2026.03.23

がん患者の在宅療養を支える準備と支援サービスとは

家の形のブロックと聴診器が置かれている様子

ご家族ががんの治療を終え、病院から自宅へ戻り、在宅療養を始めるという大きな決断をされた方もいらっしゃるかもしれません。

「何から手をつければいいのだろう」「本当に自分たちだけで対応できるのだろうか」と、漠然とした不安を感じているかもしれませんが、在宅療養はご家族だけで全てを抱え込むものではありません。

住み慣れたご自宅で安心して過ごすために、医療や介護の専門家がチームとなって様々な支援を提供しています。

このコラムでは、ご家族が在宅療養をスムーズにスタートできるよう、準備のポイントや利用できるサービス、在宅に関わるスタッフのそれぞれの役割について整理します。

窓口で相談する親子

在宅療養を始めるにあたり、最初にすべきことは、患者様がご入院されている病院にある「相談窓口」に連絡することです。

医療ソーシャルワーカーやがん相談支援センターの相談員が、在宅療養への移行をサポートしてくれます。

病院の相談員は、患者様やご家族が抱える不安や疑問を整理し、在宅療養への移行をスムーズに進めるための道筋を示してくれます。

具体的には、以下のことを一緒に考えてくれます。

・どのような療養生活を送りたいかを考える
 → まずは患者様が自宅でどのように過ごしたいか、ご家族の希望なども含めて一つずつ整理していきます。

・在宅で関わる専門家やサービスを紹介してもらう
 → お住まいの地域にある訪問診療医やケアマネジャー、訪問看護ステーションなどの情報を教えてもらい、連絡先などをリストアップしてもらえます。

・医療や介護の公的制度について聞く
 → 在宅療養にかかる費用や、利用できる公的な制度(介護保険、高額療養費制度など)について、分かりやすく説明してもらえます。

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高齢女性とヘルパーの女性

病院にいる間は、お医者さんや看護師さんが24時間体制でケアを行ってくれますが、自宅に戻ると、その役割を地域の専門家が担うことになります。

彼らが連携して、患者様とご家族を支えるチームとなります。

医療の専門家

在宅での療養を安心して続けるためには、患者さんとご家族だけで支えるのではなく、医療の専門職がチームとなって関わることが欠かせません。

病院とは違い、自宅では必要な医療ケアを適切に受けるための体制をあらかじめ整えておく必要があります。

訪問診療や訪問看護、薬の管理など、在宅医療にはさまざまな専門家が関わり、それぞれが役割を分担しながら患者さんの生活を支えます。

ここでは、自宅での療養を支える主な医療職と、その役割についてわかりやすく紹介します。

・訪問診療医
 → ご自宅で診察を行うお医者さんです。
   定期的に訪問して病状を確認し、薬の処方や必要な検査、入院の調整などを行います。

・訪問看護師
 → 医療的なケアを行う看護師さんです。
   点滴や痛みのケア、体の清潔を保つサポートのほか、療養生活全般を支える役割があります。

・薬剤師
 → 薬の専門家です。
   薬の飲み方や管理方法を教えてくれるほか、医師や看護師と連携して副作用の有無を確認し、安全に薬を使えるよう支援します。

介護の専門家

在宅での療養を続けるためには、医療だけでなく、日常生活を支える介護のサポートが欠かせません。

自宅での生活は、食事や入浴、移動といった日々の動作に負担がかかりやすく、患者さんご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな負担となることがあります。

こうした負担を軽減し、安心して在宅療養を続けるために、介護の専門職がチームとして関わり、生活全体を支えていきます。

・ケアマネジャー
 → 介護の専門家です。
   患者様の状態や希望に合わせて、介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作成し、サービス事業者との調整や定期的な見直しも行います。

・ホームヘルパー
 → 自宅に訪問して、入浴や食事の介助、身の回りのお世話のほか、掃除や買い物など日常生活の支援を行います。
   医療的な処置は行いません。

このチームの中心となるのは、ご家族であるあなたです。

不安なことや困ったことは、専門家に何でも相談して、情報を共有することが大切です。

高齢女性とヘルパーの人形

在宅療養を安心して始めるためには、医療・介護の体制づくり、生活環境の整備、そして経済的な面での準備といった確認を少しずつ進めていくことが大切です。

病院の相談窓口や担当の看護師と相談しながら、以下のポイントを順番に確認していきましょう。

医療・介護の準備

「自宅で過ごしたい」という思いを実現するためには、医療と介護のサポートをどう整えるかが大きな鍵になります。

がんの治療中は体調の変化も多く、家族だけで支えるには負担が大きくなることもあります。

だからこそ、訪問診療や訪問看護、介護保険サービスなど、利用できる支援を知り、早めに準備しておくことが大切です。

・在宅医療や介護サービスの依頼
病院の相談窓口や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所から紹介された訪問診療医やケアマネジャー、訪問看護ステーションなどに連絡し、必要なサービスの利用を開始します。

・介護保険の申請手続きを行う
介護保険は、65歳以上の方は原則利用できます。40〜64歳の方は、がん末期を含む特定疾病が原因で介護が必要になった場合に利用できます。
市区町村の窓口に申請し、認定を受けることで、介護サービス費用の自己負担が軽減されます。
申請は本人や家族が行うことが基本ですが、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が代行してくれることもあります。

自宅で安全に過ごすための環境づくり

患者様がご自宅で安心して、そして快適に過ごせるように、生活環境を整えることが大切です。

ベッドの準備
 ・起き上がりや立ち上がりがつらい場合には、介護用の電動ベッドを検討しましょう。
 ・ベッドの高さを調整することで動作が楽になります。
 ・介護用品は購入だけでなくレンタルも可能です。必要に応じて専門スタッフに相談すると安心です。
 ・ベッド周りには物を置かず、呼び出しベルやナースコールを設置するとさらに安全です。

◆転倒予防の工夫
 ・廊下やトイレ、浴室などに手すりを設置し、移動をサポートします。
 ・段差にはスロープを置き、つまずきを防ぎましょう。
 ・夜間は足元灯やセンサーライトを活用し、暗い場所でも安全に歩けるようにします。
 ・床には滑りにくいマットを敷き、コード類はまとめて足元に置かないようにしましょう。
 ・必要に応じて杖や歩行器を使い、適切な高さに調整しておくことも大切です。

◆その他の工夫
 ・トイレや浴室には滑り止めマットを敷き、浴槽の出入りを助ける器具を導入すると安心です。
 ・よく使うものは手の届きやすい場所に置き、動線を確保しましょう。
 ・室温や湿度を適切に保ち、体調の変化を防ぐ工夫も忘れずに。

経済的な準備

在宅療養には医療費や介護サービス費など、さまざまな費用がかかります。

制度を上手に活用することで、負担を軽減できます。

・医療費
高額療養費制度を利用すると、ひと月の自己負担額が一定の上限を超えた分が払い戻されます。
マイナ保険証を利用し、オンライン資格確認に対応した医療機関で限度額情報の利用に同意すれば、窓口での支払いが最初から自己負担限度額までに抑えられます。
これにより、立替払いの必要がなくなり安心です。

・介護保険サービス費
介護保険を利用することで、サービス利用料の自己負担は原則1割となり、所得に応じて2割または3割になる場合もあります。
介護保険を活用することで、介護サービス費用の負担を大きく減らすことができます。

・利用できる公的制度の確認
特定医療費(指定難病)や障害者医療費助成など、利用できる制度がないかを確認しましょう。
担当のケアマネジャー、市区町村の窓口、または病院の医療ソーシャルワーカーに相談すると安心です。

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三世代家族がリビングに集まっている様子

在宅療養は、ご家族にとって身体的にも精神的にも大きな負担となります。

患者様のケアに集中しすぎて、ご自身を顧みる時間がないかもしれません。

しかし、ご家族が無理をしてしまうと、共倒れになってしまう可能性があります。

・誰かに頼る勇気を持つ
すべてを一人で背負い込もうとせず、困ったときは誰かに頼ることを恐れないでください。
訪問看護や訪問介護サービスを上手に活用して、休息をとる時間を作りましょう。

・心の負担を話せる場所を見つける
がん相談支援センターでは、治療のことだけでなく、生活や心の悩みについても無料で相談できます。
また、がん患者様やそのご家族が集う「がんサロン」に参加して、同じような経験を持つ方々と話すことも、心の負担を軽くする助けとなります。

在宅療養では、さまざまな専門職が連携しながら患者さんの生活を支えます。

ここでは、よく利用されるサービスの違いをわかりやすくまとめました。

ご自身やご家族の状況に合わせて、必要なサービスを選んでいくことが大切です。

訪問診療と往診の違い

高齢女性と介護士が笑顔で談笑している様子

在宅で医師の診療を受ける方法には、「訪問診療」と「往診」の2種類があります。

それぞれ役割が異なるため、両方を組み合わせて利用することが多いです。

・訪問診療
訪問診療は、あらかじめ契約を結んだうえで、計画的・定期的に医師が自宅へ訪問し診療を行います。
体調管理や薬の処方などを継続的に行い、健康状態を見守ってくれる存在です。

・往診
往診は、急な発熱や痛みなど体調の変化があった際に、依頼を受けて医師が臨時で訪問する診療です。
必要なときにすぐ対応してもらえるため、在宅療養の安心につながります。

定期的な訪問診療と、必要時の往診を組み合わせることで、在宅でも安心して過ごせる体制が整います。

訪問看護と訪問介護の違い

在宅療養では、医療的なケアと生活面のサポートを分担して受けることができます。

ここでは「訪問看護」と「訪問介護」の違いを説明します。

・訪問看護
看護師が医師の指示に基づきご自宅を訪問し、点滴や経管栄養の管理、床ずれの予防や処置などの医療的ケアを行います。
さらに、療養生活の指導やご家族へのサポートも担います。

・訪問介護
ホームヘルパーがご自宅を訪問し、入浴や排せつ、食事の介助などの身体介護、掃除や洗濯、買い物などの生活援助を行います。
医療的な処置は行わず、日常生活のサポートを中心に担います。

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在宅療養は、患者様とご家族が力を合わせてつくり上げていく日々の営みです。

時には不安や迷いが生まれることもありますが、その気持ちを言葉にして周囲と共有することで、心の負担は少しずつ軽くなっていきます。

専門職の支援を受けながら、ご家族が無理なく関われる形を見つけていくことが、より良い療養生活につながります。

このコラムが、在宅療養という新しい選択を考える際の小さな道しるべとなり、安心して一歩を踏み出すための助けになれば幸いです。

監修医 医学博士 上羽 毅

監修医

医学博士

上羽 毅

私は医師として日々の診療にあたる中で、患者さんが抱える「治療に対する不安」や「治療への向き合い方」などの声を多く耳にしてきました。
そのような経験から、このサイトでは信頼性を第一に、最新の医学的知見や治療方針をもとに内容を確認・監修しています。専門的な部分を分かりやすく伝えることを心がけ、読者の方が正しい知識をもとに前向きに治療へ臨めるよう願っています。