2026.04.27

がん患者の外出を支える、介護タクシー・福祉タクシーの活用法

介護タクシーの模型

がんの治療を続けていく上で、意外と見落とされがちなのが「病院への移動」という問題です。

手術後の体力の低下や、抗がん剤などの薬による副作用の倦怠感、骨への転移に伴う痛みなどがあるとき、公共交通機関での移動や自らハンドルを握ることは、心身ともに大きな負担となります。

「通院だけで一日分の体力を使い果たしてしまう」「家族に送迎を頼むのが申し訳ない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

こうした状況をサポートし、療養生活を支える選択肢として、介護タクシーや福祉タクシーの活用があります。

これらは単なる移動手段ではなく、治療を最後まで完走するための大切な医療支援の一つと言えるでしょう。

今回は、がん患者様が直面する移動の悩みと、それを解決するためのタクシー制度やサービスの利用方法について詳しく解説します。

介護用ベッドと車いす

がんの治療は長期間に及ぶことが多く、その過程で移動の困難を感じる場面はさまざまです。

まずは、どのようなときに専門の車両やサポートが必要になるのかを確認しておきましょう。

物理的な疲労と痛み

抗がん剤治療は、当日は比較的元気に過ごせても、数日後に強い倦怠感や吐き気が現れることがあります。

このような状態でバスや電車を乗り継ぐ移動は、体に大きな負担となりやすいものです。

また、手術直後や骨への転移がある場合は、車のわずかな振動や長時間同じ姿勢で座ることが痛みにつながることもあります。

こうした状況では、乗り降りのサポートや揺れの少ない運転を提供してくれる介護タクシー・福祉タクシーが、安心して移動するための有力な選択肢になります。

感染症への不安とプライバシー

治療内容によっては免疫力が低下し、人混みを避ける必要がある時期があります。

公共交通機関では、混雑や待ち時間による負担が大きくなることもあります。

また、脱毛や外見の変化が気になる場合、人目を避けたいと感じることも少なくありません。

さらに、体調が不安定な日は、移動中に急に休みたくなることもあり、乗り換えや長距離の歩行が負担になることがあります。

このような状況では、自宅から目的地まで移動を最小限にできる手段が求められます。

家族の負担

家族に送迎してもらえることは心強い一方で、「仕事や家事の手を止めてもらうのが申し訳ない」と感じる患者さんは少なくありません。

治療が長期にわたる場合、家族に負担をかけ続けてしまうのではないかという不安が積み重なることもあります。

こうした状況では、移動のたびに気を遣うことが精神的な負担になることがあります。

プロのサービスを利用することで、家族は介助者としての役割から一時的に離れ、患者さんにとっても気兼ねなく移動できる環境が整います。

家族が「支える側」としてだけでなく、普段どおりの関係で寄り添える時間を確保できる点も、介護タクシーが選ばれる理由の一つです。

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介護タクシーと運転手のイラスト

移動をサポートする車両には、大きく分けて「介護タクシー」と「福祉タクシー」があります。

これらは名称が似ていますが、制度や利用できる条件が異なります。

自分に合ったサービスを選ぶために、その特徴を正しく理解しておきましょう。

介護タクシー(介護保険適用)

一般的に「介護タクシー」と呼ばれるものの中には、介護保険が適用される「通院等乗降介助」サービスが含まれます。

利用できる方
介護保険の要介護認定(要介護1以上)を受けている方。
目的
ケアマネジャーが作成するケアプランに基づき、主に病院への通院や役所への手続きなどで利用します。
特徴
プロのドライバーが自宅内の着替えや移乗、病院での受付などをサポートします。
40歳から64歳の方でも、末期がんなどの特定疾病であれば、介護保険を申請して利用することが可能です。

福祉タクシー(民間・自費利用)

福祉タクシーは、主に身体障害者の方や歩行が困難な方を対象とした、介護保険を使わない全額自費のサービスです。

利用できる方
要介護認定の有無にかかわらず、歩行が困難な方や車椅子利用者など、どなたでも利用可能です。
目的
目的を問わず利用できます。
通院だけでなく、食事、買い物、親戚宅への訪問など、自由な外出が可能です。
特徴
ケアプランの手続きが不要なため、希望するタイミングで予約がしやすいというメリットがあります。

車椅子を積み込む介護タクシーのイラスト

一般のタクシーではなく、あえて専門の車両を利用することには、体調管理の上で大きな利点があります。

ストレッチャーや車椅子のまま移動できる

介護タクシーや福祉タクシーの車両には、リフトやスロープが備え付けられており、車いすのまま、あるいは横になった状態(ストレッチャー)で乗り降りできます。

手術後で座る姿勢がつらいときや、立ち上がりに不安がある場合でも、体に負担をかけずに移動できる点が大きな特徴です。

また、乗車中の姿勢を安定させるための固定具やクッションが用意されていることも多く、長時間の移動でも安心して過ごせます。

こうした設備は、体調が不安定な時期の通院や検査の移動を支える重要な手段になります。

プロのドライバーによる配慮

介護タクシーの運転手の多くは介護に関する資格を持ち、患者さんの体調や痛みに配慮した丁寧な運転を心がけています。

急ブレーキや急なハンドル操作を避け、段差やカーブの衝撃を最小限に抑える技術は、痛みや不安を抱える方にとって大きな助けになります。

また、乗車時の姿勢やシートの調整にも気を配ってくれるため、移動中も安心して体を預けられる環境が整っています。

自宅内や病院内での介助

介護タクシーでは、運転手が単なるドライバーではなく、介助を含めたサポートを行える点が大きな特徴です。

自宅のベッドから車までの移動補助や、病院での受付・会計への付き添いまで対応できるため、外出に不安がある方でも安心して利用できます。

独り暮らしの方や、家族がどうしても付き添えない場合でも、移動から手続きまで一連の流れを任せられるため、通院や検査の負担を大きく減らすことができます。

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利用を検討する際、最も気になるのはやはり料金のことでしょう。

介護タクシー(保険適用)と福祉タクシー(自費)は、どちらも基本的に「運賃」「介助料」「機材レンタル料」という3つの項目の合計で計算されます。

この3つの枠組みは共通していますが、どこに保険が効くのかという点が異なります。

福祉タクシーの場合(全額自己負担)

福祉タクシーを利用する場合、これら3つの項目すべてを自分で支払います。

運賃: メーターに表示される走行距離に応じた金額。
介助料: 運転手による乗降サポートや自宅内での介助代(数千円程度が目安)。
機材レンタル料: 車椅子やストレッチャーの使用料。

これらを全額負担するため、自由度が高い反面、一回あたりの支払額は高くなる傾向があります。

介護タクシーの場合(保険一部適用)

一方、ケアプランに基づいて利用する介護タクシーでは、費用の「一部」に保険が適用されます。

介助料: 「通院等乗降介助」という名称で、ここが1割から3割の自己負担で済みます。
運賃と機材レンタル料: この部分は介護保険の対象外となるため、福祉タクシーと同様に全額自己負担となります。

つまり、介護保険を使える場合でも「タクシー代(運賃)」そのものは安くならない、という点に注意が必要です。

あくまでプロに手伝ってもらうための費用が抑えられる仕組みだと理解しておきましょう。

予約の際に必ず確認しておきたいこと

どちらのサービスも、多くの場合が完全予約制です。治療のスケジュールが決まったら、まずは早めに問い合わせましょう。

その際、以下の3点を伝えておくと見積もりがスムーズになります。

移動時の希望: 「車椅子のまま乗りたい」「ストレッチャーで横になりたい」など。
自宅の環境: 「玄関までに階段がある」「エレベーターのないマンションの3階」など、介助の難易度。
帰りの相談: 抗がん剤治療などは終わる時間が読めないことが多いため、「終わってから電話をして迎えに来てもらえるか」を確認しておくと安心です。

なお、自治体によっては、がん患者様や障害者の方を対象に「タクシー利用券(助成券)」を発行している地域もあります。

居住地の市役所などの福祉窓口へ問い合わせてみることをお勧めします。

車椅子に乗った高齢女性

通院はあくまで治療のためですが、移動支援サービスを「自分のやりたいことを叶えるため」に活用することも、療養生活においては非常に重要です。

一時帰宅や外泊のサポート

入院生活が長引く中、「一度自宅に戻って家族と食事をしたい」「自分の家で過ごしたい」という希望を持つ方は多いです。

看護師や主治医と相談の上、専門の移動手段を確保することで、体力が低下していても安全に自宅へ戻る時間を実現できます。

大切なイベントへの参加

親戚の結婚式、法事、お墓参りなど、諦めかけていた大切な行事への参加も、プロのサポートがあれば可能になる場合があります。

無理のないスケジュールをケアマネジャーや主治医と相談し、移動の負担を最小限に抑えるプランを立ててみましょう。

一人で悩み、「まだ歩けるから大丈夫」と無理をしてしまうと、肝心の治療を受ける活力が削がれてしまいます。

今の自分に最適な移動手段を知るために、まずは以下の場所に相談してみてください。

がん相談支援センター(病院内)
病院内に設置されている相談窓口です。
地域のタクシー会社の一覧や、利用できる制度について案内してくれます。
ケアマネジャー
すでに介護保険を利用している場合は、ケアマネジャーに相談しましょう。
通院の負担を軽減するためのケアプランへの組み込みを検討してくれます。
自治体の福祉窓口
居住する市区町村の窓口では、利用料金の助成制度や、地域で活動する団体の移動支援サービスなどの情報を掲載したパンフレットを配布しています。

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がんの療養生活において、移動手段を確保することは、単に病院へ行くための手段にとどまりません。

それは「自分の行きたい場所へ、安全にたどり着ける」という安心感を得ることでもあります。

無理をして公共交通機関を利用したり、家族に過度な負担をかけて自分を責めたりする必要はありません。

介護タクシーや福祉タクシーという社会資源を上手に活用し、プロの力を借りることは、治療を前向きに続けていくための立派な選択です。

体力を温存し、浮いたエネルギーを自分自身をいたわる時間や、家族との穏やかな会話に充ててみてください。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。