2025.11.07

笑顔がもたらす回復力! がんと向き合うヒント

笑顔の犬

がんと診断されたとき、治療法や生活の変化への不安で、頭の中はいっぱいになるでしょう。

しかし近年、医学的な研究から「笑うこと」が心身に与える良い影響に注目が集まっています。笑いがもたらす免疫力や、ストレスを和らげる力は、つらい治療を乗り越えるための、ひとつの心の支えになると考えられ始めています。

このコラムでは、笑いと免疫の関係や、日常生活で取り入れられるヒントをご紹介しながら、患者様が少しでも前向きに日々を過ごすための優しい力を探していきます。

笑顔を浮かべ食事を摂る親子

笑いが体内でどんな働きをもたらすのか。

これは1980年代から米国で本格的に調べられ、日本でも多くのがん患者様や高齢者を対象に研究が進められてきました。

免疫細胞NK細胞が元気になる

笑いによって、「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」の働きが活性化するという報告があります。

NK細胞は、体内の異常な細胞(がん細胞など)を見つけ、攻撃する免疫細胞です。

つまり、笑うことで免疫システムが活性化し、「病気と向き合う力」が患者様自身の中から引き出される可能性があるのです。

ストレスや痛みの緩和をサポート

さらに、笑いは脳や内分泌系にも作用します。

ストレスホルモンが減少し、血流や酸素の取り込みが改善されるほか、痛みが和らぐといったさまざまな良い効果が見られています。

たとえばある調査では、お笑いライブを見た後の患者様の血液中のNK細胞活性が明らかに高まっていたという結果も報告されています。

ソファに座り腕を伸ばす女性

身体の中で、笑いはどのようにして免疫機能に働きかけるのでしょうか。

主なメカニズムをわかりやすくご紹介します。

脳が分泌する「快感ホルモン」

楽しい、おかしい、嬉しいと感じる瞬間、脳内ではドーパミン、セロトニン、エンドルフィンといった“快感ホルモン”が分泌されます。

これらは気持ちを安定させるだけでなく、自律神経のバランスを整え、間接的に免疫システムにも良い影響を与えると考えられています。

リラックスを促す自律神経の調整

笑うことは、緊張状態を作る交感神経の過度な働きを抑え、心身をリラックスさせやすくします。

その結果、ストレスホルモン(コルチゾールなど)の分泌が低下し、NK細胞などの免疫細胞の力が高まるという関連性も指摘されています。

また、笑う動作は腹筋や横隔膜を使うため軽い運動に近い効果があり、血行や呼吸機能の改善、疲労感の軽減にもつながります。

自宅で音楽を聴く男性

「病気のことで頭がいっぱいで、笑える気分になれない」

そんなときは、無理に笑おうとする必要はありません。

笑いは自然にあふれるもの。だけど、少し意識することで、“笑いやすい環境”を整えることはできます。

心のスイッチを押す「受動的な笑い」

自分から笑えなくても、誰かや何かの力を借りて、気持ちがゆるむ瞬間を作りましょう。

  • お気に入りの動画や番組を見る
    テレビやネット動画などで、短時間でも気分が楽になる時間を作ります。
  • 家族や友人とのおしゃべりを楽しむ
    病気の話だけでなく、日常のちょっとした話題でも、自然な笑いは生まれます。
  • 「笑いヨガ」「ユーモア療法」を体験してみる
    笑いヨガは体操と呼吸法を組み合わせた健康法、ユーモア療法はコメディなどを通して笑いを意識的に活用する心理療法です。
    呼吸と笑いを組み合わせた健康法として、一部の病院や支援団体でも紹介されています。

日常に「笑いやすい空気」を育む

ペット、音楽、漫画など、自分にとっての“笑えるもの”をそばに置くこともおすすめです。

生活の中で自然に笑顔がこぼれる状況を作ることで、「笑っていいんだ」と思える心の余裕が育まれます。

患者様の中には、「笑った日とそうでない日では、気分も体調も違う気がする」と話す方もいます。

笑うことで、自分自身の生活が少し前向きに整っていく。そんな優しい力が、確かに存在するようです。

家庭菜園で野菜を収穫する男女

がん患者様にとって、医師や看護師、そして家族の表情は、想像以上に大きな影響を持ちます。

医療者の笑顔が和らげる不安

「先生がにこっと笑ってくれただけで、怖さが和らぎ、ホッとした」

「診察室で少しだけ冗談を交わした瞬間、気持ちが軽くなった」

そんな声は多く聞かれます。医療の現場では、ただ薬や治療だけでなく“人と人”として笑顔を交わせる時間が、患者様の不安を和らげる大切な要素として見直されています。

家族や支援者も含めて、誰かが笑ってくれるだけで、患者様の心にふっと灯る光があります。

周囲の優しい笑顔は、患者様が病気と闘うための心のエネルギーになるのです。

「笑うことで体がよくなるなんて、信じられなかった」

「でも、たしかに笑っている時間は、痛みも気持ちも少しずつほぐれていった気がする」

がんと向き合う日々は、決して簡単なものではありません。

だけど、そんな日々の中で「笑顔になれる時間」を持てたなら、それはきっと、患者様自身の回復力を支える大切な力になります。

笑いには、免疫細胞を元気にする力、そして気分や心の状態を改善する作用があります。

そして笑うことは、「生きようとする力」そのものを優しく引き出してくれるのかもしれません。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。