「がん患者はコーヒーNG?」正しい知識で不安をなくそう
がんの治療中にコーヒーを飲んでもいいのだろうか、という疑問は、多くの患者さんやご家族が抱くものです。
特に、がんという病気を経験すると、これまでの食生活が本当に体にいいのかどうか、不安になるのは当然のことです。
巷には様々な情報が溢れており、「コーヒーはがん予防にいい」「治療中は控えるべき」など、何が正しいのかわからなくなってしまうことも少なくありません。
このコラムでは、コーヒーとがんの関係についてわかりやすく解説します。
コーヒーはがん患者にとって「NG」ではない

結論から言うと、「がん患者はコーヒーを飲んではいけない」という科学的な根拠は、ほとんどありません。
多くの大規模な研究が行われており、その結果、コーヒーを飲むことががんの再発や死亡を直接的に増加させるという関連は確認されていません。
むしろ、がんの種類によっては、コーヒーを飲むことでリスクが低下する可能性が示されています。
コーヒーとがんの関係
・子宮体がん
日本で行われた大規模な調査の結果、毎日コーヒーを飲む習慣のある女性は、コーヒーを飲まない女性と比較して、子宮体がんの発生率が低いという傾向が明らかになりました。
・肝臓がん
海外の研究では、コーヒーを飲むことで肝臓がんのリスクが約40%低下したという報告もあります。
・大腸がん
コーヒーを飲むと、大腸がんの発症リスクが低下する可能性が指摘されています。
これらの効果は、コーヒーに含まれるクロロゲン酸などの抗酸化作用や、炎症を抑える作用が原因と考えられています。
ただし、これらはあくまで「リスクの低下」を示唆するものであり、コーヒーががんの直接的な治療薬になるわけではありません。
専門家の多くは、適度な量であれば、がん患者がコーヒーを飲むことに特に問題はないという意見でほぼ一致しています。
コーヒーのメリット・デメリット

コーヒーは、がんと闘う日々を送る人にとって、メリットもデメリットも併せ持つ飲み物です。
これらを正しく理解することが、上手にコーヒーと付き合うための第一歩です。
コーヒーのメリット
・肝機能を保護し、肝がんのリスクを低減
「コーヒーとがんの関係」で言及したように、コーヒーには肝臓がんのリスクを下げる働きがあることが言われています。
コーヒーに含まれるクロロゲン酸などのポリフェノールには、強力な抗酸化作用と抗炎症作用があります。
これによって肝臓の炎症を抑え、肝硬変や肝がんへと進行する一因となる細胞のダメージを防ぐ働きがあります。
また、糖代謝を改善し、肝臓に脂肪が溜まるのを防ぐことで、間接的にも肝臓の健康を支えます。
・便秘の解消
コーヒーは、消化管の動きをコントロールするホルモン(ガストリンなど)の分泌を活性化させます。
そのため、コーヒーを飲むと数分から数十分以内に結腸の運動が活発になることが知られています。
カフェイン以外の成分も腸を刺激するため、カフェインレスを選んでも、一定の便秘解消効果が期待できます。
・気分の落ち込みを和らげる
コーヒーの香りや味は、心を落ち着かせ、リラックスさせる効果があります。
そのため、習慣的なコーヒー摂取は、気分の落ち込みを予防する傾向があるという研究データがあります。
また、抗がん剤治療による記憶力や集中力の低下による不安に対し、カフェインの覚醒作用が一時的に脳の働きへの助けとなります。
・血糖値のコントロール
コーヒーの習慣的な摂取は、インスリンの感受性を高め、糖尿病の発症リスクを低下させる可能性があると言われています。
コーヒーのデメリット
・カフェインの過剰摂取による影響
カフェインには覚醒作用があるため、飲む量や時間帯によっては不眠を引き起こすことがあります。
特に、治療の副作用で不眠になりやすい人は注意が必要です。
・消化器への刺激
コーヒーは胃酸の分泌を促す作用があります。
そのため、胃腸が弱い人や治療で吐き気や下痢の症状がある人は、飲むと体調を崩す可能性があります。
・鉄分の吸収阻害
コーヒーに含まれるタンニンには、食事に含まれる非ヘム鉄と結合して鉄分の吸収を妨げる性質があります。
治療中で貧血の指摘を受けている方、または鉄分を重視した食事を摂っている方は、なるべく量を控えることがおすすめです。
・薬の代謝や副作用への影響
カフェインは肝臓の酵素で代謝されるため、一部の薬剤と一緒に摂取すると、薬の効果が強く出すぎたり、カフェインの離脱症状が出やすくなったりすることがあります。
また、治療薬による動悸や血圧上昇がある場合、それらの症状が助長される可能性があります。
・利尿作用
カフェインには利尿作用があります。
治療の副作用で下痢や嘔吐がある場合は、コーヒーを飲むことでかえって水分が体外に排出されやすくなり、脱水を助長してしまうというリスクがあります。
治療中の症状に合わせたコーヒーの飲み方

がんの治療は、人によって様々な症状が出ます。
ご自身の体調に合わせて、コーヒーの飲み方を工夫しましょう。
迷った場合は、必ず、医師や看護師に相談してください。
・薬とカフェインの相互作用を確認
服用している薬(一部の抗菌薬、気管支拡張薬、精神科薬など)によっては、カフェインが薬の効果を強めたり、逆に弱めたりすることがあります。
新しく薬が処方された際や、体調に不安がある時は、念のためコーヒーを飲んでも大丈夫かを医師や薬剤師に確認すると安心です。
・下痢、吐き気がある場合
コーヒーは消化管に刺激を与えることがあるため、症状が悪化する可能性があります。
このような時は、コーヒーの摂取を一時的に控えるか、少量に留めるのがよいでしょう。
カフェインレスのコーヒーに変えるのも一つの方法です。
・不眠、不安がある場合
カフェインの影響を強く受ける人は、飲む時間を朝や午前中に限定しましょう。
夕方以降はカフェインレスのものに変えたり、ハーブティーなどに変えたりすることがおすすめです。
・口内炎がある場合
熱いコーヒーは口内炎を刺激して痛みを高める可能性があります。
冷ましてから飲む、あるいは少しぬるめにするなど、温度を調整する工夫をしましょう。
コーヒーの選び方・飲み方

がん患者さんでも、安心して楽しめるコーヒーの選び方と飲み方を紹介します。
・カフェインレスコーヒーの活用
カフェインの影響が気になる方は、カフェインレスコーヒーに変える方法があります。
最近は味や香りも通常のコーヒーとほとんど変わらないものが多くあります。
カフェインを控えてコーヒーを楽しみたい場合は、ぜひ試してみてください。
・「おいしい」を追求する楽しみ方
コーヒーを飲むという時間を大切にしましょう。
お気に入りのカップを使ったり、好きな音楽を聴きながら飲んだり、工夫次第でより豊かな時間になります。
家族や友人と一緒に楽しむことも、心の安らぎにつながります。
・適切なカフェイン量を
厚生労働省のHPでは、「カナダ保健省(HC)において、健康な成人が1日に摂取しても健康に悪影響がないカフェインの上限量は、最大400mgとされている」と述べています。
これは、マグカップでおよそ3杯分に相当する量です。
しかし、治療の影響で体調が不安定な場合は、この量にとらわれず、ご自身の体と相談し決めることが必要です。
ご自身の体に合った量を見つけ、飲みすぎないようにしましょう。
・念のために水分補給を
コーヒーには利尿作用があるため、コーヒーを飲んだ後は、それとは別に水や麦茶などで水分を補給することも意識しましょう。
特に治療の影響で脱水になりやすい時期は、コーヒーを水分補給として考えず、楽しむための嗜好品として位置づけるようにすることが大事です。
まとめ
このコラムでは、がんとコーヒーの関係についてお伝えさせていただきました。
コーヒーは適切な量を守って楽しむ限り、がん患者様にとっても問題ない飲み物です。
無理に我慢する必要はありません。ご自身の体調や気持ちに合わせて、上手にコーヒーと付き合い、日々の暮らしにささやかな幸せと安らぎを見つける方法を、ぜひ見つけてください。
もし、食生活や飲み物について不安がある方は、主治医や管理栄養士に相談してみることをおすすめします。
