2026.09.01

膵臓がんと糖尿病がある場合の栄養管理とは?血糖値と消化に配慮した食事を考える

膵臓がんと糖尿病がある場合の栄養管理とは?血糖値と消化に配慮した食事を考える

膵臓がんと糖尿病、両方の病気を抱えている場合、栄養管理と聞いてもどこから手をつければよいのか分かりにくいものです。

膵臓がんの治療と並行して糖尿病も抱えていると、食事のたびに血糖値や消化のことなど、気をつけるべき点が多く感じられることもあるでしょう。

糖尿病の食事療法として言われていることと、膵臓がん患者に勧められる食事とが、時にかみ合わないと感じる方も少なくありません。

どちらか一方を優先すると、もう一方に負担がかかってしまうのではないかという不安を抱えたまま、毎日の食卓に向き合っている方も多いのではないでしょうか。

血糖値の変動による体調の症状に気づきにくくなることもあるため、両方の視点を持ちながら食事と向き合うことが大切です。

このコラムでは、膵臓がんと糖尿病を抱える方の栄養管理について、日々の生活の中で実際に役立つ具体的な工夫や注意点を分かりやすく整理し、無理なく実践できる知恵をお届けします。

血糖値のコントロールと消化への配慮を両立させる食事管理は、治療を続けていく上でも重要な意味を持ちます。

お皿に?マークが書かれている

血糖と消化機能、両方への配慮が必要

膵臓がんと糖尿病を併せ持つと、血糖値のコントロールと消化機能への配慮という、性質の異なる二つの課題に同時に対応する必要が出てきます。

すでに糖尿病を発症している方だけでなく、治療の影響で新たに血糖値の管理が必要になる方もいます。

膵臓には血糖値を調整するインスリンを分泌する働きと、食べ物の消化を助ける酵素を分泌する働きの両方があり、がんの影響でこの臓器の機能が低下すると、血糖値の管理と消化の両方に影響が及びやすくなるためです。

たとえば、血糖値を意識して炭水化物の量を控えめにしようとすると、エネルギー不足につながりやすくなり、逆に消化を優先してやわらかく食べやすいものを選ぼうとすると、糖質の多い食品に偏ってしまうことがあります。

台所に立って、糖尿病の本にある注意点と、がんの食事に関する情報を見比べながら、どちらを優先すればよいのか迷ってしまうという声もよく聞かれます。

血糖値の急な悪化や体調の異常に気づいたときは、自己判断せず早めに受診し、検査を受けておくと安心です。

放置してしまうと体力低下のリスクを高める場合もあります。

この二つの課題は、対立するものというより、同じ食事の中でバランスを取っていくべきものだと捉えると、献立を考えるときの気持ちが少し楽になります。

一方を優先すると、もう一方に負担がかかるジレンマ

血糖値のコントロールだけを重視しすぎると栄養不足に、消化のしやすさだけを重視しすぎると血糖値の急上昇につながりやすくなるというジレンマが、食事管理を難しく感じさせる大きな要因です。

どちらも大切な視点であるため、一方だけを極端に優先することは、かえって体への負担を増やしてしまう可能性があります。

たとえば、消化に優しいという理由でおかゆや白いパンばかりを選んでいると、血糖値が上がりやすくなることがあります。

反対に、血糖値を気にして食物繊維の多い生野菜を積極的に摂ろうとすると、胃に負担がかかり、お腹の張りや不快感につながる場合もあります。

自身の体調と食品の特性を照らし合わせながら、無理のない範囲で確認していくことが大切です。

アルコールを飲む習慣がある方は、血糖値にも消化にも影響しやすいため、適度な量にとどめることも意識してみてください。

体調不良の原因を後から探るためにも、それぞれの食品が持つ特性を知っておくことが、急激な体調変化を予防し、がんと糖尿病の治療に備える第一歩になります。

食欲不振が続く場合は、無理に意識しすぎず、まずは食べられるものを優先しても構いません。

次の章では、血糖値と消化の両方に配慮しながら選べる、具体的な食品の考え方を紹介します。

鶏むね肉

低GI食品と消化に優しい食品の共通点

血糖値の上昇を緩やかにする低GI食品の中には、消化にも優しいものが多く含まれているため、この共通点を意識すると食品選びがしやすくなります。

低GI食品は糖質の吸収がゆるやかで血糖値の急上昇を防ぎやすく、なおかつ加熱してやわらかくすることで、消化への負担も抑えやすくなるためです。

選び方の目安として、以下のような食品が両方の条件に合いやすいとされています。

・オートミール、玄米、全粒粉のパンなど、精製度の低い炭水化物
・豆腐、白身魚、鶏むね肉など、消化に優しいたんぱく源
・よく加熱してやわらかくした野菜(かぼちゃ、にんじん、ブロッコリーなど)

白米や白いパンをすべて置き換える必要はなく、いつもの主食の一部を置き換えるところから始めると、無理なく続けやすくなります。

体調によって消化のしやすさは変わるため、新しい食品を試すときは少量から始め、体の反応を見ながら量を調整していくとよいでしょう。

適切な量を摂取することを意識すると、血糖値の状態が改善したと感じる方もいますし、体重の維持にもつながりやすくなります。

食材の具体例

日々の食卓で取り入れやすい食材を具体的に知っておくと、献立を考える負担が減り、続けやすくなります。

糖尿病にも膵臓がんの食事にも配慮した食材は、実はそれほど特別なものではなく、身近な食材の組み合わせ方を工夫することで実現できるためです。

たとえば、朝食であれば、卵とやわらかく煮た野菜のスープ、消化の良いヨーグルトに少量のオートミールを加えるといった組み合わせがあります。

昼食や夕食では、白身魚の煮付けに豆腐と根菜のみそ汁を合わせるなど、たんぱく質と食物繊維をバランスよく摂れる献立が役立ちます。

大豆製品は脂肪分が少なく栄養バランスにも優れているため、さまざまな料理に取り入れやすい食材です。

外食の際は、揚げ物よりも焼き魚定食や、うどんに野菜を加えた一品を選ぶといった工夫もできます。

毎食すべてを完璧に整えようとせず、1日のうちどこか1食だけでも意識して組み立てるところから始めてみてください。

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焼いた白身魚

オメガ3脂肪酸・抗酸化物質を含む食品

オメガ3脂肪酸や抗酸化物質を含む食品を取り入れることは、血糖値の管理と体全体の健康維持の両方に役立ちます。

オメガ3脂肪酸は血液の状態を整え、血糖値の調整に関わるホルモンの働きを支える面でも注目されており、抗酸化物質は体の細胞を守り、慢性的な炎症を穏やかにする働きに関わるとされています。

糖尿病と膵臓がんという二つの負担を抱える体にとって、日々の食事で意識したい栄養素です。

たとえば、サバやサーモンなどの青魚をメイン料理に取り入れる、ほうれん草やブロッコリー、トマトといった色の濃い野菜を副菜に加えるといった工夫があります。

ナッツ類も良質な脂質を含みますが、消化への負担や食べやすさを考えて、細かく刻んだりすりつぶしたりして少量から取り入れる方法があります。

魚が苦手な場合は、えごま油や亜麻仁油を料理に少量かけるのもおすすめです。

新しい食品を取り入れる際は、量や調理法について、次の診察の際に管理栄養士に相談しながら進めると安心です。

体調と食事内容の関連を記録しておくと、相談の際に役立ちます。

食物繊維の摂り方の工夫

食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにする働きがある一方で、摂り方によっては消化への負担になることもあるため、種類と量、調理法を工夫することがポイントになります。

食物繊維には水に溶けやすい水溶性と、溶けにくい不溶性があり、糖の吸収を穏やかにする働きは主に水溶性のものに期待されています。

たとえば、海藻やオクラ、里芋といった水溶性食物繊維を含む食材は、消化にも比較的優しく、みそ汁やスープに加えやすい食材です。

一方で、ごぼうやきのこ類など不溶性食物繊維の多い食材は、消化に負担がかかりやすいため、細かく刻む、よく煮込むといった工夫でやわらかくしてから食べると負担を減らせます。

豆類も食物繊維が豊富ですが、皮を取り除いたり、つぶしたりすることで食べやすくなります。

食物繊維を増やす際は一度に大量に摂らず、少しずつ量を増やしながら、お腹の調子を見て調整していくとよいでしょう。

こうした食べ方を日々の生活習慣として無理なく継続していくことが、体調を良い状態に保つことにつながります。

食事の前に手を合わせる女性

血糖値の急上昇を防ぐ食べ方

食べる順番や一回あたりの量を工夫することで、血糖値の急上昇を防ぎながら、消化への負担も同時に抑えることができます。

野菜やたんぱく質を先に食べ、炭水化物を後に食べるという順番は、血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待されており、なおかつ一度に大量の糖質が入ってこないことで、消化器への負担も分散されます。

たとえば、食事の最初にみそ汁や煮野菜を食べ、その後に魚や豆腐などのたんぱく源、最後にご飯やパンといった炭水化物を食べる順番にするだけでも、体への負担のかかり方が変わってきます。

よく噛んでゆっくり食べることも、血糖値の急上昇を防ぎつつ、消化を助ける工夫の一つです。

外食の際も、この食べる順番を意識するだけで、無理なく実践できます。

食べる順番を変えることは特別な準備が要らないため、今日の食事からすぐに試すことができる工夫の一つです。

血糖値を急激に上げずに緩やかに下げる方向へ導くという役割を、食べる順番そのものが担ってくれます。

日々の経過を記録しておくと、自分に合った食べ方が見えてきます。

少量頻回食

一度にたくさん食べるのではなく、少量の食事を回数を分けて摂る少量頻回食は、消化への負担を減らしながら血糖値の急激な変動も防ぎやすいという、両方の課題に応える食べ方です。

膵臓の消化機能が低下している状態では、一度に大量の食事を摂ると消化しきれず負担になりやすく、同時に血糖値も急上昇しやすくなるためです。

たとえば、1日3食の量を少し減らし、その分を午前と午後の軽食に振り分けることで、1回あたりの血糖値の上昇を抑えながら、必要なエネルギーを確保しやすくなります。

軽食には、ヨーグルトに果物を少量添えたもの、豆腐と野菜のスープなど、血糖値の上昇が緩やかで消化にも優しいものを選ぶとよいでしょう。

通院で外出する日は、持ち運びしやすい軽食を用意しておくと、外出先でもリズムを崩さずに済みます。

最初から回数を厳密に決めなくても、体調や食欲に応じて、少しずつ自分に合ったリズムを見つけていけば十分です。

少量頻回食は一般的にも推奨されることが多い食べ方ですが、体力の維持を意識しながら、定期的に見直していくとよいでしょう。

患者と話す医師

医師・栄養士との連携

食事の内容や量を変える際は、インスリンや消化酵素剤の使用状況とあわせて、医師や管理栄養士に相談しながら進めることが基本になります。

食事の内容や量が変わると、必要なインスリンの量や消化酵素剤のタイミングも見直しが必要になる場合があるためです。

たとえば、食物繊維を増やしたり、食べる順番を変えたりした結果、血糖値の変動パターンに変化を感じたときは、次の診察でその内容を具体的に伝えてみてください。

管理栄養士との面談が可能な病院では、糖尿病と膵臓がんの両方に配慮した具体的な献立の提案を受けられる場合もあります。

血糖値の記録をつけておくと、限られた診察時間の中でも相談がスムーズに進みます。

自己判断でインスリンや消化酵素剤の量を調整することは避け、食事内容を変えたときほど、主治医や医療チームとの連携を密にすることを意識してみてください。

消化酵素剤の具体的な飲み方やタイミングについては、こちらのコラムをご参照ください。
膵臓がん治療中の消化酵素剤の飲み方とタイミングとは?

栄養補助食品を利用する場合や、他の薬との飲み合わせが気になる場合も、同じタイミングで確認しておくと安心です。

こうした食生活の見直しは、手術後の食事管理にも共通する部分があります。

食事作りや献立の相談を家族と一緒に行うことは、二つの病気への配慮が必要な食事管理を、無理なく続けるための現実的な支えになります。

一人で血糖値と消化の両方を考えながら毎食を用意するのは負担が大きく、周囲の協力があることで気持ちの余裕も生まれやすくなるためです。

たとえば、家族に「この食材は血糖値が上がりにくく、消化にも優しい」と具体的に伝えておくと、買い物や調理の際に気をつけてもらいやすくなります。

一緒に食卓を囲みながら、食べられた量や体調の変化を話題にすることで、食事の時間が安心できるひとときにもなります。

家族が体調の変化に気づいてくれることが、早めの相談につながることもあります。

周囲に頼ることに気が引ける場合は、「血糖値と消化、両方に優しいメニューを一緒に考えてほしい」など、具体的にお願いする形にすると、相手も協力しやすくなります。

食事管理に加えて、体調に応じた軽い運動を家族と一緒に取り入れている方もいます。

無理のない範囲で体を動かすことは、血糖値の安定や免疫力の維持、生活習慣病の予防にもつながるとされています。

治療中の食事全般に関する基本的な工夫については、こちらのコラムでも詳しく紹介しています。
膵臓がん治療中の食事の工夫 食べやすくする調理法と実践的アドバイス


膵臓がんと糖尿病、二つの食事管理を同時に行うことは、決して簡単なことではありません。

それでも、血糖値と消化の両方に配慮した食品を知り、食べる順番や量を少し工夫するだけで、体への負担は変わってきます。

一人ですべてを完璧にこなそうとせず、医師や管理栄養士、家族の力を借りながら、自分に合ったバランスを少しずつ見つけていってください。

焦らず、今日の食事から、無理のない一歩を積み重ねていきましょう。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。