肺がんの症状で胸が痛むのはなぜ?痛みの特徴やほかの病気との違い、受診の目安を解説
肺がんによる胸の痛みは、初期の段階ではほとんど現れず、がんが肺の外側を覆う胸膜や肋骨、神経に広がったときに起こることが多い症状です。
一方で、胸の痛みは心臓や筋肉、食道などの病気でも起こるため、痛みだけで原因を判断することはできません。
大切なのは、痛みの特徴を知り、受診すべきタイミングを見極めることです。
このコラムでは、肺がんの胸の痛みにおける具体的な特徴や注意点を分かりやすく整理し、毎日の暮らしの中で無理なく取り入れられる実用的な生活の知恵や対策をお届けします。
肺がんで胸が痛む原因

胸の痛みは肺がんの初期症状なのか?
胸の痛みは、肺がんの初期症状として現れることは多くありません。
肺そのものには痛みを感じる神経がほとんどないため、がんが肺の中にとどまっている早期の段階では、痛みを感じないことが一般的です。
痛みが出てくるのは、がんが大きくなって肺の外側の胸膜や胸壁に達したときや、骨などに転移したときが多く、ある程度進行した段階で現れる場合があります。
肺がんの初期には、症状がまったくない方も少なくありません。
検診の胸部X線検査や、ほかの病気で受けたCT検査をきっかけに、自覚症状のないまま見つかることもあります。
症状がある場合も、2週間以上続く咳や痰、痰に血が混じる血痰など、風邪と区別しにくいものが中心です。
症状に頼らずに早期発見につなげるためには、定期的な検診が役立つとされています。
つまり、「胸が痛まないから肺がんではない」とも、「胸が痛いから肺がんだ」とも言い切れないのが、肺がんの症状の特徴です。
胸の痛みが気になるときは、痛みの有無だけで判断せず、咳や痰、息苦しさなどほかの症状とあわせて考えることが大切です。
喫煙は肺がんのリスクを高める主な要因の一つとされているため、喫煙歴のある方や、長引く咳がある方は、痛みが軽くても一度医療機関を受診し、検査で原因を確かめておくと安心につながります。
胸膜・肋骨・神経への広がり
肺がんによる胸の痛みは、主に、がんが胸膜や胸の壁に広がる、肋骨や背骨に転移する、周囲の神経を圧迫する、胸に水がたまる、といったことが原因で起こります。
肺を包む胸膜や肋骨、神経には痛みを感じる仕組みがあるため、がんがこれらに及ぶと痛みとして自覚されるようになります。
原因ごとの主な特徴は、次のとおりです。
・胸膜への広がり
→ 炎症によって胸水が生じ、胸の重苦しさや息苦しさにつながることがある
・胸の壁や肋骨、背骨への広がりや転移
→ 特定の場所に続く鈍い痛みや、押すと痛む部分が現れやすい
・肩や腕につながる神経の圧迫
→ 肺の上の端にできたがんで起こりやすく、肩から腕にかけての痛みやしびれが現れる。肩こりと間違われることもある
なお、声帯の動きにかかわる神経が影響を受けると、痛みとは別に、声がかすれることもあります。
上記のように痛みが現れる原因は様々なため、がんのある部位や広がり方によって感じる痛みも異なってきます。
すでに肺がんと診断されている方は、主治医に「この痛みは何が原因と考えられますか」と尋ねてみると、痛みへの対処法を一緒に考えるきっかけになります。
その際、痛む場所や、深呼吸や体を動かしたときに痛みが強まるかどうかもあわせて伝えると、原因を考える手がかりになります。
肺がんによる胸の痛みの特徴

痛む場所と痛み方
肺がんによる胸の痛みは、胸だけでなく背中や肩、脇腹に現れることがあり、深呼吸や咳をしたときに強まる鋭い痛みや、同じ場所が続けて痛む鈍い痛みとして感じられることが多い症状です。
痛みの出方は原因によって異なり、胸膜が関係している場合は呼吸に合わせて、骨や胸の壁が関係している場合は体の動きや時間帯に関係なく、痛みが続く傾向があります。
・胸膜が関係する痛み
→ 息を深く吸ったときや咳、くしゃみをしたときに、刺すような鋭い痛みとして走るのが特徴です。
・胸の壁や肋骨が関係する痛み
→ 同じ場所がずきずきと痛み、押すと痛みが強まることがあります。
・骨への転移による痛み
→ 背中や腰などに安静時にも現れ、夜間に強まることがあります。
・神経の圧迫による痛み
→ 肩から腕、指先にかけての痛みやしびれとして続きます。
これらの痛みは、数日で消えることは少なく、少しずつ強くなっていくことがあります。
寝返りを打つと痛む、痛む側を下にして横になれないといった形で、日常生活の中で気づくこともあります。
ただし、こうした痛み方は肺がん以外の病気でも見られるため、特徴だけで判断することはできません。
痛みが2週間以上続く、だんだん強くなる、痛みのせいで眠れないといった場合は、早めに医療機関を受診してください。
胸の痛みと一緒に現れやすい症状
肺がんによる胸の痛みには、2週間以上続く咳、痰、血痰、息苦しさや息切れ、声のかすれ、発熱、体重の減少などの症状が一緒に現れることがあります。
これらの症状が重なっているかどうかも、痛みの原因を考えるうえで大切な手がかりになります。
咳や痰は風邪や気管支炎でもよく見られますが、風邪であれば多くは1〜2週間ほどで改善していきます。
その中で2週間以上咳が続く、痰に血が混じる、同じ症状を何度も繰り返すといった場合は注意が必要です。
息苦しさは、階段を上ったときに以前より息が切れやすくなった、という形で気づかれることもあり、悪化すると安静にしていても息がしにくい呼吸困難や、動悸を感じることがあります。
また、食欲不振や原因の分からない体重の減少、倦怠感が続く場合もあります。
がんが脳や骨に転移している場合には、頭痛やふらつき、背中や腰の痛みなどが現れることもあります。
症状の組み合わせは人によって異なり、がん細胞の種類(小細胞肺がん、非小細胞肺がん)や、進行の程度によっても変わります。
胸の痛みに加えて気になる症状がある場合は、いつから、どのような症状が出ているかをまとめて医師に伝えると、必要な検査を判断する手がかりになります。
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肺がん以外の胸の痛みで考えられる病気

胸の痛みを起こす病気とは
胸の痛みは、肺がん以外にも、心臓の病気、肺炎や気胸など肺や胸膜の病気、肋間神経痛や筋肉の痛み、逆流性食道炎などの食道の病気でも起こります。
痛む場所や痛み方、発熱や咳の有無などである程度の違いはありますが、症状だけで病気を見分けることは難しく、最終的な判断には医療機関での診察と検査が必要です。
胸の痛みを起こす主な病気と、痛みの特徴は次のとおりです。
・狭心症・心筋梗塞
→ 胸の中央が締めつけられる、押されるような痛み。
左腕やあご、背中に広がったり、冷や汗を伴ったりすることがある
・気胸
→ 突然起こる片側の鋭い痛みと、息苦しさ。
軽い場合は安静で回復することもあるが、息苦しさが強いときは急いで受診が必要
・肺炎・胸膜炎
→ 発熱や咳、痰とともに現れる、呼吸をすると強まる痛み
・肋間神経痛
→ 肋骨に沿ってピリピリと走る鋭い痛み。体をひねると強まることがある
・逆流性食道炎
→ 食後や横になったときに起こる、胸やけを伴う焼けるような痛み
・帯状疱疹
→ ピリピリとした痛みが続いたあと、痛む場所の皮膚に帯状の発疹が現れる
このように、胸の痛みは気管支や食道、心臓など、胸の中にあるさまざまな臓器の不調で起こる可能性があります。
自己判断で「胃の痛みだろう」「肩こりだろう」と決めつけず、痛みが続く場合や繰り返す場合は受診することが大切です。
特に、心臓の病気が疑われる痛みは、すぐに治療が必要なことがあります。
後ほどご紹介する「すぐに救急車を呼ぶべきサイン」も、あわせて確認しておいてください。
胸の痛みがあるときの受診の目安

すぐに救急車を呼ぶべきサイン
胸の痛みの中には、肺がんかどうかにかかわらず、すぐに救急車を呼ぶ必要があるものがあります。
突然の強い胸の痛み、締めつけられるような痛みが続く、冷や汗を伴う、息ができないほど苦しい、といった症状は、心筋梗塞や大動脈解離、肺塞栓症など、命にかかわる病気のサインである可能性があります。
迷わずに119番通報したい状態は、次のとおりです。
・突然始まった激しい胸の痛み、締めつけられるような痛みが続いている
・冷や汗が出る、顔色が悪い、吐き気を伴う
・息ができないほど苦しい、唇や爪が紫色になっている(体の酸素が不足しているサイン)
・意識が遠のく、ぐったりしている
・咳とともに大量の血を吐いた
これらの症状があるときは、様子を見たり、ご自身で車を運転して病院へ向かったりせず、救急車を呼んでください。
肺がんの治療中の患者さんであっても、がんとは別の疾患によって引き起こされている可能性があるため、まずは救急対応を優先することが大切です。
救急車を呼ぶべきか迷うときは、救急安心センター事業の「#7119」に電話をすると、看護師などの専門家に相談できる地域があります。
お住まいの地域で利用できるかどうかを事前に確認し、電話のそばなど、ご家族にも分かる場所にメモしておくと、いざというときに落ち着いて行動できます。
受診時は呼吸器内科へ
救急ではない胸の痛みで肺の病気が気になるときは、呼吸器内科を受診するのが一般的です。
どの診療科がよいか分からない場合は、かかりつけ医や一般の内科で相談し、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらう方法もあります。
胸の中央が締めつけられるような痛みなど、心臓の病気が考えられる場合は、循環器内科が受診先になります。
肺がんが疑われる場合に行われる主な検査は、次のとおりです。
・胸部X線検査
→ 肺に異常な影がないかを調べる
・胸部CT検査
→ X線では見えにくい小さな病変や、がんの位置、広がりを確認する
・喀痰細胞診
→ 痰の中にがん細胞が含まれていないかを顕微鏡で調べる
・血液検査
→ 全身の状態や、腫瘍マーカー(がんがあると血液中で増えやすい物質)の値を確認する
・気管支鏡検査
→ 口や鼻から細い内視鏡を入れて気管支の中を観察し、組織を採取する
がんかどうかの確定診断は、採取した組織や細胞を詳しく調べて行われます。
肺がんと診断された場合は、全身のがんの広がりを調べるPET検査や、脳のMRI検査などで転移の有無を調べ、ステージや治療方針が検討されます。
心臓の病気を調べる場合には、心電図検査なども行われます。
検査の内容や順番は、症状や医療機関によって異なります。
受診の予約をする際に「胸の痛みと咳が続いている」など、気になる症状を具体的に伝えておくと、受診当日の診察や検査が進めやすくなります。
受診前に記録しておきたい痛みの情報
受診する前に、痛みが始まった時期や痛む場所、痛み方、強さ、続く時間、痛みが強まるきっかけをメモしておくと、医師が原因を考えるための大切な情報になります。
痛みは診察の場ではうまく説明できないことも多く、記録があると伝え漏れを防ぐことができます。
メモしておきたい主な項目は、次のとおりです。
・いつから痛むか、痛みが続いているか、繰り返しているか
・痛む場所(胸の中央、左右どちらか、背中、肩など)
・痛み方(刺すような、締めつけられるような、鈍く重いなど)
・痛みの強さ(まったく痛くない状態を0、想像できる最も強い痛みを10とした数字)
・深呼吸や咳、体を動かしたとき、食後など、痛みが強まるきっかけ
・咳、痰、血痰、発熱、息苦しさ、体重の減少など、ほかの症状
・喫煙歴や、これまでにかかった病気、飲んでいる薬
スマートフォンのメモ機能を使ったり、手帳に日付と一言を書き添えたりするだけでも十分です。
痛む場所は、人の形の簡単な図に印をつけておくと、言葉で説明するより伝わりやすくなります。
ご本人がつらいときは、ご家族が代わりに記録をつけたり、受診に付き添ってメモを医師に見せたりすることも助けになります。
受診の前日に、メモを見返して「特に聞きたいこと」を1つか2つ書き足しておくと、限られた診察時間を有効に使えます。
肺がんと診断された場合

肺がんの痛みを和らげるための治療とは
肺がんと診断されたあとの胸の痛みは、痛み止めの薬や放射線治療などによって和らげられることが多く、我慢せずに医療者へ伝えることが大切です。
痛みを抑えることは、眠りや食事、体を動かす機能を保ち、生活の質を守ることにつながるだけでなく、がんの治療を続けていくための体力の低下を防ぐうえでも大切です。
痛み止めの薬は、痛みの強さに応じて、一般的な解熱鎮痛薬から医療用麻薬までを組み合わせて使います。
骨への転移や胸の壁に広がったがんによる痛みには、放射線治療が行われることがあります。
ほかにも、痛みを伝える神経の働きを薬などで遮断する神経ブロック、胸にたまった水を抜いて重苦しさや息苦しさを改善する処置、骨を強くして骨折や痛みを防ぐ薬などの方法があります。
また、がんそのものへの治療法として、手術や放射線治療、抗がん剤などの薬物療法を行い、がんが小さくなることで痛みが改善するケースもあります。
どの方法が適しているかは、痛みの原因や体の状態、受けている治療によって判断されます。
多くの病院には、痛みなどのつらい症状を専門に扱う緩和ケアチームがあり、がんの治療と並行して相談することができます。
痛みの治療を受けるときは、「痛みが0〜10のどのくらいか」「1日のうちいつ強まるか」を伝えると、薬の種類や量を調整しやすくなります。
薬を飲んでも痛みが残る場合や、副作用がつらい場合も遠慮せず伝え、ご自身に合った方法を一緒に探していきましょう。
日常生活で痛みを和らげる工夫
薬や治療に加えて、姿勢や動き方、咳をするときの体の支え方など、日常生活の中での工夫によって、痛みの負担を少し軽くできることがあります。
痛みは体の動かし方や疲れ、不安な気持ちによっても強まりやすいため、生活の中で痛みを強めるきっかけを減らすことが大切です。
すぐに取り入れやすい工夫は、次のとおりです。
・横になるときは、クッションや枕を使って上半身を少し起こし、楽な姿勢を探す
・咳やくしゃみをするときは、痛む側の胸にクッションを当てて軽く押さえる
・起き上がるときは、体をひねらず、横向きになってから腕で支えて起き上がる
・胸を締めつけない、ゆったりとした服を選ぶ
・痛み止めは、痛みが強くなってからではなく、処方された時間どおりに飲む
骨に転移がある場合は、重い物を持ったり、急に体をひねったりすると骨折につながるおそれがあるため、避けたほうがよい動きを主治医や看護師に確認しておくと安心です。
痛みが強い時期は、家事や外出を無理に続けず、ご家族に手伝いを頼むことも、体を守るための大切な選択です。
毎日の痛みの強さや、痛み止めを飲んだ時間、その後の効き具合を簡単に記録しておくと、診察の際に治療の効果を伝える助けになります。
痛みが急に強くなった、これまでと違う場所が痛むといった変化があるときは、次の受診日を待たずに病院へ連絡してください。
まとめ
肺がんによる胸の痛みは、がんが胸膜や肋骨、神経に広がったときに現れることが多く、初期には自覚されにくい症状です。
胸の痛みはほかの病気でも起こるため、自己判断せず、続く痛みは医療機関で原因を確かめ、救急のサインがあるときはすぐに救急車を呼んでください。
肺がんと診断されたあとの痛みも、主治医や看護師、緩和ケアチームに相談することで和らげる方法を一緒に考えることができます。
