられる対策をお届けします。
悪性リンパ腫でかゆみが起こる理由

病気そのものによるかゆみと、治療によるかゆみ
悪性リンパ腫で起こるかゆみには大きく分けて、病気そのものによるかゆみと、抗がん剤や放射線治療など治療の影響によるかゆみの2つがあります。
どちらによるかゆみかによって対処の仕方が変わるため、かゆみが始まった時期や、治療との関係を知っておくことが大切です。
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化する病気です。
がん細胞やそれに反応する免疫の細胞からかゆみを引き起こす物質が出されることで、皮膚に目立った湿疹などがないのに全身がかゆくなることがあります。
特にホジキンリンパ腫というタイプでは、診断される前の初期の段階から、かゆみが続いていることもあります。
また、皮膚にできるタイプの悪性リンパ腫では、皮膚の赤みとともにかゆみが現れることがあります。
一方、治療が始まってからのかゆみは、抗がん剤による皮膚の乾燥や、薬に対するアレルギー反応、放射線を当てた部分の皮膚の炎症などが原因になります。
病気によるかゆみは、悪性リンパ腫の治療が効いてくると、次第に和らいでいくことが多いとされています。
かゆみがつらいときは、治療の経過とあわせて主治医に伝え、今のかゆみがどちらによるものと考えられるかを確認しておくと、対処の方針が立てやすくなります。
かゆみの原因を見分ける

乾燥肌やアレルギーによるかゆみとの違い
皮膚のかゆみの多くは、乾燥肌やじんましん、湿疹など、悪性リンパ腫とは関係のない一般的な皮膚の病気によるものです。
ただし、保湿などの手入れを続けても良くならないかゆみが何週間も続く場合や、発熱や寝汗、体重の減少、首や脇の下のリンパ節の腫れを伴う場合は、皮膚以外に原因がある可能性も考えられます。
それぞれのかゆみの主な特徴は、次のとおりです。
・乾燥肌
→ すねや腕、背中などがカサカサして粉をふいたようになり、冬や入浴後に強まる。保湿で和らぎやすい
・じんましん
→ 皮膚が盛り上がって赤くなり、数時間から1日ほどで跡を残さず消える
・湿疹
→ 赤いぶつぶつやジュクジュクした部分があり、かゆみのある場所がはっきりしている
・悪性リンパ腫に伴うかゆみ
→ 皮膚に目立った変化がないのに全身がかゆい状態が長く続き、夜に強まることがある
ただし、これらは目安であり、見た目やかゆみの感じ方だけで原因を判断することはできません。
年齢を重ねると皮膚が乾燥しやすくなるため、かゆみの原因が一つとは限らないことにも注意が必要です。
かゆみだけで悪性リンパ腫と決めつける必要はありません。
しかし、市販の薬や保湿で2週間ほど様子を見ても良くならない場合は、自己判断を続けずに医療機関を受診してください。
かゆみは何科を受診する?
皮膚の赤みや発疹など皮膚の変化が目立つ場合は皮膚科、発熱や寝汗、体重の減少、リンパ節の腫れなど全身の症状を伴う場合は内科を受診するのが目安です。
すでに悪性リンパ腫の治療を受けている方は、まず治療を担当している血液内科などの主治医に相談してください。
皮膚科では、皮膚の状態を詳しく診察し、必要に応じて皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行います。
内科では、診察でリンパ節の腫れを確かめたうえで、血液検査や画像検査などで全身の状態を調べます。
悪性リンパ腫が疑われる場合は、腫れたリンパ節の組織を採取する検査などを経て、血液内科などの専門医がいる医療機関で診断が行われます。
治療中の方が別の皮膚科を受診する場合は、使っている抗がん剤などの薬が皮膚の症状に関係していることもあるため、お薬手帳を持参し、治療中であることを必ず伝えましょう。
受診先に迷うときは、かかりつけ医に相談して、適切な診療科を紹介してもらう方法もあります。
原因を早期に確かめておくことは、不安を減らすことにもつながります。
受診の際には、かゆみが始まった時期や場所、皮膚の変化の有無、ほかに気になる症状をメモにまとめておくと、診察の時間を有効に使えます。
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毎日の暮らしでできるかゆみ対策

入浴と保湿の工夫
かゆみを和らげるための毎日の手入れの基本は、皮膚を清潔に保ちつつ乾燥させないことです。
熱いお湯や洗いすぎは皮膚のバリア機能を保つ油分を奪ってしまい、かえってかゆみを強めてしまいます。
ぬるめのお湯で優しく洗い、入浴後はすぐに保湿剤を塗って乾燥を防ぎましょう。
入浴するときは、次の点を意識すると皮膚への負担を減らせます。
・お湯は38〜40度程度のぬるめにし、入浴時間は10〜15分ほどを目安にする
・ナイロンのタオルでこすらず、よく泡立てた低刺激の石けんを手のひらで転がすように洗う
・石けんは首や脇、陰部など汚れやすい部分だけに使い、腕やすねなど乾燥しやすい部分はお湯で流す程度にする
保湿剤は、次のように塗るとうるおいを保ちやすくなります。
・入浴後はタオルで押さえるように水分を拭き取り、皮膚がまだ少し湿っているうちに塗る
・手のひらで温めてから、すり込まずに広げるように塗る
・かゆみが強い部位には、1日に複数回塗り直す
保湿剤には、クリームやローション、軟膏などさまざまな種類があり、季節や皮膚の状態によって使いやすいものが異なります。
治療中の方は、主治医や皮膚科、薬剤師に、ご自身の皮膚に合った保湿剤を相談してみてください。
衣類・寝具・室温の工夫
かゆみは、肌に触れる衣類の刺激や、体が温まりすぎること、空気の乾燥によって強まりやすくなります。
肌に優しい素材を選び、室温や湿度を整えることで、かゆみのきっかけを減らすことができます。
あわせて、かいて皮膚を傷つけないための工夫も大切です。
衣類や寝室では、次のような工夫ができます。
・肌着は綿などの柔らかい素材を選び、ウールや化学繊維が直接肌に触れないようにする
・服のタグや縫い目がチクチクする場合は、タグを切ったり、肌着を裏返して着たりする
・かゆみは夜に強まりやすいため、寝室は暖めすぎず、電気毛布やこたつの使い方も調整する
・冬は加湿器で湿度を50〜60%程度に保ち、エアコンの風が直接体に当たらないようにする
かき壊すと皮膚のバリアが傷つき、かゆみがさらに強まったり、細菌が入って化のうしたりすることがあります。
次のような工夫で、皮膚へのダメージを減らせます。
・爪を短く切り、角を丸く整えておく
・寝ている間に無意識にかいてしまう場合は、綿の手袋をつけて寝る
・かゆみが強いときは、かく代わりに、保冷剤をタオルで包んで当てて皮膚を冷やす
寝る前に保湿剤を塗り直し、清潔な肌着に替えておくと、夜のかゆみを和らげる助けになります。
かゆみで眠れない日が続く場合は、我慢せずに主治医や看護師に相談してください。
市販薬を使う前に確認したいこと
かゆみ止めの市販薬は手軽に購入できますが、悪性リンパ腫の治療中の方や、原因の分からないかゆみが長く続いている方は、使う前に主治医や薬剤師に相談することが大切です。
抗がん剤などの薬物療法で使っている薬との飲み合わせに注意が必要な場合があるほか、市販薬でかゆみを抑えることで、本来の原因に気づくのが遅れることもあるためです。
例えば、飲むタイプのかゆみ止めには眠気が出やすいものがあり、ふらつきによる転倒につながることがあります。
高齢の方や、抗がん剤の治療中で体力が落ちている時期は、特に注意が必要です。
塗り薬のステロイドは、効果の強さにいくつかの段階があり、皮膚の状態に合わない強さのものを長期間使うと、皮膚が薄くなるなどの副作用が出ることがあります。
また、放射線を当てている部分の皮膚には、市販の塗り薬や保湿剤を自己判断で使わないよう指導されることもあります。
かゆみの治療法は原因によって異なるため、薬局で市販薬を購入する際は、薬剤師に悪性リンパ腫の治療中であることを伝え、お薬手帳を見せて相談すると安心です。
市販薬を使っても1〜2週間で良くならない場合や、発疹が広がる場合は、使い続けずに医療機関を受診してください。
治療中・治療後のかゆみへの対応

治療によるかゆみとその対処
抗がん剤や放射線治療によるかゆみは、多くの場合、かゆみ止めの薬や塗り薬、保湿などの手入れで和らげることができます。
治療を続けていくためにも、かゆみを我慢せずに早めに医療者へ伝え、症状の程度に応じて薬を処方してもらうことが大切です。
抗がん剤による皮膚の乾燥は、治療を重ねるうちに少しずつ進むことがあり、日々の保湿がかゆみの予防につながります。
点滴を受けている最中やその直後に、かゆみや発疹、息苦しさ、顔のほてりなどが現れた場合は、薬に対するアレルギー反応の可能性があるため、すぐに看護師に知らせてください。
自宅で過ごしているときに、発疹が急に全身に広がる、高い熱が出る、口の中や目が赤くただれるといった症状が現れた場合は、まれに起こる重い薬の副作用のおそれがあるため、夜間や休日でも病院に連絡が必要です。
放射線治療では、放射線を当てた部分の皮膚が日焼けのように赤くなり、かゆみが出ることがあります。
この部分はこすったりかいたりせず、熱いお湯を避けて、病院から指示された方法で手入れをしましょう。
治療中は、皮膚の状態や体調が日によって変わりやすくなります。
皮膚の赤みや発疹が気になるときは、スマートフォンで写真を撮っておくと、次の診察で変化を伝えやすくなります。
かゆみを医療者に伝えるときのコツ
かゆみは見た目に表れにくく、周りの人にもつらさが伝わりにくい症状です。
診察の場では「少しかゆいです」と控えめに伝えてしまいがちですが、かゆみの強さや生活への影響を具体的に伝えることで、薬の種類や量を調整してもらいやすくなります。
痛みと同じように、かゆみも治療の対象となる重要な症状です。
伝えるときは、かゆみの強さを0から10の数字で表すと、医師や看護師が程度を把握しやすくなります。
あわせて、いつから始まったか、体のどこがかゆいか、1日のうちいつ強くなるか、眠れない夜が週に何回あるか、どのような手入れで和らぐかなどを伝えると、原因を考える手がかりになるほか、病気の進行や治療の効果を判断する材料にもなります。
抗がん剤の治療を受けている方は、何回目の治療のあとから始まったかも大切な情報です。
ご本人がうまく伝えられないときは、ご家族が日々の様子をメモしておき、診察に付き添って補ってもらうことも助けになります。
患者さんご本人が眠れているかどうかは、そばにいるご家族の方が気づきやすいこともあります。
医師には聞きにくいと感じることは、外来の看護師や薬剤師、がん相談支援センターに相談することもできます。
かゆみは我慢するものではなく、和らげる方法を一緒に考えていける症状です。
まとめ
悪性リンパ腫のかゆみには、病気そのものによるものと治療によるものがあり、原因に合わせた治療と、入浴や保湿、衣類や室温の工夫を組み合わせることで和らげられる場合があります。
つらいときは一人で我慢せず、主治医や看護師、薬剤師、がん相談支援センターなど、身近な専門家を頼ってください。
毎日の手入れを少しずつ続けながら、穏やかに過ごせる時間を増やしていきましょう。
