がん患者の在宅ケアを支えるバリアフリー整備と補助金制度
がんの治療を終え、いざ自宅に帰るとなったとき、不安な気持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。
特に、身体の状況が変わると、慣れ親しんだ自宅にも思わぬ危険が潜んでいるように感じてしまうものです。
でも、どうぞご安心ください。
住み慣れたご自宅で、これまで以上に安全に、そして心穏やかに過ごすための方法はたくさんあります。
このコラムでは、自宅を安心できる場所にするためのバリアフリーのヒントや、費用の負担を軽くするための公的な支援制度についてお伝えします。
無理にすべてを変える必要はありません。一つずつ、できることから確認していきましょう。
バリアフリー、「なぜ?」と「どこから?」

なぜ、自宅にバリアフリーが必要なのか
がん治療によって患者さんの生活は大きく変わることがあります。手術や入院、通院での診療を重ねるうちに、体力や身体の自由度が以前と異なる状況になる方も少なくありません。
ちょっとした段差につまずいたり、滑りやすい床で転倒したりといった、思わぬ事故を防ぐために、バリアフリーはとても重要な役割を果たします。
在宅療養に移行するとき、ご自宅を少しだけ見直してみることをおすすめします。
それは、ご自身やご家族が、ご自宅という一番安らげる場所で、健康に、そして安全に過ごすための最初の一歩になるからです。
バリアフリーを整えるメリットとは
バリアフリー環境を整えることは、患者様本人・ご家族・そして長期的な面からも、メリットがあります。
◆患者本人のメリット
・転倒・怪我の予防
→ 治療中は体力低下や骨粗鬆症リスクがあるため、段差解消や手すり設置で安全性が高まります。
•自立支援
→ 生活動線が整うことで「自分でできること」が増え、生活の質(QOL)が向上します。
•心理的安心感
→ 不安が減り、療養に集中できる環境になります。
◆家族・介護者のメリット
•介護負担の軽減
→ 介助動作が楽になり、腰痛や疲労を防げます。
•訪問医療・看護の円滑化
→ 医療スタッフが機器を運びやすく、処置もスムーズに。
◆長期的なメリット
•在宅療養の継続性
→ 安全な環境が整うことで入院を減らし、在宅での生活を続けやすくなります。
•経済的メリット
→ 補助金を活用すれば費用負担を抑えつつ、長期的には医療費や介護費の削減につながります。
•家族全員の安心
→ 患者だけでなく同居家族の安全性も高まります。
優先して検討したい場所
ご自宅のバリアフリーを考える際、どこから手をつければよいか迷う方もいらっしゃるかもしれません。
特に、以下の場所は転倒や事故が起きやすいため、優先的に確認することをおすすめします。
・トイレ
立ち座りの動作が負担になることがあります。
便座の横に手すりを設置したり、洋式便器への交換を検討したりすることで、一人でも安全に利用できるようになります。
・浴室
滑りやすい床や、浴槽をまたぐ動作に危険を伴う可能性があります。
滑り止めマットを敷いたり、浴槽や壁に手すりを取り付けることで、安心感がぐっと増します。
・階段
手すりがない階段は、大きなリスクになります。
手すりの設置は、転倒予防に非常に有効な対策です。
・玄関や出入り口
大きな段差があると、外出が億劫になってしまうことがあります。
スロープを設置したり、段差をなくしたりする工事が検討されます。
また、それ以外の場所については、以下のような取り組みを行うと安心です。
◆優先場所以外の工夫
•照明の工夫…夜間の移動時の転倒を防止(足元灯やセンサーライト)
•手すり以外の補助具…滑り止めマット、昇降補助椅子など
•家具配置の見直し…動線を広く取り、車椅子や歩行器が通れるスペースを確保
こうした工夫は、ご本人だけでなく、介護を行うご家族の負担も軽減します。
在宅療養を支えるお金の話

リフォームにはお金がかかるとお考えの方もいらっしゃると思います。
しかし、ご心配いりません。在宅での療養を支援するための公的な制度や助成金があることをご存じでしょうか。
これらの制度は、ご自身やご家族の負担を少しでも軽くするために用意されています。
介護保険制度の活用方法
介護保険は、病気や障害によって介護が必要となった方を支える大切な制度です。がんの患者さんは、40歳から64歳までの方でも、末期の状態と診断された場合、介護保険を利用することが可能です。
介護保険を利用すると、福祉用具(手すり、車椅子、介護ベッドなど)をレンタル・購入する際の費用や、自宅をバリアフリー化するための住宅改修費について、補助を受けることができます。
原則として、自己負担は1割(所得によって2割または3割)となり、大きな費用負担を抑えることができます。
使えるお金は他にも!高額療養費制度と障害年金
治療費や生活の費に関する不安は、患者さんとご家族の心に重くのしかかります。
しかし、日本には、そのような負担を軽減するための公的な制度がいくつかあります。
- 高額療養費制度
この制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費の自己負担額が、ひと月で定められた上限額を超えた場合に、その超えた分の費用が払い戻される制度です。
年齢や所得によって上限額は異なります。入院や手術、抗がん剤治療など、医療費が高額になりがちながん治療の際に、患者さんを支援する重要な制度です。
事前に申請しておくことで、窓口での支払いを上限額までにとどめることも可能です。 - 障害年金
がんの治療によって仕事を続けることが難しくなったり、障害が残ったりした場合に受けることができる年金制度です。
「障害」という言葉に抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、この制度は生活を支えるための公的な仕組みです。
ほかにも、仕事を休んで療養している方が生活費を受けられる傷病手当金制度もあります。
これらの制度については、それぞれの適用条件や内容が異なるため、掲載されているサイトや窓口で確認することが必要です。
その他の支援制度
- 生活福祉資金貸付制度
公的な融資制度で、生活を送る上で一時的な支援が必要な方に、比較的低い利息でお金を貸してくれる制度です。 - アピアランスケア
外見の変化による心の負担を軽減するためのケアです。
ウィッグや乳がんの温存療法など、アピアランスケアに関連する費用について、一部の自治体が助成を行っている場合があります。
これらも、がん患者さんやそのご家族の生活を支援する大切な制度です。
困ったときは一人で悩まないで

制度について調べるのは、たしかに複雑で難しく感じるかもしれません。
そんなとき、これらの制度をスムーズに利用するための相談先が、あなたの身近な場所にあります。
- がん相談支援センター
全国のがん医療を提供する病院に設置されており、がんの患者さんやご家族が、治療のことだけでなく、生活やお金に関する相談を無料で受けられる窓口です。
専門の相談員が、一人ひとりの状況に合わせて、必要な情報やアドバイスを提供してくれます。 - 各自治体の窓口
介護保険や障害年金の申請は、お住まいの市区町村の窓口で行います。
直接問い合わせることで、最新の情報や、申請の流れを詳しく聞くことができます。 - 社会保険労務士
障害年金の申請など、複雑な手続きについて、専門家の支援を受けることが可能です。
どんなに小さなことでも構いません。まずは一歩踏み出して、頼れる場所に相談してみることが、あなたの生活をより豊かにする最初の一歩となります。
さいごに
がんと診断され、治療を受けるなかで、生活の状況が変化したり、お金に関する不安を抱えたりすることは自然なことです。しかし、あなたを支援するための制度や情報は、確実に存在しています。
このコラムが、ご自身やご家族の生活を少しでも安心して過ごすきっかけとなれば、これ以上嬉しいことはありません。
温かいサポートが必要なときは、いつでも頼れる窓口があることを知っておいてください。
ご自身と大切な人のために、健康を考える機会にしていただけると嬉しいです。
