2025.11.10

抗がん剤治療と脱毛。一人で悩まないための対策と心のケア

自分の髪を触る女性

がんという病気に立ち向かう抗がん剤治療は、私たちにとってとても大切なものです。その一方で、治療が始まると同時に、吐き気や倦怠感など、さまざまな副作用が現れることも少なくありません。

数ある副作用のなかで、特に精神的な負担が大きいものの一つが「脱毛」です。

髪の毛は私たちの印象を大きく左右するため、「もし脱毛したら、どうしよう…」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

脱毛はつらいですが、一人で抱え込む必要はありません。このコラムでは、なぜ抗がん剤で脱毛が起こるのか、そして脱毛に備え、治療中を安心して過ごすための具体的な対策や心のケアについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

鏡を見る女性

脱毛は、抗がん剤の副作用の一つとして起こることがあります。

しかし、すべての抗がん剤で脱毛が起こるわけではありません。脱毛が起こるかどうかは、使用する薬の種類や投与量によって異なります。

放射線治療でも脱毛が起こる可能性はありますが、これは放射線を照射した部分に限定されることが一般的です。

一方、抗がん剤治療では、全身の細胞に影響が及ぶため、全身の毛が抜ける可能性があります。

机に置かれた3本のヘアブラシ

脱毛が起こる原因は、抗がん剤の性質にあります。

脱毛の原因

抗がん剤は、がん細胞のように細胞分裂が活発な細胞を攻撃することで、がんの増殖を抑える薬です。

しかし、がん細胞だけでなく正常な細胞の中にも分裂が盛んなものがあり、抗がん剤はそれらにも影響を及ぼします。

髪の毛を作る毛母細胞は常に細胞分裂を繰り返して毛髪を成長させているため、抗がん剤の影響を受けやすい細胞のひとつです。

抗がん剤によって毛母細胞がダメージを受けると、毛髪の成長が止まり、抜け落ちてしまいます。

このように、脱毛は抗がん剤の薬理作用によって起こる避けがたい副作用のひとつです。

治療の一環として納得することは簡単ではありませんが、体が薬に反応している証でもあります。

原因を知ることで、少しでも不安が和らぎ、前向きに治療と向き合うきっかけになればと思います。

脱毛のタイミング

脱毛が始まる時期は、使用する抗がん剤の種類や投与量、治療の方法によって異なりますが、一般的には治療開始から2~3週間ほどで髪が抜け始めることが多いとされています。

初めは枕やブラシに抜け毛が目立つようになり、徐々にまとまって抜けるようになります。治療が進むにつれて脱毛は進行し、最終的には頭髪の大部分が失われることもあります。

また、影響は頭髪だけでなく、眉毛やまつ毛、鼻毛、腕や脚などの体毛にも及ぶことがあります。

こうした変化は一時的なものであり、治療終了後には多くの場合、毛髪は再び生え始めます。

ブラシで髪を梳く女性

脱毛はつらいことですが、一時的なものです。治療が終了すればまた毛が生えてきます。

脱毛と向き合うために、今からできる準備やケアについてご紹介します。

【対策1】脱毛に備える準備

  • 髪の毛を短くする
    脱毛が始まる前に、髪を短くカットしておくことをおすすめします。
    抜け毛が減るわけではありませんが、抜けることへの精神的なショックを和らげやすくなります。
  • ウィッグの準備
    脱毛に備えて、ウィッグを準備しておくことも大切です。
    脱毛が始まる前に、ご自身の髪型や髪色に合ったものを選んでおくことで、治療が始まっても安心して生活することができます。

【対策2】頭皮を守るケア

  • やさしく洗う
    髪の毛が抜け始めたら、頭皮はとても敏感になります。
    シャンプーは刺激が少ないものを選び、指の腹でやさしく洗い、熱いお湯は避けるようにしましょう。
  • 保湿を心がける
    頭皮の乾燥は、かゆみや炎症の原因になります。
    刺激の少ない保湿剤を使用して、頭皮のケアを行うことが大切です。
  • 紫外線対策
    髪の毛が抜けると、頭皮は紫外線の影響を直接受けやすくなります。
    外出する際は、必ず帽子やバンダナ、スカーフなどで頭皮を守りましょう。

【対策3】ウィッグや帽子の選び方

ウィッグや帽子は、脱毛した頭をカバーするだけでなく、自分らしさを保つための重要なアイテムです。

  • ウィッグ
    医療用ウィッグは、通気性や肌触りが良く、長時間の使用でも負担が少なくなるよう工夫されています。
    サイズや素材、髪の毛の質をしっかり確かめて、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
  • 帽子やバンダナ
    通気性が良いコットンややわらかい素材のものを選びましょう。
    デザインや色をさまざまに楽しむことで、気分転換にもつながります。
頭を抱えるポーズのデッサン人形

脱毛は、外見が大きく変化するため、精神的な負担が非常に大きい副作用です。

  • 一人で悩まない
    つらい気持ちは、家族や友人、医療スタッフに話してみましょう。
    話すことで気持ちが整理され、孤独感がやわらぐこともあります。
    同じ悩みを持つ患者さんの会や支援団体に相談することも、安心につながることがあります。
  • アピアランスケアの活用
    病気や治療による外見の変化に対し、患者が自分らしく前向きに過ごせるよう支援するケアをアピアランスケアといいます。
    ウィッグや帽子、眉毛・まつ毛の描き方、肌のケアなど、専門的なアドバイスを受けることで、自分らしさを保つ工夫ができます。
    医療機関によっては、アピアランスケア専門の看護師や美容スタッフが在籍している場合もあるので、遠慮せず相談してみましょう。
  • 「一時的なもの」と捉える
    脱毛は、治療が終わると再び生えてきます。髪質や色が変わることもありますが、徐々に回復していく過程を見守ることも大切です。
    「今だけの変化」と前向きに捉える気持ちが、心の支えになります。
    鏡を見るのがつらいときは、好きな香りを身につけたり、気分が上がる服を選んだりすることで、少しずつ自分を取り戻すきっかけになるかもしれません。

抗がん剤治療中の脱毛は、とてもつらい経験になるかもしれませんが、脱毛は一時的なものです。

治療が終了すれば、毛根の細胞は徐々に回復し、また髪の毛が生えてきます。治療後に生えてくる髪は、質や色、くせなどが変化することもありますが、時間とともに元の状態に戻っていくことが多いです。

このコラムが、皆さんが脱毛に対する不安を少しでも和らげ、自分らしい生活を送るための力になれば幸いです。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。