がん患者の家族ができること 一人で悩まないために
ご家族ががんと診断されたとき、それは患者様ご本人だけでなく、あなたにとっても大きな出来事です。
治療の方針を一緒に考え、通院や入院の付き添い、日常生活の看護や介護を担う中で、いつしか心と身体に大きな負担がかかってしまうことは珍しくありません。
「いつまでこの生活が続くのか」「自分はどうなってしまうのだろう」といった不安や、誰にも相談できないつらさから、精神的にも肉体的にも追い込まれてしまう「看護・介護疲れ」は深刻な問題となりがちです。
このコラムはがん患者様を支えるご家族のあなたを対象に、疲れのサインに気づき、それを一人で抱え込まないための方法を紹介するガイドです。あなたが自身を大切にし、心と身体を守りながら患者様と共に歩んでいくヒントをぜひ見つけてください。
一人で抱え込んでいるサインに気づく

看護・介護疲れは、身体だけでなく、心にも様々なサインを出しています。
自分自身の状態を客観的に見つめ直し、無理をしていないか確認することが大切です。
身体に現れるSOS
多くの家族が経験する身体的なサインには、以下のようなものがあります。
- 慢性的な疲労感や倦怠感
- 睡眠障害(寝つきが悪い、何度も目が覚める、朝起きるのがつらいなど)
- 食欲の低下や過食
- 頭痛やめまい、動悸といった身体の不調
- 風邪をひきやすくなる、免疫力の低下
これらの症状が続いている場合、それは身体からの「もう限界だ」というSOSかもしれません。無理は禁物です。
心に現れるSOS
身体のサインと同じくらい重要なのが、心のサインです。
- 落ち込みや無気力
何をしても楽しめない、やる気が出ないといった感情が続く場合、それは精神的な疲労が蓄積している証拠です。 - イライラや怒り
以前は気にならなかったことに対してもイライラしたり、怒りを感じやすくなるなど、感情のコントロールが難しくなることがあります。 - 孤独感
「このつらさは誰にもわからない」と思い込み、周りから孤立してしまうこともあります。自分が1人ですべてを背負っていると感じるのは、大きなストレスです。 - 将来への不安
病状の進行や再発、お金の心配など、今後の生活に対する漠然とした不安にとらわれてしまうこともあります。
疲れを和らげるためにできること

看護・介護疲れに気づいたら、一人で抱え込まずに対処することが大切です。
ここでは、疲れを和らげるための具体的な方法を紹介します。
支援サービスを上手に活用する
様々な支援サービスを利用することで、あなたの負担を軽減することができます。
- 訪問看護
看護師が自宅を訪問し、医療的なケアや相談に応じてくれます。
ご家族の看護の負担を減らす上で、非常に役立つサービスです。 - 訪問介護
介護士が自宅を訪問し、食事や入浴、排泄といった日常生活の介護をサポートします。
患者様の状態やご家族の状況に応じて、柔軟な対応をしてくれます。 - 介護保険
40歳から64歳のがん患者様で、特定の疾病により介護が必要な場合は、介護保険の対象となる可能性があります。
介護保険を利用することで、福祉用具のレンタルや訪問サービスの費用を抑えることが可能です。 - 公的な医療保険制度
高額療養費制度や傷病手当金など、がん患者様やその家族が利用できる公的な制度は多くあります。
これらの制度を知っておくことで、経済的な不安を軽減することができます。
相談窓口を利用する
一人で悩みを抱え込まないために、相談できる場所を探しておくことが大切です。
- がん相談支援センター
全国のがん診療連携拠点病院に設置されており、がんに関する様々な相談を無料で受け付けています。
患者様ご本人だけでなく、ご家族も利用することが可能です。
看護師や医療ソーシャルワーカーといった専門家が対応してくれるため、医療的な質問から精神的なつらさまで、何でも相談できます。 - 医療ソーシャルワーカー
病院の相談室に勤務し、がんに伴う経済的・社会的な問題について相談に応じてくれます。
利用できる公的な制度やサービスの紹介、退院後の生活の準備など、幅広くサポートしてくれます。
自分の時間と居場所を確保する
患者様のケアに追われ、自分の時間を持てないと、心の疲れは溜まっていく一方です。
短い時間でも構いません。自分を大切にする時間を意識的に作り出すことが大切です。
- 趣味や好きなことをする時間を確保する
- 散歩や運動で気分転換を図る
- 親しい友人と会って、がんとは関係のない話をする
- 患者様の安全を確保できる状態であれば、短時間でも外出する
自分が元気でなければ、患者様を支え続けることは困難です。
「私が休んだらどうなってしまうのか」と思うかもしれませんが、あなたが笑顔でいることが、患者様にとって何よりの支えになります。
周囲の人とつながる

看護・介護疲れの大きな原因の一つは孤独感です。
周囲の人とのつながりを持つことで、心の負担を軽くすることができます。
患者様とのコミュニケーション
がんと向き合うつらさは、患者様ご本人が最も感じています。
しかし、家族の前では弱音を吐けないと思っている方も少なくありません。
お互いの気持ちを正直に話し合うことで、理解し合い、支え合う関係を築くことが可能になります。
親戚や友人、地域のコミュニティとのつながり
身近な親戚や友人に、つらい気持ちを話すことも大切です。話すことで、自分の感情を整理し、精神的な負担を軽減することができます。
また、地域のコミュニティや患者会などに参加することで同じような経験を持つ人とつながり、情報や気持ちを共有することも可能です。
支えられていることを素直に受け止める
「人に迷惑をかけたくない」という気持ちから、助けの手を拒んでしまうことがあるかもしれません。しかし、困ったときに「助けて」と言うことも大切なことです。
周囲の人に支えられていることを素直に受け止め、感謝の気持ちを伝えることで、心のつながりはより一層深まります。
あとがき
このコラムでは、がん患者様を支えるご家族のあなたに向け、看護・介護疲れを一人で抱え込まないための方法をお伝えしました。
「頑張りすぎないこと」は、決して無責任なことではありません。ご自身の心身を大切にし、上手に周囲の助けを借りることが、結果的に患者様を長く支え続けることにつながります。
あなたが笑顔でいることが、患者様にとって何よりの励みとなります。ご自身を一番に大切にしてください。
