咽頭がんの原因とは?喫煙・飲酒・ウイルスなど部位ごとの原因とリスクを下げる方法
咽頭がんの原因として広く知られているのは喫煙と飲酒ですが、がんができる部位によっては、ウイルスの感染が深く関わっていることも分かっています。
咽頭は上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つの部位に分かれ、それぞれで主な原因が異なります。
また、喫煙や飲酒の習慣がなくても発症することがあり、原因を一つに決められないことも少なくありません。
このコラムでは、咽頭がんの原因における具体的な特徴や注意点を分かりやすく整理し、毎日の暮らしの中で無理なく取り入れられる実用的な生活の知恵や対策をお届けします。
部位別でみる咽頭がんの原因
咽頭がんの3つの部位

咽頭がんの主な原因は、がんが発生する部位によって異なり、上咽頭がんではEBウイルスの感染、中咽頭がんでは喫煙と飲酒に加えてHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染、下咽頭がんでは喫煙と飲酒が大きく関わっています。
咽頭は、呼吸や食べ物を飲み込むといった大切な機能を担う場所で、部位ごとに通るものや周りの組織が違うため、がんが起こるきっかけにも違いがあると考えられています。
それぞれの部位と、主な原因は次のとおりです。
・上咽頭(鼻の奥の突き当たり)
→ EBウイルスの感染との関係が知られており、日本では比較的少ない種類
・中咽頭(口を開けたときに見えるのどの奥、扁桃や舌の付け根)
→ 喫煙と飲酒、HPVの感染
・下咽頭(声を出す喉頭の後ろ側で、食道の入り口の手前)
→ 喫煙と飲酒が主な原因で、男性に多い
同じ咽頭がんでも、部位によって原因の種類だけでなく、現れやすい症状や治療の進め方も異なります。
ご自身やご家族の咽頭がんについて調べる際は、まずどの部位のがんなのかを確認すると、必要な情報を見つけやすくなります。
咽頭がんの主な原因とは

喫煙と飲酒
喫煙と飲酒は、中咽頭がんと下咽頭がんの最も大きな原因で、どちらか一方だけでもリスクが高まり、両方の習慣が重なるとさらに高くなることが分かっています。
たばこの煙に含まれる有害な物質や、お酒が体内で分解されるときにできる「アセトアルデヒド」という物質がのどの粘膜に繰り返し触れることで細胞が傷つき、がんが発生しやすくなると考えられています。
飲酒については、お酒を飲むと顔がすぐに赤くなる体質の方は、特に注意が必要とされています。
この体質の方は、アセトアルデヒドを分解する働きが生まれつき弱く、体内に長くとどまりやすいためです。
若いころは顔が赤くなっていたのに、飲み続けるうちに赤くならなくなった方も、体質そのものは変わっていません。
また、喫煙と飲酒は、のどだけでなく食道や口の中にもがんを起こしやすくするため、咽頭がんの患者さんでは、食道にも別のがんが見つかることがあります。
たばこの本数やお酒の量が多く、続けてきた年数が長いほど、リスクは高まります。
一方で、禁煙や節酒を始めると、時間とともにリスクは下がっていくとされています。
加熱式たばこも健康への影響がないとは言えないため、切り替えではなく禁煙を目指すことが勧められます。
HPV(ヒトパピローマウイルス)
中咽頭がんの一部は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因で起こり、日本でもその割合が増えているとされています。
HPVは主に性的な接触によって感染するありふれたウイルスで、多くの人が一生のうちに一度は感染すると考えられています。
感染しても、ほとんどの場合は体の免疫の働きによって自然に排除され、がんになるのはごく一部です。
HPVが関係する中咽頭がんは、喫煙や飲酒の習慣がない方や、比較的若い世代にも見られるのが特徴です。
感染してからがんが発生するまでには長い年月がかかるため、いつ、誰から感染したのかを特定することはできません。
そのため、ご本人やパートナーが過去の行動を気に病む必要はありません。
また、HPVが関係する中咽頭がんは、放射線治療や薬物療法が効きやすい傾向があることが分かっています。
HPVが関係しているかどうかは、診断の際に採取した組織の検査で調べられます。
HPVの感染を防ぐワクチンもありますが、すでにできたがんを治療するものではなく、中咽頭がんを予防する効果については研究が進められている段階です。
HPVとの関係について気になることがある場合は、主治医に検査結果の意味を確認しておくと安心です。
EBウイルス
上咽頭がんは、EBウイルスの感染との関係が深いことが知られています。
EBウイルスは、多くの人が子どものころに感染し、そのまま体の中にとどまっているウイルスで、感染した人のほとんどはがんになりません。
発症には、ウイルスに加えて、生まれ持った体質や生活環境など、いくつかの要因が重なると考えられています。
上咽頭がんは、中国南部や東南アジアの一部の地域で多く、日本では比較的少ないがんです。
地域による差としては、遺伝的な体質のほか、塩漬けの魚など特定の食べ物をよく食べる食生活が関係している可能性が研究されています。
また、喫煙や、仕事で木の粉じんや一部の化学物質を長く吸い込む環境についても、上咽頭がんとの関係があるのではないかと言われています。
ただし、これらはまだ研究の段階にあるものも多く、喫煙と飲酒、HPVやEBウイルスほど関係がはっきりしているわけではありません。
研究段階の情報だけで、必要以上に心配することはありません。
情報の確かさに迷ったときは、主治医や、がん診療連携拠点病院にあるがん相談支援センターへの問い合わせを通じて、信頼できる情報かを確認しましょう
飲酒・喫煙の習慣がなくても発症する可能性がある
咽頭がんは、喫煙や飲酒の習慣がない方にも発症することがあります。
がんは、年齢を重ねる中で細胞に少しずつ起こる変化に、ウイルスの感染や体質、生活習慣などのいくつもの要因が重なって発生すると考えられています。
そのため、一人ひとりについて原因を一つに特定できないことも少なくありません。
例えば、HPVやEBウイルスは多くの人が感染するありふれたウイルスで、本人が気づかないうちに感染していることがほとんどです。
また、がんができやすい体質には、生まれ持った遺伝的な要素も関わっています。
年齢も大きな要因の一つで、咽頭がんは50代以降に多く見られます。
こうした要因はご本人の努力では変えられないものも多く、「あのとき、ああしていれば」と過去を振り返っても、発症を防げたかどうかは誰にも分かりません。
これは、喫煙や飲酒の習慣があった方にとっても同じです。
また、ご家族の中に同じがんの方がいても、それだけで発症するとは限りません。
原因を知ることは、これからの生活で気をつけたいことを考えるための手がかりです。
ご本人やご家族が自分を責めるためのものではありません。
原因について気になることがあるときは、一人で抱え込まず、主治医や看護師、がん相談支援センターに相談してみてください。
咽頭がんのリスクを下げるためにできること

禁煙・飲酒量の見直し
咽頭がんのリスクを下げるために、日々の生活で取り組めることの中心は、禁煙と飲酒量の見直しです。
あわせて、口の中を清潔に保つこと、野菜や果物を含むバランスのよい食事をとることも、のどや口の中の健康を守るうえで役立つとされています。
どれも特別なことではなく、少しずつ続けることが大切です。
日常生活で取り入れやすい工夫は、次のとおりです。
・禁煙は一人で頑張らず、医療機関の禁煙外来を利用する
・お酒を飲まない日を週に2日以上つくり、1回に飲む量を減らす
・飲むとすぐ顔が赤くなる方は、特にお酒の量を控える
・毎食後の歯みがきに加えて、入れ歯の手入れや歯科での定期的な点検を受ける
禁煙外来では、禁煙補助薬を使いながら医師や看護師の支援を受けられ、一定の条件を満たせば健康保険も使えます。
ご家族が一緒に禁煙に取り組んだり、食卓にお酒を置かない日を決めたりすることも、続けるための助けになります。
また、歯科での定期的な点検は、口の中の変化に早期に気づくきっかけにもなります。
のどの違和感が続く、首にしこりがあるなど、気になる症状があるときは、まず早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
初期の段階で見つかれば、のどの機能を保ちながら治療を受けられる可能性が高まります。
治療中・治療後も禁煙と節酒を
咽頭がんと診断されたあとも、禁煙と節酒を続けることには大きな意味があります。
治療中に喫煙を続けると、放射線治療の効果が下がったり、のどの粘膜の炎症などの副作用が強く出たり、手術後の傷の治りが遅くなったりすることがあります。
また、治療を終えたあとも、喫煙や飲酒を続けると、別の部位に新たながんができるリスクが高まります。
喫煙や飲酒が原因となった咽頭がんでは、同じ影響を受けてきた食道や口の中、喉頭などに、別のがんが同時に、または治療後に見つかることがあります。
そのため、診断の際に食道の内視鏡検査が行われたり、治療後も定期的に頭頸部や食道の検査を続けたりすることが勧められています。
手術でがんを切除した方や、放射線治療を終えた方も、首のリンパ節への転移や、がんの進行・再発がないかを確認するため、決められた間隔で通院することが必要です。
治療中の禁煙や節酒が難しいと感じるときは、無理に我慢を続けるよりも、主治医や看護師に正直に相談することが大切です。
禁煙補助薬の使用や禁煙外来の紹介など、治療と並行して取り組める方法を一緒に考えてもらえます。
また、ご家族も一緒に禁煙や節酒に取り組むことで、ご本人を支えることができます。
まとめ
咽頭がんの原因は、部位によって異なり、喫煙と飲酒、HPVやEBウイルスの感染、体質や年齢など、いくつもの要因が重なって発生します。
原因を一つに特定できないことも多く、ご本人やご家族が自分を責める必要はありません。
気になることは主治医や看護師、がん相談支援センターに相談しながら、禁煙や節酒など今からできることを、無理のない範囲で続けていきましょう。
